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19世紀イギリスの女性の結婚観がわかる文献をさがしています。
いま卒論で『嵐が丘』について色々調べており、ヒースクリフを愛していたキャサリンがエドガーと結婚して自らも窮屈な生活を送っていると感じ、当時の結婚観が気になった次第です。
おススメの文献知ってる方、是非ご回答よろしくお願いします。

*もし嵐が丘で論文を書くにあたって他の視点もあれば、それも是非ご回答いただければ幸いです。

A 回答 (5件)

http://kouzablog.tsunagalet-club.net/?eid=28
http://www.fukigarasu.com/blog/files/0ee32c07f3b …
この辺りも参考になるとおもいます。

イギリスに限定されるとあまり詳しくありませんが、19世紀までの欧州女性の結婚観は「とにかくいい男性を捕まえること」に尽きたといえます。

理由はURLにも書かれていますが、まず女性には財産権・相続権がなかったことです。
財産権がないというのはちょっと想像しにくいでしょうが、簡単に言えば「お年玉をもらっても親が管理する、子役で稼いでも給料を親が管理する、子供の状態」と思っていただければいいでしょう。親を男性、子供を女性に替えると、ほぼ当時の状況の説明になります。

ようするに財産権がないということは「仕事をして給料をもらっても父または夫の管理」であり、自分の銀行口座などを持つことはできず、ということは「自分で独立して家賃を払う」と言うことも不可能、そして給料が夫の管理ですから「仕事をするにも夫や父親の許可がないとできない」ということだったといえます。

つまり19世紀までの女性は「自立し自分で生き方を決めることはできない」状態であり、夫に隷属するしかなく「自分がやりたいことをやる(たとえば音楽をずっと学びたいなど)」にはそれを可能にする夫の収入と、それをやらせてくれる夫の理解が必要であった、のです。

これはフランスのナポレオン法典の一節ですが、
旧213条「夫は、その妻の保護義務を負い、妻は、その夫に服従義務を負う」
旧214条「妻は夫とともに居住し、夫が居住するに適当とするところにはどこでも夫に従う義務を負う」
とされていました。イギリスでもほぼ同様だったと考えてよいです。
つまりそれぐらい女性は「夫になる人によって生活が変わり、また結婚しても夫の束縛から逃れられない、ものだったわけです。
蛇足ですが、フランスでこの項目が廃止になったのは1964年、かなり最近のことだったわけです。

またそれ以外にも身分制度と宗教的規範がありました。

身分制度は主に王族・貴族・中産階級・農奴に分けられていて、貴族も地方の貴族は荘園主であり「その荘園がある村や町の維持発展に責任をもつのが荘園主だった」わけです。この辺りはドラマ「ダウントンアビー」などが分かりやすいでしょう。

イギリスでは18世紀に産業革命が起きますので、嵐が丘の時期になると「産業がある都会」と「農業主体の田舎」に分かれます。都会は中産階級が多く住み、彼らは男女の別なく労働者として働いていました(でも女性には財産権がなかったです)

王族・貴族は荘園の管理が主な仕事であり、ほとんどの貴族が自分の領地に住んでいました。そして農奴とよばれる小作農民(荘園主の元で農業を行う)、多少の自作農、鍛冶などの職人が住む領地に病院や教会などを建て、領地に住む人々の生活の安定に心掛けていたわけです。

これらの荘園地域に住む女性たちは、住み込みで荘園領主の館・城で働く場合もあり、特に娘の場合は「奉公人」として躾を学びながら下働きを行い、荘園主などが地位や経済レベルの見合う男性を見つけて結婚させるのが一般的でした。
領主の娘は寄宿舎学校または修道院に行くのが一般的で、キリスト教の求める「結婚するまでは処女」を守りました。
そして成人に達すると、社交界にデビューし、荘園主や親族などが「良い縁談」を持ってきて結婚するのが一般的だったといえます。

もちろん「恋愛」が全く無かったわけではありません。荘園領地内での中産階級の自由恋愛はそれなりにあったでしょうし、身分を超えた愛もあったはずですが「結婚」と言う制度と恋愛は別でもあったわけです。

嵐が丘はあまりにも辺鄙な荒野だったためスラッシュクロスと嵐が丘ぐらいしか上流階級の人が住んでおらず、また他の地との交流も難しかったため、エドガーとキャサリンが恋愛して結婚することが可能であったといえるでしょう。もちろんそれを支える女中や執事たちを供給する中産階級の村は近くに存在していたはずです。

逆をいえばキャサリンは「自分に見合った家柄で経済力があるのはエドガーだけ」でもあったわけで、女性は「結婚する男によって自分の人生が決まる」わけですから、お嬢様だったキャサリンが下男であるヒースクリフと結婚するのは抵抗があったといえるでしょう。
現代に置き換えれば、大学時代から付き合ってきた彼がいつまでも正社員にならずバイトで食いつないでいるので、見限って正社員で年収のよい男性と結婚するようなものです。現代でも「愛と経済力」では経済力のほうが勝つことも多いわけです。

