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「波動」はアイヌ語でなんて言うのか、アイヌ語に詳しい方教えてください。
お願い致します

A 回答 (5件)

No.1~4です。


まだ締め切りをされていないので、また お邪魔させてください。
別回答で暫く投稿を休むとお伝えしておりましたが、予てから自分の回答に誤記や紛らわしい表現を見つけた場合は、加筆訂正することにしておりましたので、今回もそのようにしたいと思います。
雷電さんのご質問に関しては、特に補足や訂正が多くなり誠に申し訳ないのですが、自分が知り得る情報をなるべく正確な形で書き記したいと考えておりますので、見づらい投稿となりましたことをどうか御了承下さい。

*  *  *  *  *

◆補足訂正(No.2後半部より)
>神の本当の姿は魂であり、その姿形は人間と同じで、人間と同じように恋をしたり、機を織ったり彫刻をしたり、お酒を飲んで仲間と宴を開いたり、狩りをするなどして暮らしています。
肉や毛皮はアイヌ(人間)に対する土産で、アイヌモシリでの役目を終えると本来の姿(魂)に戻り、神の国(天界)に帰ります。

最後の“神の国(天界)に帰ります。”
ここの書き方が良くなかったので、補足をしたいと思います。
神の国とはカムイの故郷、すなわち「カムイモシリ」のことなのですが、カムイモシリは必ずしも「天界」をさす訳でもないのです。
(なお、天界自体も六層に別れるなど、上に行くほど位の高いカムイが暮らしているとされています。)

オキクルミやその父(雷神カンナカムイとも伝えられています)の場合は、カムイモシリとは天界を指すのですが、神々の属性によりカムイの故郷であるカムイモシリの存在場所は異なります。
山の獣であれば山の奥深くに、鳥であれば天空の上に、海に棲まうものであれば水平線の彼方にあると考えられており、人が足を踏み入れることの叶わぬ場所にあるとされています。

オキクルミが他のカムイと違うのは、カムイモシリにあってもアイヌモシリ(人間界)に降り立っても その姿は人のままで、キムンカムイ(山の神=熊)のような外套、つまりは毛皮や肉といった土産を携えていないことです。
多くのカムイはその外套を土産としてアイヌモシリを訪れるのですが、オキクルミがアイヌにもたらしたものとは、火種の作り方、家屋の建て方、猟や漁の道具、毒矢(トリカブト)、ヒエの種と栽培法、ヒエ酒の作り方、酒でカムイを祭ることなどであり、文明や文化でした。

*  *  *  *  *

本来のご質問から逸れたことを盛り込んだ回答になってしまいましたが、久しぶりに自分の考えだけに頼らずに、色々な書籍を読み返したり、また新たに読んだりと、「本当の意味で考える=純粋に考える」ということが久しぶりに出来たと思います。
もう少し良く練ってから投稿すれば良かったという反省すべき点もありましたが、ご質問に参加できたのは私にとって大変意義深いことでした。

一方的に沢山書いてしまいましたが、この回答も雷電さんのご都合が良いときに、好きなペースで読んでいただけたらと思っております。
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No.1からの連続投稿となりましたが、最終回としたいと思います。


今回、調べて解ったことの最終報告です。

まず、水の中で揺れると言う意味を持つ「オチュースイェ」ですが、「オチュー」という言葉自体に なまめかしい意味があることが分かり引っ掛かりを感じて調べ直したのですが、『萱野 茂のアイヌ語辞典 増補版』によれば、浜に上がった鯨が体の下半分だけを波間で、ゆらゆらとゆらしている様子なのだそうです。
…これは、波動とは ほど遠いです…ね。というか、そんな言葉があること自体が不思議です。
また、器の中で揺れると言う意味を持つ、「エコヤッコヤッ」ですが、これは、手に提げたバケツの水などが振動で揺れる様子を指すのだそうです。

