No.5ベストアンサー
- 回答日時:
国広哲弥「日本語誤用・慣用小辞典」(講談社、1991年)の中で(p120-)、「感動した」という意味で「鳥肌が立つ」が使われている例が幾つか挙げられています。
いずれも1988年の例です。少なくともその時点では使われ始めていたということですね。ただ、一般に新語・俗語・誤用をだれが言いだしたか特定するのは不可能でしょう。
感動すると実際に「鳥肌状態」になり、それをそのまま表現した人がいたのでしょう。しかし、その際、「鳥肌が立つ」という言い方を自分で考え出したのではなく、もともとあった言い回しを、本来の意味は知らないまま、異なる意味で使ったことは間違いないと思います。
つまり最初のいきさつは誤用だったわけであり、いまだに広辞苑第5版は採用していないし、国広氏や私のように、感動しても鳥肌が立たない人間もいます。まだ「変な」言い方の部類に入るのではないでしょうか。
新語に寛大な国広氏自身も「強い感動を表すには『体がジーンとする』『背中がゾクゾクする』などの言い方があるので、『鳥肌が立つ』のたぐいは使わないのがよいと思うが、これは筆者の頭が古過ぎるのだろうか」と書いています。
いずれは正しい言い方として認められるかもしれませんが、こういうように言葉の意味を増やしていくと、斬新な感じがする半面、言葉の持つ「物事を意味する力」が拡散してしまう気がします。
そんなに前から使われてるんですね。ここ10年以内だと思ったのですが。
私も『体がジーンとする』『背中がゾクゾクする』と言うのが普通だと思います。
No.8
- 回答日時:
starfloraさん,回答No.7の「転用」という明快な説明,ありがとうございました。
skipperさん(回答No.5):
>しかし、その際、「鳥肌が立つ」という言い方を自分で考え出
>したのではなく、もともとあった言い回しを、本来の意味は知らないまま、異なる意味で使ったことは間違いないと思います。
そこまで言い切れるものかどうか…。
私は自分で考えだしたような気がしていますが,まあ大昔のことですので,そんなにはっきりした記憶があるわけではありません。
それに「考え出した」なんていうほど,大げさなものでもないですが。
しかも,その文章を受けて,
>つまり最初のいきさつは誤用だったわけであり
とくると,「そうだろうか? starfloraさんや私の回答をもう一度お読みください」と申し上げたいです。
国広さんの本(講談社現代新書)は私も読んだことがあります。たしか,「おざなり」と「なおざり」の違いを示す絵がカバーに描いてありましたよね。あの絵を見て,「なるほど!そういう違いだったのか」と思った覚えがあります。
全般に説明が丁寧で,納得のいく内容が多かったのは事実です。
ただ,「強い感動を表すには『体がジーンとする』『背中がゾクゾクする』などの言い方がある」と言われてしまうと,「うーん」と小首を傾げてしまいます。「感動して,背中はゾクゾクせずに,腕に鳥肌が立つことだってあるんだけどなあ」と言いたくなりました。
なんだか,小学校の国語の教科書に草野新平の,擬音がたくさん入った詩を載せようとしたら「春の小川はサラサラ流れるものだ」として,文部省の検定で落とされた,というエピソードを思い出しました。
なお,ある言い回しについて,「誰がいつ頃から言い出したか」などということは,有名人の発言とかドラマのセリフとかCMのキャッチフレーズなど,起源がハッキリしているのもあるでしょうが,一般には特定は難しいでしょうね。
鳥肌でこれだけ盛り上がるとは思いませんでした。
皆さんの意見は大変参考になりました。
いまさらながら「鳥肌が立つ」で検索して見ました。
時間は掛かりましたが、とってもピッタリくる意見がありましたので、
紹介します。ぜひ読んでまた意見聞かせてください。しばらく開けときます。
http://www.alc.co.jp/jpn/cls/ndm/gnsodan23.html
No.7
- 回答日時:
どうも、「感動のあまり鳥肌が立った」というのは、「誤用」で「おかしい」という前提で、質問者は質問を立てていられるような感じがするのですが、「誤用」ではないのです。「転用」というのは云えるかも知れませんが、少なくとも「誤用」ではないと思います。また、何時頃からというのは、そういう表現ができた頃に、すでに一緒に展開したのだろう、とわたしは答えました。
