鍵盤楽器におけるミーントーン(中全音律)についての質問(疑問)です。
アロンのミーントーンにつき、鍵盤楽器におけるウルフの位置はG♯-E♭に限定されていたのでしょうか? つまり、(分割黒鍵を持たない通常の)12鍵盤による鍵盤楽器(特にオルガン以外の楽器)の音の配置(以下、5度の配列)は、C-G-D-A-E-B(H)-F♯-C♯-G♯-ウルフ-E♭-B♭-F-Cしか無かったのでしょうか。
当方、古典調律機能、及び各調律のルート音を変更できる機能が付いている電子鍵盤楽器を所持しているのですが、この楽器によれば、例えば、アロンのミーントーンの基音をCからB♭に変更することができます。この場合には、音の配置がC-G-D-A-E-B(H)-F♯-ウルフ-「D♭」-「A♭」-E♭-B♭-F-Cになるように感じます。(ミーントーンの世界では♯音より♭音の方が「高い」音であることは周知の通りです。)
そして、この設定であれば、例えばモーツァルトの♭系のピアノソナタ(全ては試しておりませんが、例えば変ロ長調のK.333など)がとても美しく響くように感じられるのです。バッハの平均律第2巻第2番ハ短調も同様です。おそらく例を挙げればキリが無いと思われます。
昔の人は、現代人よりも和音に対する感覚(特に純正長3度に対する感覚)が鋭かったと推測され、かつ、鍵盤楽器(オルガン以外の、クラヴィコードやチェンバロやフォルテピアノなど)の調律をユーザ自らがやっていたので、G♯のキーをA♭音に高く設定し(これによりウルフ位置がC♯-A♭になる。F.クープランの「神秘の防壁」などはこれで弾ける。)、さらにはC♯のキーをB♭音に高く設定する(上記のようにウルフ位置がF♯-D♭間になる。)、そしてさらに・・・といった音高の変更(臨時の調律替え、そしてそれに伴うウルフ位置の移動)を行うのは、いとも容易だったのではないか? と、ふと疑問に思いました。(フォルテピアノは良くわかりませんが、クラヴィコードやチェンバロは、原則、1鍵盤=1弦のはずですし。)
一方で、各種のサイトを見ると、鍵盤楽器におけるミーントーンのウルフの位置はG♯-E♭のみであり、♯キーを♭キーに調律し直す或いはこの逆の作業を行うことにより、ウルフ位置を移動させる、というやり方が掲載されたものを見かけないので、ふと疑問に思いました。
また、モーツァルトは「修正ミーントーン」を使っていたという事をサイトで見たことがあるのですが、その内容が上記のようなものなのか、それともプレトリウスやシュニットガーのタイプなのか、さらにはウルフの移動と組み合わせたものなのか、等について知りたいと思いました。
以上、宜しくお願い致します。
A 回答 (2件)
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No.2
- 回答日時:
サイトを拝見させていただきました。
素晴らしいです!ぜひ、ウルフがG♯-E♭の純正ミーントーンでもお試し下さい!18世紀の響きがあなたの手によって実現される日も近い...♪前回、大切なことを言い忘れました。
異名同音とは減4度が長3度に聴こえると言う現象です。
ですから、例えば「E♭をD♯の代用として用いる」のであって、E♭のピッチの音をD♯として響かせることを指しませんね?
目では長3度に見えていても耳では減4度を聴くことになります。減4度は、楽譜上で長3度として表れた場合、減4度としては脳ではイメージできませんので、長3度に聴こえてしまいます。
ミーントーンの減4度=長3度は428セントですが、単なる不協和音です。そう聴こえないのは、広い(広すぎる=くるった)3度をイメージしてしまうからです。まさに平均律慣れした現代耳の感覚ですね。ホ長調の属和音は不協和音です。このことからも機能和声はリーマン以降の産物であり18世紀には成立し得なかったことになります。
もう少し解説しますと、作曲家はすべての和声進行を熟知しており、他ジャンルの音楽も理解できると言う能力を持っています。そういった能力を活用して弾くので、普通の意味での上手い下手と言う基準が当てはまりません。しかしこういうお手付きはこの音律では通用しません。和音や和声の響きを記憶しているからたどっていけるということが、響きが全く違うこともあるので難しいです。いざ聴いたことの無い響きがすると、思考停止に陥いりませんでしたか?また綺麗な純正音程の響きがした時、頭の中が真白になりませんでしたか?18世紀の響きにはカルチャーショックですねwモツ40番の冒頭のメロディーは正にミーントーンのイントネーションですね♪
グロッサから出ているニケ指揮の「水上の音楽&王宮の花火」は最高です!!ニケはそれまでの古楽界の常識を覆した新時代の指揮者です。彼のマスタ、あったら参加したいw
回答ありがとうございます。
まずはCD情報をありがとうございました。最初、金管の音程が独特でびっくりしましたが、不思議とそんなに違和感が無かったです。(この「違和感のなさ」が、Tallisさんの仰る「減4度が長3度に聴こえると言う現象」なのかなあ、とも思ったのですが、正直、小生のレベルではまだ良く分からない部分が多いです(汗)。ともあれ、あれは「違和感」どころか、逆に何か「元気にさせてくれる(w)」ような音程のようにも感じました。
「思考停止」等の部分は、やはり正直、未だ小生のレベルでは良く分からないです。もう少し修行します!