そんな状況まで、言葉一つで言い表そうとしていたなんて、驚きですよね。アイヌは言葉をとても大切にしていたからなのでしょうか。
狩りに行くときや山に行くときなど、急な状況の変化は命に関わることでもあったので、直ぐさまに仲間に伝える必要があったのかも知れませんよね。
昔のアイヌの生活はカムイと共にあったので、お祈りの時は特に言葉の正確さが求められ、充分に経験を積んだ年配の男性が、その役目を果たしたのだそうです。
この辺は、古代日本の言霊信仰に繋がる世界観があって興味深く思います。

これは、昔読んだ新聞記事の受け売りですが、そもそも、アイヌ語には、その時々の状況を表した擬態語や擬声語が多いのだそうです。
日本語もそのように繊細な言葉だと言われていて、海外の翻訳家も、日本の小説や映画、漫画などを翻訳する際に適切な表現が中々見つからなくて頭を悩ませるものなんだそうですが、アイヌ語は、更に その上を行っているんだそうです。

それと、度々悩まされていた「m」(通常カナ表記では小文字の ム で、口を閉じたまま ム と発音)のカナ表記ですが、「umma」(馬)や「kompu」(コンブ)のように、《 m の後にマ行音か、パ行音が続いた場合には、小文字の ム は、ン で表記するのが一般的》なようです。
( umma=ウンマ、kompu=コンプ )
『萱野』『沙流』『千歳』でもその様に表記されていました。

でも、図書館は凄いですね。
じっくり通ったのは久しぶりだったのですが、自分で思っていたよりも良い書籍が沢山揃っていました。
ネットはあくまでも当たりを付けるだけに留めて、その後は図書館を利用するのが近道だったみたいです。
思わず拍子抜けしてしまうようなことがありましたので、詳しくは、別件のご質問の方でご報告したいと思います(なんとか間に合わせたいのですが、間に合うかなぁ…)。

ドタバタした回答になってしまいましたが、色々、発見もあって楽しかったです。ありがとうございました。
 それでは、失礼いたします。
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(No.2の続きです)


5.「揺れる」
suye スイェ【他動】1.~をゆらす、振る。2.ラム(ram) スイェ【他動】[その心・をゆらす] ~をなだめる(泣く子をあやすなどして)。『沙流』 
アッア・コテ ワ ア・スイェ ペコロ(pekor) = 紐を付けて振るようなものだ(子供の動きの様子)
シンタ スイェ イヨン ノッカ = ゆりかごをゆする子守歌(スイェ:振る、ゆさぶる、ゆする)『萱野』            

シスイェスイェ [si-suye-suye] 揺れ動く  
スイスイェ [suy-sye] ゆする、揺り動かす 『萱野』

suyesuye スイェスイェ【他動】[suye-suye 振る・(重複)] ~を何回もゆらす/振る/ゆすぶる {to shake, swing~repeatedly} *ものを振り動かすことに使われる『沙流』
ヤムニ スイェスイェ = クリの木をゆさぶる (スイェスイェ:振るゆさぶる) 『萱野』

rerasuye レラスイェ【自動】[rera-suye 風(が)~をゆらす] 風にゆらされる 『沙流』(rera-suye:ゆらめく『萱野』)


6.「その他」
《 nay'kosampa (ナイコサンパ) 》
 [nay-ko-sampa] さっと、しゅっと鳴る、響いてくる
カムイ イタカウ(イタク(itak) ハウ) ナイコサンパ = 神の声が響いて来た。
タム(tam) ピフム(pihum) カン ナイコサンパ = 刀を抜く音、しゅっと聞こえた。 『萱野』

《 ko'siw'natara (コシューナタラ) 》
[ko-siw-natara] うなりをあげる
タム(tam) セレフム(serehum) コシューナタラ = 太刀風がしゅっとばかりうなりを上げる(ユカラ) 『萱野』

*  *  *  *  *

【カナ表記について】
kewrototke ケゥロトッケ → ケウロトッケ
sepep'atki セペプアッキ(セペッアッキ? ) → セペパッキ
humum'atki フムムアッキ(フムマッキ?) → フムマッキ
nay'kosampa ナイコサムパ → ナイコサンパ
ko'siw'natara コシゥナタラ → コシューナタラ
kosiw'siw'atki コシゥシゥアッキ → コシューシューアッキ
o'ciw'suye  オチゥスイェ → オチュースイェ
o'maw'suye オマゥスイェ → オマウスイェ

