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  パン一斤は、六百グラムではなく、「三百四十グラム以上」と決められたとの記事を見ました。例へば、「http://www.maff.go.jp/soshiki/syokuhin/heya/qa/a …」などの説明では、「公正競争規約」といふ規定ださうですが、これを決めるときに、尺貫法との矛盾や、古來からの「一斤の概念」からの誤解などは議論されたのでせうか。

A 回答 (2件)

「斤」は、大宝令に定められた唐代の量目(唐目)とは別に、古くから商品の取引単位として商品の種類ごとに基準量が決められ、それぞれ同じ「斤」の呼称が用いられていました。


  十六匁斤  薬種用
  六〇匁斤  山椒用
  一〇〇匁斤 紅花用
  一三〇匁斤 五倍子(木附子)用
  一八〇匁斤 薬種用(大和目)
  二〇〇匁斤 茶用(宇治目)
  二一〇匁斤 沈香用
  二三〇匁斤 薬種用(白目、輪目)
  二五〇匁斤 諸国から大坂へ出す薬種用(山目、里目)
  三二〇匁斤 硫黄用
  六〇〇匁斤 綿花用   等々。

これらの「斤」は、普遍的な質量単位ではなく、各商品の建値単位、荷姿・包装単位といえます。

明治24年の度量衡法で、質量単位の「斤」は大宝令と同じ百六十匁(600グラム)と規定されましたが、これらの「斤」の慣習は旧来のまま残りました。質量単位としての「斤」を使う機会は(匁に比べて)多くなかったようです。単純な十進法で扱えなかったことが一因ということです。

食パンの「斤」は、英国ポンドの「听」(英斤)と混同されたたものです。明治初期、焼き型に生地を3つに分けて焼いた食パンを「三つ山」「三本斤」と呼んでいた由。その1山・1斤は英ポンドの約450グラムですから、当初から「160匁斤」とは異なっていたわけです。
当初1山1斤だった食パンも、大正・昭和にかけて大中小の焼き型が登場するなど、一時期は1斤270グラム程度までに小型化していました。現在は公取委が認定した食パン業界の自主基準により、1斤は340グラム以上と決められています。

「包装食パンの表示に関する公正競争規約」
(公取委認定:平成12年3月29日、告示:平成12年3月31日)
http://www.jfftc.org/cgi-bin/data/bunsyo/A-30.pdf
商取引や証明にメートル法が義務付けられている現在に、食パンの「斤」表示が公認されているのは、尺貫法の「斤」とは目的も意味も異なるという解釈でしょう。古くからある各種の「斤」と同様、食パン「1山」「1本」といった、単なる「取引単位」です。
度量衡法、計量法の適用範囲外で特定の「取引単位」を使用することは、何の問題もないはずです。

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『度量衡法』 明治24年(1891) 3月24日
第一条 度量ハ尺衡ハ貫ヲ以テ基本トス
第二条 度量衡ノ原器ハ白金イリジウム合金製ノ捧及分銅トス其ノ捧ノ面ニ記シタル標線間ノ摂氏〇・一五度ニ於ケル長サ三十三分ノ十ヲ尺トシ分銅ノ質量四分ノ十五ヲ貫トス
第三条 度量衡ノ名称命位ヲ定ムルコト左ノ如シ但シ当事者ノ意思取引ノ性質又ハ土地ノ慣習ニ依リ他ノ命位ヲ用ルコトヲ妨ケス
 度  <略>
 地積 <略>
 量  <略>
 衡
  毛 貫ノ百万分ノ一
  厘 貫ノ十万分ノ一
  分 貫ノ万分ノ一
  匁 貫ノ千分ノ一
  貫
  斤 百六十匁
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この旧「度量衡法」は大正10年に改正され、メートル法への移行が決められましたが、移行措置として一定期間の尺貫法の使用が認められ、その後何度か延期されています。戦後昭和26年の「計量法」でも移行期間が引き続き認められ、全面実施されたのは昭和34年1月1日です。
それまでは「貫」や「匁」の秤量での売買が公認されていたわけです。土地建物や建具の取引分野では、昭和41年3月31日まで尺貫法の利用が認められていました。大正10年のメートル移行から半世紀近い歳月を要したことになります。
ちなみに、真珠取引の分野での「匁」については、現行「計量法」に基づく「計量単位令」でも公認されており、国際取引でも「momme」(単位記号:mom)が使われています。
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この回答へのお礼

  詳しくて判りやすい解説です。ありがたうございました。

お礼日時:2006/07/03 10:01

「公正競争規約」とは、過大な景品つき販売や不当な表示を規制する「不当景品類及び不当表示防止法」に基づいて、事業者や事業者団体が、公正取引委員会の認定を受けて自主的に定めたルールです。



規約に参加する事業者が、必ず表示しなければならない事項は以下の通りです。

表示事項と表示例
(1)品名:食パン
(2)原材料名:「小麦粉、砂糖、植物性油脂、イースト、食塩」など、製品に占める重量割合の多いものから順に表示。
(3)内容量:「6枚」「8枚」など、枚数で表示。
(4)消費期限: 「01.12.1」または「13.12.1」などと表示。
(5)保存方法:「直射日光及び高温多湿を避けて保存してください」など、製品の特性に従って表示。
(6)原産国名: 輸入品のみ表示。国産品は表示を省略することができます。
(7)事業者の氏名又は名称及び住所: ○ ○パン株式会社○ ○県△△市××1-23

以上

包装食パンの表示に関する公正競争規約では、「斤」については、保証内容重量が340g以上のものは「1斤」と表示することができるとされています。

ご質問の、混同については、すでに尺貫法の「斤」が死語であり、パン1斤(1ポンド)がわが国伝来以来、尺貫法の「斤」であったことも一度もないので、そのような検討はされていないと思います。

なお、蛇足ですが「斤」は、おおよその目安で言い表される単位だったようで、絶対的な重さの単位とはなりませんでした。
「斤」という単位が使われる度量衡は、日本では唐からもたらされた度量衡を元に8世紀初頭に公定斤が制定されたことから始まったと言われています。重さのことを目(め)とも呼んでいたことから、日本では斤のことを唐目とも呼んでいました。その後、律令体制が崩壊するにつれ、いくつもの私的斤が登場しました。
そのため、品目によって目方を異にする場合もありました。
食パンのような小麦製品は、渡来した英国の度量衡ポンドにあわせて一斤=120匁(もんめ)=453.56g(そのため英斤と呼ばれました。)とされていましたし、薬屋が使った大和目では180匁、山椒用は60匁、そして日本茶は200匁(750g)が一斤とされました。

ご参考まで
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この回答へのお礼

  ありがたうございます。「公正競争規約」について良く判りました。
  なほ、私の小さい頃、昭和三十年頃ですが、砂糖は、斤單位で計り買ひをしてゐました。母の言ひつけで、お使ひでしばしば買ひに行つたものです。ほかにも、「斤」を日常的に使つてゐたと思ひます。

お礼日時:2006/06/29 15:49

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