憲法の授業で「約60年前の国民は、明治憲法から新憲法に変わること、そして新憲法の内容を社会契約した」と教わりました。
でも、私は憲法に契約した覚えはありませんし、生まれる前の憲法作成に責任を負っていないはずです。それなのに、なぜ守らなくてはならないのでしょう。
■質問の論点
1.私はいつ憲法に契約したことになってるのですか? 契約しなくてはならないのですか? 契約を拒否したいとき、解約したいときはどうしたらいいですか?
2.なぜ生まれる前に決められたことを守らなければならないのですか?
3.(お年寄り方などで)明治憲法に契約した人は、現憲法に契約しなおさなければならないのですか? もし、明治憲法から現憲法に変わったことを知らない人が「明治憲法で合法かつ現憲法で違法」という行為をしたらどうなるのですか?
No.9ベストアンサー
- 回答日時:
>1.私はいつ憲法に契約したことになってるのですか? 契約しなくてはならないのですか?
あなたは憲法に契約していないと思います。
憲法は広い意味では国家の基本法として統治作用を存在を基礎付けるもので、直接国民を名宛人とするものではないからです。
また、あなたが憲法によって統治作用を授権された国家のもとでその統治作用を受けるのは、あなたが能動的に契約したからではなくて、国家が統治作用を授権されているされている範囲にあなたが「たまたま投げ込まれた(生まれた)」ことに起因すると思います。
>契約を拒否したいとき、解約したいときはどうしたらいいですか?
契約ではないということなので、憲法による統治作用の枠外にでたいと解しますと、わが国では国籍離脱の自由が保障されていますからわが国の国民でなくなることで国民であることに起因する作用からは逃れることができます。
また、わが国の国民として、憲法の内容を変更するには憲法改正手続によるものと考えられます。
>2.なぜ生まれる前に決められたことを守らなければならないのですか?
それはあなたがその守るべき法の効力の及ぶ場所的・時的な範囲に「たまたま投げ込まれた」からでしょう。
ただし、先に見たように憲法は直接国民を名宛人としていないので、憲法をあなたの守るべき法と呼べるかは疑問です。
>3.(お年寄り方などで)明治憲法に契約した人は、現憲法に契約しなおさなければならないのですか?
明治憲法から日本国憲法への移行には諸学説が存在しています。
最も有力化したといえるのが宮沢俊義の提唱した八月革命説です。
彼の明確にした主権の意義によれば、天皇主権から国民主権への移行は旧憲法の改憲条項によって可能とされるところを超えるもので、主権の変更につき法的革命が起こったとのフィクション(法的擬制)によってこれを理論上説明するものです。
新憲法が制定されれば、旧憲法の下にあってその統治作用の客体であった人々は、従前と同様に新憲法の客体となると考えられます。これも契約しなおすとの表現が妥当でないことからそういえます。
>もし、明治憲法から現憲法に変わったことを知らない人が「明治憲法で合法かつ現憲法で違法」という行為をしたらどうなるのですか?
「法の不知はこれを許さず」というのが法の大原則です。
法が民主的基盤によって定立されるとき、単にそれを知らなかっただけでその適用を免れるならば、その法を定立する基盤となった民主政そのものが崩壊すると考えられます。
つまり、法の定立の段階で民主主義を妥当させた以上は、それを実現させるために強制的に民主主義を権威付ける人々(=国民)に妥当させていかなければ、そもそも決定段階で民主主義を取った意味がなくなるということです。
クラス会で学園祭の出し物を決める際に、すべての生徒にその決定に参加する可能性があったとすれば、それによって決まった事項はクラスの全員を拘束するとしなければ、はじめからクラス会を開く意味がなくなってしまいますからね。
ただし、刑法など自由主義の保障の要請が強い法領域では、自由主義的観点からの修正があり、法の不知はそれだけで刑事責任を免責しませんが、一定の要件のもとで法律的な錯誤についても免責がなされる可能性はあります。
No.10
- 回答日時:
こんにちは。
「社会契約」とは何かということを理解されれば、「質問の論点」は、氷解すると思います。
「社会契約」は、政治学や社会学で使われる表現であり、ある国家内でその国家とその市民の権利と責任に対する仮定・空想上の契約を言います。つまり、私達が普段している契約行為とは概念が違うと言うことで、契約書を交わす訳ではないんですね。
国家の全ての構成員は、その国に存在していることにより、「社会契約」の条件に同意したとみなされます。
以上から、
>1.私はいつ憲法に契約したことになってるのですか?
日本の国籍になり、日本に住むようになったときからです。
>契約しなくてはならないのですか?
あえて書くとすれば、契約行為はする必要はありませんが、自動的に契約したことになります。
>契約を拒否したいとき、解約したいときはどうしたらいいですか?
拒否や解約と言う概念はありませんが、日本国籍を離脱し国外に出るしかないですね。
>2.なぜ生まれる前に決められたことを守らなければならないのですか?
社会的な制度だからです。
例えば、刑法では殺人をしてはいけないことになっていますが、今日生まれたお子さんも、殺人をしてはいけないのと同じ事です。
>3.(お年寄り方などで)明治憲法に契約した人は、現憲法に契約しなおさなければならないのですか?
