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国語辞典編纂者によると、汚名挽回は誤用ではなく昔から使われていたそうです。
1970年代になぜか誤用扱いにされてしまったが、国語辞典にも誤用ではない旨が記載されているとのこと。

これって本当でしょうか?
誤用ではないといわれても、「汚名を挽回する」には違和感を感じます。

A 回答 (6件)

1.


なかなか興味深いお話です。
解釈が錯綜しているのは、偏に辞書編纂者の責任であると考えます。
「挽回」の辞書解釈をネットから2つ挙げます。
≪大辞林第3版≫
失ったものをとりかえすこと。もとへもどすこと。回復。 「劣勢を-する」 「名誉-」
http://www.excite.co.jp/dictionary/japanese/?sea …
≪大辞泉≫
失ったものを取り戻して、もとの状態にすること。回復。「勢力を―する」「遅れを―する」「名誉―」
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/180881/m1u/ …
これらに挙げられている例について考えてみましょう。

[劣勢を挽回する]
大辞林の場合。
×失った劣勢を取りかえすこと。→整合性が取れません。(失った勢い、なら可)
○劣勢をもとの状態にすること。→これは整合性が取れていますから、「劣勢」の場合は、こちらで解釈する、ということになるのでしょう。
大辞泉の場合。
×失った劣勢を取り戻して、もとの状態にすること。→整合性が取れません。

[名誉挽回]
大辞林の場合。
○失った名誉をとりかえすこと。
○名誉をもとへもどすこと。
どちらの意味でも整合性は取れます。
大辞泉の場合。
○失った名誉を取り戻して、もとの状態にすること。
これも整合性が取れています。

[勢力を挽回する]
大辞林の場合。
○失った勢力をとりかえすこと。
○勢力をもとへもどすこと
大辞泉の場合。
○失った勢力を取り戻して、もとの状態にすること。

[遅れを挽回する]
大辞林の場合。
×失った遅れをとりかえすこと。
×遅れをもとへもどすこと
大辞泉の場合。
×失った遅れを取り戻して、もとの状態にすること。

[汚名挽回]も当然、検証します。
大辞林の場合。
×失った汚名をとりかえすこと。
×汚名をもとへもどすこと
大辞泉の場合。
×失った汚名を取り戻して、もとの状態にすること。

[疲労回復]も検証してみます。
大辞林の場合。
×失った疲労をとりかえすこと。
×疲労をもとへもどすこと
大辞泉の場合。
×失った疲労を取り戻して、もとの状態にすること。

このようにバラバラになるため、解釈が多様化することになっているわけです。
しかし、いずれにせよ、「汚名挽回」に関して言えば、現状のままでは、
≪[大辞林第3版≫
失ったものをとりかえすこと。もとへもどすこと。回復。 ⇒失った汚名をとりかえすこと。汚名をもとへもどすこと。
・失った汚名を取替えして手に入れてどうしようというのか?
・失った汚名の現状をもとへもどすこと、であれば整合性が取れることに留意。
≪大辞泉≫
失ったものを取り戻して、もとの状態にすること。⇒・失った汚名を取り戻して、もとの状態にすること。
・失った汚名を取り戻して、もとの状態になるのか?
のように解釈せざるを得ず、誤った熟語表現である、と言わざるを得ません。
  
2.
実は、両辞書の統合的解釈が、この表現の本質を表すことになるはずです。
また、わたしとしては、「もとの状態にすること」ではなく「現状をもとの状態にすること」と記述すべきと考えます。
以上を踏まえた「挽回」の統合的語釈は次のようになります。
(ア)失ったものをとりかえすこと。(イ)現状をもとの状態にすること。
統合的語釈は、ほぼ大辞林に近いものですが、「もとへもどすこと」ではなく「現状をもとの状態にすること」である点が異なります。
この点に関しては、大辞泉の解釈が鋭く見抜いていると思いますが、「もとの状態にすること」ではなく、「現状をもとの状態にすること」とする必要があると思います。
「現状」という語があるか無いかの違いですが、その差は大きいはず。また、一文にまとめてしまったのも惜しい点。あくまで二つの意味を持たせる必要があったでしょう。

