日本国内で、複数種類の外貨を日本円に両替しようと思っています。
外貨の内容は、T/C米ドル約2,000、現金濠ドル1,200、現金中国元15,000です。
T/Cは銀行でもそれなりに許容できるレート・手数料なのですが、現金のレートが恐ろしく悪いと感じます。特に中国元のレートにはビックリします。
何か銀行での両替以外に良い方法はありますでしょうか?
ネットで「外貨両替」で検索をかけると、FXや外貨預金の口座を利用して両替すれば、手数料も安くレートも良い、などの宣伝広告が乱立していますが、そもそも、外貨のままでも口座開設を受け付けてくれるのでしょうか?
とあるオンラインのFX取り扱い証券会社に問い合わせたら、「不可」との返答でしたが、どこかそのような取り扱いがある証券会社はありますか?
あるいは、FXや外貨預金以外にレート・手数料が良い両替方法はありますか?
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
豪ドルはまだなんとか手立てがあるのですが、中国元は率直に申し上げてお手上げです。
中国に出張なり旅行なりに行く人をつかまえて、その人と個人的に両替するくらいしか思い付きません。1. 為替用語説明
本件の回答にあたっては為替用語を抜きにできないので、まずはその説明におつき合いください。
・銀行間レート 外国為替市場において文字通り金融機関間の取引に使われるレートで、新聞やテレビで「今日の東京外国為替市場、終値は1ドル=90円20銭でした」などと報じられているレートは通常この銀行間レートです。また銀行間レートは世界の為替市場で連動しているため、日本と他の国とで懸け離れた値になることもありません。
・公示仲値(TTM) 銀行間レートは常時変動しているため、これを両替の基準レートとすると処理が煩雑になります。そこで各金融機関は銀行間レートを参照しながら、銀行間レートに代わる数字として「公示仲値」というレートを定め、その日の取引の基準レートに用います。公示仲値と銀行間レートは厳密には一致しませんが、両替の有利不利を考える上では同一視して差し支えありません。また公示仲値は各金融機関が独立に定めるため若干のばらつきがありますが、差異はあっても0.1%かせいぜい0.2%です。
・対顧客電信売レート(TTS) 外貨現金のやり取りを伴わずに、銀行が外貨を売る(顧客が買う)取引きで適用されるレートです。外貨建てトラベラーズチェック(以下TC)の購入、外貨建て送金などで使われます。TTSは決まった幅の手数料(為替手数料)を公示仲値に上乗せすることで機械的に設定されます。
・対顧客電信買レート(TTB) TTSの逆で、外貨現金のやり取りを伴わずに銀行が外貨を買う取引きで適用されるレートです。これも為替手数料分を公示仲値から差引きすることで機械的に設定されます。TCの買取にはTTBより少し(0.1~0.5%)安いレートが適用されます。その差は処理期間分の金利です。
・外貨現金取扱手数料 外貨現金を扱うとその国からの輸送コスト、運用に回せないことによる死蔵コスト、為替変動によるリスクが発生します。そこで外貨現金のやり取りを伴う取引きには「外貨現金取扱手数料」を課すことでコスト/リスクの埋め合わせをします(名称は銀行により異なる)。TTSにさらに外貨現金取扱手数料を上乗せした数字が「外貨現金売レート」、TTBからさらに外貨現金取扱手数料を差し引いた数字が「外貨現金買レート」です。
「(豪ドルや中国元の)現金の両替レートが恐ろしく悪い」とお感じになるのは、豪ドルや中国元では外貨現金取扱手数料が高く設定されているからです。それにはちゃんと理由があります。
上で述べたように銀行にとって外貨の現金を保有することは、死蔵コスト、為替変動リスクの発生を意味します。死蔵コストや為替変動リスクは通貨によって如実に異なります。例えば米ドルやユーロであれば売り買いとも需要が多く、少ない手持ちで何回も回転させることができるので死蔵コストは相対的に小さくなります。また為替変動はあるとは言え他の通貨に比べればまだ安定です。
これに対して豪ドルは、米ドルやユーロに比べれば需要が少ないので回転が悪く、政策金利も高いので死蔵コストがかさみやすい性質を持っています。為替変動が比較的大きいことも不利な要因で、このために外貨現金取扱手数料が高く設定されています。中国元はさらに条件が悪く、需要が多くないことに加えて流動性が低いため現金での保有にコストが嵩みます(*1)。