社会制度が変わればその国に存在していることにより、同意したとみなされます。
具体的な契約行為を伴うものではありませんから、契約をしなおす必要はありません。
>もし、明治憲法から現憲法に変わったことを知らない人が「明治憲法で合法かつ現憲法で違法」という行為をしたらどうなるのですか?
「法律は知らなかったでは済まされない」と言う言葉をご存知だと思いますが、勿論、罰せられます。
社会の秩序のためには、ある程度の自動や強制を伴わなければならない。
とてもごもっともなことですし、悩ましいものです。
これから、何が「ごもっとも」なのか良く考えていきたいと思います。
No.7
- 回答日時:
日本国憲法が憲法尊重擁護義務として守ることを強制しているのは、
天皇や公務員などで、一般の国民は入っていません。
憲法は国民の人権を国家から守るためにあるものですので、
あくまで憲法尊重義務があるのは、公権力側にある人たちです。
ですから、憲法と国民の間で契約があるか、というと、
「憲法を守らなければいけない」という意味では契約はありません。
質問の中にあります、
「約60年前の国民は、明治憲法から新憲法に変わること、そして新憲法の内容を社会契約した」
とは、明治憲法と新憲法では、天皇主権と国民主権というまったく正反対の
憲法に変わったため、そこをどう説明するかという論点があり、
その中のひとつの説として、
「明治憲法から新憲法に変わること」を社会契約したと解釈しているのでしょう。
(でもそれは通説ではありません。)
また、後半部分も、契約といっても、自然権にかかわる契約ですので、
現在の日常生活でイメージする契約とはまったく異質の物です。
あえて契約という言葉で
「新憲法の内容を社会契約した」ということを説明すると、
国民の基本的人権を国家権力から守る、という契約を国家と交わした、
という意味になるのではないかと思います。
簡単すぎる言い方かもしれませんが、
憲法に「してやられた」のは公で、
憲法に「保護される」のが民。
こういう風に社会は発展してきたということですね。
No.6
- 回答日時:
ここでいう契約は、市民(日本国憲法では日本国民)が総体として国家としたものです。
あなたや私といった個人がしたものではありません。「生まれる前に決められたこと・・・」の回答としては憲法11条及び97条の「現在及び将来の国民」に権利を保障する、となっているので、その条文が根拠になると思います。
国民とはなんぞや?というレベルでいうと、、、国籍法を勉強して下さい。
No.5
- 回答日時:
#1の回答者です。
> さて、「契約」についてですが、ルソーやロックのいう「社会契約説」の「契約」であると思われます。「憲法前文は社会契約説を丸写ししたかのような部分がある」という説(八木ら)もありますので、この「契約」は、「社会契約説」と解してよさそうです(ごめんなさい、社会契約説が何なのかはわかりません…)。
社会契約説というのは、社会の成立において、本来自然状態におかれた人間(社会を構成する前の人間)が、自らの持つ自然的な権利を保護するために社会契約を結ぶ(社会を作る)とした社会形成論です。社会契約説が登場する以前は、王権神授説(神が王に国を統治する権利を与えた)による社会形成論が幅をきかせていましたが、啓蒙主義の高まりにより、人間が自らの社会をどのように構成してきたのか、を説く社会契約説が登場したと言えます。
しかし、社会契約説における「人間」は、特定の個人(国民)を指すのではなく、王に統治権を与えた神、に対抗する存在として説かれます。神が王に統治権を与えたという意見には誰も正面から反論できませんので(神が王に統治権を与えてはいないと証明できるものがいないように)、同じように誰にも反論できない「人間が契約によって社会を作った」という理論によって、王権神授説に対抗することを目的としたと言って良いでしょう。
よって、社会契約説は必ずしも「契約」を具体的な事実として描かず、むしろ抽象的な「市民による社会への支持・社会による市民への制限」として描くこととなります。
社会契約説を例に先生が説明されたとするのであれば、むしろ契約については上記のような捉え方で出てきた用語と見るべきであり、必ずしも国民の一人一人が自由意思によって憲法に対し契約をする、という意味で使ったのではないと思いますよ。
ご丁寧に説明してくださり、ありがとうございました。
図式しますと、
市民→(要求的契約)→作られた国家→(保護的契約)→市民
となりましょうか。
No.4
- 回答日時:
>ルソーやロックのいう「社会契約説」
社会・国家と個人の自由意志による契約だという
考え方でしたよね。
でもそれは、それ以前の中世の、
神や上層階級からの支配という隷属的契約が
まかり通っていたのを打破し、
現在の主権国家の礎になった考え方ですよね?
ルソーたちの社会契約論こそ、人類が生まれた時から
自然に持っている権利(自然権)を社会との契約と
とらえた人でしょうに……。
私は社会は、高校で現代社会Iを選択しただけの
もう社会科ら遠ざかって、ん十年の人間ですが
それは覚えていましたよ。
細かいことを突き詰めて考えるのも大切ですが
大局をみることも大切なのでは?