矢印の左側が私が書いたカナ表記で、右が辞書にあるカナ表記になります。あまり「'」を意識しないで、そのまま連ねて読んだ方が、本来の発音に近かったようですね(難しく考えない方が良かったのかなぁ)。
アイヌ語電子辞書サイトでは、原義を意識して分かち書きをしている(敢えて語素を示す為の表記方を取っている)のだと思いますが、もしかして、読みにも反映されるものなのかな?と悩んでしまいまして…。

他にも悩んだのが、「-w」のカナ表記です。
http://www.geocities.jp/ainuitak/hyoki.htm
こちらに書かれていることから察するに、aw, iw, ew, ow(アゥ, イゥ, エゥ, オゥ)は、ア、イ、エ、オの音節と同じ長さになるように発音すると言うことになると思います、すると、aw, iw, ew, owの「w」の部分は「u」よりも短く弱い発音であることになるとおもいます。
また、こちらでは「w」は「ゥ」と表記するともあります。

すると、kewrototkeも、ko'siw'nataraも、o'ciw'suye、o'maw'suyeも「-w」を「ウ」と書いてはまずいのではないか、「-w」だから、「ゥ」ではないかと思ったんです。
ウとした方が無難だと思ったけれど、ゥとする方がより発音を表すには正確なのではないかとも考えたんです。
実際に「-y」、ay,uy,ey,oy(アィ、ウィ、エィ、オィ)も、やはり、a,u,e,o(ア、ウ、エ、オ)の音節と同じ長さになるように発音するのであれば、「y」も「i」よりは短く弱い発音で、「w」も「y」も母音に添えて軽く短く発音されるものであるらしいと言うことは何となく理解できたので、「ケゥロトッケ」、「コシゥナタラ」、「コシゥシゥアッキ」、「オチゥスイェ」、「オマゥスイェ」と書き進めていきました。
でも、投稿してから、早まったような気がしてしまいました。

雰囲気は伝わるかも知れないけれど、あまり、そう言う書き方はしないのではないかな?…と。
「ko'siw'natara」は「コシュウナタラ」ではないかとか、「オチゥスイェ」は「オチュウスイェ」とした方が良かったのではないかとか…。


【アイヌ語辞典について】
と言ったことから、あまり推測を入れて書いては失礼になるし、これから真面目に勉強しようとしている人の迷惑になってもいけないので、例文やニュアンス、発音がしっかり解る辞書で、出来れば三冊以上は閲覧して、比較しながら調べるのが一番だと思い直しました。
アイヌ語の文章を読むときも、「こんな感じに読むのだろう」とあまり悩まずに読んでいたのですが、訳や注釈に頼っていたので、回答となると自分の不勉強が解ってしまいますね。
でも、前向きに確認作業が出来たので、いろいろと収穫もありました。先ほども、「w」と「y」が、音節の末尾でウ、イのように発音されるとき、それぞれが「u」と「i」より短く弱い発音で、母音に添えて軽く短く発音されるものであるらしいということを書きましたが、これらは辞書や専門書にはちゃんと書かれています。

これまで予想だけで済ましてきたことも、今回は回答者として参加したので、自分でも疑問に思っていたことが、辞書や専門書を読んで理解が進んだ分、スッキリした面もありました。
それが、「i」と「y」、「u」と「w」、「r」の発音です。
文法も理解できているとよいのですが、ちょっと本を読んだら…、「ああ、日本語もしっかり理解していないと、これは、読みこなすのが大変だなぁ…」と。

まずは、出来るだけ正しく読めるように、語彙が増やせるように、そのくらいの低い目標だったので、参加そのものが無防備だったかも知れません。けれど、アイヌ語の辞書を真剣に読んだことがなかったので、これは、著作者とそれに纏わる人達の情熱というか、人生が感じられて、いい加減な回答は出来ないなと、今回は特にヒシヒシ感じられました。


