No.3ベストアンサー
- 回答日時:
硫黄(複数の硫黄原子によって環状の分子になっている。
通常S8)による天然ゴムの加硫は、加熱によって硫黄分子が熱分解し硫黄ラジカルが発生する段階、その硫黄ラジカルが天然ゴム中のアリル位の水素を引き抜いて天然ゴムにラジカルが異動する段階、天然ゴムに移動したラジカルと硫黄ラジカルが結合する段階を経て完了します。それ故、加硫による架橋部の構造はC-S-S-C(Sの数はもっと多い。)となります。
過酸化物による架橋は-C-C-結合です。
他にもいろいろな架橋方法があり、架橋構造により耐熱性が変化します。
-C-C-C->-C-N-C->C-S-C->-C-S-S-C-の順に耐熱性は低下します。
この結果を結合解離エネルギー(結合エネルギー)の観点から見てみましょう。
各結合の平均結合エンタルピーは-C-C-:348(kJ/mol),
-C-N-:305(kJ/mol), -C-S-259(kJ/mol),-S-S-264(kJ/mol)となります。-C-S-と-S-S-のところが厳密には合いませんが、ある程度の傾向は出ているのではないでしょうか。
(硫黄による加硫は C-S-S-S-S-・・C-だから差が出ているのかもしれません。)
または、耐熱性に関する化学反応は複雑なので、そう単純ではないかもしれません。
しかし、耐熱性に対し結合エネルギーは一つの指標となりうるのではないでしょうか。
(触媒などが関与すると順番は変わる可能性があります。)
なぜ-S-S-の方が結合エネルギーが低いのか?
もしそれに興味があるのならば、それを一つの質問とされた方が私のような素人ではなく専門家の答えがもらえるかもしれませんよ。
周期律表を見ると炭素は第2周期、硫黄は第3周期に位置するので、炭素原子に比べ硫黄原子は一回り大きくなります。
化学結合力は原子核と電子との間の静電力に起因していると思いますので、原子が大きくなって、結合価の電子と原子核との距離が遠くなってしまうのは不利だからと私は考えています。
この回答への補足
親切な回答ありがとうございます。理解力に乏しく申し訳ないのですが、回答していただいた下記ですが、理解できません。特に、アリル位の水素を引き抜いて~という部分です。>天然ゴムの加硫は、加熱によって硫黄分子が熱分解し硫黄ラジカルが発生する段階、その硫黄ラジカルが天然ゴム中のアリル位の水素を引き抜いて天然ゴムにラジカルが異動する段階、天然ゴムに移動したラジカルと硫黄ラジカルが結合する段階を経て完了します。
なんとなく、私が解釈したのは、硫黄ラジカルが、天然ゴム(-C=CH-CH2-)の水素を抜き、-C=CS-CS2-となるのですか?
なんとか理解したいのでよろしくお願いします。
No.5
- 回答日時:
先ほどの投稿で、結合エネルギーの値をアトキンス物理化学から引用しました。
ゴムの耐熱性の順番と一致しないところがあったので、他の本にて再度調べてみました。
エンジニアのための化学熱力学入門にとると
-C-C- 85.5(kcal/mol)
-C-N- 81.0(kcal/mol)
-C-S- 63.7(kcal/mol)
-S-S- 50.3(kcal/mol)
となっていました。(さきほどと単位が異なりこちらの方が古い単位なので数値が大きく変わります。意味は同じで、単位を換算すればよいだけです。)
こちらの数値を採用すれば、経験的な耐熱性の順番と一致しますね。
No.4
- 回答日時:
psa29さんのご回答どおりですね。
高周期元素間および高周期元素ー低周期元素(炭素とか)の結合は、一般的に弱くてきれやすくなります。
理由は、原子が大きくなってしまったことで、結合電子と原子核の静電引力が弱体化したことと、原子軌道が大きく広がったことで軌道の重なりが不利になったことの2点が挙げられます。
弱いから使い物にならないか、というとそうでもなくて、結合の弱さを逆に利用することでいろいろと有用な使い道が見出されています。
加熱や光で結合が切断されることによって、ラジカルを発生させて有機合成に使うことは広く行われていますね。
スズやセレン、テルル、ヨウ素の化合物が特に良く用いられます。
硫黄はそれらに比べるとそこまで結合が弱くないのですが、傾向としては同じことです。
この回答への補足
回答ありがとうございます。A3でも補足したのですが、>天然ゴムの加硫は、加熱によって硫黄分子が熱分解し硫黄ラジカルが発生する段階、その硫黄ラジカルが天然ゴム中のアリル位の水素を引き抜いて天然ゴムにラジカルが異動する段階、天然ゴムに移動したラジカルと硫黄ラジカルが結合する段階を経て完了します。
という部分が、実際どういう反応なのか理解できません。
すみませんが、教えていただけないでしょうか?
よろしくお願い致します。
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