豪ドルや中国元のように外貨現金取扱手数料が高い通貨は「両替・再両替ともその国で行う」「国外で現金に触らない」のが大原則です。
2. 外国為替証拠金取引を使った両替
「外国為替証拠金取引(FX)を使うとお得に両替できます」といった情報は、既にご経験なさったようにWeb上に氾濫しています。しかしその大半は役に立たない書生論で、アフィリエイト収入を得るために都合のよい情報だけ並べていると言っても過言ではありません。
FXとはご存じの通り、FX業者内の自分のアカウント内で「数字上で」外貨を売ったり買ったりして差益を得ることが目的の商品です。数字を動かすだけ、すなわち外貨現物のやり取りはしないので手数料は本質的に安く済みます。しかし裏返せばFX業者で「両替」できたといっても、それは外貨にせよ円貨にせよ帳簿上で保有しているだけのお金です。
日本円から米ドルへの「両替」の例で考えてみましょう。まずFX業者に日本円資金を送金し、業者内の自分のアカウントに入金してもらいます。その資金を適宜のタイミングで米ドルに振り替えると、日本円の残高が減ってその分米ドルの残高が増えます。その換算で使われるレートは銀行間レート+数銭程度なので、ここだけ見れば確かに「銀行よりずっとお得」です。
しかしFX業者内の自分のアカウントに「数字として保有している米ドル」はいったいどうやって使ったらよいのでしょうか。FX業者がその分の米ドル現金を渡してくれるわけではないので、「米ドルを持っている」といってもそれは現実の買い物には使えない「絵に描いた餅」です。ただし絵に描いた餅とちょっと違うのは、手数料を払っていくつかの手順を踏めば本物の餅に交換できることです。
その手順とは(1)FX業者に依頼し、業者内の自分のアカウントに保有している外貨の資金を、適宜の銀行の自分の外貨預金口座に国内外貨送金してもらう (2)銀行の外貨預金口座に入金された資金を、外貨現金取扱手数料を払って出金する です。そして実際にはここで少なからぬ手数料がかかるのですが、知らないのか意図的に伏せているのか、「FXでの両替はお得」と謳っているページの大半はこの部分の手順と手数料をきちんと記していません。
「FXでは銀行の20分の1の手数料で両替できます」といった文言はよく見かけますが、情報を精査すると、FXについては「FX業者内の自分のアカウントで日本円を外貨に振り替える」際の手数料しか計上していないのに対し(=その手数料だけでは外貨現金を手にできない)、銀行については外貨現金を手にするまでの全ての手数料(為替手数料+外貨現金取扱手数料)を計上している点で恣意的な比較になっています。
豪ドルの現金を日本円に両替することは上の逆順で一応可能です(*2)。すなわち適宜の銀行で豪ドル現金を豪ドルの外貨預金として預け、その資金をFX業者に国内外貨送金し、その上で自分のアカウントで豪ドル→日本円の「両替」を数字上で行います(*3)。しかし銀行で豪ドル現金を豪ドル外貨預金として預ける際に外貨現金取扱手数料(1豪ドルあたり7円~7円70銭)がかかり、その資金をFX業者に送金する際にさらに国内外貨送金手数料(3,000~5,000円程度)とリフティングチャージ(2,500円, *4)がかかります。これならまだ、銀行の窓口で即時両替した方がマシです。
中国元についてはそもそもこの方法が使えません。中国元のFXは一部の業者が扱っていますが、その前段階の「銀行で外貨預金」と「外貨預金口座から国内外貨送金」のいずれもが、中国元ではできないからです。
3. 具体的な両替法
私でしたらですが、豪ドル現金についてはみずほ銀行で外貨預金を経由して日本円に転換(円転)する方法を使います。
豪ドルの外貨現金取扱手数料はほとんどの銀行が、1豪ドルあたり7円~7円70銭に設定していますが、みずほ銀行では外貨現金をその通貨の外貨預金として預ける場合、「1回500円」という独特の設定にしています[1]。そして外貨預金口座の豪ドルを円転する際の為替手数料は1豪ドルあたり2円50銭です。
すなわち1,200豪ドルをみずほ銀行の外貨預金経由で円転した場合、外貨現金取扱手数料(*5)が500円、為替手数料が1豪ドルあたり2円50銭の合計3,500円の手数料で済みます。これをもし適宜の銀行で即時両替すると、1豪ドルあたり9円50銭~9円70銭(為替手数料と外貨現金取扱手数料の合計、*6)が差し引かれて、合計で11,400円~11,640円目減りしてしまいます。
