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光電効果の過程について質問です。

上司が、
光電効果とは原子が光子を吸収し、そのエネルギーの担い手として軌道電子を放出する相互作用で、K軌道の放出割合が多いのは原子核から近いためである。光子が直接軌道電子に当たるというご認識をよくしやすい。
と話をしていました。

大学では光子と物質の相互作用は、対象が4つで(1)軌道電子(2)原子核の作る場(3)核子(4)中間子であると習いました。
僕の認識では光電効果は(1)との相互作用の結果、光子が吸収される。というものです。

みなさんの解釈を教えて下さい。またこの場合光子のモーメンタムはどのように保存さているのでしょうか?

A 回答 (4件)

 上司さんの説明はおかしいように思います。



 光電効果は電磁波が物質中に到達できる範囲で起こります。従って、物質表面が最も反応することになります。

 金属であれば、多くの電子は原子核を離れて自由電子となり、ポテンシャルエネルギーが最低で安定するよう、金属表面に集中して分布しています(なお、平面でなく凹凸があれば尖っているほど集中する)。

 そこへ電磁波を当て、波長をだんだん短くしていくと、ある波長以下になると電子が飛び出します。まず飛び出してくるのは金属表面の自由電子です。

 自由電子は原子核からおおむね遠い軌道(内殻より外殻の方がポテンシャルが低いこともあるので、正確にはポテンシャルが小さい順)から順に自由電子となりますから、最も内側であるK殻は自由電子になりにくいのです。

 金属でない場合は自由電子はなく、物質表面の原子の、おおむね最外殻から電子が叩き出されます(これも、本当はポテンシャル順)。金属原子まで電磁波が到達した場合も同じです。最も内側のK殻の電子を叩き出すには、L殻の電子を叩き出せる波長より短い波長の電磁波が必要です。

 物質表面の原子から光電効果で電子が叩き出される場合、K殻から電子を叩き出すにはその外側よりも波長が短い、すなわり高いエネルギーの電磁波が必要で、その意味では最も電子が叩き出されにくいと言えます。

 K殻の電子も叩き出せるほど短い波長の電磁波の光電効果であるとして、電磁波照射中は次々と電子が物質表面の原子から飛び出して来ますから、表面の原子の物質の結合に関与していない電子は尽きてしまい、それを補うように次々と内側の原子から外側へ電子が移動することになります。

 このとき、光電効果で出てくる電子について、K殻からのものがどれくらいの割合になるかは、照射される光子の数(いわゆる明るさ)と物質内部から表面へ移動する電子の速さに依存し、単純にどうなのかを言うことはできません。

 具体的には、例えば表面が光電効果により常にK殻の電子まで不足するのか、物質の原子の結合はどの軌道のものか、その軌道に原子核は本来何個の電子があるか、等々が影響します。

 以上は一般論ですが、実際に放射線を照射すると、多くの物質でK殻からの電子が最も多くなります。これは原子核から近いためではなく、ポテンシャルエネルギーの大きさの問題です(原子核から近い、がポテンシャルの意味で言っているなら正解)。

 電子が電磁波で励起される(ポテンシャルの高い殻へ移動する)のは、電磁波光子1個当たりのエネルギーが移動する殻間のポテンシャルエネルギー差以上で、さらにポテンシャルの高い殻までではないときです。余ったエネルギーは熱となります。

 電子が原子から完全に飛び出す場合を考えると、例えば光子のエネルギー(波長の短さ)がL殻から電子が飛び出すには充分であっても、K殻からでは不足な場合、K→L殻などの原子内での殻間の遷移に使われてしまいます。

 そのため、観測可能なくらいの光電効果を起こすのであれば、K殻から電子を叩き出せる波長の電磁波が必要となります。反応として、K殻を差し置いてL殻やさらに外側の殻から光電効果が起こることはありません。K殻の電子を叩き出して、さらにエネルギーが余っていて、それがL殻の電子を叩き出すほどであれば、L殻からも電子が出てきます。さらに外側の殻も順次同様です。

