よく岩石記載で「斜方輝石の周囲に単斜輝石の反応縁」という記述を見かけます.
マグマ混合の証拠として重要な記載的特徴と聞いたことがあるのですが,この「反応縁」とはいったいどういうものなのでしょうか?
斜方輝石の周りを単斜輝石が取り囲んでいれば反応縁と思っていたのですが,調べていると「overgrowth組織」というものがあり,これも斜方輝石の周りを単斜輝石が取り囲んでいるとのことで,混乱してしまいました.
単斜輝石の反応縁を伴った斜方輝石のことを「overgrowth組織」と呼ぶのでしょうか?
それとも,全く別の現象なのでしょうか?
そして,もし全く別な現象だとすればどう見分ければ良いのでしょうか?
overgrowth組織は,異種の鉱物が結晶軸を共有することでできた組織,ということなので,偏光顕微鏡(ユニバーサルステージは無し)で観察したときに,斜方輝石と単斜輝石が同時に消光すればovergrowth,別々に消光すれば反応縁という見分け方をするのでしょうか?
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
「反応縁」は,温度圧力条件や液組成が変わったことで非平衡になった鉱物の周辺に,平衡な鉱物が成長してできた成因を含めた構造で,「overgrowth」は元の鉱物の外側に組成の異なる同種鉱物または異種鉱物が成長している構造を指します.「反応縁」は成因まで含めた言葉,「overgrowth」は単なる構造で成因までは触れていないと思っていただければよいでしょう.
たとえばカンラン石が低温でSiO2の多いマグマ(液)に取り込まれた場合には,カンラン石は液と非平衡になり,液と反応して単斜輝石が「overgrowth」した「反応縁」をつくります.同様により低温側で晶出する斜方輝石が高温の液に取り込まれると,非平衡となり単斜輝石が「overgrowth」した「反応縁」を作ります.
斜長石の累帯構造はアノーサイト量が異なる斜長石が「overgrowth」してできたものです.
いずれも温度や液組成,H2O量などが変わって,新しい条件に平衡な鉱物が成長することで作られるものです.元の鉱物が融食されているなど,液と反応していることが確認できたovergrowth構造のことを反応縁と呼ぶことが多いです.また結晶軸を共有しているかどうかは問いません.また共有していても斜長石の累帯構造のように同時消光するとは限りません.
反応縁は成因も含み,overgrowthは特徴のみを表すという事ですね!すっきりしました!
とすれば記載を読む際には,「反応縁」と書かれている時は明らかに液−結晶間の反応の証拠(融食等)があり,「overgrowth」と書かれている時は「恐らく液と結晶が反応したことにより形成されたのだろうが,それを明らかに示す記載的特徴は見当たらない」というニュアンスを含むという事でしょうか?
結晶軸に関しては読みかじった知識でした.お恥ずかしい….
ありがとうございました!
No.1
- 回答日時:
web検索のコピーです。
http://www.h-hagiya.com/es/thinsec6.htm
オープンニコルの写真:屈折率が高く、浮き上がって見える透明な鉱物がかんらん石。ガラスのような不規則なひび、鉄分が酸化された赤黒いゴミ(iddingsite)、丸っこい外形が判断のポイント。そのほか単斜輝石や斜長石の斑晶が目立つ玄武岩。
かんらん石の周囲に、単斜輝石の反応縁(reaction rim)ができている。マグマの冷却の過程で、早期に晶出したかんらん石が、温度の低下と共に不安定になり、安定な単斜輝石に作り替えられようとする途中の段階を、凍結してみていることになる。
玄武岩にはかんらん石斑晶が多く見られるのに、深成岩であるはんれい岩では、むしろかんらん石は少なく、単斜輝石(普通輝石)が占める割合が非常に高いのは、このような反応関係による「つくりかえ」が、マグマだまりの中で進行するからだ。
