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心理学者のローレンツは発達の初期に生じる経験の重要性を示して、「刷り込み」と呼びましたが、この現象について教えてください。
お願いします。

A 回答 (1件)

こんにちは。


ローレンツは動物行動学者であり、心理学者ではありません。動物行動学では現在、「刷り込み(インプリンティング)」といいますのは「プログラム学習」の一種ではないかと考えられています。
学習といいますのは本来、生後に行われるものです。ですが、プログラム学習といいますのは生後にどのような学習をするかに遺伝的な重要性が予め定められているのではないか、という概念です。
最もポピュラーなのは鳥類の雛が生後最初に見た個体を親と認識するというやつですよね。この特徴は、「生後一定期間に発生した反応が生涯に渡る学習結果として保存される」ということです。このため、保持される情報は限られ、一定期間を過ぎますと学習し直すことが極めて困難となります。

我々動物が生後環境からどのような学習をするかは分りません。重要なことは遺伝情報として定めておけば良いのですが、それでは生後環境の変化に上手く適応できません。このため、プログラム学習といいますのは進化の過程に本能行動と学習行動の折衷案として獲得されたのではないでしょうか。
我々哺乳動物にはローレンツの刷り込みといった顕著な現象があまりありませんので、これが心理学で本格的に扱われることはほとんどありません。ですが、プログラム学習の概念に則するものとしましては、視覚学習や、人間では言語学習が極めて特徴的です。
「視覚学習」といいますのは生後一定の期間に環境からの視覚情報を処理するための学習であり、これにはネコによる動物実験が行われています。
生まれたばかりのネコの赤ちゃんに縦じまばかりを見せて育てますと、ある一定の期間を過ぎますと、横じまが認識できなくなります。これは、幼年期に未発達の大脳機能が生後環境からの情報刺激によって急速に強化される時期があるからと考えられています。そして、この強化期間を「学習臨界期」と言い、人間では言語学習や絶対音感教育などとして知られています。
絶対音感はある年齢を過ぎますと習得できませんし、言語学習は概ね五歳頃に母国語が決まってしまいますので、それまでに二ヶ国語を習得しておきませんとバイリンガルにはならないと言われています。

プログラム学習を概念と申し上げましたのは、それが遺伝的機能とは本質的に異なるからです。ですが、それが動物行動学の基礎を確立するに留まらす、生物学や脳科学に新たなる概念をもたらしたのは、果たしてローレンツの偉大な業績によるものと思います。
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