No.2の冒頭でご紹介した辞書について、ここではもう少し深く解説していきたいと思います。
まず『萱野 茂のアイヌ語辞典 増補版』ですが、こちらは語彙の豊富さと巻末に日本語からアイヌ語への索引が付いている手軽さから初心者にも向いていて、語彙を増やしたい人には特にお薦めです。

また、例文や解説もユカラ(神謡)やウウェペケレ(昔話)だけではなく、萱野さんの実体験も載っていて、人柄も忍ばれ、アイヌ文化そのものを知りたいという人にも お薦めです。

『アイヌ語沙流方言辞典』にも同様に、物語や個人の語り等が紹介されていますが、他にも品詞や英語の補足も載っていて、言葉のニュアンスが解り易く、解説が丁寧な点が優れています。
価格も税込み18,900円と高めではありますが、よく研究されていて使い勝手のある良書だと思いました。

『アイヌ語千歳方言辞典』は『アイヌ語沙流方言辞典』と辞書としての形式は似ていますが、英語訳はなく、こちらは語彙数はあまり多くはありません。但し、語句の和訳の説明が解りよく、ユカラやウウェペケレの例文のセンスが良いと思います。 なお、アイヌ語千歳方言は、一番研究が進んでいる沙流方言に似ているので、辞書としてのメリットも高いと思います。

この他にも『アイヌ語方言辞典』(服部 四郎 編/岩波書店)も一部参考にしました。こちらは専門家向けということですが、巻末の索引から日本語からアイヌ語の検索も出来ますし、英語でアイヌ語のニュアンスも補われています。基礎的な単語に置いては、学術的に信頼が置ける代表的な辞書なのだそうです。


今となっては、お粗末なことも書いてしまいましたが、この回答も、いくらかでも役立つ情報を引き出す手助けになっているのであれば、嬉しく思います。
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No.1です。


もう一方の方ですっかり恒例になってしまいましたが、再投稿させてください。

前回の投稿で、電子辞書サイトの解説だけではニュアンスが良く分からない言葉が幾つかございましたので、もう少し意味を明確に出来ないかと、図書館で直にアイヌ語辞典を閲覧して参りました。
今回主に利用したのは、『萱野 茂のアイヌ語辞典 増補版』(萱野 茂 著/三省堂)と『アイヌ語沙流方言辞典』(田村 すず子 著/草風館)、『アイヌ語千歳方言辞典』(中川 裕 著/草風館)です。
『萱野 茂のアイヌ語辞典 増補版』で先ず巻末にある日本語の索引(語彙が多く見当を付けられるので非常に便利です)から、関連がありそうなアイヌ語の語句を調べ、その解説を見てもニュアンスが良く理解できなかったものは、『アイヌ語沙流方言辞典』で調べました。
大概は、それで手応えを感じられましたが、それでもはっきりしないものは、『アイヌ語千歳方言辞典』で調べました。
そのようにして行くうちに、前回の回答に補足や訂正を加える必要がまた出てきてしまいました。

なお、辞書からの引用をご紹介する際に便宜を図って、『萱野 茂のアイヌ語辞典 増補版』は『萱野』、『アイヌ語沙流方言辞典』は『沙流』、『アイヌ語千歳方言辞典』は『千歳』と著者の方々には不躾ではありますが、簡略表記させていただきました。
また、ここにある【自動】とは自動詞のことですが、『千歳』では【動1】と表記されていますが、これは一項動詞(主語だけをとる)で、つまり動詞とありますので、『沙流』と表記を統一するために【自動】に改めています。

カナの小文字表記に関しては、なるべく補足するように努めましたが、これまでの説明とローマ字表記で ほぼ理解していただけたと思いますので、補足済みの語句では省略したり、引用した例文の()の中にローマ字で表現を補いました。

