いま読んでいる科学啓蒙書”「ファインマン物理学を読む(量子力学と相対性理論を中心として)」竹内薫著、講談社サイエンティフィック”の中に、「なぜだか誰も知らないが、この宇宙は、背後に隠れた確率振幅φという複素数の世界によって動かされていて、われわれは、そこから計算される(実数)の確率Pしか観ることができない。」という著者の説明があります。そこでお願いと質問です。1)この意味するところを分かりやすい概念で説明していただきたいというお願い、2)今現在も「なぜだか誰も知らない」のでしょうか? なお複素数の基本的な知識はもっているつもりです。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
>背後に隠れた確率振幅φという複素数の世界によって動かされていて、われわれは、そこから計算される(実数)の確率Pしか観ることができない。
確率振幅が複素数であって、虚数部分は2乗しない
と実数にならない。人間が理解できるのは実数だけ。
(測定できるのも実数部分だけ)
だから人間に理解しやすいよう、確率振幅を
2乗して、確率予測を出すというものですが・・・
要は、量子力学が確率振幅の虚数部分が
物理学的に、具体的に何を表しているか
結論をだしていないということです。
背後に隠れているんじゃなくて、量子力学では
それが何か見つけ出せなかっただけです。
>なお複素数の基本的な知識はもっているつもりです。
1個のリンゴは想像できるが,i個のリンゴは
想像できない。でも計算に必要となると、i個のリンゴ
とは何だろうといったこと、つまり理解はできなが
何かあるということで、背後に隠された・・・など
という表現になっているだけで、これは量子力学の
不完全さを虚数(複素数)の代数的な意味だけに結び付けて
言っているんです。
虚数には2回かけるとー1になるという
代数的な意味と、複素数で表したときに
はっきり分かる幾何学的な意味があるんです。
(高校の数学では、複素平面、あるいは
ガウス平面という2次元空間が出てきた
と思います。)
基本的な性質は、複素数にすると、2つの
回転を同時に表すという性質があり、
(本のどこかに出ていると思いますが)
この性質が、複素数をオイラーの式で
表せるという関係に出ています。
オイラーの式を見てもらうと分かると
思いますが、SIN,COSといった2つの
三角関数の和になっています。
複素数で表すことができるということは、
相互に依存する2つの現象が関係して
いるということで、電圧と電流の
式に複素数が使えるのもこの性質を
利用したものです。
隠れた確率振幅などと言っているのは、
電圧計は持っているんで、電圧は測定
できるが、電流計がないので電流は直接は
測れないと言っているようなものです。
>2)今現在も「なぜだか誰も知らない」のでしょうか?
まだ結論は出ていないと思います。だた五里霧中と
いうわけではないと思います。ここ2、30年議論が
活発な、高次元の物理学が1つのカギだと思います。
だいたい、ほぼ同時代の相対性理論が時間軸まで
考えた4次元理論なのに、量子力学ではそこまで
計算に入れないで確率振幅を計算しているところから
考えても、片手落ちなんですよ。
(参考)
計算には出てくるが、実在が測定できなかった
というものは他にもあって、電磁気学の世界では、
ベクトルポテンシャルというのが有名です。
http://homepage3.nifty.com/iromono/PhysTips/what …
19世紀にジェームズ・クラーク・マックスウェル
という人が、現在電磁気学と呼ばれている
分野の基礎理論を作ったときに、電子の運動には
電気と磁気とベクトルポテンシャルが影響して
いるということを式で示したんです。
電界や磁界は簡単に測定できたんですが、
ベクトルポテンシャルがあっても測定が
非常に難しいので、これは実在しない計算上の
テクニックに過ぎないと言われていたんです。
今でも高校の物理では、電子の運動は
ローレンツ力のように
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%BC% …
電界や磁界の関係だけで説明しているのですが、
これは正確ではなく、もう1つベクトルポテンシャル
と呼ばれる(電界や磁界のように運動に影響を
及ぼす)場(空間に広がる物理量?)が存在
しているんです。
このベクトルポテンシャルの測定方法が
提案されました。(現在アハラノフ・ボーム効果と呼ばれています)
http://www.englink21.com/i-eng/column/tuika/cmig …
電界や磁界の影響を完全に
取り除き測定することが難しく、
実験が行われても不完全だと言われ
続けていたのですが、外村さんという
方がやられた実験で決着がつきました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8F% …
実に懇切丁寧なご説明をしていただき感謝しております。有難うございます。
> 要は、量子力学が確率振幅の虚数部分が物理学的に、具体的に何を表しているか結論をだしていないということです。背後に隠れているんじゃなくて、量子力学ではそれが何か見つけ出せなかっただけです。
--そういうことですか。
> 複素数で表すことができるということは、相互に依存する2つの現象が関係しているということで、
--波動と粒子性の二面性を指していることでしょうか?
