日本語を勉強中の中国人です。「浜辺の歌」の歌詞を読んでいますが、古典文法が入っているようで、よく理解できなくて困っています。質問をさせてください。
歌詞の参考ページは次のようになります。
http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/0 …
1.「あした浜辺を さまよえば」「ゆうべ浜辺を もとおれば」
上の二つの歌詞の中の「ば」は、現代語の中の「ば」の意味と一緒ですか。現代語の「ば」の意味と違うなら、ご説明願います。
2.「昔のことぞ しのばるる」
この文を現代語に訳していただけませんか。「しのばるる」は連体形でしょうか。
3.「ゆうべ浜辺を もとおれば」
「もとおる」とはどのような意味でしょうか。
また、質問文に不自然な表現がありましたら、それについてもご指摘いただければありがたく思います。よろしくお願いいたします。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
1.同じと言えばまあ同じです。
「さまよえ」を口語「さまよう」の仮定形と見ても、一般条件(恒常条件とも言う)を表す節を成していると取るなら、いちおうは作者の言わんとするところをつかまえたことになるでしょう。でもまあそれは偶々そうなっただけです。これは文語文(仮名遣いが「間違って」ますが)ですから、口語文として解するのは見当違いというものです。
「古典文法が入っているようで」とおっしゃるが、それは違います。全文が文語文法にのっとって書かれています。部分的になんてことは不可能です。口語に文語が混ざり込んでくるのは、熟語とか俚諺などの定型表現として残存しているだけのことです。逆に文語に口語が混入するなら、それは誤謬というもので、よく言っても便宜的措置です。
「あした」は朝のことです。明日のことではありません。明日のことだとすると、「さまよえば」が未来の出来事になり、一般条件ではなく仮定条件を表すことになり、そうなるともう何がなんだか分からなくなってしまうからです。(あともう一つ、「ゆうべ」と対を成さなくなるという不都合もありますが、これはまあ些末なことです。)
古文に「朝」という語が現れたときにこれを「あした」と読むことがほとんどだ、なんてことはありません。上古の昔から「あさ」と読む場合も沢山あります。
わきまえておくべきなのは「あした」が文語と口語とでは意味が異なることです。今「あした」と言えば、必ず今日の次の日のことです。でも昔は朝の意味であって、tomorrowという意味ではなかったのです。
どうして意味が変わったか、というと昔は一日を日の有る無し(要するにヒルとヨル、英語で言えばdayとnightと)、大きく二つに分け、それぞれに時間の推移を表す言葉の系列があったのに、いつしかその区別が失われたことによります。
明るい時間はアサに始まりヒルを経てユフで終わります。夜は〈ユフベ→ヨヒ→ヨナカ→アカツキ→アシタ〉と推移します。アサとアシタは実質的には同じ時間帯ですが、アサは明るい時間の始まりであり、アシタは暗い時間の終わりに当たるのでした。となれば、どうしてアシタがミョウニチの意味に変化したかは説明するまでもないでしょう。
さて、ここまでは前置きみたいなものだ。「さまよへ」と「もとほれ」はともに動詞の已然形であって
未然形ではない、ということが分かっていないと、この文は読めないのです。已然形であるということは「ば」と結びつけば、確定条件(既定条件と呼ぶむきもある)か一般条件を表すことになります。未然形なら仮定条件です。
確定条件・一般条件・仮定条件とはそれぞれ何か。活用形の名前を見れば分かります。そのように名付けられているからです。
已然形とはスデニシカル(ヲイフ)カタチであり未然形とはイマダシラカザル(ヲイフ)カタチです。既に起こった事柄と今だに(註:これ誤記にあらず)起こっていない事柄と、その別をかつては語形によって明々地に示していたわけです。
花咲かば、歌詠むべし。
花咲けば、歌詠むべし。
この二つは意味が異なります。前者は「花が咲いたら歌を詠みなさい」、後者は「花が咲いたので歌を詠みますぞ」と言っています。前者ではまだ花が咲いていないのに対し、後者では既に咲いています。単純と言えば極めて単純です。
一般条件とは、ある事柄がある条件において常に同じ結果が生じることを言うときに使われる表現法です。これは確定条件で表されるような事態の反復的生起と観察によって得られた知見に基づきますから、已然形が用いられるのは理の当然でしょう。
さてようやく結論。この歌の「さまよへば」も「もとほれば」もこの一般条件を立てるものです。朝方に浜辺をぶらぶらすると必ず、いつも、常に、そのたびに、昔のことを思い出す、ということです。このしつっこく畳みかけた語を一つ入れないと、学校のテストなら減点でしょう。
