No.1ベストアンサー
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従軍中の神経症(ノイローゼ)、つまり「前線神経症」の実例としては、戦記文学の傑作、吉田満『「戦艦大和」の最期』中の「戦勢急落」にでてくる電測兵たちの描写が挙げられます。
ただし、錯乱状態ではなく「精勤昏迷」ですが。以下抜粋> 上部電探室ニユク 対艦船用電探室員ノ誰彼ノ顔 フト心頭ヲ掠メタレバナリ
> 極メテ狭キ室内ニ兵重ナリ合イ、 四肢ヲ組ミ交ワシテ動揺震動ニ堪ウ コレ日本海軍至宝ノ電探兵ナリ
> 彼ラソノ姿勢ノママ総員艦ト運命ヲ共ニセリ
> タダ一人ノ生存者青山兵曹ノ言ニヨレバ、
> 相次グ衝撃ノウチニアッテ、彼ラ折リ重ナル如ク倒レ、一様ニ死相ヲ漂ワセリ 彼、脱出セントシテ「行クゾ」ト叫ブモ、数人タダ僅カニ瞳ヲ上ゲシノミ 肩ヲ叩キ足蹴ニストモ、敢エナク崩折レタリトイウ
> 「今死ヌカ、今死ヌカ」ノ切迫感ニ脅カサルルママ、 待機ト忍苦ノ時ヲ刻ム ヨク常人ノ堪エウルトコロニ非ズ (1
別の例。南太平洋上のニューブリテン島ラバウルの海軍病院における描写、
> 空襲になると、大変であった。歩行患者はよいが、重傷者はひとりひとりタンカに乗せて、防空壕に運んでいくのだ。それもまだよい。戦恐病というやっかいな精神病者もいた。
> ふだんはおとなしくしているが、大きな音や砲弾の音を聞くと、自分をわすれて飛びまわったり、走り出したりするので、看護婦にとっては一番やっかいな患者であった。
> 少年飛行兵出身のまだあどけない顔をした兵隊であった。~ 「帝国海軍ばんざい!」彼はさけぶより早く、バラック病棟の階段をかけおりようとした。(2
このように戦争が原因で発症する「戦争神経症」は、大別して先の「前線神経症」と「病院神経症」があるということです。旧日本軍においては、忠勇無比の皇軍兵士が戦争に脅えたりするのは根性がない卑怯者であるとして、これを認めない方針でしたが、支那事変が始まって半年後から多数の発症例が報告される現実に、陸軍は「前線神経症」のみを「戦時神経症」と呼称して対策に乗り出しました。
千葉県市川の国府台(こうのだい)陸軍病院に神経病患者1千名以上を収容できる専門病棟を増築し、諏訪軍医少佐(東京帝国大学医学部出身)を院長として開設しました。こうして内外地からの患者を一手に引き受ける体制が整ったのでした。さらに戦争末期には大分と京都にも専門陸軍病院が設置されました。なお1944年(昭和19)当時の内地還送戦病患者のうち精神疾患患者は約7.8%を占めていました。
なお「病院神経症」とは、例えば戦場で組織の中の一員のときには持ち得なかった雑念が、病院に入院しているうちに湧き出て、内地の家族のことを思って不眠症になったり、前線の戦友に申し訳ないという呵責にさいなまれる、といった症状が出てくる病気です。ただし、これは詐病との区別が必要でした。(3)(4
資料: (1)『戦争文学全集 第3巻』 毎日新聞社 71年
(2) 秋永芳郎・棟田博「花咲く野戦看護婦」『ジュニア版 太平洋戦史6 人物壮烈編』 集英社 64年
(3) 桜井図南男「戦争神経症」『1億人の昭和史 日本の戦史6』 毎日新聞社 79年
(4) 『陸軍衛生制度史 昭和篇』 陸上自衛隊衛生学校修親会 90年
日本にも精神を病む兵士は存在した筈だと推測していましたが、それは例外で公には知られることがないのだと思っていました。国府台、大分、京都と専門の病棟、病院が3つも存在したとは意外でした。
変な言い方ですが、とても安心しました。
気紛れで、日本人の書いた日露戦争に関する書物と米国人の書いた太平洋戦争に関する書物を一冊ずつ読みましたが、実にまぁ戦争というものが呆れようもないほど酷いものだと改めて思い知りました。精神の均衡を保てるようでは人間とは呼べないような気がします。
米国人も日本人も異常な環境では精神の均衡を保てない健全な人間であることが分かりました。
有り難うございました。
書籍のご紹介があるので、これで十分かなと思います。1日~2日、様子を見て締め切ろうと思います。
No.2
- 回答日時:
日本軍の中でも多くの部隊は、ヒロポン(覚せい剤)を飲ませて恐怖を鈍らせていたようです。
覚せい剤を使った兵士は恐怖が鈍り勇気と力が沸くのでかなり士気があがったそうです。
戦前の日本では覚せい剤の認識が薄く普通に買えたのです。
日本軍がヒロポンを利用していたのは、知識としては知っていました。
二日も三日も不眠不休で行軍したり陣地を構築したりの、一時的に肉体を麻痺させるために利用していたのだとばかり思っていました。
むしろ、精神を麻痺させるための利用の仕方の方が多かったのかな、と思い始めました。
有り難うございました。
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