また当時の貴族は「守るべき規範」がたくさんありました。特に「領地の民の模範となるべき存在」であったので、窮屈さは大きかったでしょう。そういう問題点もいろいろあったはずです。

最後に、日本人がこれらを考える時に「日本の状況と比べてはいけない」と思います。
日本には古来から「女性の財産や相続を禁止する法律」はまったくなく、女性も自由に仕事し、自分で自立することが可能だったからです。
 その名残は今の日本にも多々残っています。たとえば、日本では結婚すると女性が家計管理するのが一般的ですが、欧米では今でも男性が管理します。女性は「自分の給料があればそれを家計に入れて、初めて家庭経営に参加できる」のです。
つまりナポレオン法典の廃止された項目「夫に従う義務を負う」と言う点について、現代でも「家計負担が無ければ、ほぼ隷属状態」なのです。

日本は違いますよね。夫を従わせるのが妻の権利だと考える人も少なくないですし「夫の収入が良ければ私は専業主婦でいい(働きたくない)」と言う選択肢もあり、その選択をしたうえで、夫の給料を管理して自由にできるわけです。

この辺りの「根本的な違い」が伝統的な日本の夫婦関係と欧州の夫婦関係にはあるので、そう簡単に「理解できる」とは思わないほうが良いと思います。
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この回答へのお礼

大変わかりやすく、ご丁寧な回答ありがとうございます。

当時は夫が絶対的で、夫の理解がない限り妻の自由はほぼ無いという関係が当たり前だったんでしょうか。

たしかにキャサリンも、愛するヒースクリフと結婚しないのは「自分が落ちぶれるから」、エドガーの婚約を受けたのは「彼と結婚すれば自分の生活も保障される&ヒースクリフに経済的支援ができる」からと述べています。

しかし、物語を悲劇に導いたのは、キャサリンが表面的理由でエドガーとの婚約を受け、本当に愛するヒースクリフを裏切ったところにあると私は思っています。ここからヒースクリフは復讐に燃え始め、キャサリン自身もエドガーとの夫婦生活の中にもヒースクリフの事を考える矛盾した生活に苦しみます。

嵐が丘は様々な視点から色々な読み方ができる奥が深すぎる作品ですが、どの視点から見ても謎だらけで、僕にとっては難しすぎる作品です。でも、もしかしたら作者は、主人公2人の結婚を悲劇のトリガーにしたことで、当時の結婚観への批評のメッセージ性も隠したんでしょうか…

当時のイギリスの文化を知らない日本人からしたら、愛よりも財力や身分に執着するという結婚観を捉えるのは難しいですね。。

お礼日時:2019/01/09 02:15

#4です。

お礼ありがとうございます。

あ、質問者様男性だったんですね。なんとなく女性だと思っていました(笑)
私も男ですが、男が女性文学を読み解くには、もう一段階考慮すべき点があると思いますので、先にそれを説明します。

たとえば、世界中で有名な「女性文学の古典」に源氏物語と枕草子があります。
これ男が読むと「人間関係が複雑で、感情ももつれが複雑すぎて読み込めない」と言うことが起こります。ところが女性たちはすんなり読み込むんですね。

 なにがちがうかというと「男は事実と正義が社会の基準であるのに対して、女性は好き嫌いと言う感情が基準である」ということです。だから女性が書く文章は(男から見れば)やたらに人間関係ばかりでてきて「○○がどうした、××がこうした」というものになるのです。
 このサイトでも恋愛関係の相談なんてそういうのばっかりですよ。ご覧になってみるといいと思います。

まあ、次元は違いますが「女性が書く文章の特徴」と言う点では嵐が丘も恋愛相談もフォーマットは相似形だと思います。

という点を踏まえて個別に書きます。

>当時は夫が絶対的で、夫の理解がない限り妻の自由はほぼ無いという関係が当たり前だったんでしょうか。
当時というより古来からそうで、それが変わったのが20世紀の女性解放運動、イスラム教は未だに「夫の理解がないと妻の自由はない」わけです。

ただ、これを読み解くには単に「男女の差」だけではなく、日本以外の国では当たり前であった「奴隷を含む身分制度」も意識する必要があります。

西洋の社会システムは基本的にローマ時代に始まります。ローマ時代から続く基本は家父長制(patriarchy)ですが、これはローマが徴兵制を伴う軍事制度を取っていたことに始まります。

つまり「戦争に行く『男』がすべての権限を握るのが正しい」という考え方で、これはギリシャのポリス制(都市国家政)に見られるように「ポリス同士の戦争で負ければ、すべてを失う」という考え方から来ています。つまり「男が国を守り家族を守るために徴兵されるのだから、徴兵されない女・子供・奴隷や家来は男に従う」というものです。

厳然とした階級制度があり、16世紀ごろまでは奴隷制もあった西洋社会では「男がすべてを決定し、家父長に守られている家族(奴隷も使用人も含む)は家父長の決定に服する」のが当たり前だったのです。だから「女だけ」と考えるとむしろ理解ができません。