「鳥肌」というのは、江戸時代には、鶴や鳥を日本人は食べていたという事実はあっても、魚や貝類に較べれば、やはり少なかったし、料理にされた鶴や鳥の肉はともかく、羽毛を抜いた状態の鳥の皮膚の様子など、一般の日本人は知らなかったのだと思いますから、昔はなかった言葉かも知れません(古語辞典で引いても出てきません)。
しかし、ケンタッキー・フライド・チキンの繁盛したおかげか、または、「かしわ屋」と言って、鶏肉専門で売っている店などができて(これは、昭和の初め頃には、もうあったはずです)、店頭で、羽毛を抜いた、鶏の皮膚の状態などが一般の人にも観察できるようになり知られて来ると、あの鳥の皮膚の状態は、丁度、寒い時に、人間の皮膚がなる状態とよく似ていると思う人が大勢いて、「鳥肌が立つ」という表現が成立し、一般化したのだと思います。また、恐怖の場合も、似たような皮膚の状態になるのは、個人個人で体験でき分かりますから、「鳥肌が立つ」とは、寒い時や恐ろしい時に、羽毛を抜いた鶏の皮膚のような状態になるのだ、で了解されたのでしょう。
しかし、感動すると、「鳥肌の立つ」人も、生理-心理反応で、「鳥肌が立つ」ことがあるのですから(恐怖の時、そうだと述べました)、昔からいたはずなのです。ただ、昔の人が(おそらく)「鳥肌が立つ」とは言わなかったように、その状態をどう表現するか、表現がなかったのだということになります。
しかし「鳥肌が立つ」とはどういう状態かは分かりますから、感動すると鳥肌が立つ人には、「鳥肌が立つ」は、文字通り、鳥肌が立つことで、「鳥肌が立つ」が、「寒い」とは必ずしも決まっていないように、(むしろ、「恐怖」が多いでしょう)、「鳥肌が立つほど感動した」というのは、「本来の言葉の誤用」ではなく、そういう人には、それが元々の意味範囲に入っていたのだということになります。
「鳥肌が立つ」というのは、人間の生理反応で、皮膚の状態で、そうであるかないかは、感じれば、または見れば分かるのであり、感動すると、鳥肌が立つ人には、別に誤用でも何でもない、当然な表現ということになります。
そういう事実を知らないで、何か「変だが、かっこういい」ので、「感動した、鳥肌が立った」と、言葉だけで云っている人は、誤用かも知れませんが、「かも知れない」です。というのは、ある種の人は、実際そういう体験になる状態を比喩的に言って「何々のようなほど**だった」というのを、そういう体験をしたこともしない人が使っても、これを「誤用」とは言わないからです。「転用」というべきでしょう。
「寒さ・恐怖」で「鳥肌が立つ」というのは、「比喩的表現」ではなく、実際に生理的に起こる現象なのです。従って、「慣用表現」でもあるのですが、同時に「体験の表現」でもあるのです。
先の回答で、1988年に複数の使用例があるという報告がありましたが、こうして報告に載った場合、何か理由があって、その表現の出現が直前に増大したことが想定できる場合はともかく、特に理由が見たらないと、それは以前からあったのだということになります(有名タレントが使って流行語になったなどは別ですが。そういう話はないと思います)。体験のない人が「転用」して段々増えて来たのだということかも知れませんが、慣用表現の「誤用」とは、少し事情が違うのだということです。
No.4
- 回答日時:
私も,映画やテレビなどを見ていて,感動して本当に鳥肌が立つことがあります。
言葉の用法の本だとか,新聞の投書欄などで,しばしばこの表現がやり玉に挙げられるたびに,「変だって言われても事実なんだから仕方ないだろう!」と言いたくなるのです。
いくら間違いだといわれても,体がそのように反応してしまうのだから仕方がありません。
まるで体がそういう反応を示すこと自体が間違いだといわれているような,更にはそのような体をもつ人間の存在自体まで否定されているような,気がしてしまうんでね。
もし「鳥肌」は寒さや恐怖などに対してのみ用いるのが正しいとしたら,私がテレビドラマを見ていて感動した時に起こった現象を記述する時は何といえばいいのでしょうか?