ともかく、この、両者の良いとこどりを土台にしたわたしの新語釈に基づいて、上記の例を再度検証してみます。
[劣勢を挽回する]
×失った劣勢をとりかえすこと。
○劣勢な現状をもとの状態にすること。
[名誉挽回]
○失った名誉をとりかえすこと。
×名誉な現状をもとの状態にすること。
[勢力を挽回する]
○失った勢力をとりかえすこと。
×勢力ある現状をもとの状態にすること。
[遅れを挽回する]
×失った遅れをとりかえすこと。
○遅れの現状をもとの状態にすること。
[汚名挽回]
×失った汚名をとりかえすこと。
○汚名の(着せられている)現状をもとの状態にすること。

このようにすべて網羅することができます。
因みに[疲労回復]も、
○疲労している現状を改善し、本来望ましいいとされる状態にすること。
のように(イ)の解釈が可能と思います。
「元気回復」「健康回復」の場合は、(ア)の解釈が適用され、
○失った元気をとりかえすこと。
○失った健康をとりかえすこと。
となります。

要するに、「挽回」自体の意味を定義し直した上で、はじめて「汚名挽回」は正しい、と言うことが可能になるわけです。
  
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この回答へのお礼

非常に丁寧な回答ありがとうございます!挽回の意味を定義しなおした上でなら、というのは腹に落ちました。

お礼日時:2014/05/09 08:15

 三省堂明快国語辞典(第7版)に採用されたものですね。

他にも誤用とまでは決めつけられないとする国語辞書もあるそうです。文化庁の平成16年度の調査結果発表では、「汚名返上」と「名誉挽回」の二択では、汚名返上が38.3%、汚名挽回は44.1%と、汚名挽回を使う人のほうが多かったとなっています。

 ついに国語辞書で「汚名挽回」を正しいとするものが出て来たのか、と思いました。「汚名挽回」が誤用である、「汚名返上」と「名誉挽回」の混交表現であると広まってからずいぶんになります。明快国語辞典の編纂者の調査では、1976年まで遡れたとのことです(『死にかけた日本語』(英潮社))。おそらく、その前から「汚名挽回」誤用説がありました。あったからこそ、はっきり誤用と主張する書籍が出てきたわけです。

 今回の辞書編纂の変更は、「汚名挽回」が『本来は』正用であったから、元に戻すといったことのようですが、そんなことはどうでもいいことです。いったん広く「汚名挽回は誤用」という認識が広まったのですから、それは認めねばなりません。ずっと長く、汚名挽回を見たら、名誉挽回や汚名返上と直すように多くの人がいい、言われた側も素直に応じていたのです。

 ただ、誤用説の広まりと同時に、擁護説もありました。私が見た範囲では、誤用とされている現状を認めた上で、かなり昔から、それも頻繁に「汚名挽回」が使われ続けていることから、もう誤用とするのはやめよう、といった趣旨のものばかりでした。

 そう言われても、うかつに「汚名挽回」と言ったり書いたりするわけにはいきませんでした。テストなら不正解や減点理由になってしまいます。面接などで言えば、心証が悪くなりかねません。大勢に向かって言ったり書いたりすれば、無教養と誤解されかねません。公式には汚名挽回は使えませんでした。私も決して使わないよう気を付けてきました。

 それでも、ある年のある調査例でしかないとはいえ、上記のように「汚名挽回」の方が若干多数派という結果が未だに出てしまうのも、やはり現状です。無暗に否定するわけにはいきません。

 このことは、論理では決めにくい面があります。頽勢(退勢、劣勢)を挽回する、という言い方は正しいとされています。頽勢も汚名も悪い方向のものですが、汚名だけ駄目だとするのは難しいでしょう。似たものに、回復があります。元気回復も疲労回復も両方言うし、どちらもおかしいとはしません。

 汚名挽回も理詰めで誤用の理由を説明しようとすると失敗します。反論された場合に適切な再反論はなさそうです。あくまでも、大勢が使うにしても誤用という認識は広くあり、公式文書などでは使わないのが普通だから、といった習慣として言うか言わないかを説明できる程度でしょう。議論し始めたら終わりません。泥沼に陥ります。

 個々人が自分が使うかどうか、決めるしかありません。ただ、国語辞書編纂者が正しいとまで言い切って、辞書に反映させたのですから、今後はあまりうるさく誤用というのは控えたほうがいいように思います。

P.S.