http://www.youmusic.jp/modules/x_movie/x_movie_v …
上記サイトのように、小生、未だ「要調律替え」のレベルから脱していないので、もう少し要研究&勉強ということは実感してます。(ただ、「単に綺麗なだけってどうなの?」というのは感じ始めてます。ですので、数年後の私に期待です!(w))
No.1
- 回答日時:
はじめまして、セミプロのオルガン・ハープシコード奏者です。
よろしくお願いします。まず、平均律の耳に慣れた現代人と自然倍音列・純正律・ミーントーンに慣れている18世紀の人とでは音程感覚があまりにも違っていた、と言わざるを得ません。
当時は弦と声楽だけが鍵盤楽器などで14世紀ごろまで使われていたラミス等の純正律とは違って完全に記譜通りのタテにもヨコ純正な音程の出せました。つまり、常に奏者が純正を目指して微調節していたのです。キーもタンポもない指孔だけのオーボエ・バス-ン・トラヴェルソも奏者の純正音程を目指した微調節はありましたが木管系はズレが大きかったそうです。さらに金管はバルブのない自然トランペットや狩猟ホルンでしたので自然倍音列しか出せなかったそうです。ですから11倍音や13倍音は狂った音程になります。
そんなわけで18世紀中期までの管弦楽法では金管とティンパニは「騒々し」扱いでした。
さて、本論の鍵盤楽器ですがベートーヴェン以前はただのミーントーンしかありえません。プレトリウスから始まったウェルテンペラメントは平均律主義のオルガン建築家と物理学者との実験的産物にすぎません。
平均律やキルンベルガー第3法にしてしまうとのっぺりとした響きに聴衆の抵抗があったのでミーントーンといかに折衷するかが課題になり無数のウェルテンペラメントが考案されたのでしょう。しかし、本職の音楽家はウェルテンペラメントを知っていたとしても実用的でなくミスマッチ(後述)で、素人の愛好家は特殊なオルガンの理論書など読むはずもなく単純なミーントーンしか知りませんでした。
ミーントーンのヴォルフの位置ですがトムキンズ辺りまではasやdisも調律替えして出していたようですが純正調時代が終わって不協和音を楽しむバロック時代になるとgis-esで固定になりました。でないとへ短調や嬰へ短調がそっけない響きになります。ヘンデルは特殊な分割鍵盤を所有していましたがこれは当時、主調に合わせて調律替えをする古いタイプの音楽家もいたからです。むしろ彼は特殊かもしれません。レオンハルト氏も原始的だといってます。
先ほどのミスマッチな理由として、ガルッピ以降のモーツァルトやチマローザの時代の音楽は三度のイントネーションが際立たないということと、調号が3個以下の調で書かれている点、シャープ系短調で書いていない点などが挙げられます。この時代の音楽はミーントーンの特徴を使ってどこまで音楽を表現できるか?が一種の課題でした。その課題に限界までチャレンジしたのがハイドンやヴァンハルです。まさに「音楽の科学者」です。
回答ありがとうございます。
衝撃的でした(驚!)。音程感覚の違いは何となくイメージしていたのですが、ここまでとは(!)。 ただ、小生、フレット楽器(ギター)もたしなんでおり、「あの楽器(特にリュート)は古くから平均律的な音律「も」使っていた」、という感覚でしたので、現代人と昔の人との音程感覚の違いは、平均律うんぬんよりもむしろ「現代人の多くが純正な音律を知らな過ぎる」ことによるのではないか、とも考えてました。(各種書籍には、最初期のチェンバロは、ピタゴラス音律で調律されていたこと、リュートの奏法を模倣していたこと、などが記載されておりますし。) 弦や声楽の奏者は常に純正を目指して微調節していたのは納得です。 プレトリウス等については、どちらかといえば(ウルフ移動が不可能な)オルガン用の音律ではないか、との感がありますので、何となくは分かります。バロック時代になりgis-esで固定というのも、最近ではそうなのかな、と感じ始めています。↓参考サイト1:
http://www.youmusic.jp/modules/x_movie/x_movie_v …
ただ、現在の小生のレベルでは、未だフランス組曲第4番(変ホ長調)や第6番(ホ長調)をノーマルのミーントーンで弾くことに強い抵抗を感じる状態です。 こんな状態ですので、小生、依然としてモーツァルトのK333(特に第2楽章の変ホ長調)をノーマルミーントーンで弾くなんて考えられないレベルです(泣)・・譜面では「A♭」なんだから「G♯」でなく(ウルフを移動させて)「A♭」にすれば良いじゃん(オルガンより柔軟なんだから)、と感じてます。参考サイト2:
http://www.youmusic.jp/modules/x_movie/x_movie_v …
↑この響きの世界は変ロ長調や変ホ長調でも維持されるべき(故に調律替えすべき)と感じてしまいます。(そもそもこの問題を考えたのは、去年放送された「ぴあのピア」でクリスチャンバッハの曲(後にモーツアルトが協奏曲に編曲した曲)を聴いてシビレ、この音律は何!? と叫びそうになったことがきっかけの一つにありまして、今回「これこそその音律!!!」と確信に近いものを抱いていたので、これが事実でないとすると大ショックです(号泣))
いやあ、それにしてもミーントーンの世界は深いですね!
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