No.4ベストアンサー
- 回答日時:
> 質問は、芭蕉は、日本でも、共感覚な詩人として扱われることもある、のでしょうか?
ほとんどないでしょう。
http://www.eikoikegami.com/home3
池上英子著に、[英語圏では、芭蕉は共感覚な詩人として扱われることもある]とあるのならば、池上英子は日本語圏では「芭蕉は共感覚な詩人として扱われる」実例を見つけていない可能性が高いでしょう。
岩崎純一には、芭蕉の「あらたふと青葉若葉の日の光」を抜き書きしたものがありますが、共感覚としてあげているのではないです。
https://iwasakijunichi.net/2/1/7/2/2-1.pdf (P83/128)
海暮れて鴨の声ほのかに白し
(これを、「鴨の声が、ほのかに & 白っぽい」と解釈する)以外の鑑賞もあります。
☆ 立川美術学院講師の小笠原高志の解釈はこうです。
五・五・七には必然性があり、舟を出して詠んでいるその実情に即して読みたいです。「海暮れてほのかに白し鴨のこゑ」ではなく、「海暮れて鴨のこゑほのかに白し」にした理由は、時系列の必然性にあるのではないでしょうか。港から舟をこぎ出すほどにだんだん海は暮れてきて、遠方は闇の中に沈んでゆく。すると、沖の方から鴨の声が聞こえてきた。その声の主の方を凝視していると、暗闇に目が慣れてきて、「ほのかに」白いものが見える。あれは、翼か雲か幽かな光か。「こゑ」を聞いたあとに、しばらく目が慣れるための時間が必要であり、目で音源を探っている、その、時の経過を形容動詞「ほのかに」で示しているように思います。
☆ 詩人の清水哲男の解釈はこうです。
不意にどこからか「鴨のこゑ」が聞こえてきた。そちらのほうへ目を凝らしてみるが、むろん暗くて姿は見えない。もしかすると、空耳だったのだろうか。そんな気持ちを「ほのかに白し」と詠み込んでいる。この句は、聴覚を視覚に転化した成功例としてよく引かれるけれど、芭蕉当人には、そうした明確な方法意識はなかったのではないかと思う。むしろ、空耳だったのかもしれないという「ほのか」な疑念をこそ「白し」と視覚化したのではないだろうか。
☆ 水原秋桜子の解釈はこうです。
この句の景は、冬の海の薄暮で、白くたなびいた靄の中で、鴨の一群の濁み声がきこえる。その声と靄とが一つになった感じで、海の靄が白いのか、鴨の声が白いのか、わからぬものになってしまった-というので、遠くきこえる鴨の声の哀れさを実にするどく捉えてあるのです。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/questio …
辞書で「白」を牽くと、《白=明らか・ハッキリしている/明るい・暗くない/何もない・むなしい・ただそれだけ》という意味もあると説明されています。
語順を替えて、「海暮れて ほのかに白し 鴨のこゑ」だと、共感覚とは無関係となるでしょう。 五・五・七「海暮れて 鴨のこゑ ほのかに白し」という句にしても、同様の解釈は可能です。
閑さや岩にしみ入る蝉の声
wikiによると、 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%91%E3%81%95 …
随伴した河合曾良が記した『随行日記』では、「山寺や石にしみつく蝉の声」とされている。 それを、後日芭蕉が推敲して、「閑さや岩にしみ入る蝉の声」を完成作品に直したのであれば、直感・感覚の共感覚とは無関係との文芸のセンスの問題でしょう。
ニイニイゼミであるにしても静かな山寺で聞けば、静かではなくウルサイです。それを「閑さや」を使って表現したのは、競い合いを避け、のどかな・閑居の状況を期待する気持の指向を表現したかったのかもしれないです。 蝉の声も競い合い、反響し、飛び交うのではなく、岩と苔・木々に吸収・吸音されるのを期待しているとも言えます。
https://4travel.jp/travelogue/11640209 詩人、文芸を志すものが、ただ感覚をストレートに表現してそれでよしとするのだとは思わないのではないでしょうか。
詳細な・丁寧なご回答ありがとうございました。
芭蕉の2句は、必ずしも共感覚が働いたものとは言えない、ということですね。
<暗闇に目が慣れてきて、「ほのかに」白いものが見える。>
<競い合いを避け、のどかな・閑居の状況を期待する気持の指向を表現したかった>のですね。
No.3
- 回答日時:
すみません、私、共感覚を勘違いしていました。
ひとつの感覚から呼び起こされるほかの感覚という意味なんですね。
これは難しい。例えば
柿食えば鐘がなるなり法隆寺
これなんかは単なる叙景詩ともいえますが、柿の味覚と侘び寂びとの共感覚がないと成立しません。
再度の御回答ありがとうございました。
<柿の味覚と侘び寂びとの共感覚>、言われてみれば私でも感じます・分かります。
しかし、私には薄ぼんやりとしか感じられない感情を、句にまとめるのは俳人の腕ですね。
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