みずほ銀行に預けた後、さらにFX業者に国内外貨送金するという方法も考えられますが、1,200豪ドルと少額の場合は国内外貨送金の手数料が割高になるので、そのままみずほ銀行で円転すれば十分です。FX業者での両替でメリットが出るのは1万通貨単位(1万米ドル、1万ユーロ、1万豪ドルなど)以上とお考えください。
金券ショップでは銀行より若干有利なレートで両替できることが多いのですが、豪ドルは扱っているショップが少なく、扱っている場合でも買取レートの銀行との差は1豪ドルあたり数十銭程度に留まります[2,3]。豪ドルの場合は検討に含めなくて構いません。
中国元については冒頭述べたようにお手上げです。外貨預金やFXを使って両替する方法がないためです。金券ショップでも両替は可能ですが、銀行と変わらないか銀行より悪いくらいです[2-4]。銀行でも金券ショップでも、公示仲値または銀行間レートからの目減りは1中国元あたり1円70銭~2円です。
どうしてもよいレートで両替したいなら、あとは誰か中国に行く人を見つけて個人間で両替するくらいしか思い付きません。その時の公示仲値か銀行間レートで両替すればお互いに得になります。両替業務は平成10年に自由化されたので、個人間で適当なレートで取り引きしても、外国為替及び外国貿易法にはなんら違反しません[5]。
4. まとめ
(1) 豪ドル現金は、みずほ銀行の外貨預金を経由して円転する方法が最善と思われます。一方中国元現金についてはうまい両替法が思い当たらず、個人間での両替が考えられるくらいです。
(2) 「外国為替証拠金取引での両替はお得」と謳っているページは、その大半が外貨現金での入出金の手順やそこでかかる手数料を説明していません。実際には現金外貨現金取扱手数料、国内外貨送金手数料などが必要なので、必ずしも得と限りません。
参考ページ
[1] http://www.mizuhobank.co.jp/saving/asset/gaika/m …
[2] http://www.ticketzone.jp/gaika/gaika_index.html
[3] http://www.tiketking.co.jp/change/chagetop.php
[4] http://kinken.homepage.jp/change/
[5] http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/kawase.html
*1 例えば米ドルなら値下がりの局面でも為替予約などの手段を併用することで、手持ち現金の値下がりを埋め合わせて変動リスクを回避することができます。一方、中国元は国際的な決済通貨とは言い難いこともあり、そのような手段がほとんどありません。また中国元には持ち出し制限があるのも不利な要因です。
*2 FX業者への外貨での入金は、本人名義口座からの国内外貨送金に限られます。外貨現金、外貨建てTC、外国発行小切手などで入金できる業者には知る範囲で心当たりがありません。
*3 このあとはその日本円を自分の銀行口座に送金してもらいます。こちらは無手数料でできます。
*4 リフティングチャージはかからない銀行もあります。
*5 みずほ銀行での呼称は「外貨両替手数料」です。
*6 豪ドルの為替手数料は1豪ドルあたり2円~2円50銭、外貨現金取扱手数料は同じく7円~7円70銭ですが、その合計の範囲が「9円~10円20銭」とならないのは、豪ドルの場合為替手数料が2円の銀行は外貨現金取扱手数料が高めで、為替手数料が2円50銭の銀行はその逆だからです。
参考URL:http://www.mizuhobank.co.jp/saving/asset/gaika/m …
この回答への補足
日本で外為取引が自由化されたとき、コンビニエンスストアでも外貨両替が出来るようになる、なんていう予想をしていた雑誌や新聞の記事がたくさんありましたが、あれから随分経ちましたが現実には、金券ショップで扱うようになったのと、外貨を取り扱う銀行店舗、外貨預金などが増えたくらいで、結果、それほど「劇的な変化」はなかったですね。
補足日時:2009/09/27 19:21大変詳しいご説明ありがとうございます。
ウェブで検索しても、ここまで詳細に比較して説明しているサイトは見つけられませんでした。
しかし、日本の銀行での外貨現金取り扱いレートは、他の国の両替店と比較してもかなり悪いように思いますし、銀行や金券ショップ以外の両替店が大都市や観光地のような外国人が多いところですらほとんどないのは、何か特別な理由があるのでしょうか。
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