 それが現象的にはK殻からの電子が最も多くなる理由です。

 なお、そうなる仕組みとして、電子を励起する電磁波が励起に必要なエネルギー以上で、かつ余剰が小さいほど起こりやすいということがあります。言葉を変えれば、光子が電子の励起について余剰が少ないほど、電子に吸収される確率が高くなるということです。

 それについて、波長と衝突断面積の関係といった表現をすることがあります。確率が大きいということを、衝突の断面積が大きいと表現するわけです。

 光子のエネルギーの余剰が少ないほど衝突断面積が大きくなります。その表現を用いれば、光電効果が起こるK殻の電子を叩き出すに足る電磁波では、K殻より外側の殻ほど余剰エネルギーが大きく、すなわち衝突断面積が「K殻>L殻>…」であるため、光電効果で観測される電子は、K殻のものが最も多くなる、という説明も可能です。
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>またこの場合光子のモーメンタムはどのように保存さているのでしょうか?



一番分かり易い現象は、
サー・チャンドラシェーカル・ヴェンカタ・ラーマン氏が称えたラマン効果です。
原子核は、外部からエネルギーを貰い、複数の光子を出す現象。

しかも、1個、2個の話ではなく、連続する光子が原子核に影響するのが正しい。
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どうも上司さんや citeleさんの想定しておられる実験の条件がよくわからないのですが、


X線光電子分光による物質の内殻準位の測定を想定して回答します。
的外れでしたらすみません。

まず、一般にどの軌道(バンド?)からの光電子放出が多いかは状況次第で変わります。
どう変わるかを記述しているのが「フェルミの黄金律」と呼ばれる計算式でして、しば
しば式の一部だけ取り出して簡略化した「行列要素」だけで使われたりもします。光電
効果(光電子放出)の場合に合わせて単純に書くと、

(放出光電流)∝ (終状態)×(光と電子の相互作用演算子)×(始状態)
となります。(本当は単なる積じゃなくてブラケットだったりしますが、単純化のために
省略します)
>光子と物質の相互作用
は2項目に入っていまして、citeleさんの仰る通り、大抵の光電子放出過程では光子と
電子の相互作用だけ考えれば十分です。始状態は光を当てる前の物質内部の電子状態、
終状態は光子が1つ消滅し、電子が1つ真空準位に励起され、物質内部に空孔が1つで
きた状態です。光電子のエネルギーが物質の仕事関数よりも大きければ、光電子は真空
に放出されて、その一部は検出器(ついてれば)に到達してシグナルとして検出されます。

どの軌道(始状態)の電子が大きな行列要素を持つか、というのは相互作用演算子を挟ん
だ掛け算の結果次第でして、また終状態や相互作用演算子の作用は物質や入射光の波長、
偏光に依存します。K殻からの放出が強い場合もありますし、L,M殻や自由電子が強
い場合もありまして、一概には言えません。
また、入射光子のエネルギー(波長)が丁度バンドの束縛エネルギーと等しい時(電子が
励起された場合に光電子のエネルギーが丁度0になる時)の条件を共鳴と呼びまして、
この時は一般に光電子放出が強化されます。(#1の回答者様が仰る状況です)

>光子のモーメンタム
運動量のことでしたら、普通は光子のそれは物質中の電子のそれと比べてかなり小さい
ので無視できます。最近流行りの硬X線光電子分光などでは無視できないようですが。
そのため、光電子の運動量は励起前と比較してある程度保存されることになり、これを
実験的に検出することは物質のバンド構造をより詳しく知る手段として重宝されています。
「角度分解光電子分光」あたりのキーワードでより詳しい説明が見つかると思います。

角運動量(円偏光)のことでしたら、上記の行列要素のうちで励起可能な始状態の対称性
に関わってきます。その結果として特定の軌道角運動量やスピン角運動量を持つ電子だ
けが励起されたりして、主に物質の磁性などを探るのに役立っています。より詳しく知
りたいようでしたら、「XMCD」「円2色性」などのキーワードで探してみてください。
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>K軌道の放出割合が多い



このレベルは X線領域だけど、そういう話かな??
それとも X線管の話を聞き違ってませんか?
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