いちいち,「感動のあまり,一般的には寒さや恐怖心によって引き起こされる鳥肌と同様の現象が皮膚の表面に起こった」などと言っていたら長ったらしくてしかたがないですし,「感動のあまり皮膚にぶつぶつが生じた」ではまるで湿疹でもできたかのようですし…。
それとも,たとえ事実としても,他人に感動を伝える時に皮膚の状態に言及するのは,相手にとっては感動がぶち壊しになるおそれがあるからタブーなんでしょうか。
「感動のあまり鳥肌が立った」と言ったとき,単なる「ぞくぞくした」などの表現では言い表せない,感動の仕方を伝えたい,という気持ちがそこにはあると思うのです。
starfloraさんの回答にある通り,鳥肌は恐かったり寒かった時にできることが多いけれど,そうじゃない時にできることもあるわけですから,それを無視して「鳥肌イコール寒さ・恐怖」と決めつけるのはいかがなものかと思います。
もちろん,文脈もなしに「鳥肌が立った」と言われたら,寒さか恐怖心かな,と推察するのは十分もっともなことですから,百歩譲って「慣用句」としての「鳥肌が立った」は,そういった意味に限定することもまあ認めていいのかなとしましょう。
でも,事実描写として使うことまで「間違い」とすることはできないと思います。
No.3
- 回答日時:
>寒い時や恐ろしい時に起こる現象のはずが
とても感動した時にも鳥肌は立ちますよ。
僕自身経験がありますから。
言葉として考えると、
「鳥肌がたつ」=「感動した」ではないかもしれませんが、
感動した時の「体の変化」として実際にそうなっていれば、
ウソかホントかはあるにしても、
正しい、間違っている、ということはないと思いますが。
別の例で、
「手に汗握る」なんて言いますが、
実際に手のひらが汗びっしょりなら、
言葉の表現が正しいも間違いもなくて、
事実として、
「手のひらに汗をかいた」=「手に汗握った」なんじゃないですかね。
「目からうろこ」みたいに、
実際には起こり得ない事なら、使い方ってあると思いますけど。
No.2
- 回答日時:
「鳥肌は立つ」というのは、言われるように、「とても感動した」というような意味ではなかったはずです。しかし、「鳥肌が立つ」とはどういうことかというと、生理的に、非常に寒い場合に、肌が収縮して、鳥肌のようになるものです。心身相関で、心理的に「尋常でない恐怖・緊張状態」の時も、おそらく、体温が降下して局所的に肌の温度が下がったと同じ結果になって、「鳥肌が立つ」のでしょう。
ここで、「恐ろしい」だけではなく、「戦慄や、緊張状態」の時も、「鳥肌が立つ」のです。これは「生理的反応を伴う感情」で、「情緒」とも言ったと思います。「泣く」の場合も、悲しいので泣く以外に、あまりに面白いので泣く、感動したので泣く、嬉しいので泣くなど、感情から見ると、正反対の状態で、涙が出て泣くということが起こります。ここでは、「感情の強さ」と生理的反応にまで連関するかです。
「鳥肌が立つ」は、寒いで、感情としては、恐ろしい、戦慄、そして、「嫌悪」も何故か、鳥肌が立つというようです。しかし、戦慄が強くなると、心の激しい混乱、衝撃による驚きにも連続して行くので、「戦慄」というのは、「震える」という意味です。
そして、「感動」の水準も、通常を超えると、戦慄の心理-生理的状態と似たものになってきて、悲しいのと嬉しいので感動で涙が出るように、恐ろしさのあまり身体が震える、戦慄のあまり身体が震える、感動のあまり身体が震える、と、「感情内容」は大分違うのに、生理的反応では似たことが起こって来ます。
こういうことは、人間の心理と生理の関係で、日本語でも英語でも、日本人でも英米人でも似たようなことになります。英語で、awful という形容詞があります。意味は、「恐ろしい・ひどい・とてもいやな」で、「鳥肌が立つ感情」とよく似ています。この言葉は、名詞の awe からできたもので、awe とは「怖れ・畏敬・畏怖・恐怖」などの原義・意味があります。何か人間を越えた崇高な者・力あるものなどに出会うと、「戦慄」が起こり、それが、awe なのです。
ところが、awful には、「うやうやしい・荘厳な」という意味もあります。「恐ろしい・とてもいやな」と「うやうやしい・荘厳な」は、どうして同じ語に入っているのかと言えば、両方とも、「威厳・畏怖・戦慄」という感情で、生理的に同じような反応になるのです。この副詞形、awfully は、「凄まじく・恐ろしく」ですが、同時に「非常に・とても」の意味があります。日本語でも、「恐ろしく頭がいい」などは、頭がいいので怖いのかも知れませんが、これは、恐怖感を抱くような生理的強度の感情を引き起こす、「強い意味」で、「頭がいい」と感じることなのです。
「感動」も、恍惚から、戦慄まで、激しい生理的-心理的反応を、人間の心身にもたらし「強い感情」なのです。そういう強いレヴェルの感情は、生理的次元では、同じような反応になることがあるのです。「涙が出るほどうれしかった・涙が出るほど辛く悲しかった・涙が出るほどありがたかった・涙がが出るほど感動した」というのは、「涙が出るほど」というのは共通ですが、「感情の内容」は大分違います。正反対のものもあります。