以下にある《》で表された語句は、No.1の回答のときに書いたアイヌ語辞書サイトから調べた言葉とその訳で、それぞれの項目に振ってある数字は、前回の内容と対応しています。
また、辞書サイトから検索した語句は、一語一語の意味から全体の言葉の組成や原義の理解を意識したもので、分かち書きであったので、これを自分でカナに直すときに迷いが生じたり、自己流な面も多々あり、今回利用した辞書のものと違った表記になってしまったものも中にはございましたので、辞書(『萱野』『沙流』『千歳』)に実際に載っていた表記を手本に直しました。

*  *  *  *  *

1.「波の関連語」

《 rir-yupke(リルユプケ):【自動】波立ってくる 》
“rir”ですが、『アイヌ語絵入り辞典』(知里 高央 横山 孝雄 共著/蝸牛社;知里 高央さんは知里家の長男で、知里 幸惠さんの弟さんであり知里 真志保さんのお兄さんです)では、「rir リル 波」と書かれていて、『アイヌ語沙流方言辞典』と『アイヌ語千歳方言辞典』では共に「rir 波」とありますが、こちらのカナは“リリ”(後の リ は小文字表記)となっていました。前回は、
>rim が rir に変化したのは、音素交換が起こった可能性も考えられます
と当て推量をしてしまいましたが、《rir-yupke》と二語が連ならなくても単独でも“rir”という名詞がある(音素交換の結果のみで生じる言葉ではない)と言うことが解りましたので、この点を訂正して、お詫びしたいと思います。

また、“rir”が「リリ」(後の リ は小文字)のように書かれていても、必ずしも「リ」の音が反映されているとは限らない〈 『アイヌ語絵入り辞典』には「リル」と小文字を使わずに書かれていることも考慮すると、寧ろ参考リンクにある様似のアイヌ語語彙集の表記「リル」(ルは小文字)の方がより近い発音であるのかも知れない) 〉という事も解りました。
以下は、くどいようですが【r の発音についての考察】です。
これまでも何度か「r」について解説をしましたので、もし、ご面倒でしたらこれは読み飛ばしてください。

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【r の発音についての考察】

>rは直前の発音の影響を受けます。(中略)前の音がア段の音であれば「ラ」に、イ段の音であれば「リ」に近く聞こえるのです(ア段→ラ、イ段→リ、ウ段→ル、エ段→レ、オ段→ロ)。

とNo.1でも解説をしましたが、これは、kar(カラ・作る)、ker(ケレ・靴)、kir(キル*・髄)、kor(コロ*・持つ、)kur(クル*・人)等、“音節の末尾にr”があり、音節もこれのみで、“後に続く音がないとき”の発音であり、これらの発音は前の母音の音色が強く響く場合が多く、それぞれが、ラ、リ、ル、レ、ロ*の音色を含むのだと『アイヌ語沙流方言辞典』にもあります。
(*実際の表記法ではラ、リ、ル、レ、ロは小文字)

しかし同著では、先ほどの例とは違い、“音節の末尾のr”の直後に音が続く場合、例えば kar yakka(作っても)と言うときはカラヤッカに近くは発音されず、カリヤッカに近い発音になり、同様に、kar wa(作って)と言うときは、〈 カナ表記ではカラワ(ラは小文字)だが 〉カラワよりもカルワに近い発音になると言うことや、同様にarpa(行く)も〈 カナ表記ではアラパ(“ラ”は小文字)だが 〉アラパよりはアルパに似た音であるなど、カナ表記の小文字のラ、リ、ル、レ、ロは、必ずしも発音にそのまま反映されるわけではないので、十分に注意が必要という主旨の解説がありました。

度々“r”の発音については触れていますが、これが本当にややこしいです。カナを小文字を交えた手書きに起こしたり、“後に続く音がないとき”には問題はないのですが、
「場合により、人により、震え音(巻き舌音)だけが現れることもある。ただし r の発音には個人差、地域差があって、どれが正しいとは一概には言えない」と『アイヌ語文法の基礎』(佐藤 知己 著/大学書林)にも解説があり、ここには以下のような例も挙げられています。
 