2.たとえば「昔のことがしきりと思われてならない」となります。ここに使われている古文特有の語法を「係り結び」と称します。係助詞「ぞ」が出ると文尾を連体形で結ぶという約束があるのです。初歩の初歩ですが。
3.私は不思議でならないのですが、どうして辞書を引かないんですか。「しのばるる」にしても「しのばる」なんて動詞があるかどうか確かめてからお尋ねになるべきだと思う。
>「浜辺の歌」の歌詞を読んでいますが、古典文法が入っているようで、よく理解できなくて困っています。
「読んでいます」ってことはないでしょう。こんな短いものを。〈読みましたが〉とするべきです。とすると、後ろも変えなくてはならない。〈…読みましたが、文語表現らしき部分がよく理解できません〉
>歌詞の参考ページは次のようになります。
「なります」は誤りではないけれど、「なる」ってほどのもんか? って思いますね。それから、こういう「なります」って非人間的(機械的)接客用語として嫌われる傾向が強いようですよ。〈歌詞の全文はこちらでご覧ください〉のほうが好ましい。
よけいな差し出口かもしれませんが、古文なんか勉強しても労ばかり多くて酬われるところは少ないと思いますよ。日本人なら、和歌が理解できるようになり、したがって詠むこともできるようになるという非常に大きな御利益がありますが、日本語を母語としない人たちには五七五の律動感はいつまでたっても感じられるようにならないみたいだから。
それから歌謡の詞を日本語の教材扱いなさるのもあんまり良いこととは思えません。たいていは舌足らずというか、カタコトみたいなもので、優れた表現を含むものは極めて稀です。
参考URL:http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=%A4%E2 …
いつもお世話になっております。ご親切に教えていただき誠にありがとうございます。
已然形はいつも分かっているような、分かってないような気がします。おかげさまで、已然形と未然形の区別はこれでとてもすっきりいたしました。
「あした」は朝のことなのでしたね。その理由もよく分かりました。
係助詞「ぞ」が出ると文尾を連体形で結ぶという約束があるのですね。こんな初歩的なことも知らないなんて恥ずかしいばかりです。
「しのばるる」は手元にある古文の資料によって、なんとなく「しのぶ」の未然形「しのば」+「る」の連体形「るる」と判明できましたが、自信がないので、確認をしていただきたいところでした。
「もとおる」はオンライン辞書に載っていますね。ちょっと意外でした。手元にある辞書は全部引きましたが、見つけませんでした。
歌謡曲を通して日本の昔の風景、日本の伝統、日本人の美意識、日本の考え方などを少し窺えればと思うのですが、歌詞を日本語の教材扱いするのがあまりよくないことも心がけます。
質問文まで手直しをしていただき心より感謝いたします。「なります」は不愉快を招くのかもしれませんね。これから、できるだけ避けるように心がけます。
詳細に渡りご説明いただきありがとうございました。大変参考になりました。非常に助かりました。
No.3
- 回答日時:
上記のURLは、富山大学の濱田美和教授のHPです。日本語学習者向けでリンクボタンを押していけば57曲のすべてを解説しています。私は全曲をダウンロードしてCDに書き込んでCDプレーヤーで聞いています。
No.2
- 回答日時:
高校古典文法しか学んでいない者ですので、
多少違うかもしれませんので、ご了承ください。
1.「あした浜辺を さまよえば」について
「あした」は古典では、「朝」と書いて「あした」と読むことがほとんどなので、
「朝」かと思います。
動詞「さまよう」が已然形(いぜんけい)であることから、接続助詞「ば」は仮定(~ならば)ではないことがわかります。
すいません、この辺の文法をど忘れしてしまいました…
現代語訳すると、「朝、浜辺をさまようと」です。
接続助詞の意味合いによっては少し違うかもしれません。
2.「昔のことぞ しのばるる」について
「ぞ」は強意を表す係助詞で、文末が連体形になります。
動詞「しのぶ」の未然形「しのば」+自発の意味の助動詞「る」の連体形「るる」
で、「しのばるる」です。
ちなみに、「しのぶ」は漢字だと「偲ぶ」です。
意味は、うまい現代語訳が見つかりませんが
「昔のことが自然と思い出される」のような感じになると思います。
ご親切に教えていただき誠にありがとうございます。「あした」は「朝」のことでしたか。知りませんでした。「ば」の前が已然形だと、「ば」は仮定(~ならば)という意味ではないのですね。「朝、浜辺をさまようと」は納得できました。「昔のことぞ しのばるる」という文もよく理解できました。とても参考になりました。大変助かりました!
本当にありがとうございました。
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