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 いつもお世話になります。
 宮沢賢治の「退職技手」という文語詩について調べていますが、全く手がかりになるものがありません。どんな細かいことでも結構で、この詩を解釈する手がかりがあればお教えください。よろしくお願いします。

A 回答 (2件)

 宮沢賢治についてはまったくの門外漢なのですが、少し調べてみました。



 まず、本文は #1 の方がご紹介下さっているようにWeb上にも何ヵ所かにあるようですね。

 校本宮沢賢治全集(第4巻だったかな?)を見ると、本文の異同とか、推敲の後とかは、なかったようです。ということで、校異に関しては「この詩を解釈する手がかり」はないようです。

 中央公論社の「日本の詩歌」18「宮沢賢治」には、残念ながら「退職技手」はありませんが、「文語詩編」として17ほどの作品が掲載されています。各ページの下段に各詩の解説がありますので、作品の傾向とかを知って「退職技手」の読解の参考にすることはできるのではないでしょうか。
 この解説によりますと、宮沢賢治が文語詩を作ったのは昭和五年以降のようです。「雨ニモマケズ」なんかを書いたのと同じ頃で、賢治の短い生涯では晩年ということになりましょうか。「文語詩のかなりの部分は、若い時期の短歌等の改作であり」との記述もあるので、短歌で「退職技手」と同内容のものがないか調べてみるのもいいかもしれませんね。

 さて、以下は全くの私見です。

 まず、「技手」は技術担当の役職であり、賢治の来歴からすると、農業関係の技術職ではないかと考えます。「技手」は「技師」の下の地位で、現地採用の、いわばノンキャリアというところで、出世は余り見込めなかったようです。ともかく、「技師」になれないまま、退職を迎えた技手のことを書いた詩ということになりますね。

 退職の理由は、農家の跡取り息子で、父親が倒れ、家業に専念するため、途中退職というケースもあり得ますが、詩中にそれを感じさせる語句はないので、定年と考えるのがよいのではと思います。
 そして、その退職する技手のため「わかれうたげ」つまり送別会が開かれたわけですね。

 ところがその会は楽しいものとはならず、出席者があきれて、しらけてしまうような「すさまじき」ものになってしまったわけです。

 「こぞりてひとを貶〔おと〕しつつ」は、こぞりて」が「一人残らず、だれもかれも」という意味の副詞、「貶す」は「悪口を言う」ことですから、「一人残らず人の悪口を言いながら」ぐらいの意味ですが、「出席者が皆、技手の悪口を言った」とも「技手が、出席者全員の悪口を言った」とも解釈は可能だと思います。
 しかし「おのれ」以下は技手が主体の描写ですから、ここも悪口を言うのは技手の行為ととればどうでしょうか。長年、技師にはなれないまま下積みの仕事で、言いたいことも十分に言えずに勤務を続けてきて、職場の仲間と過ごす最後の機会を迎え、気持ちの高ぶりと、つい過ごした酒の勢いとで、今までたまりにたまっていた不平不満がつい口をついて出て止まらなくなったのではないでしょうか。

 その興奮した気分のまま、送別会の後味の悪さ、さらにはさめやらぬ酔いも手伝って、「えい、今夜は暴れてやるぞ」と青色の瓶袴が泥で汚れてしまうのも気にしないで、田んぼに入ります。
 「瓶袴」は、読みは「へいこ」でいいと思います。日本国語大辞典には載っていませんでしたが、「袴」は、「はかま」ですから、「とっくり、もしくは、びんのような形のズボン」を意味するのではないしょうか。もしかすると当時の「技手」の制服でしょうか?

 さて、技手は、「〔蒔(ま)いた〕籾(もみ)が緑金(りょっきん)色に生えはじめた苗代(なわしろ)に入り、水に漬かりながらタニシを拾った。」ようです。
 「緑金」は金に5%の銀を混ぜた合金で、緑がかった色だそうです。稲の芽の美しい緑色をたとえた表現ですね。
 東北地方では何月頃に苗代を作るのでしょうか? もし3月ならば、年度末で退職の時期にはふさわしいように思います。
 「そめし」は「~しはじめる」という「~初(そ)む」の連用形に、過去の助動詞「き」の連体形「し」が付いた形ですが、ここは過去というより完了か存続のように用いられていると思います。
 タニシは昔は田んぼにたくさんいたようですね。食用になります。貧しい生活では、おかずの足しにも、したんじゃないでしょうか。

 結局、「今夜は暴れてやる」と心に決めながら、やったのは田んぼに入ってタニシをひろうだけ。そこに、うだつの上がらぬまま退職を迎えた、この技手の人生と人柄が凝縮されているように思います。
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この回答へのお礼

お忙しい中、丁寧なご回答、心より感謝申し上げます。
 今日は、落ち込むことばかりの1日でしたので、usagisanさんのご回答で、元気を取りも戻しました。tintagelさんとあわせまして衷心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

お礼日時:2002/10/01 20:51

「青空文庫」さん(参考URL)に全文あります。



「文語詩稿 五十篇」に掲載されているそうです。
(「青空文庫」さんは「新修宮沢賢治全集第六巻」筑摩書房さんを底本にしています。)

(1)参考URLから
(2)右の”★ 作家別本のリスト”の”【ま】”をクリックします。
(3)”→宮沢賢治”をクリックします。
(4)”宮沢賢治『文語詩稿 五十篇』”をクリックします。
(5)”テキストファイル ルビあり”、”テキストファイル ルビあり”、”HTML版”、”エキスパンドブック版”を選択しクリックします。

参考になるでしょうか?

参考URL:http://www.aozora.gr.jp/
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この回答へのお礼

詳しく、丁寧にご指導下さり、ありがとうございました。大変助かりました。

お礼日時:2002/09/29 17:05

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