>愛よりも財力や身分に執着するという結婚観を捉えるのは難しい
下男になっているヒースクリフと結婚するということは、キャサリンも下男になる、ということです。家父長を継いだヒンドリーが許せばヒースクリフが貴族側になることも可能だったはずですが、可能性がほとんど無い以上、結婚すればキャサリンは下女になってしまうわけで、それは家族の会合にも出れないし、他の使用人と同じ境遇になる、ということでもあり、とても耐えられなかったでしょう。
 これが「愛する男と別のどこかに行って暮らせる」なら駆け落ちと言う手もあったのでしょうが、当時のイギリスではそれはできないほど強固な階級制度があったといえます。

>もしかしたら作者は、主人公2人の結婚を悲劇のトリガーにしたことで、当時の結婚観への批評のメッセージ性も隠したんでしょうか…

それはあるでしょうね。すでに19世紀になると産業革命の矛盾が出てきて、封建制度や家父長制を支える農本主義が揺らいでいたからです。作者のエミリー・ブロンテは牧師の子であり、当時としてはかなり高度な教育を受けた女性ですから、その矛盾と「女性と言う立場」を考えて書いたことは間違いないと思います。

>物語を悲劇に導いたのは、キャサリンが表面的理由でエドガーとの婚約を受け、本当に愛するヒースクリフを裏切ったところにあると私は思っています。ここからヒースクリフは復讐に燃え始め、キャサリン自身もエドガーとの夫婦生活の中にもヒースクリフの事を考える矛盾した生活に苦しみます。

当時の女性が「フィクション」とはいえ、話を紡ぐのにどのように考えたか、という分析も必要だと思います。基本的に物語というのは主人公・主人公の相手役または敵役・狂言回し(トリックスター)が必要になります

嵐が丘でいえば主人公はキャサリン、敵役はヒンドリーやエドガーなのですが、それだけでなく「女性を自由にしない社会、男女とも身分によってできることが限られる社会」であった、と考えることはできると思います。

そしてヒースクリフは狂言回しだと私は考えます。狂言回しというのは「なんらかのきっかけを作り、物語を回転させ、作者の意図を明確にしていく役割」です。

一例をあげればバットマンシリーズのジョーカー、初期のジョーカーはバットマンの敵役ですが、ダークナイトシリーズぐらいから「社会のダークサイドを体現する狂言回し」に変わっていき、バットマンシリーズは社会的な評価を受けるようになっていくわけです。

作者がなぜヒースクリフを狂言回しにしたか、が嵐が丘の本質だと私は考えます。

蛇足
ちょっとネットで調べていたら、こんなのを見つけました。
https://wezz-y.com/archives/23911/3

セクシーさに関して「なぜ無いのか(源氏物語は性描写がふんだんにある)」というのは間違いなく「キリスト教的な影響」だとだんげんしていいでしょう。そういえば、最近韓国の防弾少年団の映画がイスラムの道徳監視集団から「みんな同性愛者のようになよなよした顔をしていて不道徳だ」という理由で、上映中止になりましたが、当時のキリスト教の世界も同じように「性描写はタブー」でした。
 
まして作者は牧師の娘であり、当時女流作家は評価が低かったので「男性的なペンネームで男性的な文章の書き方」をしたようですから「性描写」は書くことができなかったでしょう。

でも腐女子は「関係性にセクシーさを感じる」わけで、これってたぶん嵐が丘の本質的な部分であり、男性が「訳が分からん」と思う根本でもあるように思います。
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この回答へのお礼

男です笑 女性の基準も考慮して読まないと難しいのですね。

大変ご丁寧な回答ありがとうございます。
キリスト教の思想や当時の歴史的背景、ヒースクリフの役割、ブロンテ自身のことなど、まだまだ調べなきゃいけないことがおおそうですね。。
しかし、碩学である回答者様のおかげで、論文を書く上での新たな視点を持つことができました!大変感謝しています。行き詰まった際は、まだまだご意見をいただきたく思います。

お礼日時:2019/01/09 19:22

ん?いや、映画から、小説なんかを探して、そこに引用されているとか参考文献の記録とかあったりするでしょ?


映画から探すとはそういう事です。
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この回答へのお礼

なるほど、理解しました!
ありがとうございます。

お礼日時:2019/01/08 17:20

その辺は階級とかによってもちがうでしょうから


なにか絞らないと難しいかもしれませんね

小説でジェーンオースティン
「高慢と偏見」(映画はプライドと偏見)18世紀末
「エマ」(映画もエマ)19世紀

あたりとかはどうでさすかね
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。
階級によっても違うんですね…

お礼日時:2019/01/08 17:08

その年代近辺の映画から探してみるとか?


http://gaslight.link/movie01
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この回答へのお礼

ご意見ありがとうございます。
しかし、映画を参考に論文を書くことは難しいので。。

お礼日時:2019/01/08 17:06

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