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「鶯宿梅」の意味を調べていて「大鏡」の「鶯宿梅の故事」の段に辿り着きました。ここには「貫之のぬしの御女」という記述が見えます。そういえば更級日記の作者も「菅原孝標の女」です。「女」を「むすめ」と読ませるのはよいとして、手元の古語辞典によると「源氏物語」には既に「娘」の使用例があります。
さて質問です。
「娘」と「女(むすめ)」の使い分けには意味があったのですか。未婚、既婚で使い分けるとか、父親や当人の身分によって使い分けるとか何らかの理由がありましたか。旁の「良」の有無は意味深長というか露骨というか、冗談としてなら幾らもが使い分けができそうですが本当のところはどうだったのでしょう。
また、今日では「むすめ」は「娘」と書き「女」の字は当てません。全員、平等に格上げされたみたいですが何時頃から「娘」に統一されたのですか。もしも判っていれば教えて下さいませ。
よろしくお願いします。

A 回答 (4件)

まず「新字源」を見ますと、


「女」は「(1)おんな。め。対義語は『男』アむすめ。おんなの子。親に対していう。嫁入り前の女子。処女。イおんなのこども。ウ婦人。人に嫁したおんな。成年の女性。(2)-以下省略-」のような語釈があり、
「娘」については、「もと、美しい女子の意を表わし、特に男が女を呼ぶ愛称に用いたが、嬢と混用されている。日本では娘『むすめ』の意、嬢をその敬称に用いる」と説明しています。

中世の漢字辞書に「節用集」と総称されるものがあります。試みに『古本節用集六種研究並びに總合索引』を見ますと、
伊京集では、「娘(ムスメ、ニヤウ)」、
明応五年本節用集では「娘(ムスメ)」、
饅頭屋本節用集では「女(ムスメ)」、
黒本本節用集では「女(ムスメ)娘(同)」、
易林本節用集では「息女(ムスメ)女(同)娘(同)」
と出てきます。( )の読みは実際は漢字の右側に付されています。「ニヤウ」だけは漢字の下です。どうも「息女(ムスメ)女(ムスメ)娘(ムスメ)は同じ意味であるようです。

さて、「大鏡」ですが、その「裏書」を見ますと、
  参議左兵衛督源頼定卿事 式部卿為平親王男 母前左大臣高明公女(岩波、日本古典文学大系、p367)
などといったかたちが多数出てきます。これは源頼定は為平親王のムスコで、その母は高明公のムスメであるということです。男子の場合は、「男」「二男」「三男」などと細かく区別しますが、女子の場合はただ「女」と書かれるだけのようです。というわけで、すでにお察しの通り、「某女」「某の女」という表現は、「某男」に対応した形であって、「某娘」ではおさまりが悪かったのではないかと想像します。「美しい女子の意を表わし、特に男が女を呼ぶ愛称に用いた」という「娘」本来の意味が当時濃厚に残っていたとすればなおさらです。

ちなみに私には平安時代の作品に「娘」という漢字が出てきた記憶がほとんどありません。私の記憶などあてになりませんので、下記URL「古典総合研究所」をご紹介します。「語彙検索古典用言単語帳」から「『源氏物語大成』大島本」へと進み、「女」「むすめ」「娘」を検索なさってみてください。表示された本文の頭にある青字の数字は「源氏物語大成」のページ・行です。

参考URL:http://www.genji.co.jp/index.html

この回答への補足

補足ではありません。お礼の欄には書き切れないので、ここに記します。
そもそもは「鶯宿梅の故事」すら知らず、古語辞典の凡例も読まない人間の不完全な質問に対し、専門的な回答を寄せて下さって恐縮しています。

1 「新字源」、ご紹介下さった各「節用集」の代用として「五本対照改編節用集(亀井 孝他、勉誠社)」の「女」と「娘」の項、「大鏡」の裏書の3点は通覧しておきました。

2 試みに、ご紹介下さった参考URLのサイト内のhttp://www.genji.co.jp/kensaku.htm(*)で新編日本古典文学全集「源氏物語」(小学館)を選択して「娘」を検索し、その結果を参考にして実際に6分冊の書籍で確かめてみました。4箇所には「娘」が登場していましたが何れも読者の便を目的に、誰の発言であるかを明示するために校注者が記したものであって、底本に「娘」はなかったと考えられます。

3 2と同様のことを「源氏物語大成」大島本でも実行するべきですが、今のところ、この書籍を入手できず、確かめていません。

4 「枕草子」日本古典集成(新潮社)について2と同様のことを実行した結果、次の二例が見つかりました。
第94段225-09 上「そのわたりの家の娘など、ひきもて来て、五六人して扱かせ、」
第99段250-05 上「あな、恥づかし。かれは、古き得意を。『いと憎さげなる娘ども持たり』ともこそ、見はべれ」
二例とも今日の、他家の若い女性を指すときの使い方に近いように感じています。

5 (*)に掲載されている書籍の全てについて、前項4の二例以外には「娘」の使用例を検索できませんでした(手元のPCに限って言えば、書籍に「ぬ」があり、しかも、ある条件が重なったときは文字化けし?「・b>娘」の形で「娘」が登場している)。

