まず、この質問はhttp://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?qid=218232を踏まえたものです。すぐに締切りになってしまったため、あらためて自分の質問として呈上させてもらいます(質問者のnuoh氏、回答者のminatouri、trunkman両氏には失礼になりますが、他意はありません。かねてよりの私の疑問でもあるので、どうかご容赦ください)
「ようけ」という言葉の語源はなんでしょうか。「余計」かとも思うのですが、考えていくとあまり納得できないのです。
というのは、
(1)「余計」は江戸時代から使われだした割と新しい言葉です。一方の「ようけ」は方言ですから始まりははっきりしませんが、ようけ、ようけい、ようき、などという地方の広がりから見て、それよりは古いように思えます。
(2)「ようけ」は純粋に、沢山、という多さを表すだけですが、「余計」は多すぎて不要だ、という否定的なニュアンスがありますから、意味合いがかなり違います。
なら何なのか? と言われると私もわからないので、それをお尋ねしたいと思うのです。
私なりには、古語の「や」に関係あるのでは、という気がします(あくまで勘、ですが)。
「や」は「弥(やい)」の略で、「沢山」という意味を表しますよね。
(八雲、八入、八尺、八十島、八重垣、八百万…)
あて推量ですが、「沢山」「長期間」を意味する「やっと」と似た語源で、「八百気(やほけ)」とかいうような言葉がもとではないだろうか…などと考えているのですが(自信全くなし)。
是非ご専門の方に教えて頂きたいと思います。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
『日本国語大辞典 第二版』で「ようけ」を引くと、「→ようけい」とあり、その「ようけい」を引くと、「余計(よけい)の変化した語」と書かれています。
意味は「たくさんなさま」。「よけい(余計)」を引くと、「『余慶』から転じた語。『計』は後に当てたもの」とあり、第1の意味は「物の余ること。一定数量より多くあること」となっています。用例は1563年『玉塵抄』「典座がかいをにてくわせたぞ、かいのよけいあるを僧衆まらせたぞ」というのが挙げられています。否定的なニュアンスの「必要の度を越えて無益であること。不必要であること」の意味は3番目。用例は1869年の加藤弘之の文章から「いはば余計なことでござる」というものが最古。この辞書ではわかっている限りで文献初出の用例を挙げていますから、否定的な意味を持つようになったのは比較的新しい変化だと言えそうです。
純粋にこれだけの材料から推測するに、「ようけ」は、「余慶」から「余計」の意味が生じたあと、ただし「余分で不必要」の意味が生じる前、に方言として広まったものなのではないでしょうか。つまり江戸時代初期以降くらいの時期になります。
江戸時代初期に成立した言葉が西日本一帯に広まるかどうかについては、言葉そのものの類例は今思いつきませんが、例えば、近世小歌調と呼ばれる歌謡の形式(七七七五型。都都逸の形ですね)がその名のとおり近世になって発生し、18世紀中頃の全国民謡集『山家鳥虫歌』ではすでにほとんどの収録歌がその形式になっている、ということが参考になるかもしれません。現在の有名な民謡の多くもこの形式にのっとった形になっています。歌(の形式)がそれくらいのスピードで広まるなら、歌に乗せられる言葉だって同じ速さで広まるでしょう。
関西弁で「ようけ」という場合、単に「多い」というよりも、「予想以上に(あるいは通常よりも)たくさん」というニュアンスが入っているように思えます(私の個人的感覚かもしれませんが)。この点からも、「ようけ」が「余慶、余計」の末裔であるという説に、私は与したいと思います。
この回答への補足
ご丁寧な回答をありがとうございました。
「余計」を吉田金彦「語源辞典」(東京堂出版)でみると、「江戸時代から使われ始めた和製漢語」とあります。Aliasさんの引用例でいうと「余慶」(これは仏教語、ですかね)が「余計」に変わったことを指しているのでしょうね。確かに「余慶」は否定的ニュアンスでなく逆に結構だというニュアンスですね。「ようけ」はその変化の前に分化して一般に広まった、ということですね…。
私がこの言葉に興味があるのは、私が少年時代を過ごした地域では、「よけ」(強調する時は「ようけ」)、「やっと」、それに「ぎょうさん」が全て「たくさん」という同じニュアンスで使われていたからなのです。前2つの「や行つながり」が私の珍説の発想のもとだったのですが。
Aliasさんはこの「やっと」の語源については何かご存知ですか?