No.3
- 回答日時:
>新憲法の内容を社会契約した」と教わりました。
「社会契約した」というのは国民一人一人に拇印捺印でも
させたということですか?
>生まれる前の憲法作成に責任を負っていないはずです。それなのに、なぜ守らなくてはならないのでしょう。
あなたが生まれてなかった だけのことでしょう。
>1.
あなたが生まれ戸籍ができた時 ではないでしょうか?
>2.
この国で生きている訳でしょう。
よほど守りたくないようですので
日本という国から出られたらどうですか?
そこにはまたあなたが生まれる前に決められたその国の「憲法」が
あると思いますが・・・。
>3.
いないでしょう?
そんな屁理屈みたいなことばかり言ってないで
普通に勉強したらどうですか?
この回答への補足
>そんな屁理屈みたいなことばかり言ってないで
>普通に勉強したらどうですか?
すみません。私が専攻している法哲学という学問はは、そこんとこを明確にすることを目指す学問なんです。
「なぜ法を守るのか」「法を決める人をどうやって決めるのか」という、屁理屈って実はとても大切なことなのではないか、私はそう考えます。
No.2
- 回答日時:
日本人として生まれ日本国籍を持った
その時点から、その国の憲法と契約した
ということになる......のでは
ないでしょうか。
ところで、国民の義務を果たさなければ
ならないことに憤りを感じて
いらっしゃるようですが、
今まであなたは知らぬうちに
憲法の権利にも守られているはすですよ。
学校で習ったそうですが、公立小・中学校の
授業料は無償で、教科書も無償配布ですよね。
また幼い頃から予防注射や検診などをうけ
それらには財政援助をされていると思います。
それらは地方自治体の条例などで控除金が
決まっていますが、それらだとて
日本国民の健康と安全を守るという法律があり
その上に、憲法があるからこそのものです。
泥棒や殺人に刑罰があり、抑止力が働いているのも
憲法では、自分自身と他人とどたらの人権も守る
ことが定義されているからです。
また親が子供を養育するのも憲法で決められた
義務であり、幼い子供が学校へ行けずに
奴隷のように働かされるという現状が
ないのも、日本国憲法のおかげです。
この契約を解除したいというならば、あなたには
国籍を捨て、海外へ出て行くという選択があります。
ただし海外であなたが受け入れられるかどうかは
また別問題ですよ。
ありがとうございました。
別に、今の憲法が嫌いだからこういう質問をしたわけではありません(笑)。
No.3さんへのお礼にも書きましたが、そもそも論として憲法は何なのかということを考えたかったんです。
市民社会を守る歴史の英知としての憲法をとても大切に思っています。
No.1
- 回答日時:
> でも、私は憲法に契約した覚えはありませんし、生まれる前の憲法作成に責任を負っていないはずです。
それなのに、なぜ守らなくてはならないのでしょう。日本国民だからです。
> 1.私はいつ憲法に契約したことになってるのですか? 契約しなくてはならないのですか?
法律は契約ではなりませんから、例え同意しない法律であっても守らなくてはいけません。
> 契約を拒否したいとき、解約したいときはどうしたらいいですか?
法律は契約ではありませんから、拒否も出来ませんし解約も出来ません。ただ、日本の法律が嫌であれば次の2つの手段のどちらかを選ぶことが出来ます。
(1)法律を守りつつ、選挙で代議員を選び(あるいは自ら代議員となり)法律を改正する運動を起こす
(2)日本国民であることを捨て、海外に移住する
> 2.なぜ生まれる前に決められたことを守らなければならないのですか?
それがルールだからです。法律は社会を運営するためのルールです。よって、社会の構成員(日本社会であれば主に日本国民)は、そのルールを守らなくてはいけません。自由意思で結ぶ「契約」とはそもそも考え方が違うのです。
しかし守りたくなければルールを変える(もちろん多数決で)、あるいは社会の構成員であることをやめる、の2つの選択肢を選ぶことは出来ます。
> 3.(お年寄り方などで)明治憲法に契約した人は、現憲法に契約しなおさなければならないのですか?
法律は契約ではありませんから、法律が変われば新しい法律によって我々は縛られることになります。
> もし、明治憲法から現憲法に変わったことを知らない人が「明治憲法で合法かつ現憲法で違法」という行為をしたらどうなるのですか?
もちろん違法行為と見なされます。
その授業において先生がどういったニュアンスで「契約」としたのか知りませんが、自由意思による「契約」によって法律に同意するという概念は日本にはありません。例え「俺は人を殺したいから殺人罪など認めない」と主張しようが、日本社会においてはその自由意思が認められることはありません。
もう一度、その「契約」という言葉のニュアンスについて、先生とお話しされることをお薦めします。
この回答への補足
ものすごいすばやい対応ありがとうございました。
その対応の内容、平易な表現に敬服いたします。
さて、「契約」についてですが、ルソーやロックのいう「社会契約説」の「契約」であると思われます。「憲法前文は社会契約説を丸写ししたかのような部分がある」という説(八木ら)もありますので、この「契約」は、「社会契約説」と解してよさそうです(ごめんなさい、社会契約説が何なのかはわかりません…)。
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