6 (*)で「源氏物語大成」大島本を選択しても、他を選択しても「むすめ」を検索すると大量にヒットします(ヒットしない作品もなくはない)。

7 (*)で「源氏物語大成」大島本を選択しても、他を選択しても「女」を検索すると大量にヒットします(ヒットしない作品もなくはない)。しかし、振り仮名がない場合が多く「むすめ」と読むのか「おんな」と読むのか必ずしも判断できませんでした。

8 >>「某女」「某の女」という表現は、・・・意味が当時濃厚に残っていたとすればなおさらです。
この部分は理解できた積もりです。

9 今日では庶民の家庭でも「奥さん」であり、女子の名には「姫」すら散見されます。「娘」の意味が平安時代より拡大、普及したのは当然だと思います。

有り難うございました。またの機会にも、よろしくお願いします。
20日(日)24時までに、どなた様からも新たな寄稿がないときは、当方の都合のよいときに締め切ります。

補足日時:2007/05/16 22:37
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sono-higurashi 様


 お心遣い、まことにありがとうございます。確かに、姫と媛は気になってはおりますが、もう少し自分で、いろいろ使われているところに遭遇しながら、深刻さを増し、自分でも調査・勉強で苦労してから、ご救済を仰ごうと存じます。あまりなんでも、ほいほいお助けお願いしたり、聞いて廻るだけでは、態度が悪いと存じまして、これでも自戒しているつもりなのです。
 このたびはあなた様のご質問にのっかってしまって、しかもご心配まで
賜り、近年になく気持ちを豊かに感じております。ご迷惑をおかけしました。
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この回答へのお礼

迷惑なんて、とんでもありません。誰の発言からであれ、次々と疑問が生じるのは当然で、正しい好奇心だと思います。
また、何時か何かしらの質問でお世話になりそうな予感がします。その節はよろしくお願いします。

お礼日時:2007/05/21 00:19

 No1のご回答の前に参加しようと思いました。

今朝早く。でも新たな質問のお願いでした。姫と媛が神話などに出てきますね。これなどもどう使いわけているのでしょうね。娘は聊斎志異にはよく出てきて、何人の娘がいるとか、何番目の娘さんということで一娘、二娘とかありました。今の、私達の一女、次女なんでしょう。聊斎志異では、一女、次女は使っていないようですね。姫と媛は引っかかってきましたが、旁の有無である娘と女は同意義として引っかかりませんでした。

この回答への補足

姫と媛の使いわけの件は、今回の質問文からは人目に付き難いかと存じます。
差し出がましいですが、姫と媛の使い分けに焦点を絞った質問を新たに、なされたら如何でしょう。本来はご意向を確かめるべきですが、こうしたシステムによる質疑の制約に鑑み、了承頂けたものと勝手に思ってしまいます。
皆様のお陰で十分な回答を得られましたので、20日(日)24時までに、どなた様からも新たな寄稿がないときは、当方の都合のよいときに締め切ることにしました。ご理解下さいませ。

補足日時:2007/05/16 22:28
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この回答へのお礼

 現代では親子で有る無しに係わらず「娘」、「娘さん」と呼べるのに、長女、次女、三女・・・と言いますね。これは明確に親子関係を述べているからで平安時代の残滓を引き摺っている訳ですか。なるほどANo.1の説の傍証になりそうです。
 引き続き色々な角度からの回答をお待ちします。有り難うございました。

お礼日時:2007/05/12 22:58

女(むすめ)=産女(むすめ)。

親からみて自分の子である女性。
       男の場合はむすこ。
娘=若い未婚の女性

という使い分けだと思います。
源氏物語の須磨の巻に出てきた「娘」は後者の意です。

解字を調べれば「良」の意味は分かります。
美しいの意味ではないかと思いますが、
手元に調べる資料がないので・・・。
知ってる人がいれば私も教えて欲しいです。

いつから娘に統一されたかはすみませんが分かりません。
すみません。

この回答への補足

済みません。質問文から
>>手元の古語辞典によると「源氏物語」には既に「娘」の使用例があります。
を削除させて下さい。

削除の理由
1 「源氏物語」に「娘」の使用例があることは確認できていません。有るかもしれないし無いかもしれません。
2 手元の古語辞典の「むすめ[娘]」の見出しに
「若きーたちは、舟のうちさへ恥づかしう心化粧せらる」<源氏須磨>とあったのを、
「若き娘たちは、舟のうちさへ恥づかしう心化粧せらる」<源氏須磨>と勝手読みをし、源氏物語に「娘」の使用例があると決め付けつけてしまいました。小学館、日本古典文学全集21巻の例では
「若きむすめたちは、舟の中さへ恥づかしう心げさうせらる」とあって平仮名書きでした。斜め読みというよりは「斜め見」ですが、ほかにも平仮名の「むすめ」はありましたが「娘」の有無は不明です。どうやら古語辞典では「むすめ」なのか「娘」なのかまでは述べていないと理解すべきようです。
辞典に縁のない生活を送っているのがバレテしまいました。

補足日時:2007/05/12 17:53
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この回答へのお礼

親子関係があれば「女」、親子関係がなくて若い未婚の女性は「娘」という説ですね。なるほど「菅原孝標の女」の場合も「貫之のぬしの御女」の場合も説明が付きますね。
有り難うございました。

お礼日時:2007/05/12 17:58

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