  例:ker  ケル、ケレ 「靴」 
     kar  カル、カラ 「作る」
     kor  コル、コロ 「持つ」
        (原文ではル、レ、ラ、ロは小文字)
    
また、この本には音節末の“s”も「シ」だけではなく「ス」に近く発音されることがあるという説明があります( as アス、アシ 「立つ」〈 原文では“ス”と“シ”は小文字 〉)。
私は、この辺(r の発音)は書物により表記に差があり、実際に例に挙げられたようなカナ表記も目にしてきたので、気に掛かってはいたのですが、元々が異言語だし聞き取る音が頼りなので、表記にばらつきがあるのではないかと考え、その時々の雰囲気で読む癖がついていました。しかし、このように具体的に書かれた説明を読んでスッキリしました。
もしかすると、雷電さんもこれからアイヌ語の物語を読むときに、疑問にお感じになったり混乱することもあるかも知れませんので、今回のご質問の主旨から逸れた感もありますが、ここで補足説明をさせていただきました。
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

《 noyunitara (ノユニタラ) :波打つ 》
これは、かなり「波動」に近いのではないかと期待していたのですが、『萱野 茂のアイヌ語辞典 増補版』に拠れば、「竜がポンヤウンペをおそうときに体の上を波立たせる様子で、普通にいう海の波の場合にはノユニタラを用いてはならない」とのことです。
日本語訳だと、かなり近いイメージだったので残念ですが、締め切り前に確かめられたこと、違いが分かったことだけでも良しとしたいと思います…。_
やはり、用例無しだと元々の意味を探るのは難しいですね…。
無謀だったかなと思いつつも、出来うる限り回答していきたいと思います。
(ポンヤウンペとは、日本語で英雄叙事詩と呼ばれるユカラの主人公のことで、ポイヤウンペとも呼ばれています。
ポンヤウンペとは、「若い内陸(本土)のやつ」と言う意味で、これは敵から付けられたあだ名です。また、ヤウンクル、ヤウンペ共に内陸人、陸の住民と言う意味で、ポンヤウンペの敵とは両親の命を奪った存在で、レプンクル(沖の住民)であるという設定が多い様です。)


《 pe'sik(ペシク) :波紋、しぶき 》
[pe-sik] ぺ=滴 シク=目 「滴の目」 1.波紋 2.しぶき『萱野』


2.「響く」、3.「響き渡る」
ここまででは、リルユプケ、ペシクも中々良いのではないかと思いますが、個人的には、「イコトゥンテク」、「ケウロトッケ」、「リムナタラ」等もイメージが湧く言葉で、良いように思えます。

《 rim'natara (リムナタラ) 》
rimunatara【自動】ドシンドシンと鳴り響いてくる 『千歳』
=korimunatara コリムナタラ【自動】[ko-rim-natara(擬音を導く)~が・ドシン(擬音)・(状態が続いていることを表す接尾辞)]
~hum ko korimnatara ~する音がドシンドシンと響く『沙流』                        
《 yak'natara(ヤクナタラ)》
yaknatara【自動】グシャッと潰れる音が鳴り響く;<yak「潰れる」 -natara(継続を表す接尾辞) 『千歳』          
※回答者注:『沙流』では、冬期に凍った木が夜中に避ける音の表現として、例文にも使われています。

《 kewrototke (ケウロトッケ) 》
【自動】[kew-rotot-ke (擬音)・(たて続けにくり返されることを表す接尾辞)・(自動詞形成)] ゴーゴーと鳴り響く (kokewrototke ~がゴーゴーとものすごい音響で響く) 『沙流』
【自動】雷がパリパリとたてるような音をたてる;ユカラなどで、カムイが死んで、魂が飛び去って行くような時にもこういう音を立てる。*<kew(擬声語) -rototke 「音が継続して起こる」。 
カムイ エク フム ケウロトッケ ヒネ kamuy ek hum kewrototke hine カムイのやってくる音がパリパリと鳴って
シクヌ カムイ ネ シクヌ ピト ネ アラパ フミ ケウロトッケ siknu kamuy ne siknu pito ne arpa humi kewrototke 生きたカムイ生きた神となって飛んでいく音がバリバリと響いた 『千歳』

