
殺人事件の裁判に関するニュースなどを読んでいると、判決における裁判官の言葉として、”遺族の処罰感情は峻烈である””両親らも極刑を望んでいる”などという言葉を目にすることがよくあります。
単純に理解すると、「被害者の関係者が重刑を望んでいる」ので「刑を重くします」という具合に取れてしまうのですが、判決における裁判官の量刑の判断として、それらの言辞はそのように作用しているのでしょうか?
”法律論として”どうなってるのか教えてください。
私は、量刑は被告がその犯した行為そのものについてのみ判断されると考えていました。もちろん罪歴や反省の度合いは加味されるでしょう。
しかし、例えば殺人事件の被害者が天涯孤独である、あるいは遺族が死刑制度廃止主義者である、などのケースで極刑を望む関係者がいない場合、
同じような犯罪を犯していても、量刑は変わってしまうのでしょうか?
最後に、質問文そのものに不快感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。それについてはお詫びいたします。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
>判決における裁判官の量刑の判断として、それらの言辞はそのように作用しているのでしょうか?
私の知っている範囲では、
被害者側の感情は「犯人を許している場合」に「刑を軽くする」方向には考慮されます。
「犯人を許していない場合」は「軽くしない」方向です。(「重くする」のではなく)
>”法律論として”どうなってるのか教えてください。
法律論といってもなぁ…
刑を決める手順は
1 犯罪事実の確定(対応する罰条の確定)
2 科刑上一罪の処理(刑法54条)
3 複数種類の刑を選べる場合は1つを選択
4 再犯加重(56条~59条)
5 法律上の減軽(未遂犯、心神耗弱、過剰防衛など)
6 併合罪加重(45条~53条)
7 6までで定まった範囲の中から刑を1つ選択
8 7を決めるに当たり、6までの範囲ではなお重いときは酌量減軽(66条、67条、71条)
(考える順序としては7と8を入れ替えても可)
で、犯罪事実が確定さえすれば、1~6に選択の余地はなく、
ここまでの中に「被害者感情」の入り込む余地はないと言っていいです。
で、いわゆる「量刑」ってのは主に7を指すんですが、
ここは裁判官の裁量によって決まります(とはいえ、判例の蓄積はあるけど)
なもんで、法律論で語れる範囲かと言うと…消極的。
(刑法の教科書があまりこの部分に踏み込んでいないことも、
法律論で語りにくい部分であることの1つの証左でしょう)
ありがとうございます。理解したことを単純にまとめると、
・1-6において懲役20年か、無期懲役か、死刑かに選択肢が絞られる
・7.において裁判官の裁量によりいずれかが選択される。
・その裁量において”遺族の処罰感情は峻烈である”ことが、量刑に対し定量的な影響を
及ぼしているかどうかは、判決において明言されないためわからない。
・そもそも裁判官の裁量については法律論の範疇で語れる問題ではない
ということですね。”裁量”に明示的な基準はないのかなあ?これこれこういった事情は
量刑における”裁量”事由に含めてはならない、とか。
判決文を通して読めば、また違った視点を見つけられるかもしれないですね。
No.3
- 回答日時:
同じことの繰り返しになるようですが、念のため補足です。
たとえば単純な殺人罪だと、刑法199条で
「死刑、無期又は5年以上20年以下の懲役」と決まっていますよね。
こういう単純な場合ならこれだけで1~6の作業は
(とりあえず3を飛ばしているけど)終わりです。
実際には、1個の行為が複数の罪に触れたり、複数の罪を犯していたりするんで、
こういう範囲を決める作業だけでも複雑なんですが、それが1~6の作業。
で、7は、こうやって決まった範囲、つまり
「死刑、無期懲役、5年以上20年以下の懲役」
という範囲の中からどこに決めるか、という部分。
>・そもそも裁判官の裁量については法律論の範疇で語れる問題ではない
正確に言うと、法律論としては
「あとは裁判官が決めなさい」で終わりということです。
…でもこれじゃ、たぶん欲しい答えじゃないでしょ?
だから「法律論では語りにくい」んです。
>”裁量”に明示的な基準はないのかなあ?
それこそ判例の蓄積によって
ある程度の類型化は進んでいるんじゃないかとは思いますよ。
だけど、犯罪をめぐる事情なんて、
「100%同じと呼べるケースが1つでもあるといえる?」
ってくらいケースバイケースでしょうから、
むしろ杓子定規に当てはめるほうが妥当性を欠くんじゃないかと思います。
そして、情状は、犯後の情状も含めていいってのが判例の流れだから
(だから犯人が反省しているとか、被害弁償しているなんてのも考慮されるわけで)
犯後の情状の1つである「被害者or遺族感情」も無視されるものじゃないと思います。
>判決文を通して読めば、また違った視点を見つけられるかもしれないですね。
同感です。
なるほど、再三にわたる詳細なご説明をありがとうございます。さらによく理解できたような気がします。
犯罪事実としては、中学生の犯行と成人の犯行は区別されるべきだし、遊ぶ金欲しさの強盗と子供を
守るための正当防衛も区別されるべきだと思います。
しかしそれらを捨象した後に残る犯罪事実に対する量刑が、いわゆる外部の声に左右されることが
あっていいのかっていうのがもともとの疑問でした。
でもよく考えると、”遺族の峻烈な処罰感情”を考慮することが許されないのなら、”減刑嘆願の署名”
なども当然考慮できなくなるわけで・・
情状酌量っていうのはわかりにくい概念ですよね。裁判官が法規定のみに従って一切の斟酌を行わず
機械のように裁いていくのはどうかと思う反面、裁判官の裁量部分で人間味溢れる裁判があまりにも
自由に展開されるというのも逆の意味でどうなのか・・
極刑を!と叫べば叫ぶほど刑が重くなる(もしくは刑が軽くならない)のでは、被害者本人も遺族の方々も
あまりにも救いがないじゃないかと思ったのです。
とりとめなくなっちゃいましたが、どうもありがとうございました。
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