英語の awfully も、元は「戦慄するほど・震えるほど」なのですが、「戦慄するほど感動した」というのを、awfully を使って言います。意味は、「非常に感動した」ですが、単に「非常に」ではなく、生理的反応として同等な程度に、という意味が背景にあります。
「鳥肌が立つ」というのも、「畏怖・恐怖・戦慄・嫌悪」ですが、このような生理的強度で、「感動」がある、という表現にもなるのです。それは「程度の移行表現」でもあるのですが、元々、強い感情の生理的反応が共通していることに、こういう発想の基礎があるのです。感動も極まると、畏怖・戦慄と同じような生理的状態になって来るのです。
「鳥肌が立つほど感動した」というのは、感動の誇張表現として、また生理的強度表現として、それほどおかしくないのです。「鳥肌が立つ」のは、「寒いとき・怖いとき」という考えがあるので奇妙に思えるのです。涙が溢れ、恍惚となる感動もあれば、その場に立ちすくんで、身から震えが出る感動もあるのです。あまりの感動に、畏怖や恐怖感の起こるものもあるのです。
状況や文脈で、「鳥肌が立った」が、時に、強い感動の意味になるのです。「冷水をかけられたみたいに感動した」とは言いません。これは、「冷水をかけられて」の生理的反応が、感動のそれと合わないからです。「冷水をかけられたように目が覚めた」というのはあるでしょう。
何時頃から誰が、とうより、こういう表現ができると同じ頃に、展開的な用法があったと云えます。「鳥肌が立つぐらいに感動した」を略して、「鳥肌が立った」で「感動した」だというのは、省略の俗語用法ですが、起源は古いと思います。俗語的には、二、三十年前以上に、すでにあったと思います。いまでも、「状況を無視して」、「鳥肌が立った」と言っても、「感動した」とは必ずしもならないはずです。女性が、「鳥肌が立ったわ」といえば、「何か怖いこと、気持ち悪いことでも?」でしょう。しかし、「今日のライヴ、凄い。鳥肌が立ったわ」といえば、「感動」の意味でしょう。または、ミュージシャンがプロレス出身か何かで、ステージで乱闘して、殺し合いをしたので、「怖かった」のかも擦れませんが、後者はそんなに例がありません。
こういう言い方は、「鳥肌が立つ」という表現の発生と同じぐらいに古く、最近十年、二十年は、「省略する」ので、文脈・状況から切り離して考えると変に感じられるということです。これと類似のことは色々あるのです。日常で使っていて、文脈を外すと、何か分からなくなることです。
この回答への補足
で、starfloraさんは感動して時に鳥肌たった事あるんでしょうか?
2,30年前にはこういう使われ方はされてなかったと思います。
長くとも10年以内だと思います。
No.1
- 回答日時:
>これって変じゃないですか?
確かに変ですが、使う人が増えてきて言葉の使われ方として一般的になれば、将来変ではなくなる可能性もあります。
「鳥肌が立つ」というのは、生理的な現象で寒いときや恐いときに反射によって皮膚の毛穴が閉じてしまいあたかも鳥の肌のように見える現象だと理解しています。それくらい恐いことだという直喩法から定着した副詞の役割をもつ慣用句ということになるでしょうか。
ところで、程度がはなはだしいことを表す副詞はいくつかあります。「とても」、「ひどく」、「非常に」、「たいへん」、「いたく」などですが、それぞれ別の意味から用法の変化した言葉です。
例えば「とても」は少なくとも明治の半ばくらいまでは強い否定表現に使われていましたが、程度がはなはだしいことを表す言葉として誤用定着してきた歴史があります。同じような現象を我々は現在「全然」ということばで、観察できます。また「ひどく」は「非道く」で道に外れた行為として道徳的に非難されるべきことで、「非常に」というのはめったに起きないことという本来の意味があったはずです。「たいへん」は「大変」で大きい異変でこれもめったに起きないこととという意味しか本来はなかったはずです。
このように、程度がはなはだしいということを表現している言葉の原理上、書き手が自分の表現に強い印象を与える目的を実現するため、従来の言葉の陳腐化の進行に抗うかたちとなり、あたらしい言葉が次々にあらわれ、比較的短時間で消えていく、そういう運命にあると思われます。
奈良時代は「いた(く)」(「痛く」からの転用か)といったものが平安時代には「いと」となり、鎌倉時代は「あさましく」といった言葉がはやったそうです。
>そもそも誰がいつ頃から言い出したんですか?
正確に答えようとすると、これは大変にむずかしいことです。この言葉に着目して昔から観察し、これ以前にはそういう用法は絶対なかったことを証明しなければなりません。そこまで厳格でなくても調べるのは大変だと思います。
それでは、たとえば辞書はどうかというと、新しい用法を紹介し扱うようになるまで6,7年かかるという意見が下記のサイトにあります。その意見を採用するなら98年の段階で19種の辞書が掲載していないというところを見ると、すくなくとも90年台にはいってから、目立つようになった用法だと判断していいのではないでしょうか。
「大野晋の日本語相談」(朝日文芸文庫)を参考にしました。
参考URL:http://www.alc.co.jp/jpn/cls/ndm/gnsodan23.html
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