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バッハのフランス組曲を弾いてみようと思い、 先生に話したら「楽譜は Henle Edition にしなさい。」 と言われました。 なぜでしょうか? ほかのEdition と比べて 特に何か意味があるのでしょうか?

(先生に直接聞いたらいいじゃないですか。 と思われるでしょうが、私の先生は日本人ではなく また、日本語もまったくわかりません。 私も普通のことであれば英語で理解できますが、ごく専門的な音楽用語になるとわからないことがあります。)

A 回答 (2件)

一か月前の御質問の際は失礼しました。

コメントもなく締め切られたまま再質問がなかったので、何か誤解があったのではないかと気にかけていました。回答は、再質問後にすぐお送りできるよう書きかけていたので、それを補完して下記回答としました。

バッハの楽譜には、大きく分けて原典版と教育版の2種類があります。バッハの時代には強弱記号やアーティキュレーション(アクセント、スラー、スタッカートなど)をほとんど書くことがなく、楽器も現代のピアノとは違ったので、ピアノで弾く場合は自分なりの解釈をして、強弱やアーティキュレーションを考える必要があります。しかしこのような解釈は、楽曲の構造を分析する知識や当時の演奏習慣についての知識がないとできないので、まだそこまで至らない学習者の参考のために、強弱やアーティキュレーションなどを校訂者が書き加えた教育版と呼ばれるものが出ています。
通常、先生に本格的なレッスンを受けている場合は、解釈については指導を受けられるので、教育版ではなく原典版を勧められると思います。教育版は教育版で参考になるところはありますが、校訂者一人ひとりの個人的な解釈なので、版によって内容が全く異なります。どれとどれを見るのが一番良いかなどの判断にも、また知識と経験が必要となります。古い時代に作成された教育版だと、書き込まれている演奏解釈自体が時代遅れの場合もあります。
原典版というのは、作曲者の書いたオリジナルの楽譜を忠実に再現し、それ以外には何も付け加えていないという意味です。「忠実に再現」といっても、楽譜の書き方そのものが今の時代と異なるところがあり、それをどこまで残すか、あるいは現代の記譜法に書き換えるかについては、版によって判断の違いがあります。また、指使いも校訂者によって新たに付け加えられているのが普通です。バッハの場合、直筆の楽譜が残っていない場合や、残っていても、あとで手を加えられた別のヴァージョンが存在する場合など、様々なケースがあります。そのため、「原典版」と表示されていても、やはり楽譜の校訂者によって参照する原典が違ったり、複数の資料の中からどの形を最も適切なものと判断するかについては違いが出たりします。
ヘンレ版は昔から原典版を代表するもので、長い間もっとも信頼されてきました。私は小学生のころ、初めて『インヴェンション』をやった時に、ペータース社から出ている教育版を買うように当時の先生から言われたのです。しかしその後、ワンランク上の先生の教室に移った時点で、ヘンレ版に買い直すように言われました。それ以降、バッハの主要な鍵盤作品の楽譜はすべてヘンレ版でそろえました。ただ、ヘンレ版も出版されてからかなりの年月がたち、その間に研究も進んだため、現在では必ずしもヘンレ版だけが原典版の権威というわけではありません。今でも、バッハを含め、多くの作曲家の作品でヘンレ版が重用されているのは事実ですが、たとえばモーツァルトなら、ベーレンライター社の『新モーツァルト全集』が最も信頼できる版です(ただし指使いが入っていないので、それで困る人はやはりほかの版が必要になります)。ベートーヴェン、シューベルト、シューマンなども随分ヘンレ版でそろえていますが、やはり、ヘンレ版だけ見ていればそれで十分という時代ではないことは確かです。
たとえば『平均律クラヴィア曲集』ですが、ヘンレ版より後に出たウィーン原典版(Universal社刊)はヘンレ版よりも多くの資料を参考とし、バッハがのちに書き直したヴァージョンが反映されています。そういう個所は、あとで手を加えた改訂稿の方が明らかに曲としては優れています。初めてこれを見たときは、手を加えられた個所の音の処理に納得し、もっと早く知りたかったと思いました。もう一つの原典版として重要なのは、『新バッハ全集』で知られるベーレンライター社から出ているものです。
プロ、およびプロを目指す本格的な学習者の場合は、複数の版を買い揃えて比較研究することが必須となりますが、そこまで必要がない場合はどれか1冊でよいと思います。
まずベーレンライター版ですが、細かい校訂報告がないので、異なる資料がある場合、どういう判断で編集されたのかがわかりにくいです。また、指使いが付いていないので、その点が学習者には不便です。
となると、ほかの二つのうちのどちらかということになりますが、ウィーン原典版は校訂報告が細かく、異なるヴァージョンも示されていますし、それぞれの典拠となる資料も特定できるので、プロには必見の版です。その点、ウィーン原典版よりずっと前に編纂されたヘンレ版は、最新の研究が反映されてはいません。
しかし、ヘンレ版の指使いはハンス-マルティン・テオポルトという人による優れたものです(同じヘンレ版で、指使いが入っていないヴァージョンも出ているので、購入時に注意が必要です)。基本的に指だけですべての音をレガートで弾くことが可能な指使いです。多少弾きづらいと感じる指使いもときどきありますが、これを学ぶことは非常に有意義です。ただ、サスティーン・ペダルが使える現代のピアノで弾くのには、この指使いは古いとみなす人もいます。たしかにピアノで弾く場合は、当時の楽器とは違う強弱やアーティキュレーションが必要となり、その解釈に合わせた指使いというのも考えなければなりません。そういう意味では、ウィーン原典版の指使いが参考になる場合もあります。
ウィーン原典版の使いにくいところは、製本のしかたのせいで楽譜が開きにくいということです。注釈等が充実しているので研究にはよいのですが、曲によっては異なるヴァージョンが併記されていたりして、逆に煩雑に感じることもあります。私はヘンレ版を基本的に使い、必要によってウィーン原典版ほかの楽譜を見比べて、そちらの方がよい場合はヘンレ版に書き込むようにしています。楽譜の浄書技術も優れているので、一番読みやすいのです。
先月御質問を拝見したあと、たまたま楽器店に寄る機会があったので、『フランス組曲』の異なる版の楽譜を少し見比べてきました。やはり、ウィーン原典版などは持っていてもよいと思いましたが、『フランス組曲』の場合は、『平均律』のように複雑な曲がないため、校訂もそれほど困難ではないと見え、音に関しても指使いに関しても、各版の間でそれほど大きな差はなさそうでした。
音大で教えている先生なら、自身がヘンレ版で学習し、それに慣れているという人も多いだろうと思いますし、その価値も欠点もわかっているはずなので、ヘンレ版を指定されたのならそれでよいと思います。
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この回答へのお礼