クロスニコルの写真:中央の鮮やかな干渉色を示すのが、かんらん石。丸っこい外形と、不規則な割れ口(ひびが曲線)、スピネルの包有物、直消光、表面のなめらかな感じが特徴。やや細長い鮮やかな干渉色を示すのが普通輝石augite。細長い外形と2方向の劈開、双晶、斜消光、弱い多色性が特徴。そのほか、斜長石の斑晶が多数ある。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/earth-sc/hennkouk …
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炭酸塩鉱物のカソードルミネッセンス像(CL像)を取得し、結晶が段階的に成長している(overgrowth)かどうかを把握
単一結晶内で微量元素濃度の違いによる累帯構造や明暗が明瞭に観察されているかを検討する
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http://taisetsu.asa.hokkyodai.ac.jp/taisetsu/rep …
p11/16のあたり
7-2斜長石斑晶と輝石斑晶の起源
斜長石斑晶のコアがAn量80以上のものは玄武岩マグマと平衡にあったことが予想される.An量70-50のコアをもつ斜長石斑晶とすべての輝石斑晶は玄武岩マグマと平衡ではなく,安山岩マグマ中で生成されたものであろう.これらは,リム近傍で顕著な逆累帯構造を呈しており,噴火直前にマグマ混合をうけたものと考えられる.リム近傍での逆累帯構造の幅は一様ではなく,30μm以内の逆累帯幅を示すAゾーンをもつ斑晶と30-150μmの逆累帯幅またはovergrowth幅を示すBゾーンをもつ斑晶が共存する.定常状態での斜長石の結晶成長速度を10-11cm/s(Cashman,1993:TomiyaandTakahashi,1995)とすると,Aゾーンにおける幅20μmの結晶ができる時間は数年以内である.リム最外縁では,マグマ上昇過程で脱水によりリキダス温度が上がって過冷却状態となることが期待されるので,さらに結晶作用は促進される.したがって,Aゾーンは,噴火直前のおそらく1年以内におこったマグマ混合で形成されたものであろう.他方Bゾーンは,リム内側での過冷却状態が期待されないので,定常状態での結晶成長速度から考えると,数年から30年程度でつくられることが推測される.それらは,噴火段階における最後のマグマ混合が行われたそれ以前のマグマ混合に関係して形成されたものであろう.
一方,包有物では,Aゾーンをもつ斑晶は存在せず,Bゾーンをもつ斑晶のみがみられる.
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4.マフィック鉱物と斜長石のコアの化学組成
図4はマフィック鉱物斑晶のコアの化学組成ヒストグラムである.カンラン石斑晶はどのタイプもFo80以上がほとんどである.しかし,輝石斑晶コアはMg-value(100Mg/(Mg+Fe))が75以下である.これは,マフィック鉱物とメルト間の分配平衡(RoederandEmslie,1970:NielsenandDrake,1979)を考えると,輝石斑晶がカンラン石斑晶と平衡ではないことを示している.逆累帯構造を示すRタイプカンラン石斑晶とも輝石斑晶は平衡共存できない.このことからカンラン石斑晶と輝石斑晶は,もともと組成の異なる別のマグマにあったものが,マグマ混合の結果,両者が共存するに至ったと考えると合理的である.Rタイプカンラン石斑晶の存在は,輝石斑晶を含むマグマとの混合前に,カンラン石斑晶を含むマグマの中で,事前に逆累帯構造を生じるようなマグマ混合があったことを示唆している.
石基単斜輝石の組成は斑晶単斜輝石よりMg-valueが高く,石基サイズのカンラン石とMg-value組成が重なる.この事実は,温度降下による斑晶から石基に至る単純な結晶作用による組成変化ではなく,マグマ混合によってマグマの組成がより苦鉄質な組成に変わったことを強く示している.さらに,斑晶晶出段階では輝石斑晶のみが安定であってカンラン石はリキダス相ではなかったが,石基晶出段階では,カンラン石と単斜輝石は平衡にあって,より温度の高い苦鉄質なマグマから石基マフィック鉱物が晶出したことが考えられる.
