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(1)と(2)は同じ事例におもえるのですが、答えが違います。
(1)某法律基本書に倒壊の危険がある程の欠陥住宅が完成した場合、請負契約を解除できるか?
635条但し書の趣旨は莫大な費用をかけて建築した土地工作物を撤去することは請負人にとって酷であり、また社会経済上不利益であることにある。とすれば、客観的に価値のない欠陥住宅であれば、工作物を撤去するほかないから、解除できるとする。
<また建替え費用を請求できるかについては請負の担保責任による賠償は履行利益に及ぶから建替え費用も含まれると解する。判例(最判平14.9.24)も認めている。>  <>この点に疑問はありません。
しかしこの本は建物費用の請求を認めると解除を認めることと同じになるとしています。
(2)もうひとつの基本書には建物の基礎に欠陥があり倒壊の危険がある場合635条但し書により解除はできない。注文者は瑕疵の修補請求をするか、修補請求に代えてまたはそれとともに損害賠償をすることができるにとどまるとしています。この本はそこまでしか書いていませんが、このとき仮に修補が不可能で損害賠償請求するとき、上記(1)記載の判例により賠償額が履行利益に及び建替え費用相当も賠償する。となるならば、請負人は収去するという損害等を受けるが、建替えをすれば、また請負報酬がもらえるでしょうし、この事例では注文者は解除できないとしたほうが、均衡がとれているとおもうのですがどうなんでしょうか?

私の勘違いかもしれませんが、(1)の建替え費用の請求を認めると、解除を認めることと同じになる。というのがよくわかりません。
635条但し書の趣旨が(1)は(1)請負人に酷である。(2)社会経済上不利益である。としています。
(2)に対しては倒壊の危険がある程の欠陥住宅はその建物を取得する人等のことを考えれば収去か建替えをすべきだと思うから問題ないようにおもえます。以下は(1)に対しての疑問点です。(1)を主張した場合
解除できるとするならば、注文者は建替えするときに、他に信頼できる別の請負人に発注する可能性もあり、そうなると欠陥住宅を建設してしまった請負人はそれまでの建設費用や損害賠償(履行利益に含まれる建替え費用)や収去費用を負担しても建替えの請負報酬を貰えないということになりませんか?他方、解除できないとすれば、同様の負担があったとしても少なくとも建替えの報酬は貰えるということになりませんか?だから私は解除はできないと思うのですがどうでしょうか?
何か勘違いしているかもしれませんがどうか、教えて下さい。

A 回答 (3件)

私自身、請負と解除の論点には弱いので、質問の趣旨を取り違えているかもしれませんが...



まず、そもそも請負契約とは何か? 請負も契約の1つである以上、債権総則・契約総則の適用を受けますから、当事者は、「債務の本旨に従った弁済」をしなければなりません(415条・493条)。

では、請負契約における本旨弁済とは何か? 請負契約は、請負人が「仕事の完成」を約し、注文者が「報酬の支払い」を約することによって成立するものです。したがって、請負人にとっての本旨弁済とは、「仕事の完成」です。

ところで、(法定)解除権は、履行遅滞(541条)と履行不能(543条)の場合に発生します。そうすると、請負人が「仕事の完成」を遅滞した場合又は「仕事の完成」が不可能な場合に、注文者は、解除できることになります。

他方、「仕事の完成」とは、「仕事の目的がいちおうそれらしい体裁を整えている状態」を指すものと解されています。すなわち、「不完全な仕事の完成」であっても、いちおう請負人の債務は履行されたことになります。この不完全な状態を担保するのが、請負人の担保責任です。

※要するに、「欠陥住宅」であっても、ストレートに債務不履行解除にはいかない、というところに請負契約の請負契約たるゆえんがあります。債務不履行ではないので、注文者もその義務を履行しなければならないのが原則です。あとは、その不都合をどうやって解消するか、それを法理論上どうやって説明するか、です。

では、本題。倒壊の危険のある建物が「完成」した場合に、どのように処理すべきか? まず、条文を額面通りに読むなら、(2)のようになります。「土地工作物については解除できない」とあるので(635条但書)、注文者としては修補+損賠しか請求できません。

ここで、請求できる「修補」とは、事実上、立て替えに他なりません(放っておいても、あるいはちょっとの地震で倒壊するようなら、継ぎ接ぎでは直せないから)。倒壊の危険は「重要な瑕疵」に当たるので、過分の費用がかかろうとも請負人の負担において立て替えなければなりません(634条1項本文・但書)。

さらに、損賠とは、通説は416条1項・2項の分類に従って、通常損害(履行利益)と特別損害(信頼利益)とに分けますが、たとえば立て替えの間に要した借家・マンションなどの賃料、倉庫のレンタル料などが挙げられます。

以上により、(2)説に立てば、請負人は、(a)約定通り報酬(たとえば1000万円)はもらえるが、(b)立て替え費用(1100万円)、(c)立て替えの間の借家の賃料など、を負担しなければなりません。注文者は、もちろん、(a)に対応する報酬(1000万円)を支払うことになります。請負人の負担額は、差し引き1000万円です(都合、1000万円の家を2回建てて、1回収去して、1回分しか報酬をもらえないから)。

しかし、そもそも635条但書が定められた理由は、(i)請負人に酷であること、(ii)社会経済的損失が多大であること、とされますが、(i)はもともと「町の大工さん」を想定しての話(いまは注文者よりハウスメーカーの方が強い。民法は明治時代に制定された)、(ii)もおよそ直せないものには意味のない議論(倒壊するような建物を残しておく方がむしろ有害)、といえます。それならば、(1)説のように、解除を認めても構わないことになります。

