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かいつまんで言えば,判例変更前は,公務員の労働基本権を尊重して公務員法を合憲限定解釈せざるをえなかったが,全農林警職法事件などによる判例変更後は,公務員の労働基本権を軽視することで公務員法の争議行為の一律禁止を合憲とし,合憲限定解釈の必要が無くなったということです。
「合憲限定解釈」とは,「法律の規定は、可能なかぎり、憲法の精神にそくし、これと調和しうるよう、合理的に解釈されるべき」(最高裁昭和44年4月2日判決)と考え,違憲か合憲かが問題になっている法律を合憲的に解釈することで無効とすることを避ける解釈です。
最高裁は,かつて,上記都教祖事件判決や全逓東京中郵事件判決などで,「労働基本権を尊重し保障している憲法の趣旨と調和しうるように解釈するときは、これらの規定の表現にかかわらず、禁止されるべき争議行為の種類や態様についても、さらにまた、処罰の対象とされるべきあおり行為等の態様や範囲についても、おのずから合理的な限界の存する」として公務員法の合憲限定解釈を行い,「争議行為の態様からいつて、違法性の比較的弱い場合もあり、また、実質的には、右条項にいう争議行為に該当しないと判断すべき場合もある」,「争議行為に通常随伴して行なわれる行為のごときは、処罰の対象とされるべきものではない」ところ,公務員法は,そのように解釈できるとして合憲限定解釈をしていました。
しかし,1970年代になって最高裁は公務員の争議行為に対して厳格な態度で臨むようになり,判例変更が行われました。
全農林警職法事件判決(最高裁昭和48年4月25日判決)では,「公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみるときは、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむをえない限度の制限を加えることは、十分合理的な理由があるというべきである。けだし、公務員は、公共の利益のために勤務するものであり、公務の円滑な運営のためには、その担当する職務内容の別なく、それぞれの職場においてその職責を果すことが必要不可缺であつて、公務員が争議行為に及ぶことは、その地位の特殊性および職務の公共性と相容れないばかりでなく、多かれ少なかれ公務の停廃をもたらし、その停廃は勤労者を含めた国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼすか、またはその虞れがあるからである。」という理屈を述べ,「国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条五項、一一〇条一項一七号は、公務員の争議行為のうち同法によつて違法とされるものとされないものとを区別し、さらに違法とされる争議行為についても違法性の強いものと弱いものとを区別したうえ、刑事制裁を科さるのはそのうち違法性の強い争議行為に限るものとし、あるいは、あおり行為等につき、争議行為の企画、共謀、説得、慫慂、指令等を争議行為にいわゆる通常随伴するものとして争議行為自体と同一視し、これを刑事制裁の対象から除くものとする趣旨ではない。」として,合憲限定解釈をする必要なく公務員法の規定は合憲であるとしたのです。
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