高校化学からの質問です。
コロイドの定義について混乱しています。
1.僕はコロイドというものを、“1nm~100nm程度の大きさで、親水性がなく、水に入れると均一に拡散するもの”ととらえていました。しかし参考書を読んでいると、「デンプンなどは親水基をもっており、水溶液中ではその表面に水分子が水和している」というような記述がありました。水和しているということは、分散しているのではなく、“溶けている”のではないでしょか?
2.「デンプンのように、分子一個がコロイド粒子になっているものを、分子コロイドという」とありました。でも水酸化鉄なども分子であり、かつコロイドですから、分子コロイドと呼べるのではないでしょうか?というか大抵は分子コロイドということになるのではないでしょうか?
以上宜しくお願いします。
No.7ベストアンサー
- 回答日時:
●用語の使い方で不適切なところが有りました。
凝析;疎水コロイドに電解質を加え沈殿を生じさせる操作
親水コロイドのときほど多量の電解質を必要としない。
(前にこれを塩析といってしまったようです。)
塩析;親水コロイドに電解質を加えても沈殿するが、疎水コロイドに比べて多量の電解質が必要になる。この場合には多量の電解質を必要とするので、疎水コロイドの場合と区別して塩析という。
1.凝析についてですが、電荷を中和されたコロイドはなぜ凝集するのでしょうか?分子間力か何かが働くのでしょうか?
●疎水コロイドはもともと沈殿してもよさそうな大きさを持っていました。それがかろうじて静電気的な反発によって大きな粒子になれず、溶液中に分散していました。だからその静電気的な反発する力を奪えばすぐに沈殿するようになります。
そのためには『そのコロイドが帯電している電荷と反対の電荷を持つ物質をくわえる』と、コロイドの電荷が中和されて、沈殿を生じます。
●水酸化鉄(III)コロイドは正の電荷を持つコロイドです。これを沈殿させるには1価の陰イオン(Cl-など)より2価のイオン(SO4^2-)や3価のイオン(PO4^3-)を加えたときにより早く沈殿を起こします。
実はこのように『正に帯電している疎水コロイドは陰イオンの電荷が大きくなるほど早く沈殿を起こす』ことを使って正に帯電しているという結論を得ています。どんな電解質も陽イオンと陰イオンの両方を持っているのですから、わざわざ断る必要は無いのに、電解質を[『コロイドの電荷と反対の電荷を持つ物質』と意味ありげに言った理由です。
逆に負に帯電しているコロイドでは・・・?Na^+よりもMg^2+やCa^2+,それよりもAl^3+を加えたときに早く沈殿を生じることでわかることになります。
●親水コロイドの場合には、この場合と事情が違います。1つには電解質を加えると、電解質のほうが水和する力が強いためにより多くの水を自分の周りにひきつけます。そのため親水コロイドの周りに有った水分子がコロイドから離れていくことによって保護層をなくして沈殿しやすくなるという仕組みです。この電解質による水和を利用するのは効率が悪く、たくさんの塩類が必要になってしまいます。
●親水コロイドには電気も持ち、水和もしているという場合が有りますから、実際にはその物質を具体的に調べながら結論を導いていくしか有りません。ただし、考え方を整理するためには明確に区別をしておかなければ、混乱しますから、上のようにきれいに分けておくのです。
2.コロイドとはあまり関係がないかと思いますが、水酸化鉄はなぜ水酸化ナトリウムのように電離しないのでしょうか?