 私個人としては、おそらく今後も自分では「汚名挽回」は使いません。使わないようにずっとし続けて来たので、いつの間にか使えなくなってしまっているのです。

 今まで他の人が「汚名挽回」と書いたり言ったりすることに、あまりとやかくは言ってはきませんでしたが、「誤用と思われるから避けよう」くらいのことは言ってきました。今後は、「正用とする人もいるけど」と断って説明するようにしようと思います。
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この回答へのお礼

そうなんですよね。誤用ではないにしても、「この人、誤用している」と思われる危険があるので、やっぱり使うのは控えたいという感覚です。ありがとうございます。

お礼日時:2014/05/09 08:09

衰えマイナスに傾いた「運」(家運・社運・衰運)や「勢」(頽勢・劣勢・衰勢)を「挽回」するという用法が基本なので、「名誉挽回」も「汚名挽回」も後に付け加えられた特殊な言い回しでしかなく、本来的にはいずれも誤用とされるべき筋のものでありながら、いまや誤用の正用として幅を利かせるようになってしまっていると見るのが穏当でしょう。



出典:
「苟モ此数策ヲ断行セバ、皇運ヲ挽回シ、国勢ヲ拡張シ、万国ト並行スルモ、亦敢テ難シトセズ。」(坂本竜馬「船中八策」)
慶応三年六月十五日に作成された竜馬のこの記述がもっとも古い用例の一つではないでしょうか。
「幕府の 頽勢 ( たいせい ) を 挽回 ( ばんかい ) しうるか、どうかは、」(島崎藤村「夜明け前」)
「少しく頽勢(たいせい)を挽回(ばんかい)したと云うしだいになる。」(夏目漱石「坑夫」)
「現今の 頽勢 ( たいせい ) を 挽回 ( ばんかい ) しようとしている人はある。」(森鴎外「かのように」)
「将に仆れむとする平氏政府を挽回せむと欲したり。」(芥川龍之介「木曾義仲論」)
「故ニ温泉場ヲ開イテ以テ仲街ノ衰勢ヲ挽回セントスル也。」(永井荷風「上野」)
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この回答へのお礼

引用までしていただきありがとうございます!なるほど、名誉挽回も特殊な言い回しというのは意外でした。

お礼日時:2014/05/09 08:10

 No.2さんおとおり、「汚名返上」が正しい表現でしょう。



 言葉は、理屈や定義がどうであれ、そのような意味に使われ解釈されてなんぼのものですから、「誤用だ」との認識や、本来の意味や使われ方と違うものが広く行き渡ってしまえば、それで決まりでしょう。
 しかも、「汚名挽回」に関しては、「汚名返上」と「名誉挽回」の混同という、いかにもありそうな状況ですし。


 似たような例に、「当を得る」「的を射る」、「二の舞を演じる」「二の足を踏む」などがありますね。

 「あなたの回答は的を得ていない」と言われそうで、回答しようかどうか、二の舞を踏んでしまいました。
 この文章が誤用ではないという人はいないでしょう。
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この回答へのお礼

ありがとうございます。そうですよね、辞書での定義はどうあれ、肌感覚って大事だと思います。私は汚名挽回は違和感があって使わないと思います。

お礼日時:2014/05/09 08:12

「汚名挽回」を無視して「汚名返上」を使っていれば、問題はないでしょう。

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挽回とは元の状態に戻すという意味もあるため


汚名を被った状態からもとにもどす、という解釈も出来るからって理屈みたいです

ただそれ突っ込むと、疲労回復もおかしいので、
グレーのままが良いみたいです。
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この回答へのお礼

ありがとうございます。状態をもとに戻すですか…うーんなるほど。そういう理屈ですか…。

お礼日時:2014/05/02 18:52

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