(*アイヌの世界観では、カムイ(神)はカムイモシリ(神の国)からアイヌモシリ(人間の静かな大地)に来るときは、肉や毛皮を外套のように纏ってやって来ます。
神の本当の姿は魂であり、その姿形は人間と同じで、人間と同じように恋をしたり、機を織ったり彫刻をしたり、お酒を飲んで仲間と宴を開いたり、狩りをするなどして暮らしています。
肉や毛皮はアイヌ(人間)に対する土産で、アイヌモシリでの役目を終えると本来の姿(魂)に戻り、神の国(天界)に帰ります。
カムイ同士が戦った場合も、戦いに敗れたカムイもまた、魂となって飛び去って行くシーンがユカラにはよく出てきます。
なお、良い魂は東の空へ飛び去って行くそうです。)

《 tuntek (トゥンテク) 》
【自動】大きな音がひびく。
  コトゥンテク kotuntek ~をゆるがすほどひびく。
  イコトゥンテク ikotuntek ものをゆるがすほどひびく。
                           『千歳』
  i-ko-tuntek イ=それ コ=に対して tuntek=響く『萱野』
                      
《 sepep'atki (セペパッキ) 》
sepepatki セペパッキ【自動】[sepep-atki(擬態重複)・(自動詞形成)] (木の葉が風にゆれて)サラサラ~と鳴る。『沙流』

《 humum'atki (フムマッキ) 》
humumatki【自動】[hum-um-atki(擬音?)/音(?)・(重複)・(自動詞形成)] グーグーグーグー音が鳴っている。『沙流』

レラ ルイ ワ シリ フムマッキ = 風が強いのであたりにいろいろな音が響いている。『萱野』
(『萱野』『千歳』では、フムマッキとは「響き渡る」とのみ訳語が当てられています。)
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今晩は、また参加しに来ました。



「波動」というアイヌ語そのものズバリは見つけられなかったのですが、波動とは、

I:波のうねるような動き。

II: 空間の一部に生じた状態の変化が、次々に周囲に伝わっていく現象。物質のある点での振動がそれに隣接する部分の運動を引き起こし、その振動が次々に伝えられてゆく現象。

と言う意味であることを辞書検索で確認してから、関連深いと思われる言葉を探しました。

*  *  *  *  *

1.「波の関連語」
rir-yupke(リルユプケ):【自動】波立ってくる
noyunitara (ノユニタラ) :波打つ
pe'sik(ペシク) :波紋、しぶき *クは小文字表記

2.「響く」
rim'natara (リムナタラ) *ムは小文字表記
yak'natara(ヤクナタラ)*クは小文字表記
kewrototke (ケゥロトッケ)、kari'kari (カリカリ)
tuntek (トゥンテク) *クは小文字表記

3.「響き渡る」
sepep'atki (セペプアッキ) *プは小文字表記
kewrototke (ケゥロトッケ)
humum'atki (フムムアッキ) *後のムは小文字表記
i'ko'tuntek (イコトゥンテク) *クは小文字表記
*sir'ci'rim'nu're (シリチリムヌレ):あたりに響き渡る
               *最初のリとムは小文字表記 

4.「音、響き」
maymaye (マイマイェ)、maymayehe (マイマイェヘ)
 *mayunitara (マユニタラ):音がする、鳴り響く 

5.「揺れる」           
atap (アタプ) *プは小文字表記、si'suye (シスイェ)
*e'koyat'koyat(エコヤッコヤッ):(器の中の水が)揺れる
  o'ciw'suye (オチゥスイェ):(水の中で)揺れる
  o'maw'suye (オマゥスイェ):(~へ)風で揺れる、宙に浮く

6.「その他」
humihias (フミヒアシ):鳴る *シは小文字表記
nay'kosampa (ナイコサムパ) *ムは小文字表記
       :さっとしゅっと鳴る、響いて来る
ko'siw'natara (コシゥナタラ):うなりをあげる
*kosiw'siw'atki (コシゥシゥアッキ)
       :ぴゅーっと風が鳴る 木の枝に風があたって鳴る  

