とある講義で「共犯と身分」について勉強しました。
しかし、家に帰り,復習をしようと条文をよく読みましたところ、
「講師が書かれた板書」と「条文」とが、うまく噛み合っていないように思えてなりません。
ぜひ具体的に教えてください。
先生の板書;
『 共犯と身分(65条)
構成的身分犯・・・65条1項のこと → 身分ある人がやって、初めて犯罪となる。
加減的身分犯・・・65条2項のこと → 身分ないものがやって、犯罪となる。 』
条文;(刑法65条)
『 (身分犯の共犯)
第1項・・・犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
第2項・・・身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。』
『先生の板書,「身分ある人がやって、初めて犯罪となる。」
「身分ないものがやって、犯罪となる。」 』と
『条文の解釈』を具体的に教えてください。
ワガママで申し訳ないのですが、具体的に例を挙げていただけたら助かります。
どうかよろしくお願い致します。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
先生が板書されたのは,正犯の行為が刑法65条の第1項,第2項それぞれに当てはまるのはどのような場合か,ということでしょう.
つまり,
刑法65条第1項
犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
のうち,
『犯人の身分によって構成すべき犯罪行為』
というのはどのような犯罪行為のことかというと,先生の板書したように,
『身分ある人がやって、初めて犯罪となる』ような犯罪行為(構成的身分犯)なのです.
構成的身分犯の例としては,収賄罪(刑法197条)があります.
刑法197条第1項
公務員又は仲裁人が,その職務に関し,賄賂を収受し,又はその要求若しくは約束をしたときは,五年以下の懲役に処する.(略)
ここでいう『公務員又は仲裁人』というのが身分であり,公務員でも仲裁人でもない人が賄賂を受け取っても犯罪にはなりません.『公務員又は仲裁人』という身分のある人がやって,初めて犯罪になるのです.
そして,この構成的身分犯に,身分のない者が加功したときに,その身分のない者も共犯とすると規定したのが,刑法68条1項なのです.
たとえば,国会議員(公務員)が賄賂を受け取るのを,その妻(公務員ではない)が手伝ったとしたら,その妻は公務員ではないのだから一見収賄罪の共犯にはならないことになりそうですが,そうではなく,その妻は65条1項により収賄罪の共犯になる,ということです.
刑法65条第2項
身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
これも同じように,
『身分によって特に刑の軽重がある』ような犯罪とはどのようなものか,というと,先生の板書のように,『身分ないものがやって、犯罪となる』ような犯罪(加減的身分犯)だということです.
加減的身分犯の例としては,常習賭博罪(186条)があります.
刑法186条第1項
常習として賭博をした者は,三年以下の懲役に処する.
ここでは『常習として』というのが身分です.
先の収賄罪では『公務員又は仲裁人』以外の者がやっても犯罪にはなりませんでしたが,
賭博罪は『常習として』ではなく行った者も,刑法185条によって処罰されます.
ここが,構成的身分犯と加減的身分犯の違いです.
刑法185条
賭博をした者は,五十万円以下の罰金又は科料に処する.(略)
そして,この加減的身分犯に,身分のないものが加功したときにどうなるかというと,その身分のない者には,65条2項により通常の刑を科する,というわけです.
たとえば,賭博の常習者が賭博をするのを手伝った者(常習者ではない)は,常習賭博罪(186条)の共犯となるのではなくて,賭博罪(185条)の共犯となります.
つたない説明で申し訳ありませんが,分かりましたでしょうか?