●<遷移金属のイオン・・・錯イオン>
Na原子などは典型元素で、電子を失ったときに非常に安定なイオンNa^+になってしまいます。
ところがFeは遷移元素といわれ、最外殻電子を失ってイオンになったときにも、内側の電子軌道がきれいではありません。イオンになったからといって不活性ガス型の電子配置にならず、あまり安定ではないのです。そのためその不完全な内側の軌道を安定化させるためにいろいろなことを起こします。
鉄原子は最外殻に2個の電子を持ち、その2個を失うとFe^2+イオンになります。このときいったん安定になるのですが、内側に15個の電子を持っていて、これがあまり都合がよくないのです。そのためさらにこの1個を捨ててFe^3+になろうとします。このとき14個の電子を持っていますね。不活性気体と同じ電子配置になるためには8個又は18個になる必要が有るのですが、8個になるためにはさらに6個も捨てなければなりません。18個にするためには4個もらってこなければなりません。どちらも大変です。
実際には電子をこれ以上捨てるのは大変で、他の化合物から電子をもらってくる方法をとります。このときに一番近くに有るものは水分子です。しかも水分子は結合に使っていない『非共有電子対』を2対も持っています。その電子を無理やり自分の軌道に取り込んでしまいます。そのため水分子も鉄原子にくっついた形になって、普通の共有結合とは違うくっつき方で水分子とFe^2+やFe^3+がくっつくことになります。この「イオンに他の化合物がくっつく」結合の仕方を『配位結合』といい、共有結合の一種なのですがので共有結合の『原子同士がくっつく』場合とは区別します。普通は面倒くさいのでFe^3+と書いてしまいますが、実際には[Fe(OH2)_6]^3+という化学式で表されるイオンになっています。このようなイオンは普通の典型元素のイオン、例えばNa^+イオンなどとは違うので、『錯イオン』といいます。(『錯』は錯綜するとか・・・『複雑』という意味です。)[Fe(OH2)_6]^3+の(OH2)はH2Oのことなのですが、H2OのOでFe^3+にくっついているという意味でOを先に書くことになっています。これがFe^3+イオンやFe^2+イオンが水に溶けている状態ということです。
一口に水和イオンといってしまいますが、典型元素のイオンでは『裸のイオンに水分子が静電気力でくっついている(でも直接取り巻いているのでけっこう強くくっついている)』だけなのが、遷移金属のイオンでは『水分子が配位結合でしっかりくっついてできている錯イオンの周りをさらに水分子が取り囲んでいる』という違いが有ることになります。
<コロイド状態のFe(OH)3>;弱酸性溶液の中で・・・
Fe^3+が水に溶けているという状態がわかったと思うので、なぜFe(OH)3はイオンにならないのかがやっと説明できます。
コロイドができるときの反応は,加水分解反応ですが,
FeCl3+3H2O → Fe(OH)3 + 3HCl
です。これは冷水では起こらず(ゆっくりとしか反応しない)、沸騰した状態でやっと起こります。
なぜ加熱が必要なのでしょうか?それはいったんくっついた状態の水をはずし、そこにOH^-イオンが入り込まなければならないからです。それができるためにはFe^3+イオンとOH^-イオンが水分子以上に強くくっついているということです。そのためFe(OH)3になると簡単にはFe^3+には戻らないのだと考えてください。
Fe(OH)3コロイドがプラスに帯電しているコロイドだということは、OH^-が不足しがちで、完全に反応しきっていない[Fe(OH)(OH2)_5]^2+みたいな中途半端な状態のイオンが残っているということかもしれませんね。
●アルカリ溶液中のFe(OH)3
この場合には、水の中にOH^-イオンがたくさん有るのですから、Fe^3+はFe(OH)3になってしまって、たくさんできると赤褐色の沈殿(=鉄さび)になってしまいます。アルカリ側では沈殿になってしまいコロイドにはなりません。
Fe(OH)3がコロイド状態になるのはOH^-イオンがあまり存在しない状態・・・酸性溶液中でしか存在しません。ところが酸性が強くてもOH^-イオンがH^+イオンと反応してしまいFe^3+イオンになって溶けてしまいます。pH7~pH4ぐらいの弱酸性溶液でなければなりません。
長くなってごめんなさいです・・・・
回答ありがとうございます。
>イオンになったからといって不活性ガス型の電子配置にならず、あまり安定ではないのです。そのためその不完全な内側の軌道を安定化させるためにいろいろなことを起こします。
>実際には[Fe(OH2)_6]^3+という化学式で表されるイオンになっています
などなど、とても勉強になりました。
丁寧で詳しい解説ありがとうございます。
また宜しくお願いします。
No.6
- 回答日時:
●混乱するといけないから・・・・
●ステップ1
【 コロイドというものの特長(定義)】
「ろ紙で除ける粒子よりは小さいが、原子や小さい分子よりは大きい粒子が媒質中に均一に分散している状態のもの」
↓
●ステップ2
【 コロイドの分類(どのようにして安定化しているか)】
沈殿してもよさそうなものが沈殿しないのはなぜか?・・・
「疎水コロイド」と「親水コロイド」という二つの分散の仕方がある
↓
●ステップ3
その違いや特徴は?とかいろいろな現象や、生活の中での利用の仕方など・・・
この段階をごちゃ混ぜにしないように。
親水コロイド・疎水コロイドはステップ2での話だからね。
知識をうまく『整理』してこのように系統立てよう。
大きさ→なぜ?→性質の違い→利用の仕方、身近な現象の理解・・・
これが理科の面白いところ。
何度も丁寧に解説して下さりありがとうございます。
甘えて追加質問させてください。
1.凝析についてですが、電荷を中和されたコロイドはなぜ凝集するのでしょうか?分子間力か何かが働くのでしょうか?