*  *  *  *  *

上記に挙げた語句の補則解説をしたいと思います。

1に挙げた《rir-yupke》ですが、こちらは、
http://city.hokkai.or.jp/~ayaedu/samawo/samawo39 …
の表記を尊重して書きました。

原文では、「リルユプケ」の リ と プ は小文字表記です。
なお、rは直前の発音の影響を受けます。
このことは、つい最近の別回答でも書きましたが、r は出てくる場所によって少しずつ音が違って聞こえます。
つまり、前の音がア段の音であれば「ラ」に、イ段の音であれば「リ」に近く聞こえるのです(ア段→ラ、イ段→リ、ウ段→ル、エ段→レ、オ段→ロ)。
ですから rir は、「リリ」のように聞こえると思いますし、この原則に沿って、「リリユプケ」(後の*リは小文字)としているものもあると思います。

また、《rir-yupke》と原文では「-」で区切って表記されていたことから、
 
  rim (リム):波  yupke (ユプケ): 強い きつい 

の二語から成っていると思われます。
また、rim が rir に変化したのは、音素交換が起こった可能性も考えられます。
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・
  n と m は発音が近いので、 
  〈-n + y- → -yy-〉に準じたかたちで、
  〈-m + y- → -yy-〉もあるとすると、
  rim'yupke → rim+yupke → riy+yupke → rir'yupke
  と言うこともあるのかなぁ…と、思ったのです。
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・
(↑でも、音素交換については、全くの当て推量ですので、ここは読み飛ばしてください。) 

元がアイヌ語で表記法が統一されていないことから、書き手によって多少ばらつきがあったり、聞き取った人の聞こえ方でも表記に差が出てくると思われますので、本格的に学ぼうと考えているのでなければ、発音や表記にはあまり拘らなくても良いのかも知れません。
(3の《sepep'atki》を 「セペプアッキ」、《humum'atki》をローマ字表記から「フムムアッキ 」とカナ表記に直しましたが、実際の発音を意識した場合、それぞれ「セペッアッキ」 「フムマッキ」とした方が良いように思えます。ちなみに、m〈小文字のム〉は口を閉じたまま ム〈mu〉を発音するとこの音になります)


なお、3の《i'ko'tuntek 》 (イコトゥンテク)ですが、これには「響き渡る」の他に、「地響き、地面が響く」の意味があります。
それと関連がありそうな言葉に、
  
  i'ko'tunte (イコトゥンテ):こだま、やまびこ

があります。

また、tuntek (トゥンテク)は2に挙げたように、「響く」と言う意味があります。
ですから、《i'ko'tuntek》とは、一語一語に逐語訳を順にあてると、 
  「それ・に対して(とともに、に向かって)響く」

との解釈が可能です。

しかし、残念なことに tunte のみの訳語は見つからず、tunte 自体を含む言葉も《i'ko'tunte 》しか分かりませんでした。

*  *  *  *  *

今回も「アイヌ語電子辞書」には、大変お世話になっております。
ttp://homepage3.nifty.com/tommy1949/aynudictionary.htm
何処の機種でも大体同じだと思うのですが、パソコン表示画面の上部左側の「編集(E)」にカーソルを合わせてマウスを左クリックすると、「このページの検索(F)」が表示されます。
これを更に左クリックすると、現在開いているページを検索するための枠が表示されます。
その検索枠に、日本語またはローマ字表記のアイヌ語を記入して検索してみてください。
かなり、効率よく言葉が探せると思います。

またもや熱が入り過ぎて、長文になってしまいました。^^;
それでは、この辺で。
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この回答へのお礼

今回も詳しく、ありがとうございます!!
携帯を修理に出していてお礼が送れてしまいました!申し訳ありません!
本当にアイヌ語に詳しいのですね!ビックリしました!
本当にご丁寧な回答、ありがとうございました!!

お礼日時:2010/03/22 23:50

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