No.4
- 回答日時:
あの、「身分ないものがやって、犯罪となる」というメモは、「身分がないものがやって『も』、犯罪となる」の書き間違いではないでしょうか。
「構成的身分犯」「加減的身分犯」という概念を立てる実益は、65条を普通に読むと、「犯人の身分によって構成すべき犯罪行為(1項)」=「身分によって特に刑の軽重があるとき(2項)」とも読め、1項と2項が矛盾してしまうので、
(1)「犯人の身分によって構成すべき犯罪行為(1項)」=「身分ある人がやって、初めて犯罪となる犯罪行為(構成的身分犯)」と解釈して、
→65条1項:「『身分ある人がやって、初めて犯罪となる犯罪行為(構成的身分犯)』に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。」
(2)「身分によって特に刑の軽重があるとき(2項)」=「身分ないものがやっても、犯罪となるとき(加減的身分犯)」と解釈して、
→65条2項:「『身分ないものがやっても、犯罪となるとき(加減的身分犯)』は、身分のない者には通常の刑を科する。」
と、理解すれば一貫するということにあります。
実例については、とりあえず#3の方の第三段落の説明が簡明かと思います。
ただ、ここの解釈は共犯のその他の議論や各論の問題とも絡むので、とりあえずの理解のための実例ではあります。
この回答への補足
sukemasa様;
補足欄をお借りします。
No.4以下の方々へ;
2月4日,お返事を拝見致しましたが、本日 体調不良のため、後日お返事+ポイント発行をさせていただきます。
以後またお世話になりますときは、よろしくお願い致します。
お返事をいただきました、各氏へ;
大変申し訳なのですが、しばらく療養することになりました。
体調不良で、お返事を書く元気がありません。
またいつか、お会いできることを願って・・・。
No.3
- 回答日時:
身分犯には、(1)構成的身分犯(真正身分犯)、(2)加減的身分犯(不真正身分犯)、(3)消極的身分犯の3つに分けられます。
先生の板書で、「身分ある人がやって、初めて犯罪となる」は(1)の構成的身分犯を指すものと思われます。そして、「身分ないものがやって、犯罪となる。」は(2)の加減的身分犯を指すものと思われますが、少し言葉足らずでしょう。加減的身分犯とは、"身分がなくても犯罪となるが、一定の身分があるため刑が加減される犯罪"のことを言います(たとえば、刑法218条保護責任者遺棄罪は、同法217条遺棄罪の加重類型であり、保護責任者という身分に対して刑を重く科する趣旨の犯罪です)。ここまでは解釈として問題ないでしょう。そして、刑法65条1項が構成的身分について定めたものであり、同条2項が加減的身分犯について定めたものであることには争いがありません(tibitibiさんが受講された講義が、65条の具体的な解釈まで立ち入るものでなければ、ここまでの説明で65条の規定の概観は把握できたことになりますが、共犯との関わりを考えるならば、65条の詳細な解釈は欠かせません)。しかし、身分犯と共犯との関係をどう捉えるかについては、65条の解釈はいくつかの学説に分かれますが、ここでは学説の詳細な検討は省かせていただきます。
真正身分犯(構成的身分犯)において、身分のない者が身分のある者に加担して犯罪を行ったときは、65条1項により、身分がなくとも共犯として処罰されます(公務員でない者が公務員に加担して賄賂を収賄すれば、公務員でなくとも収賄罪の共犯として罰せられます)。なお、"共犯"は、共同正犯、教唆犯および幇助犯を指すとする解釈が通説・判例の立場です。一方、不真正身分犯(加減的身分犯)において、身分のない者が身分のある者に加担して犯罪を行ったときは、65条2項により、通常の刑が科せられます(業務上の占有者でない占有者が業務上の占有者に加担して業務上の横領を行えば、後者には業務上横領罪が成立しますが、後者には単純横領罪が成立します)。
先生の板書は、身分犯が65条の解釈に関わってくると述べているだけで、共犯についての記述が欠落しています。黒板に書かずに口頭で説明したか、あるいは自分で学習しなさいということでしょうか。刑法総論の教科書を見ながらご自分で復習された方が良いかもしれませんね。
No.2
- 回答日時:
こんにちは。
前回の質問にもお答えしましたが…もしかして板書やメモに夢中になりすぎてませんか?まあ、それは質問とは関係ないことですので回答に入ります。
刑法第65条1項:身分ある人がやってはじめて犯罪となる。
この意味ですが、具体例を挙げた方が早いでしょう。
197条に規定する収賄罪や177条に規定する強姦罪などがよく教材に使用されます。
ここで177条の強姦罪ですが、構成要件として性交、つまり男性器の挿入が必要です。女性(A)が女性(B)を拉致して、さんざん楽しんだとしてもAが女性という身分である限り男性器の挿入という行為は不可能なことでありますので強姦罪とはなり得ません。
刑法第177条とは男性の身分がある人にしかできないのです。
(先生の板書はここで止まっているのでしょう)
ところが、判例にありますが(最判昭40年3月30日)女性(A)においても男性と共謀して、男性に女性(B)を強姦させた場合には共同正犯として65条1項の規定によりAにも強姦罪が適用されます。
65条2項の例としては、218条の保護責任者遺棄罪と217条の単純遺棄罪を比較するればわかりやすいのではないでしょうか。
つまり、基本的に犯罪でありますが、身分(この場合は子どもに対する母親など)によって罪の重軽が決まるというものであります。
先生の板書の「身分ないものがやって、犯罪となる。」に加えておそらく口答で、身分のあるものはさらに重い刑となる、などの解説があったのではないでしょうか。
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