とある理由から(!)、「左官」ついて調べてみて、気になったことが二つあります。
一つ目は、
> 左官という言葉が「壁を塗る職人」の意味で用いられたのは、江戸初期以降だという。
http://osaka.yomiuri.co.jp/shitei/te70925a.htm
という記述があったのですが、「江戸初期以降」というのは、どの程度確かなのでしょうか。書物・資料(史料)等をご存じの方、ご教示いただければ幸いです。
もう一つは、
> 語源. 平安時代において、宮中の土木工事部門へ属(さかん)し、出入りが許されていたことに因む。 ...
http://wkp.fresheye.com/wikipedia/%E5%B7%A6%E5%A …
といった記述があるサイトがいくつか検索でひっかかってきて、URLをご覧いただけば分かるように、もともとはウィキペディアの「左官」の項目の「語源」の項の記述に由来するようなのです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%A6%E5%AE%98
この「属(さかん)し」というのはサ変動詞として受け取ればいいのでしょうか。
サ変でないとしても、このような使い方をする言葉なのでしょうか。
まさか、四等官の「さかん」と、「属(ぞく)し」を混同してることってないですよね……。
以上、よろしくお願いします。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
「左官」という言葉が、現在確認できている範囲で、最初に文献に登場するのは、1605年の『宇都宮大明神御建立御勘定目録』の中の「左官作料」という書面だとのことです。
それ以前の文献では、「普請方(ふしんかた)」「家職人(やしょくにん)」「壁塗(かべぬり)」「壁の大工(かべのだいく)」「塗大工(ぬりだいく)」と記されていて、「左官」という言葉は確認できていないようです。1610~1630年代までは、「壁塗」「壁屋」「左官」が混在して使われ、1640年以降になって、一部「壁方」という記載はあるものの「左官」が一般化したようです。江戸幕府の御用職人として「左官職」が確立し、職人たちの住まいも江戸神田の「かべ町」に固められたことが大きく影響しているように思われます。
なお、「左官」という言葉の語源についてははっきりしておらず、以下のような説があるようです。
(1)1684年の『雍州府誌』では、語源ははっきりしないと述べた上で、「砂官」がもとになっているのではないかと記載されています。
(2)1853年の『守貞漫稿』や、1862年の『和訓栞』では、内匠寮(たくみりょう)や木工寮(もくりょう)の属(さかん)が壁塗の仕事をしていたので、左官の字を用いたという、官職名由来説を記載しています。律令制の元、宮内省管下に、土作(どさく)・瓦塗(かわらぬり)及び石灰焼のことをつかさどる土工司(つちのたくみのつかさ)があり、それに泥部(はつかしべ)や泥戸(ぬりこ)が所属していたことによるものです。左官は泥戸にあたるようです。
(3)1937年の『大言海』では、禁裏の工事の際に無官では出入りができないため、属(さかん)に任官させたことによると記載されています。壁塗り職人だけが無官ではなかったので、あまり説得力のある説明ではないような気がします。
語源ははっきり断定できませんが、左官(壁塗り)という職は、日本建築では、土壁・しっくい壁が重要な役目をしており、大工などとともに古くから重要な存在であったことは間違いないようです。近世以降は「塗籠造(ぬりごめづくり)」「土蔵造(どぞうづくり)」なども発達し、より一層、左官職が一般化していったようです。
>「属(さかん)す」という表現は、現代人が「名詞」+「する」で動詞化する感覚で作った表現だと思います。そういった動詞はありませんので、誤用といわざるをえません。「属(ぞく)す」と混同して使っている可能性が非常に高い気がします。
しっかりとした根拠となる史料・書籍をお教えいただき、ありがとうございます。
お示しいただいた「宇都宮大明神御建立御勘定目録」と「左官」とを用いてgoogleで複合検索してみましたが、4件(3サイト)しかヒットしませんでした。
http://books.google.co.jp/books?id=nqqQP_wkIhsC& …
http://www.jplime.com/bunkaisan/006/index.html
http://www.jplime.com/bunkaisan/006/006.pdf
http://www.kyotosakan.com/080/
いずれも有意義な情報を提供してくれていて、大変参考になりました。
でも、「左官」の語源に触れたサイトはけっこうあるのに、執筆したみなさんは、あんまりしっかりと調べないのですね。(他人のことは言えないかも。)
「属(さかん)す」の件にしてもそうですが、ネットで得られる情報というのは質・量(情報の幅の広さ)ともに、まだまだだと思わされることが多いです。
もちろん、ネットがなければ、私独自で、私の行動半径の中で調べただけでは『宇都宮大明神御建立御勘定目録』の存在を知ることはなかったでしょうし、上記のサイトに書かれているようなことを知ることもなかったはずで、ネットの恩恵は非常に大きいものではあります。
しかし、すべてがネットにあるわけではない、過信してはいけないと思います。
貴重な体験をさせていただきました。ありがとうございました。
No.1
- 回答日時:
え~っと、調べた限りでは、「属(さかん)し」というのは間違ってると思います。
広辞苑には「属(ぞく)」の項目で
『律令制で、四等官の最下位である主典(さかん)の表記の一。旧制で、官庁の判任文官。属官』とあり、参照先を「さかん」とし、
『主典:(「佐官」の字音。「佐」はたすける意) 律令制の四等官の最下位』となってます。
また、「左官」の項目は
『仮に木工寮の属(さかん)として出入りさせたからいう』です。
※引用に部分変更あり
当然、漢和辞書にも「属」の読みには「さかん」もありますが、官位名ですから、動詞として「さかんし」とはならないと思います。
あと、歴史的なことは分からんですから、以下をどうぞ。
http://gogen-allguide.com/sa/sakan.html
http://iroha-japan.net/iroha/B07_work/03_sakan.h …
やっぱり間違いなのでしょうか。
なんせ、ウィキペディアですからね。参考にする人も少なくないだろうし、そうは思いたくはないのですが……。しょせんネットの百科事典だということになってしまうのかな。しっかりしてほしいものです。
また何か分かりましたら、よろしく。
ありがとうございました。
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