ガスタービンについて質問です。
ある本にガスタービンのサイクル図(P-V図)が載っています。
ガスタービンは断熱圧縮→等圧加熱→断熱膨張→等圧放熱のサイクルですが図には、
(V1、P1)→(V2a、P2)の曲線A(「断熱圧縮」)と
(V1、P1)→(V2b、P2)の曲線B(「実際」)が書いてあります。ただし、V2a<V2bとなっています。
説明によると
「図でタービンの出力は理想的には1から2aの曲線Aの経路になるが、実際には不加逆損失により、エントロピが増大し1から2bの曲線Bの経路になります。 理想的にはh1-h2aの出力が実際にはh1-h2bしかないことになります。(hはエンタルピ)」
とあります。P-V図上で工業仕事= ∫VdPを考えると曲線のP軸に沿った積分となるので、1から2bの経路のほうが1から2aの経路よりグラフ上では面積が大きくなり(曲線Aより曲線Bの方が外側になっているから)、実際の経路の方が理想的な経路より工業仕事即ちタービン出力が大きいように思えます。
どこがおかしいのでしょうか?
A 回答 (4件)
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No.4
- 回答日時:
No1 ency です。
すみません。。。>yukkurineさん。
No2 ElectricGamoさんのおっしゃるとおりです。
断熱過程からずれている理由は、発熱によるものです。
# 「工業仕事」のほうにとらわれすぎでしたね。。。
# っていうか、「不可逆損失」って書いてあるところで気づくべきでしたね。
No3 の最後の式「ΔH = Q + ∫VdP=CpΔT」について、勝手ながら補足させていただきますとこんな感じでしょうか。
エンタルピーのもともとの定義は
H = U + PV
ですよね?
また、理想気体であれば
PV = nRT
が成り立ちます。
つまり、
H = U + nRT
⇒ ΔH = ΔU + nRΔT (R=const に注意してくださいね)
また、ΔU = CvΔT ですから
ΔH = (Cv+nR)ΔT = CpΔT (Cp=Cv+nR)
となるわけです。
No.3
- 回答日時:
>これは一般的に成り立つことなのでしょうか?
>一般的にはエンタルピは温度のみの関数とはかぎらなのでは。
熱力学的な立場から言えばおっしゃるとおりです。エンタルピなどの状態量を決めるには、温度の他に圧力とか体積とか2つの状態量が必要ですので、一般的には温度のみの関数ではありません。
ただし、今回のご質問では、ガスタービンのP-V図での話であって、変化後の圧力が断熱圧縮と実際とで同じ(P=P2)とされています。二つのうち一つの変数は決まっているので、残りの変数である“温度のみ”で決まると書きました。
それから、湿り蒸気などを除いて、ガスタービンで扱うような乾いたガスのエンタルピは、ほとんど温度のみで決まるので、温度での議論でまずは十分です。圧力依存性を入れて厳密にやっても結果は大きくは異なりません。もっとも、これは熱力学というよりも立場の違いかも知れません。温度での議論で自分が欲しい精度があれば十分であるし、そうでなければより厳密にやればいいだけです。
そのあたりの考え方は、気体のモデル化にも反映し、例えば、気体をシンプルな完全ガスとしてモデル化するのであれば、エンタルピは温度のみの関数になり、実在気体モデルで扱うのであれば、温度と圧力の関数になります。それぞれの違いについて調べてみると面白いかも知れません。
>話を戻して膨張仕事の場合にΔH = Q + ∫VdPを考えます。
>実際には損失による発熱があるのでQ < 0になり、∫VdPが断熱過程の時の値よりも大きくても小さくてもΔH(=タービン出力)が小さくなる可能性があると思われます。
>となると、P-V図で実際の過程が断熱過程よりも外側に位置することは常に成り立つことなのでしょうか?
結論から言うと、断熱過程よりも左側に位置するということは、エントロピが減少することを意味しておりありえません。また、一連の議論は、Q と ∫VdP で議論するよりも定圧比熱と温度差を持ち出して、
ΔH = Q + ∫VdP=CpΔT
から考えた方が理解しやすいかもしれませんね。完全ガスのモデルではCpは定数ですので、タービン仕事は温度差に比例します。
この回答への補足
回答ありがとうございます。
>>結論から言うと、断熱過程よりも左側に位置すると いうことは、エントロピが減少することを意味して おりありえません。
それはなぜですか?エントロピの定義 ΔS = Q/T から証明可能なことですか?