では、解除した場合にどうなるか? 解除の効果は原状回復なので(545条1項本文)、請負人は、その費用をもって建物を収去する義務を負います。また、既に受け取っている報酬を返還しなければなりません。また、解除は損賠を妨げないので(同条3項)、上記の分類に従い、注文者が新たに家を建てるまでの借家の家賃等を負担します。

そうすると、請負人は、受け取った1000万円を返すことになるので、やはり差し引き1100万円の負担です(1000万円の家を1回建てて、1回収去して、全額返しているから)。

以上により、結論的に請負人の負担は変わりません。注文者としても、現金で1000万円残るか、住宅という物の形に転化するかの違いです。

もちろん、「ヤバい家」を建てるような請負人とは手を切って、信用できる請負人を探せるという意味では、(1)の方が優れているといえるでしょう。しかし、結論が大きく変わる訳ではありません。

この回答への補足

すいません、新たな疑問がでてきてしまいました。まず以下のことを確認したいのですが、多くの場合、発注者(注文人)とはデベロッパーと呼ばれる不動産屋で、請負人とはいわゆるゼネコンだとおもうのですが、そもそもゼネコンは建設総工費(材料費、社員や職人の人件費、建替えの間の借家の賃料等)が1000万円ならその額を負担して、建物を完成させて、請負報酬を例えば1200万円を受け取り、デベロッパーが1500万円(宣伝費、人件費、諸経費などで値が上がって)で売買というような形になるかと思うのですが(実務の世界はよく知りませんので金額は仮定の話です。)?
普通に考えた場合、そうして建った建物が欠陥住宅だった場合建て替えをして、欠陥はないが同様の建物を建て、1500万円の売買価格で売るときに、建設総工費が2000万円(2件分)収去費500万円、請負報酬が2400万円(2件分)では実際売れる建物は1件だけであるから、デベロッパーは1200万円しか出せないということになりそうです。
請負人の担保責任が履行利益(契約が守られたと仮定した場合に債権者が得たであろう利益)に及ぶのであれば、デベロッパーは1200万円しか支払わないでいいし、売買利益300万円も請負人は負担するとおもいます。
そして<最判平14.9.24>で建て替え費用相当額を損害として認めた。とありますが、そもそも請負人が建て替え費用を負担するというのは、当たり前の話で、請負契約は建物の完成により、その費用と同等かそれ以上の報酬を得るとかんがえれば、この判例だけでは、請負人が2件分の報酬をもらえるかどうかわからないということになりませんか?
しかし、これも請負契約の担保責任が履行利益に及ぶと解せば、結局
請負人は2件分の報酬は貰えないということですね!?

補足日時:2009/05/28 19:47
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>> 多くの場合、発注者(注文人)とはデベロッパーと呼ばれる不動産屋で、請負人とはいわゆるゼネコンだとおもうのですが //



ゼネコンと不動産デベロッパーの紛争は、民法が予定している典型事例ではありません。先の回答の通り、民法は明治31年施行の法律なので、そこで想定されていた典型事例を、まずは考えるべきです。

>> そうして建った建物が欠陥住宅だった場合建て替えをして、欠陥はないが同様の建物を建て、・・・請負報酬が2400万円(2件分) //

ともあれ、なぜ2件分の報酬をもらえるのですか? 常識的な感覚として、倒壊するような建物を建てた挙げ句に、「建て替えてやるから金払え」などというのは、居直りに等しい暴挙です。

当然、そのような居直りを法は認めません。瑕疵がある場合、注文者には修補請求権、請負人には修補義務が生じるのであって、請負人に「修補の対価を請求する権利」などないからです。

>> <最判平14.9.24>で建て替え費用相当額を損害として認めた。とありますが、 //

その判例を、きとんと読みましたか? 原文に当たらないまでも、判例解説・評釈くらいには目を通すべきです。

この事案は、原告(注文者)が、別の建設業者に新しい家を建てさせるために、被告(請負人)に対して「修補に代えて、建替費用相当額の損害賠償を請求(634条)」したものです。これに対する被告の反論が、「635条但書が制限する解除を実質的に認めるのと等しいから、建替費用相当額の損害賠償を認めることは、許されない」というものです。裁判所は、建替費用相当額の損害賠償を認めています。

したがって、「請負人に建て直させた場合」ではありません。また、「建築請負について解除を認めた事例」でもありません。

あなたの文章を読んでいると、どうも(1)説・(2)説・判例を混同しているように思われます。先述の通り(またNo.1の回答者も指摘されている通り)、民法の条文にできるだけ忠実な解決は、(2)説です。他方、そういう婉曲な構成をとらずに解除まで認めてしまうのが、(1)説です。最判H14.9.24は、解除までは認めていません。

最判H14.9.24が、どういう事案で、どういう論理構成で、どういう結論を出し、(1)の教科書がどういう趣旨で引用しているのか、(2)説と判例の関係はどうであるのか、きちんと理解する必要があります。
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この回答へのお礼

解除の可否や請負人の変更の在るか無しかで関係者の利益が変わってくると勘違いしていたようです。大きな違いは無いということが自分なりに整理できました。貴重な時間を割いて付き合ってくださって本当にありがとうございます。

お礼日時:2009/05/29 16:52

両者とも、理屈はともかくとして、注文者にとって結果は同じ。



解除の場合
原状回復
欠陥住宅の取り壊し。
注文者は、支払った内金300万円の返還を受け、2000万で、別の業者に家の建築を注文する。

立替の場合
欠陥住宅の取り壊し。
立替に対して、
注文者は、残額の1700万円を支払う。

あなたが、注文者だったら、欠陥住宅を建築した業者を信用できますか。
手付け代わりに、1400万円を先に振り込ませる「富士ハウス」を信用しますか。
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