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ファンデルワース力について、どのような求まるのか教えて下さい。この力はいつも定性的な説明でしか使われないのですが、万有引力や電磁力のように定量的に計算する方法はないのでしょうか。いまいち分かりにくい力ですが。

A 回答 (2件)

これは量子力学を使って計算されます。



ちょっと長くて、専門的な説明になってしまいますが、我慢して読み進むと、ファンデルワールス力とはどういうものなのか下の方で解るはずです。結論から言うと、荷電粒子が光子の衣をまとったとき、その衣を着た荷電粒子の間で衣の光子のやり取りによって生じる力がファンデルワールス力です。


荷電粒子は光の場(光子)と相互作用をしています。その場合の系のエネルギーは、荷電粒子のエネルギーと光子のエネルギーと粒子光子間の相互作用の和で書かれています。量子力学ではエネルギーは行列と呼ばれる演算子で書かれています。そして、上記の和の中で相互作用項は、行列の非対角成分で書かれます。ところが、物理学で本当の実態は互いに相互作用しない物であると考えられています。相互作用している限り、荷電粒子と光子の間の相互作用は荷電粒子の一部なのか、光子の一部なのかどちらに属するか判定できず、だから粒子としての独立した単位とは考えられないからです。そこで、上記の荷電粒子は本当の粒子ではなくて、それを光子の衣を着ていない裸の粒子と呼びます。

そこで、本物の粒子を同定するために、そのエネルギー行列を数学でいうベクトルの回転の操作で、新しいベクトルに変換して、そのベクトルから見て元の行列が変換後に非対角成分がゼロになるような新しいベクトルを計算します。このベクトルを量子力学では状態ベクトルと呼びます。そうすると、裸の荷電粒子の成分と裸の光子の成分よりなるベクトルの各成分が混じり出し、新しい状態ベクトルの各成分が、ぞれそれ、裸の荷電粒子に光子の衣を纏い、裸の光子に荷電粒子の衣を纏った表現になって得られます。この新しいエネルギー演算子は非対角成分を持っていないで、対角成分だけで成り立っている。だから、この衣を着た物理的実態の間から相互作用が消去され、各々の実態は互いに完全に独立したものになったわけです。このように、非対角成分を持った行列をベクトルの変換によって対角化する操作を、数学では行列の固有値問題を解くと言います。

その操作によって、新たに光子の衣を着た荷電粒子のエネルギーを計算すると、裸の粒子だったときよりもエネルギーが少し下がっていることが示せます。量子力学ではエネルギーと振動数は同じものですから、このエネルギーのズレを、通常は振動数のズレ(フレクエンシー・シフト)と呼んでいます。朝永振一郎がノーベル賞をもらったのは、水素原子のエネルギーに対するこの振動数のズレを正しく計算する方法を見出したからです。その場合、光子のエネルギーを荷電粒子のエネルギーに繰り込むので、これを繰り込みの理論とも呼ばれています。

さて、いよいよファンデルワールス力の説明です。上記のようにして得られた物理的実態は、裸の粒子の周りに空間的に広がった光子の衣を着ている。だから裸の粒子よりも大きくなっている。その大きさたるや、元の原子の大きさの数千倍になっていることが計算で確かめられます。このように異常に大きくなれる理由は、光子には質量がないことにその原因があります。質量のない粒子の衣の広がりは、指数関数的ではなく、ベキ関数的にだらだら減衰するからです。これが電気力ではなくて核力だったら、その衣を構成する粒子は湯川秀樹によって発見された中間子であり、さらに中間子は質量を持っているので、その衣の広がりは指数関数的に急激に減衰するので、核力は遠くまで届きません。

話を光子よりなる衣に戻して、今度は衣を着た二つの荷電粒子が近づくと、その衣の裾が重なってしまう。量子力学のもう一つの特徴は、同じ粒子(ここでは光子)は区別がつかないことです。だから、光子の裾が重なってしまうと、この光子はどちらの荷電粒子に属していたかわからなくなってしまう。そして、その光子は二つの荷電粒子の両方を取り囲むようにぐるぐる回り出す。その結果、衣を着た荷電粒子の間に引力が生じる。これがファンデルワールス力です。そしてその特徴は、衣が光子であったために元の原子の大きさよりも数千倍の距離までその力が届くこと、さらに光子の特性の結果、その相互作用の大きさが通常の裸の荷電粒子間に働く電気力よりもずっと小さいことです。

でも小さいとは言え、引力がある。だから、状況が整えばそのファンデルワールス力だけで、結晶ができることがある。それが樟脳です。樟脳は固体ですが、ファンデルワールスの引力だけでできているため、ちょっとでも温度を上げると、液体にならずにいきなり気化してしまいます。いわゆる昇華というやつです。その光子のやり取りに起因するファンデルワールス力の特徴を上手に使っているのが、タンスなどの樟脳による防虫なのです。
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この回答へのお礼

たいていの化学や物理の本では、説明なしに使われてますが、実際には量子理学の助けがないと理解が難しいですね。だから説明を飛ばしているのですか。ありがとうございます。

お礼日時:2017/11/26 23:03

No.1です。

そこではファンデルワールス力の具体的な計算法を述べなかったので、それをここで捕捉しておきます。

荷電粒子が一つだけあった場合のエネルギー行列(物理学ではそれを通常ハミルトニアンと言います)と、二つあった場合のハミルトニアンの固有値問題を解いて、それぞれのハミルトニアンを対角化します。その結果、二つあった場合の衣を着た荷電粒子のエネルギーは、一つだけあった場合の衣を着た荷電粒子のエネルギーの和はより少し小さくなっています。このエネルギー差は粒子間距離の関数になっています。そのエネルギーを粒子間距離で微分すると、ファンデルワールス力の値が粒子間距離の関数として求められます。
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