斜長石斑晶は組織の違いから大きく3種類に分けられる.コアが不均質なもの(和田,1995),コアが清澄ないしは同心円的な累帯構造を示すもの,そして汚濁状のマントルをもつものである.不均質なコアをもつ斜長石斑晶は一個の斜長石斑晶につき2点以上のコアを分析して図にプロットしてある(図5).不均質なコア組成でAn量(100Ca/(Ca+Na))70以上の値は,真のコア組成ではなく,コアが部分溶融した後に晶出した部分のAn量を示していると考えられる(和田,1995:NakamuraandShimakita,1998).すなわち斜長石斑晶コアはAn量70-50のグループと92-80のグループに大別できよう(図5).石基斜長石は自形で長柱状結晶が多い.これらはAn量80-70のものがほとんどであり,斑晶の2グループの間のちょうど中間的な組成を示す.したがって,石基斜長石は,噴火前におこったAn量70-50を斑晶にもつ珪長質マグマとAn量92-80を斑晶にもつ苦鉄質マグマとのマグマ混合による混合液から晶出したことが予想される.
5.輝石斑晶リム近傍の組織と化学組成
図5 斜長石斑晶と石基斜長石のコアのAn量(100Ca/(Ca+Na))ヒストグラ.
5-1斜方輝石斑晶リム近傍の累帯構造プロファイル
図6に斜方輝石斑晶7個のリム近傍(リムから100μm以内)での累帯構造プロファイルを示す.ステップ幅は1μmから3μmである.リムから20μm以内で,Mg-valueとWo量が増加する顕著な逆累帯構造を示す.また他の微量成分も連動して増減している.これは,噴火時における水蒸気圧変化や酸素分圧変化によるものではなく,マグマの組成がマグマ混合によって変化したことが原因であると考えられる(和田,1991).
5-2単斜輝石斑晶リム近傍の累帯構造プロファイル
図7は単斜輝石斑晶5個のリム近傍(リムから100μm以内)での累帯構造プロファイルである.ステップ幅は1μmから3μmである.リムから20μm以内で,顕著な逆累帯構造を示す.Mg-value,Cr2O3,TiO2,Al2O3量が増加し,Wo,MnO量が減少している.斜方輝石斑晶の逆累帯構造の成因と同様に,マグマの組成がより苦鉄質に変化したことが,これらの逆累帯構造を生じさせたに違いない.リムから20μmという薄いゾーンで逆累帯構造が発達していることは,噴火直前にマグマ混合が起こったことを強く示している.
単斜輝石斑晶の中には,リム最外縁(リムから20μm)ではなく,リムからおよそ50μmで逆累帯構造がはじまる斑晶も存在する(図8).これらの単斜輝石斑晶は,リム最外縁でのマグマ混合よりも時間的に先にマグマ混合を受けていた可能性がある.
5-3輝石斑晶リムの逆累帯の厚さとovergrowthの厚さ
輝石斑晶は,リム近傍での組成変化幅の発達の程度によって,そのリムがAゾーンとBゾーンの2種類に分けられる.Aゾーンは,リム近傍での組成変化幅が小さいもので,薄い逆累帯構造の幅をもっている(図6・7).輝石斑晶のAゾーンの幅は30μm以内であり,ほとんどが20μm以内にある.一方,Bゾーンは,厚い逆累帯構造の幅をもっているものを呼ぶ(図8).そして融食した斜方輝石斑晶のまわりに単斜輝石のovergrowthをもっているものもBゾーンと称する.輝石斑晶のBゾーンは30~150μmの幅をもち,ほとんどが40~100μmの範囲にある.リム近傍での組成変化幅にこのような違いがあることは,これらが一様に噴火前にマグマ混合を受けたものではなく,噴火直前に異なるマグマ混合を受けたか,マグマ混合が段階的で時間的なギャップがあることを示している.
http://taisetsu.asa.hokkyodai.ac.jp/taisetsu/rep …
http://taisetsu.asa.hokkyodai.ac.jp/taisetsu/rep …
順にhtmlをめくってください。
参考文献のご提示,ありがとうございます.
「ゴミ」のような細かな鉱物が結晶外縁部に形成されているものが「反応縁(reaction rim)」,消光角がはっきりわかるくらいrimが厚く成長したものが「overgrowth」という事なのでしょうか?
あるいは,カンラン石の周りの単斜輝石は「反応縁」,直方輝石の周りの単斜輝石(普通輝石)は「overgrowth」と呼び分けているのでしょうか?
和田さんの論文はマグマ混合を論じる上で大変参考になりますよね.
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