2.コロイドとはあまり関係がないかと思いますが、水酸化鉄はなぜ水酸化ナトリウムのように電離しないのでしょうか?
以上宜しくお願いします。
No.4
- 回答日時:
●#2です。
デンプン粒子は『冷水には溶けない』という扱いをします。例えば、ジャガイモをすりつぶして(切り刻んだだけでも良い)水にいれ、少しかき混ぜてしばらく置いておいて見てください。下に白いきれいなでんぷん粒(=顕微鏡で粒子が確認できるほど大きすぎる;『コロイドは普通の顕微鏡では見ることができない大きさ。』限外顕微鏡という光を横から当てる顕微鏡を使う。)が沈殿します。
これは植物体内ではその粒子の表面がデンプンのうちでも水に溶けない『アミロペクチン』という膜で包まれていて、内部にある同じデンプンでも水に溶けやすい『アミロース』という成分が水に溶け出せないようにしているからです。
この状態はコロイドとはいえません。『にごり水』=『懸濁溶液』=大きな粒が散らばっていて『しばらく放置すると沈殿する』状態です。これは普通はコロイドとはいいません。(※懸濁=けんだく=という言葉があいまいで、コロイドにも使うことが有ります・・・ちょっとあいまいになってしまいますが・・・『懸濁液』の正しい使い方はこの意味になります。)
● これを40℃以上ぐらいに暖めると(普通は60℃ぐらいの熱湯を加え、冷やす。)表面のアミロペクチンが溶けて、内部のアミロースが温水に溶け出し、『デンプンのり状』になります。この状態がコロイドです。
この状態のデンプンはブドウ糖100個~1000個ぐらいはつながった繊維状の巨大分子です。しかし水分がなくならなければ、時間がたってもこれが固まったりはしませんね。水分が有ればいつまでたってもべちゃべちゃです。
この状態は水和しています。水和によって、いくら長い時間放置しても沈殿しない状態になっていたらコロイドといえます。やはり『沈殿しない』=『水和』により安定化しているということが無ければなりませんね。
No.2
- 回答日時:
次の3つの質問について答えてみませんか?
● 疎水コロイドは本来沈殿してもよさそうな水に溶けない大きな粒子が分散していますね。それはなぜでしょう?
●NaClなどの電解質イオンでも、飽和状態で無い限り、沈殿はしません。それはなぜでしょう?
●たんぱく質分子のコロイドと水酸化鉄コロイドの一番の違いは何ですか?
