No.1ベストアンサー
- 回答日時:
まず最初に、精神分析は理論であって、科学ではないということを念頭に置いておく必要があります。
防衛機制という考え方は、フロイトの精神分析の「自我」という仮説を発展させて、自我心理学者達が考え出した仮説です。
なぜ仮説だということを強調するかというと、本当に心の働きに「自我」というものや、そしてその自我の働きとしての防衛機制があるかどうかということは科学的には証明できないからです。
で、フロイト系の人々は、「本能系の衝動」(性の衝動と死への衝動)と「超自我」と「自我」の三つの力が葛藤を起こして、結果が出るという仮説のもとにいろいろと考えましたから、防衛機制という働きがその流れとして考えられたのです。
同じ精神分析でも、アドラーは力動論を採らずに全体論(人間という存在は部分部分でバラバラに働いているのではなく、全体として調和ある存在であるという考え方)をもとに理論を立てていきましたので、フロイト系の自我心理学などとは全く違う解釈をします。
で、どちらが正しいかということは科学的には証明できません。どちらもブラックボックスの中を勝手に想像している単なる理論だからです。
で、攻撃というのはブラックボックスの中の出来事ではなくて、人間の行動化された部分ですよね。だから、攻撃という行動はフロイト系理論で考える防衛機制の働きの結果として出てくる表出に当たるわけです。
たとえば、「反動形成」として、好きな子をいじめるという攻撃的な行動に出たのだとか、「投影」によって、相手に自分の耐えられない弱点を見せられる思いがして、つい攻撃したのだとか、「置き換え」によって、八つ当たり敵に攻撃したのだとか解釈するわけです。
つまり、ある防衛機制の働きの結果として攻撃的行動につながったのだという想像をするわけです。
アドラー心理学では全く違う仮説で想像します。
要はその後の治療に結びつき、有効な治療になればいいのです。
理論であって科学ではないとのことが、よく分かりました。また、「治療に結びつき、有効な治療になればよい」との言葉に励まされました。本当に有難うございました。
No.2
- 回答日時:
攻撃についての心理学的な研究はあまり多くありませんが、
「攻撃=防衛」という考え方はかなりマイナーです。
攻撃に関する仮説として有名な
ミラー&ダラードの「フラストレーション-攻撃仮説」では、
攻撃はフラストレーション解消の方法として生起し、
攻撃の背後には必ずフラストレーションが存在すると考えます。
ただし、この仮説でのフラストレーションは、
自我の脅威としてのフラストレーションではなく、
あくまでも欲求阻止状態を意味するフラストレーションです。
また、攻撃の動機の社会的側面についてはテダスキらの分類が有名です。
それによれば、攻撃をおこす動機としては、
「他者の態度・行動の変容を促すため」
「規範逸脱者に対する制裁として」
「侮辱などを受けた場合に自尊感情を回復するため」
という3タイプがあるとしています。
さらに、攻撃の生得性については、
比較生物学者のローレンツの研究が有名で、
解発刺激によって攻撃行動が引き起こされる魚類の例が述べられています。
この攻撃行動は機能的には
「配偶者の獲得」や「縄張りの防衛」があるため、
生物にとって適応的な行動パターンと言えます。
当然、人間にとっても、
環境への適応行動としての攻撃があるわけで、
自分の所有物を持って逃げる輩がいれば、
追いかけてひっぱたいたりするわけです。
大げさな話をすれば、
戦争は大規模な縄張り争いですので、
縄張りをめぐる動物同士の喧嘩と大差ありません。
もう一つだけ紹介すると、
行動主義的に言えば、
攻撃も学習の結果ということになります。
攻撃をすることによって強化子が与えられるようなことがあれば、
その後の攻撃行動は助長されることになります。
この点については、
バンデューラの観察学習の研究などが有名でしょう。
・・・これくらい紹介すれば十分ですかね。
攻撃が防衛機制のある種の現れとして解釈されることはあっても、
「攻撃=防衛」と結論することは、心理学的にはありえません。
よって、ご質問の1も2も、少々的外れではないかと思います。
精神分析を中心に臨床心理学だけを勉強なさると、
どうしても人間についての見方が一面的になりがちです。
社会心理・発達心理・学習心理・認知心理など、
メンタルヘルスとは直接関わらないように見える分野も、
勉強してみると非常に面白いものですよ。
お暇があったら、
そちらまで手を広げて見られると良いのではないでしょうか。
「『攻撃=防衛』という考え方はかなりマイナーです」
なるほど、ご紹介いただいた内容を読みますと、おっしゃるとおりですね。心理学分野における理論にはあまり手をつけていませんでした。もっと勉強します。有難うございました。
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