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萩尾望都の最新作、残酷な神が支配するを全巻読み終えたのですが、疑問点が一つあります。
<以下ネタバレ>

ジェルミはサンドラの日記を読んで、サンドラは自分とグレッグの関係を知っていながら助けてくれなかったと言っていますが、これはつまりサンドラはグレッグがジェルミに対して性的虐待をしていた事実を知っていたという事が前提ですよね。
ということは彼女はジェルミが虐待されているところを実際に見たわけでもないのに、ビビからの手紙だけで「息子が虐待されている」と考えたのでしょうか?それとも、作者が敢えて明確に描かなかっただけであり、本当は虐待を目撃したのでしょうか(まぁそれはないと思いますが…)。

私が読んだ限りでは、サンドラが知っていたのは「ジェルミが虐待されていた」ということではなく、「ジェルミが自分の夫とセックスしていた」ということのように感じられました。
もし後者なのであれば、ジェルミの言う「助けてくれなかった」とは、どのように解釈すればよいのでしょう…。

長くなりましたが、よろしくお願い致します。

A 回答 (2件)

私は、サンドラは、ジェルミとグレッグの関係について疑惑を抱いていたし、二人に性的な関係があることも気づいていたものの、ジェルミが性的虐待を受けている所を、実際に見聞きした訳ではないと思います。

そんな所を目撃したら、サンドラの性格からして、平然と生活できるとは思えないからです。

ただ、二人の関係がどこまで深いものなのかや、ジェルミがあんなに惨い目にあわされているとまでは、サンドラは知らなかった。二人の関係を確かめるのをためらっている節や、認めたくないような節もあります。そして、疑惑を確かめようとした所で事故に遭ったのではないかと思っています。

しかし、ジェルミにとっては、母が感づいていたのに確かめようともせず放置していたことは、母が傍観していたに等しい。
普通の親なら、「虐待」か「同意」かに関係なく、夫がわが子とセックスしていたら、やめさせようとするのが当然とるべき反応じゃないでしょうか。
なのに、サンドラは気づいていながら、グレッグを失うことばかりに気をとられ、確かめることを躊躇している間に、ジェルミを追い詰めてしまった。

手元に『残酷な…』がないので、日時的な裏づけがとれませんが、少なくとも、サンドラが日記に不安な思いを記した頃に、すぐ何らかの行動(=「助け」)を起こしていれば、ジェルミはその後エスカレートする一方のグレッグの虐待を受けることだけは免れたし、殺意を抱くまでには到らず、結果的にサンドラも巻き添えになって死ななくて済んだのではないでしょうか。
私は、サンドラが気づいた時に何もしなかった弱さが、この漫画における人々の運命を決めたと思います。
ジェルミが日記を発見する件の辺りで、
『何もしない善人は“悪人”である』
そんな言葉を思い出しました。

例としてですが、年中電車で見かけるチカンのおじさんがいて、もう目がイッちゃってて、騒ぐと刺されそうな感じなんです。
で、怖くて逃げたくても隅に追い詰められてて逃げられない時、隣にいる母親がそれに気づいていながら、助けてくれるどころか、危ないオヤジだから巻き添えになりたくないわと見て見ぬふりをしたとしたら、赤の他人にされるよりよっぽどショックですよね。
(注・うちの母がそんなことをしたわけではないですよ。あくまでも例としての話ですが)

嫌な話ですが、経済的理由や配偶者の暴力を恐れて、我が子への虐待(性的虐待を含む)を傍観している親は、皆無ではないのです。

ジェルミにしてみれば、実母がそ知らぬふりをしていたに等しいわけで、ショックだし、それまで自分が精神的に脆い母を身を呈して守ってきたという思いがあるだけに、深い葛藤が生じたと思います。

ジェルミの
「助けてくれなかった」
というセリフは、性的虐待を指すだけでなく、どんどん追い詰められ、精神の均衡を失って転がり落ちていく自分を、ただ一人、自分を救う鍵を握っていた人間(この時点ではお気楽なイアンは三人の関係に気づいていないので)が
「助けてくれなかった」
という思いから出たのではないかと思います。
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。

確かに2人の関係に感づいていながら行動を起こさないというのは、ジェルミにとって「助けてくれなかった」ことになりますね。luiさんの仰るように、虐待のみに関わらず精神的に追い詰められていた自分を救ってくれなかったという意も込められていたのですね。

これを機会にもう一度最初から読み直してみようと思います。どうにも気になっていたのでこれですっきりしました。
わかり易い御説明ありがとうございました。

お礼日時:2005/03/25 11:15

?親(義理の親も含む)が抵抗出来ない立場にある子供に対して性的な行為を強要するのは異性であれ同性であれ十分虐待ですよ(セクシャル・アビューズといいます)。


日本では身体的暴力による虐待が問題になっても、まだこの問題についてはタブー視して目を背けていますが、海外では(実は日本でも)十分深刻な問題なんです。
ご自身に置き換えたらわかると思うのですが、むしろ、殴られるより、性的関係を強要される方が辛くて嫌な事で、「助けて欲しい」ですよね?
ジェルミも、「私の子供に変なことしないで」と言って庇って欲しかったのです。
実際のケースもこの漫画と同様、片親が庇ってくれることは少なく、見ないふりをしたり、むしろ子供を責めたり(お前が悪いとか言って)、手伝ったり(内田春菊さんの「ファザー・ファッカー」という小説にもそういうケースが出てきます)する事が多いので、特別サンドラが異常な親として描かれているわけではありません。
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。

私はサンドラがジェルミとグレッグの関係についてどこまで知っているのかという点において、ジェルミの助けてくれなかったという言葉に疑問を抱いていたのですが、やはりジェルミにとっては「息子が虐待されている」または「息子が夫とセックスしている」のどちらにしろ、母が何もしてくれなかったというのは裏切り以外の何物でもないようですね。

このようなケースがよくあることとは知りませんでした。参考になります。
どうもありがとうございました。

お礼日時:2005/03/25 11:24

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