> 相対性理論が時間軸まで考えた4次元理論なのに、量子力学ではそこまで計算に入れないで・・・
--「量子力学は時間の不可逆的な流れを説明できない」そうですが、それでは二つの理論が相容れないのは当然ですね。どちらかにあるいは両方に不備があるのでしょうか?
> 電子の運動はローレンツ力のように電界や磁界の関係だけで説明しているのですが、これは正確ではなく、もう1つベクトルポテンシャルと呼ばれる場が存在している。 このベクトルポテンシャルの測定方法が提案され(アハラノフ・ボーム効果)、外村さんの実験で決着がつきました。
--磁束量子を初めて可視化した方が、こんなに大事な実験の成功をおさめたとは知りませんでした。ベクトルポテンシャルは確かゲージ場とも呼ばれるものだと思いますが、この事実はその後どのような論争を引き起こしたのか興味深々です。
No.6
- 回答日時:
No1です。
たしかにその通りです。「量子力学での複素数の使用は本質的です」とは言いましたが、複素数を使わなくても量子力学の記述はできます。しかし、式は複雑(煩雑)になります。複素数を使うことにより、方程式を簡潔に表記できるようになります。そういう意味で、「量子力学での複素数の使用は本質的だ」という表現をさせて頂きました。文章で意を伝えることは本当に難しいことですね。数学に疎い人間に正しい情報を伝えるご苦労のほど、お察しいたします。ありがとうございました。いずれにせよ量子力学で表す宇宙はベールに包まれた部分が、いまだにあるようですね。
No.5
- 回答日時:
No3です。
位相の自由度の説明をします。どこまでご存知なのか知りませんので、とりあえず位相の説明から。波を扱う場合には、位相という概念が必要です。位相とは、波がどの程度ずれているか、ということです。同じ波を2つ足し合わせる場合、山と山、谷と谷が重なるように足し合わせると、2倍の振幅を持つ波になりますが、山と谷が重なるように足し合わせると、波が消えてしまいます。同じ波を足し合わせる場合でも、そのずれ方によって足し合わせたときの形が違ってきます。このずれを位相といいます。波を表す波動関数exp(ikx)に、大きさが1の複素数exp(iδ)を掛けると、位相がδだけずれた波exp(i(kx+δ))になります。波動関数に掛ける数が実数ですと大きさを変えるだけですが、複素数を掛けると、大きさと位相の両方を変えることができます。以上でご理解頂けたでしょうか。
ところで、私が「複素数が世界の本質に関係している」などと書いたせいで、質問者様にご迷惑をおかけしました。「複素数がこの世界の本質」とは私が勝手に言ったことです。失礼しました。No4の方の回答が正しいのかもしれません。「きれいかどうか」は別として、本質とまでは言えないのでしょう。前にも書いたとおり、本質は何だか分からないけど、複素数を使った波動関数を使うとうまく記述できる、ということだと理解しております。
早速のご教示有難うございました。不勉強のため複素数exp(iδ)の概念が分からずお手数をおかけしました。「複素数がこの世界の本質」という言い方は、科学啓蒙書で散見します。ミステリアスな響きがあるので惹かれますが、オフサイドをしないように見守りたいと思います。
No.4
- 回答日時:
極端なことを言っちゃうと, 物理 (に限らず自然科学) ってのは「なぜ (why)」じゃなくって「どのようにして (how)」を考える学問だからねぇ. どこまでいっても「なぜ」は残っちゃうんじゃないかなぁ.
ついでにいうと, 量子力学で複素数を使うのは別に本質でもなんでもなくって「その方がきれいだから」でしかないはず. 数学的には複素数と歪対称な 2次実行列は等価だし, 微分方程式の代わりに行列力学で書いてもいいわけだし.