私の知っている意味は「たくさん」ですが、「長い期間」という意味で使う地方も多いようですね。小学館日本国語大辞典(全20巻)には、「量が多い様を表す語、たくさん」とあり、方言として「えっと、やーっと、やっとー」などが挙げられていました。ここから「よーっと」「ようけ」への道が開けそうな(笑)誘惑にかられるのですが。
No.5
- 回答日時:
専門家ではありませんので突っ込まれても困るのですが・・・
私の田舎(九州東部)では「え言わん」「よう言わん」が並存しています。年寄りは皆、え言わん、え行かんというので、こちらが古いのでしょう。えもいわれぬ美しさの「え」に通じる打消しの「え」だと思います。
手元の古語辞典(三省堂 例解古語辞典)の説明:
え(副)(打消しを伴って全体で)できない、よくも・・・しない
とあり、更に、関西などで、よう来れん、よう言わんという「よう」にあたる言い方と説明が加えられています。これだけでは、「よく」から転じて「よう」になったのかどういか分かりません。しかし、答えられない時に必ず「よく」をつける必然性はない(yes,noで十分なときもある)のでよく→よう説にも疑問がのこります。これ以上はえ答えんので降ります。
何度もお付き合いいただきました。
「余計な質問にまでようけ答えてもろて、ようお礼言わんわ…。」という気持ちです(とてもお礼しきれない、という意味ですよ、蛇足ですが(笑)。
また出直しますね。その時にはよろしくお願いします。
No.4
- 回答日時:
補足について。
予想以上に多いことのニュアンスの例:
*ようけとれたな(野山に行っての収穫、平均より少ない収穫の時はいわない)
*お前ようけとったな(わけまえ。一人前分より多く取ったとき)
*ようけとるなよ(余分にとるな、必用なだけ或いは分け前分だけ取れ)
言葉は長い間に原語がもつ意味の中から自分の生活スタイルに合うものが取捨選択され、広く伝播し時間の経過で変化すると思います。古語の打消しの「え」が「え言わん」「よう言わん」「えせん」「ようせん」「え行かん」「よう行かん」などと方言で特定の表現だけに使われるように、ようけも伝播した各地からニュアンスを調べれば「よけい」と関係があるかどうか、もっと明らかになるような気がします。自分の故郷だけにこだわらない方がいいでしょう。
この回答への補足
再度ご丁寧にありがとうございました。
おっしゃることはよくわかります。どうしても自分の言葉がそのまま世界になるのが方言の常ですね(笑)。
ところで脇にそれますが、「よう言わん」の「よう」は、わたしは勝手に「能く言わぬ」の「よく」が転じたものと思いこんでいたのですが…。「え言わぬ」だとすると「ゑ言わぬ」→「ゑう言わん」ということでしょうか(話がそれて恐縮ですが)
No.3
- 回答日時:
ようけがよけい(余計)よりどの位古い言葉なのかわからないままの推量になりますが、aliasさんの説も参考にしながら語源は余計ではないかと思います。
ようけに含まれる「思ったより多い」ニュアンスは「余計」に結びつきます。余計の語義が
1)物が余ること 2)その他 3)無駄無益(余計物、者)4)ますます(余計反発する)など幅広いことから余計と漢字で書かれる事にこだわらず考えた方がいいのではないかと思います。
この回答への補足
どうもありがとうございました。
確かに「余計」がもとである可能性は極めて高いですね。
ただ、どうしてもひっかかるのは、私の中では「よけ」「ようけ」は単に「多い」「たくさん」であって、予想以上に、といった量の評価につながる意味は全くないんですよね。
例えば、「もっとようけゆうたれ」=喧嘩をはやしたてて、「もっとたくさんいってやれ」。また「よけはあげへんさかい、ちょっとだけやで」=たくさんはあげないから」といった具合です。
「余計」で納得できればそれですむのですが…。うーん。
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