すみません! コメントもなしに締め切ってしまって。「削除」されるのが怖くて、そのまま締め切ってしまいました。
すぐに、再投稿しようと思っていましたが、10月のリサイタルの練習をしていて、一日伸ばしになってしまいました。

なるほど、なるほど・・・・・そういう事だったんですね。 教授が図書館に連絡をしてくださって、ヘンレ版を手にとってみました。 かなり、古い楽譜でしたが本当にシンプルで指使いもほとんどなし、です。(1ページに数個)
私が弾けるのは  ALLEMANDE で、精一杯でしょう。

でも、「弾いてみたい」 と思ったので頑張ります。

ありがとうございました。

P.S.・・・Tasten さんはピアノもお上手なんですね~。

お礼日時:2016/09/28 23:06

先月発売の「レコード芸術」誌(9月号)に、その辺の記事が載っていたような気がします。

もう本屋さんにはないかもしれませんが。私も立読みした程度なので、あまり内容は覚えていません。
 下記の「ディスク遊歩人 93「ヘンレ版のヘンレさん」……長木誠司」ですね。興味があればバックナンバーが入手できるようです。
http://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail.php …

 ギュンター・ヘンレさん(1899~1979)は実業家の方。音楽家でも学者でもなかったらしい。
 第二次大戦後にドイツで出版社を設立し、「実用的原典版」にこだわって出版したようです。音楽における「原典版」(Urtext)という概念を確立したらしい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%B3 …

 単に「学術的」にこだわっただけでなく「ページを開いたときの見た目のよさ、演奏しやすさ」という付加価値もあり、演奏家から絶大な信頼と支持を受けているということのようです。
 質問者さんの場合も、師匠の「こだわり」が弟子に伝えられていく、ということなのでしょう。

こんなサイトもご参考に。
http://www.muratapiano.com/text/urtext.html
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この回答へのお礼

ご回答、ありがとうございました。 海外在住なので、残念ながら「レコード芸術」 を読むことはできません。
ヘンレって、事業家だったんですね。 しりませんでした。 

私の教授はかなり 「こだわり」 のある人でなかなかついていくのが大変ですが、必死でくっついています。(笑)

お礼日時:2016/09/28 22:45

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