お世話になっております。
ジャック・ラカンのセミネール「精神分析の四基本概念」を読んでいたら、
つぎのようなスピノザからの引用文に出会いました。
「cogitatio adaequata semper vital eandem rem」
この一文は、スピノザのどの著作で、どのような文脈で用いられているのか、教えてください。
ラテン語の素養がまったくありませんが、この文の意味を教えてください。
どのような意図をもってラカンが用いているか、なども、もしよろしかったらご回答ください。
ちなみに、該当箇所は、四章の三節、
ページでいうと岩波の翻訳65ページの、後ろから二番目の段落です。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
ご質問のラテン語の箇所は、スピノザからの引用ではありません(vitalは誤記、正しくはvitatです)。
ここでは単に「スピノザにならって言うならば」と、自分の鍵概念を、スピノザが『エチカ』で「定理」をあげていったのを模して、ラテン語で言っているだけです。ですから典拠明示がないんです。
「妥当な思考というのは、同じことを回避する」ぐらいの意味です。
繰り返し言われているのは、自我とは無視と誤認の領域であるということ。ですから合理的な思考は、同じことを避けるんです。けれども、現実界は同じところに回帰してくる。だから"res cogitans"(考えるもの)は現実界と出会えない、という脈絡です。
ラカンは十代半ば、スピノザに傾倒して、『エチカ』の構成を表した図を部屋に貼っていたといいます。その傾倒は一時的なものではなく、最初の重要な著作『人格との関係から見たパラノイア精神病』の冒頭に、スピノザの『エチカ』の第三部定理57からのラテン語の引用が置かれてありますし、また、セミネールの中でも1960年代にIPA(国際精神分析学会)から排除されたことを、スピノザの大破門にたとえる言及もあります。デカルトやアリストテレスなど、ラカンが言及する先哲は多くありますが、スピノザは彼らとは少し異なる、特別に近しい思いを抱いていた哲学者であったようです。
ありがとうございます。
お礼が、大変遅くなってしまいまして、申し訳ありません。
懇切丁寧なご回答をありがとうございました。
ラカンのスピノザへの近しさがわかりました。
思想的にも境遇的にも、いろいろ共感できることがあったのですね。
me-connaissance 自我とは無視と誤認の領域、の繰り返されるテーマが理解できそうです。
現実界とは出会えない、ということですね。
スピノザを読んでみたいのですが、とっかかりがなさすぎて、
ラカンの傾倒をきっかけにすこしずつ侵入をこころみたく思います。
ありがとうございました。
拝
No.3
- 回答日時:
あ またひっかかっちゃってるwww
哲学を理解することができるのなら心理学には転向しないので
無理もないことですが 心理学的な文章は 「というような感じ」で 議論になるので あまり追求することもないと思います。
勉強するとき ラカンに時間とられるともったいないですwww 西洋哲学を一つの文化=スペースオペラとして把握してないと詳細には理解できません。 理解の前提となる 『構造/枠組み』でしかないというべきでしょうか///
日本人が比喩に「ドラえもん」とか「ワンピース」を使うのと同じです。意味が分からないのが普通です。
もっと実践的な論文を読みましょうwww
(そういういみで フランクフルト学派的哲学も心理学に近いということもできますねww)
では回答です。
ラカンは 残念ながら スピノザ哲学の 「テクスチャ」を 刈り 取っただけで 意味的に踏襲しているわけではありません。
論の 中心は Substance の概念です。
意味的な要約で スピノザの言葉の引用ではなく 趣意と理解して下さい。
引用先のもととなるのは
エチカ 倫理学 です。
具体的には
Proposition の 5 (*最初から五つ目の条項)
と
Appendix §1
確認しましたが 岩波のエチカ上下の拾い読みでも意味は通るようです。
出典
http://archive.org/stream/philosophyspino01fullg …
p. 22
勉強の方向性の問題だと思います。
ほんのすこしでも たすけ みたいなかたちになると よいのですが。
この回答への補足
ひとつ教えてください。
この場合、
「もっと実践的な論文」とはいったいどういう論文になりますか。
ラカンに時間をとられることがもったいない、と、思うようになってきました。
古い話題で、大変もうしわけありませんが。
拝
ありがとうございます。
私は、哲学を勉強したものでも心理学を勉強したものでもなく、
ラカンが言ってる突拍子もないことが気になるだけの者です。
ラカンは元のテキストを自分流に捻じ曲げて?用いることが多いようで、そこが面白いとおもっております。
ですので、私の勉強の「方向性」としては、素人の興味本位です。
せっかくなので、「原典」にもあたってみたい、と欲をだして、こういう質問をいたしました。
ご回答ありがとうございます。
引用箇所がおかげで判明しました。
スピノザ難しいですね。
大変、たすけ、になりました。
>西洋哲学を一つの文化=スペースオペラとして把握してないと詳細には理解できません。
この「たとえ」が、好きです。
拝
No.2
- 回答日時:
こんばんは。
次のサイトにヒットしました。
▲ (Subject and Body. Lacan’s Struggle with the Real.) ~~~~~
( In: Verhaeghe, P. Beyond Gender. From Subject to Drive. New York: Other Press, pp. 65-97.)
http://www.psychoanalysis.ugent.be/pages/nl/arti …
・・・The encounter with the Real is always a missed encounter, because there is no signifier appropriate for it. Lacan paraphrases Spinoza: cogitatio adaequata semper vitat eamdem rem, an adequate thought always avoids the same thing.
(p.8)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
わたしは ラカンはいくら読んでも分からないのでおしえて欲しいという理由からしらべただけです。
スピノザの原文がどこにあるのかは まだ見つかりません。
(知性改善論か エチカなのでしょうけれど)。
分かったことは
1.(原文) cogitatio adaequata semper vitat eamdem rem,
(英訳) an adequate thought always avoids the same thing.
2. 《現実界》は 出会ったと思っても それ自体には出会っていない。といったことを示すスピノザの一文であるとか。
3. 現実界は それを意味表示するためのシルシ(シニフィアン)がないのだから 出会えない。のだとか。
すみません。よく分かりませんし ここまでです。
大変、おそくなってしまいまして申し訳ありません。
ご回答、ありがとうございました。
>2. 《現実界》は 出会ったと思っても それ自体には出会っていない。といったことを示すスピノザの一文であるとか。
「四基本概念」のセミネールを読んでいると、四つの基本概念を共通して、「出会い損ね」=「dustuchia」がある、と述べております。講義の最終章をごらんください。
このセミネールをつらぬく「出会い損ね」の劇のみなもとが、スピノザにもあるとわかって、大変重要なご指摘ありがとうございました。
お礼の遅くなりましたことをお詫び申し上げます。
ありがとうございました。
拝
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