完全ガスであっても不可逆損失は起こりえるのですか?不可逆損失って摩擦熱をイメージするのですが正しいのでしょうか。
そもそも完全ガスという言葉は良く知りませんでしたが、完全ガス=理想気体と同じことですか?
つまり理想気体の状態方程式が成り立ってエンタルピや内部エネルギが温度のみの関数かつ比熱は定数、という理解でいいでしょうか?
いろいろと質問があってすいません。
No.2
- 回答日時:
圧縮仕事も膨張仕事も、その前後のエンタルピ差から計算します。
理想的な場合には、No.1の方の式ΔH = Q + ∫VdP
において、発熱がない(Q=0)と考えて、タービン出力=工業仕事となるのですが、実際には損失による発熱がある(Q≠0)ので、タービン仕事と工業仕事は一致しません。ですので、工業仕事で実際の場合を議論しても意味がないのです。
エンタルピの差に戻って考えるとすると、実際の変化では理想的な場合よりも体積が大きくなってるということは(圧力は一緒なので)温度が上昇してることになります。つまり、変化後の温度、すなわちエンタルピが大きくなるので、圧縮仕事では増加、膨張仕事では減少します。
回答ありがとうございます。
発熱がある(Q≠0)場合は、タービン仕事と工業仕事は一致しないのですね。
工業仕事と言う割には実際の場面では使えないとは…
>>つまり、変化後の温度、すなわちエンタルピが大 きくなる
これは一般的に成り立つことなのでしょうか?
一般的にはエンタルピは温度のみの関数とはかぎらなのでは。
話を戻して膨張仕事の場合にΔH = Q + ∫VdP
を考えます。
実際には損失による発熱があるのでQ < 0になり、∫VdPが断熱過程の時の値よりも大きくても小さくてもΔH(=タービン出力)が小さくなる可能性があると思われます。
となると、P-V図で実際の過程が断熱過程よりも外側に位置することは常に成り立つことなのでしょうか?
No.1
- 回答日時:
結論から言うと、符号が逆なんですね。
まず、エンタルピー変化の式
ΔH = Q + ∫VdP
の式で断熱圧縮 Q=0 として
ΔH = ∫VdP
となるので,エンタルピー変化と工業仕事が等価であると考えた、ということで良いですか?
次のステップとして、説明文中で「h1-h2a」または「h1-h2b」となっている点に注目してみてください。
通常変化を表す場合には「変化後-変化前」という差を取りますよね。
この場合であれば「h2a-h1」とか「h2b-h1」となるはずです。
しかし今回の場合、引き算の順序が逆になっていますね。
では、なぜ逆にしているのか。。。
上式 ΔH の意味するものと、タービン出力の関係についてもう一度よく考えてみてください。
上式 ΔH は「タービンのエンタルピー増分」であり「タービン出力」ではありませんよね。
タービン出力はタービンのエンタルピー減少分に相当しますから「-ΔH」となるんです。
# 説明文中のエンタルピー変化の部分も「-(h2a-h1)」等と書いたほうがより
# 正しいのですが、これはわかりきったことという前提で「h1-h2a」としている
# のでしょう。
結論としては、タービン出力は「-ΔH = -∫VdP」で計算しなければいけないので、絶対値の大きなほうが値としては小さくなる、というわけです。
サイクルの計算では、変化の向きと符号について注意するようにしてください。
こんな感じでいかがでしょうか。
さっそくの回答ありがとうございます。
>>タービン出力は「-ΔH = -∫VdP」で計算しなければいけない
すいません。それは分かっていたつもりです。
積分区間をキチンと書かなかったので誤解させてしまいました。
それに曲線Aは(「断熱圧縮」)ではなく(「断熱膨張」)と書くべきでした。(タービンを回して出力を得ている過程なので)
(V1、P1)→(V2a、P2)の曲線A(「断熱膨張」)過程ではタービン出力は
-ΔH = -∫[P1,P2]VdP = ∫[P2,P1]VdP
P2 < P1 なのでこれは正の値です。
(V1、P1)→(V2b、P2)の曲線B(「実際」)過程も
タービン出力は同様に∫[P2,P1]VdPと表せるから
結局V =V(P)が大きい方がタービン出力が大きい、
ということになります。
図ではV2a<V2bとなっていたので
実際の経路の方が理想的な経路より工業仕事即ちタービン出力が大きいように思えたのです。
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