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 東海大学安楽死事件にもあるように、安楽死は殺人に当たるのか否かと
問題になっていますが、安楽死はその要件を満たせば正当化事由として罪
を問われない。東海大学の事件では、その要件の、本人の承諾の部分が問
題となっていたが、この点にも関連して、患者の苦痛が見るに忍びないと
の理由で安楽死行為を行ったとの意見が見受けられる。そもそも、本人の
承諾が出来ない状況で、その苦痛が本人の承諾にも値するような場合、こ
れを承諾だと思い込み安楽死行為に着手した医師はやはり、安楽死要件を
満たしていないとの理由で殺人罪に問われるのでしょうか。

A 回答 (4件)

 議論を整理するポイントは、安楽死による刑事免責の根拠を違法性阻却に求めるのか、責任阻却に求めるのか、だと思います。



 違法性阻却に求めるならば、いわゆる誤想防衛の処理とパラレルに考えることができます。違法性判断を基礎づける事実の認識に関する判断を誤ったと考えて事実の錯誤(故意阻却)とみるのか、医師の意思は患者の死という構成要件的結果に向けられており、誤って許されると信じたにすぎないと考えて法律の錯誤(錯誤がやむを得なければ故意阻却)とみるのか、でしょうね。

 責任阻却(期待可能性の欠如)に求めるならば、期待可能性に関する錯誤の処理の問題です。要するに、期待可能性の有無の判断に吸収されてしまうことになりますね。

 具体的な事件に直面してお悩みなのではなくて、刑法の講義の課題でお悩みのようにお見受けしました(もし違っていたら、大変失礼いたしました。よろしければ、具体的事実関係を補足いただけませんでしょうか。)。
 私としては、ヒントをお示しするに止めたいと思います。がんばって勉強してくださいね。

この回答への補足

非常に丁寧な回答ありがとうございます。
実は、justinianiさんのおっしゃる通り刑法の講義の課題なんですが、
正直、刑法の勉強には頭を悩ませています。ここで、実際の問題なのですが、

  総合病院の准看護士であるAは末期肺癌患者Bの苦痛の訴えに同情し、
 むしろ楽に死なせてやりたいと考え、栄養補給の点滴液に病院薬局から
 持ち出した筋弛緩剤を混入させ、Bに投与したところ、まもなくBは死亡
 した。しかし、後に裁判所が証拠によって確認したところでは、Aの投与
 した筋弛緩剤の量は成人男性の致死量の半分にも及ばず、Bはもっぱら
 病状の進行による呼吸不全によるものであった。
  Aの罪責につき検討されたい。

 というものです。刑法の勉強の方もまだまだ浅く、なかなか立論に苦戦を
強いられています。

補足日時:2001/12/11 23:28
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 No.3の私の回答に対する補足について


 補足をいただいた設問(本問、といいます。)においては、「実行行為性(不能犯
と未遂犯の区別)」と「因果関係」が問題となります。

 刑事実体法(実質的意味における刑法)が処罰の対象とする行為の類型を「構成要
件」といいますが、構成要件は、行為の外形的側面に関する「客観的構成要件」と、
行為を制御する意思的側面に関する「主観的構成要件」に分類されます。
 このうち、前者の客観的構成要件は、さらに、「実行行為」、「結果」、「因果関
係」、「違法性」という要件から構成されています。

 ここで、「実行行為」とは、構成要件が予定する行為(処罰の対象となる行為)を
いいます。つまり、何らかの行為とこれに対応した犯罪「的」結果とが存在したとし
ても、その行為が「実行行為」でなければ、その行為を犯罪とは評価することができ
ず、不可罰となるわけです。
 例えば、「丑三つ時にわら人形に五寸釘を打ち込む」という行為と「被害者の死
亡」という結果とが存在したとしても、「丑三つ時にわら人形に五寸釘を打ち込む」
という行為が実行行為といえないかぎり、この行為と「被害者の死亡」との間に因果
関係があるかどうかを問うまでもなく、犯罪は成立しないのです。

 そこで、「実行行為」と「実行行為ではない行為」とをどのような基準で区別する
かが問題となります。
 この問題については、様々な見解がありますが、手がかりとなる判例として、空気
を静脈注射した事案である最高裁昭和37年3月23日判決を挙げておきます。刑法
総論の教科書でこの判例が引用されている箇所や、この判例の評釈(『判例マス
ター』等の判例検索システムをご活用ください。)とそこに引用されている文献など
をお読みになれば、問題状況がご理解いただけるのではないかと思います。

 本問の場合、仮にAが筋弛緩剤を注射した行為を「実行行為」と評価できたとし
て、次に、Aの注射行為とBの死亡との間に因果関係が存在したかどうかが問題とな
ります。
 この問題を検討する際には、刑法上の因果関係の大前提となる「条件関係」とは何
か、本問でAの注射行為とBの死亡との間に条件関係が認められるのか、さらに、
「因果関係の相当性」とは何か、本問でAの注射行為とBの死亡との間に因果関係の
相当性が認められるのか、といった点を考える必要があります。

 以上、ご参考になれば幸いです。
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 現在の日本で安楽死が認められるための要件は極めて厳格です。

有名な名古屋高裁昭和37年12月22日判決が安楽死が成立するための要件を示しており、のちの判例もこれに従っています。その要件とは、

 (1)その病気が現代の医学では治療困難であり、しかも死期が間近に迫っていること

 (2)患者の苦痛が甚だしく、見るに耐えないほどであること。

 (3)安楽死行為が専ら病者の苦痛緩和の目的で行われること

 (4)本人の真摯な嘱託・承諾があること

 (5)安楽死行為が医師の手によるものであることを原則とし、それ以外の場合は特殊な事情を必要とする

 (6)その安楽死行為の方法が倫理的に見ても妥当であること

この中の4番目の要件に「本人の真摯な嘱託・承諾があること」があり、これは口頭もしくは文書による明示的なものでなければなりません。たとえ病者が嘱託・承諾の意思を表せない状態にあったとしても、本人の承諾を得ずしてその者の命を奪えば、これは殺人罪が成立します。病者の苦しみが客観的に大きいという理由だけで勝手に病者を葬り去ることは許されません。あくまで本人が安楽死を望んだということが必要です。

 ただ、実際には安楽死行為を行った者に対して殺人罪が適用される場合には、可能な限りの減刑が加えられて、罪としては軽微なものになる場合がままあります。現在のところでは安楽死の要件が極めて厳しく、超法規的に成立し得る余地をわずかに留めるのみとなっています。
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この回答へのお礼

非常に丁寧な回答ありがとうございました。
人の意見を聞く事でまた自分の考えだけにとらわれず
改めて考えを広げる事ができました。
 安楽死という問題はまだまだ争われる点が多いですが
自分なりにももう一度、安楽死について考えてみたいと思います。

お礼日時:2001/12/14 07:40

数年前、国保京北病院(京都府)であった安楽死事件の場合は、医師が、(確か友人だった)末期がん患者に筋弛緩剤を投与して死亡させたとして書類送検されたようです。

その後筋弛緩剤の投与量が致死量より少ないとのことで不起訴になったようですが。

安楽死という問題ですので、要件のうち客観的に評価しにくい「苦痛」についての評価の点(つまり"その苦痛が本人の承諾にも値するような場合"であるかどうか)がどうしてもクリアになりにくいため、罪に問えるか問えないかという点はケースバイケースではないかと思います。
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