1)疎水コロイドは粒子同士がくっつくことができなくなっています。それは疎水コロイドが電気を帯びた粒だからです。同じ電気を帯びているために、『静電気力で反発』しあっていて、粒子同士がくっつけず、沈殿する大きな粒子にまで育たないのです。・・・・これを沈殿させるためには、『電荷を中和すれば良い』ので電解質である塩類をたくさん加えればよく、この操作を『塩析』と言いました。水の中でも完全に溶解してしまわずに『集合状態のまま』大きい粒のままの状態で水の中に散らばっている(分散といいます)のが、疎水コロイドです。
2)NaClなどの電解質が水に良く溶けるのは、そのイオンが水の中では『水和イオン』になっているからです。これは水分子の特別な性質ですが、電気的な偏り『極性』を持つ分子で、陽イオンにも陰イオンにもひきつけられて、その周りを取り囲みイオン同士が近づけるのを妨げています。この水の層を押しのけて陽イオンと陰イオンがくっつくことができなければ沈殿できないのです。
親水コロイドはこのタイプのコロイドです。表面に水となじむ基をたくさん持ち、水分子と水素結合などでしっかりとくっついています。そのため、コロイド粒子同士がくっつくことができず、やはり沈殿しないようになっています。
この水の膜は塩類を加えてもなかなかはがれることがなく、親水コロイドはちょっと塩類を加えたぐらいでは、沈殿することは有りません。塩析という操作によって沈殿しないコロイドを親水コロイドとした定義も有りました。
親水コロイドは、コロイドよりも親水性の強いアルコールを加えたりしてこの水の保護層を壊すことで沈殿させることができることが有ります。
3)Fe(OH)3とたんぱく質などの分子コロイドの一番の違いは、Fe(OH)3はこれを作っているものがFe^3+イオンとOH^-イオン(場合によってはそのイオン同士をつないだり、Fe^3+に配位結合をした水分子なども有るかもしれませんが)が集合して大きくなった粒子です。基本的な粒子はイオンであり、それが無数に集合してできています。
これに対して、例えばヘモグロビンなどのようなたんぱく質はそれ自体で非常に大きなたった一つの分子を作っています。無論その巨大分子同士が何個か集まってできている場合が有りますが、基本的に非常に大きな共有結合によって結合した高分子からできています。小さなイオンの粒粒が集まったものと、このような巨大分子からできているものはやはり性質が違ってきますので、区別しなければならないということです。
この前から温泉の近くの排水溝のヘドロから金がたくさん見つかったというニュースが流れています。『金メッキ工場の廃液に金が含まれていた?』と疑われたようですが・・・・どう思いますか?
自分は温泉水の中に金コロイドがもともと含まれていて、それが工場廃液の酸や塩類によって塩析されて沈殿したのではないかと思っています。金コロイドは疎水コロイドですから。ニュースの中で工場の技術者が、『金を垂れ流すようなことをしていたら商売にならない』と力をこめていっていたのが印象的でした。
詳しく丁寧な回答ありがとうござます。
分子コロイドの定義については理解できました。
ですが、まだちょっともやもやしています。
デンプン水溶液をコロイド溶液と呼ぶのは、デンプン分子の水溶液中でのあり方ではなく(水和しているか否かではなく)、単にデンプン分子が大きいから、ということでしょうか?でも水酸化鉄の分子はデンプン分子に比べるとずいぶん小さい気もするのですが・・・
宜しくお願いします。
No.1
- 回答日時:
1.コロイドは疎水性(疎液性)コロイドと親水性(親液性)コロイドがあります。
おおくの無機コロイドは疎水性ですが、逆に多くの有機コロイドは親水性です。すなわちコロイドであっても水和は起きています。澱粉の場合も親水性で水和します。大昔のMcLarenらのデータでは100 gあたりで結合している水のモル数が0.44とのことです。2.コロイドにはいろいろな分類がありますが、分子コロイドとミセルコロイドという分類があります。分子コロイドは単一の巨大分子でその中の原子は真の化学結合で結ばれています。大多数の有機の線形コロイドはこのグループでニトロセルロースとか澱粉とかがこれです。有機で球形コロイドのも勿論あります。アルブミンなどです。これに対しミセルコロイドはファン・デア・ワールス力などで多くの小さな分子または原子団が集合しているものです。多くの無機コロイド(イオウ、金、水酸化鉄など)、エマルジョン、石鹸などがミセルコロイドになっています。これらは状況に応じてバラバラになり真の溶液にもなります。
回答ありがとうございます。
>分子コロイドは単一の巨大分子でその中の原子は真の化学結合で結ばれています。
大変参考になりました。
結局コロイド溶液とは、コロイドと呼ばれる大きさの粒子が、水和されていようといなかろうと、水溶液中に均一に散らばっているもの、ということでしょうか。
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