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セネカの道徳論集を今読んでいますが、よく神という言葉が出てきます。「賢者は不死であること以外は神と同等である」というような言葉も出てきます。
 キリスト教ではなかったと思われるので、キリスト教の言う神ではないと思います。
 だとすればローマ神話の神々のことを指すのでしょうか?
教えて下さい。ストア派で言う、宇宙の意志のようなもの、ロゴスのことなのでしょうか。そうであったとしたら、私はロゴスについてはよく知りませんので、それについても教えて下さるようどうぞよろしくお願い致します。

A 回答 (1件)

ここらへんはややこしいところですし、ほかに詳しい方がいらっしゃるとは思うのですが、たまたまいま読んでいる本とも関連する部分ですので、少し考えてみたいと思います。

ただ、個別セネカについての知識があるわけではないので、その点をお含みの上お読みください。

そもそも紀元前6世紀頃、世界のさまざまな現象を、ギリシャ神話の神々が気まぐれによっておこしたと考えるのではなく、世界の内にある法則や原理によって説明しようとした人々があらわれたことをもって、哲学が誕生したとされています。

その人々は、神が世界を作りだしたのではなく、永久不変の物質アルケーがあらゆる現象のもととなっていると考えて、その物質の探求に思いをめぐらします。
タレスはそれを「水」といい、アナクシマンドロスは「無限定なもの」、アナクシメネスは「火」と考えたように、当時の哲学者たちの研究の眼は、自然へと向かっていました。

けれどもそれは後の自然科学とは異なって、実験をおこなったり、個々の問題を検討したりするという性格のものではなく、世界総体を考察し、言葉によって説明しようとするものであったために、旧来の神話的世界は排したものの、彼らの理解は宗教的なものでした。

ロゴスという言葉を初めて使ったのは、タレスらの少し後のヘラクレイトスです。
ヘラクレイトスはこの世界の原質を火と考え、この火がたえず変化し続ける、と考えたのです。有名な「万物は流転する」と言ったのがこの人です。

その一方で、生成変化するあらゆる現象の中に、不変のロゴス(ギリシャ語で「ことば」「理性」「根拠」「比例」などの意味を持つ根源語)が存在すると考えました。ロゴスはまた、ものごとを秩序づける力であり、万物を支配する規範であり、尺度でもあります。

人間はこの神的なロゴスを、理性の中に分有する。そのために、思惟することを通して、ロゴスを認識することができる。
思惟することで、人間は万物が流転することを知るばかりでなく、自らの主観性をも超越し、万人に共通のもの、つまり根源的ロゴスに到達する。その意味で、ロゴスは人間の倫理的規範ともなる。

ヘラクレイトスは神のことをこのように言っています。
「神はすなわち 昼夜、冬夏、戦争平和。神は さまざまに姿を変える。ちょうど火が香をくべられると、香のそれぞれの持ち味によって(さまざまの名で)呼ばれるように」(断片67 『ソクラテス以前の哲学者』廣川洋一 講談社学術文庫)

こうしたヘラクレイトスの考え方は、しばらく時代を経たのちの紀元前4世紀以降展開していくストア学派に影響をあたえます。
ご質問のセネカは、後期ストアの代表的な哲学者です。

ストア学派は、ヘラクレイトスにならって自然の根本物質を火とします。
この世界は初め火から生成し、最後には万物を燃やし尽くす「世界燃焼」によって消滅し、火に帰る。この生成と消滅の過程は永遠に繰り返されていく。
そして、この火はみずから生成して、原理(ロゴス)を持つために、神とも考えられる。
したがって、すべてのものは神の理法によって支配されていることにもなる。

このようにストアにとってロゴスは、宇宙に秩序をあたえ、宇宙をみちびく神の理性的力と考えられ、神、自然、運命と同一視されたのです。

「神は、理性とも、運命とも、ゼウスとも同じひとつのものであるし、またそれは他の多くの名でも呼ばれている」(ディオゲネス・ラエルティオス『哲学者列伝』:クラウス・リーゼンフーバー『西洋古代・中世哲学史』(平凡社ライブラリー)よりの孫引き)

こうした神は、抽象的で、具体的な礼拝の対象になるようなものではありません。
それでも神を普遍的なもの、絶対的なものとし、その下での倫理を考えることによって、後のキリスト教信仰に道を開いていくものとなります。
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この回答へのお礼

ありがとうございます。やはり、神とはストア派のいう宇宙に満ち満ちているロゴスのことだったのですね。ただ、そうすると、「不死であること以外はロゴスと同じである」となりますので、今度はロゴスについて、分からなくなりました(笑)
 しかし、ここから先は自分で探究しようと思います。
 どうもありがとうございました。

お礼日時:2004/07/07 20:35

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