この回答への補足
確かに「Why」となると哲学の領域になってしまうかもしれないけれど、「How」は限りなく「Why」に近づくずくためのもので、最終的にはその理(ことわり)が意味するものは何かを知りたいものです。
数学に関しては(も)全くの素人なので的外れな見方かもしれませんが、昔の数学はどちらかというと物理学をはじめとする科学の道具的な存在であったものが、現代の数学はそれ自体がものの真実(理)を現し、それ故に応用としての科学が後からついてゆく傾向があるのではないでしょうか? そういう意味では「単にきれいだとか、利便性が高いから」と切り捨てることは難ずかしい気がします。
有難うございます。「歪対称な 2次実行列」は虚数を含まないということでしょうか...。補足で「切り捨てる」なぞと勝手なことばを使い失礼いたしました。
No.3
- 回答日時:
1)ここで言っているφは波動関数のことだと思われますが、これは値として複素数をとります。
波動関数の絶対値の2乗|φ|^2は実数になりますが、これは位置の確率密度を表します。つまり、ある位置に粒子が存在する確率に比例します。なお、φを確率振幅と言うのは正確ではなく、上に述べたように、波動関数自体は、直接は確率に対応しておりません。「背後に隠れた確率振幅φという複素数の世界によって動かされていて」の「背後に隠れた」とは、それが直接観測されないことを言いたいのだと思われますが、波動関数φは、人間がこの世界を記述するための方法であって、実在している物ではありません。つまり、本質は何だかよく分からないが、複素数を使った波動関数と言う物を使うと、現象をうまく記述できる、というものです。波動関数ではなく、ベクトルを使って状態を表す方法もあります。
2)複素数がこの世界の本質に関係している点を気にされているのでしょうか。だとすると、そういう物だとしか言いようがありません。実際に観測される量が実数であることの方が不思議なのかもしれません。量子力学で使われる量は複素数なのですが、現実と整合を取るために、観測される物理量の固有値が実数になるような制限が加えられます。
量子力学で複素数が必須なのは、次のような例で説明されます。一般の物理状態は、固有状態の重ね合わせで表されます。例えば、2つの固有状態|x>と|y>の重ね合わせを考えます。重ねあわされた状態|ψ>は|x>と|y>の1次結合です。
|ψ>=a|x>+b|y>
|ψ>は、その大きさが違っても同じ物理状態を表しますので、異なる物理状態は、aとbの比によって決まります(ベクトルの向きによって状態が区別されるということです)。もしaとbが実数であれば、この重ね合わせの自由度は1つしかありませんが、現実には、位相の自由度がありますので、それでは自由度が不足します。したがってaとbは複素数である必要があります。
ご丁寧な回答をいただき有難うございます。
「実際に観測される量が実数であることの方が不思議なのかもしれません。」
--含蓄のあることばですね。
「現実には、位相の自由度がありますので、それでは自由度が不足します。したがってaとbは複素数である必要があります。」
--私の理解力が追いつけません。ブレークダウンして教えていただければ幸いです。
No.1
- 回答日時:
「背後に隠れた確率振幅φという複素数の世界」は多分量子力学の、波動関数φのことだと思います。
波動関数(波動ベクトル)は状態をあらわす量ですが、これは一般的に複素数です。確率を導くためには、波動関数(波動ベクトル)の内積をとって実数にします。波動関数にかぎらず、量子力学的物理量の作用素は複素数をつかって表現されていますが、その固有値は実数です。そういう意味で、目に見える世界(固有値)は実数ですが、背後にある物理法則は複素数の世界です。電気工学でも複素数が用いられますが、これは応用上便利なために使用されます。これとは異なり、量子力学での複素数の使用は本質的です。有難うございます。「波動関数を構成する複素数の世界が宇宙の本質」ということは、極言すれば「宇宙の本質は波動だ」ということでしょうか。30年近い昔、広中平祐氏が<若い日本人のための十二章>と題する新聞紙上で「われわれ数学者は、実数の世界が、虚数を含んだ複素数の世界の極めて小さい一部であることを知っている。」といわれていました。われわれが知り得るのは、宇宙という未知の海原で水面上にでた実数という名の極めて小さな部分ということでしょうか...。
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