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No.3
- 回答日時:
免疫染色では、色々な抗原に対する抗体を組織切片や、あるいは蛋白質の電気泳動により分離(ウエスタン・ブロッティング)したバンドに作用させ、その抗原を検出するものです。
間接酵素抗体法では、まず、targetの抗原に対する抗体(一次抗体)を反応させます。この一次抗体は動物に抗原を投与して、動物の体内で免疫されることにより産生される抗体を抽出したものです。一般的によく一次抗体産生用に用いられるのがウサギですが、この他にもヤギ、ニワトリ等色々あります。この場合はpolyclonal抗体といわれるもので、targetの抗原の複数の抗原決定基(epitope)を認識する抗体(抗体自身は一つのepitopeに対してのみ反応するので、「polyclonal抗体」と称する動物血清には、この抗原に対する複数の種類の抗体が存在する)です。
(補足)これに対し、monoclonal抗体とは、マウスを用いて作られる、単一のepitopeに対して反応する抗体のみを含む血清です。これは多くの場合、targetの抗原の厳密な部分(特定の蛋白のアミノ酸配列)のepitopeを人工的に合成して、これに対する抗体を骨髄腫細胞を用いて半永久的に産生させたものであり、polyclonal抗体よりも抗原の検出感度・特異性は非常に高いと言えます。(しかし、中には全く異なる抗原の類似のアミノ酸配列を認識cross reactionしてしまう場合もあります)
しかし免疫染色では、そのtargetの検出方法として、酵素標識や蛍光標識、RI標識等、色々な手段があり、一次抗体に各々の標識を直接していたのでは、確かに時間的に早く検出できるかも知れませんが、複数の手段を用いたい場合は、標識の異なった同一の抗原に対する一次抗体をいちいち用意しなければならなくなり、コストが高くついてしまいます。
そのため間接抗体法がよく用いられます。
間接抗体法では、一次抗体反応終了後、さらに標識二次抗体を作用させます。この二次抗体は、一次抗体を産生した動物種の免疫グロブリンに対する異種動物の抗体です。この二次抗体の作製法は、一次抗体のpolyclonal抗体作製と同じで、抗原として一次抗体を作製した動物の免疫グロブリンを、異種動物に投与し、免疫させて作ったこれまた免疫グロブリン(抗体)です。用いる動物はこれも一次抗体の場合と同じで、色々ですが、肝心なのは、くどいですが、一次抗体の動物と異なることです。
この二次抗体に色々な標識物質(酵素抗体法では主にビオチン、その他、色々な蛍光物質、RI等)を結合させ、これを反応させ、抗原に結合した一次抗体のFc部分に結合させます。(抗原に結合する抗体の部分はFab)
質問者の方が言っておられた「ヤギ抗ウサギ抗体」は、「ウサギ由来の一次抗体(免疫動物:ウサギ)」に対する「ヤギ由来の二次抗体(免疫動物:ヤギ)」という意味です。
免疫染色では必ず、一次抗体を反応させる前に、まず二次抗体の免疫動物の正常血清(ブロッキング血清)で、組織切片を処理しなければなりません(ブロッキング)。質問者の方の二次抗体を用いる場合は、必ず正常ヤギ血清をブロッキング血清として用意しなければなりません。
その理由は、動物の血清中には、異種動物に対する抗体(正常異種抗体)が存在するため、切片上に正常異種抗体に対応する抗原が存在すると、二次抗体が結合してしまい、targetとは異なるものまで検出してしまう(非特異反応)からです。そのため、予めその余計な抗原をブロッキング血清中の対応抗体で塞いでしまうのです。
酵素抗体法の場合は、この上からさらに酵素標識物質(多くの場合はストレプトアビジン・ペルオキシダーゼ コンプレックス)を反応させて、二次抗体に結合している標識物質と結合させて、さらに酵素の基質(ペルオキシダーゼでは多くの場合、DAB)を反応させて色をつけ、抗原を検出します。
免疫染色法といっても、どんな性質のtargetか?、どのような条件(着色の色、切片の種類等)か?、また二重染色をする場合はその二種類の抗原はどのような局在を示すのか?によって、様々な手段を検討する必要が出てきます。簡単な染色手順なら、ニチレイのカタログに模式図でわかりやすく書いていますし、医試薬出版から出ている「(月刊 medical technology 別冊)新・染色法のすべて」がわかりやすいと思います。
長くなりましたが、色々と奥深いので勉強してみてください。
No.2
- 回答日時:
rei00さんに「蛇足」します.
免疫染色では1次抗体と2次抗体を使用しますよね?「ヤギ抗ウサギ抗体」は2次抗体で使うのだと思います.
一般に,1次抗体は「染色したいもの」に特異的な抗体を選びます.満足いく抗体が売っていないときや新規の物質を染色したいときなどは自分のところで作製した抗体を用いるでしょう.
次に,「染色」するために色素で標識あるいは酵素を結合させた抗体を2次抗体として用います.
なぜ2種類の抗体を用いるのでしょう.1つは感度,もう1つはコストの問題があります.特に後者は深刻です.大部分の研究室は貧乏ですから(笑)抗体を標識すると他の用途(たとえば精製など)に使えなくなります.高価な抗体がです!!だから1次抗体と2次抗体にわけ,後者には安価な抗体を使うのです.
ヤギ抗ウサギ抗体はウサギのIgGにはすべて利用できます(※).1次抗体を作製するときの(あるいは購入するときの)免疫動物をウサギにすれば,抗アクチン抗体であろうと抗ビタミンD抗体であろうとはたまた抗p53抗体であろうと2次抗体には「ヤギ抗ウサギ抗体」が使えるのです(もちろん同じ検出系なら,ですが)こんな便利なことはありませんよ!
ちなみに※の部分ですがこれまた簡単な蛇足を.
IgGには抗原を認識する部位とそれ以外の部位があります.後者はウサギのIgGであればすべて共通です.くだんの「ヤギ抗ウサギ抗体」の抗原はウサギのIgGの「この部分」なのです.だから共通に使えるわけですな.すばらしき先駆者達!!
No.1
- 回答日時:
「ヤギ抗ウサギ抗体」とは,ウサギの抗体に対するヤギの抗体です。
もう少しくわしくいうと,
1)ウサギに免役して何かの抗体を作らせます。
2)出来た抗体もタンパク質ですから,これを抗原としてヤギに抗体を作らせます。
こうやって得られたヤギの(ウサギの抗体)に対する抗体がご質問の「ヤギ抗ウサギ抗体」です。
よりくわしくは,免疫染色法や酵素免疫測定法などの成書に記載があると思います。
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