最近、相対性理論の入門的な本を読んでふと思いました。子供っぽい考えかもしれませんが・・・。時間というものが「流れている」としたらいったいいつどうやって「流れ始めた」のでしょうか?宇宙のビデオの再生ボタンをいつ誰が押したのだろう?といった比喩をすればよいのでしょうか。ビデオテープのようにいずれは時間が止まってしまう時がやってくるのでしょうか?長さや質量と違い理解しづらいディメンションだと思います。大学教養レベルの物理の知識で理解可能な本がありましたら教えてください。あと、趣味として宇宙論も勉強したいと思っています。入門向けのものがありましたらご紹介おねがいします。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
これは、物理学の問題というより、実は哲学の問題なのですが、物理学でも問題になりますから、ジャンル的にはどちらでもよいと思います。
時間については、昔から色々な人が考え続けて来ました。「時間が流れる」というのは一種の比喩表現で、時間は、主観的体験のなかで「経過して行き」ます。物理学の時間tと、主観の意識体験としての「時間」はまた別なのです。こういう風な主体の体験的時間というものを、「時間の空間化把握」という、一種の「比喩的把握」を排除して考え、深い洞察を示した思想家にアンリ・ベルグソンがいます。彼の『創造的進化』とか『物質と記憶』などは画期的な著作ですが、いささか読むのは難しいです。しかし、かなり面白い考察を行っています。
時間については、聖アウグスティーヌス(キリスト教の古代教父)の有名な言葉に、「わたしは、時間とは何か、人に尋ねられない場合、知っている。しかし、人がわたしにそれを尋ねると、わたしには分からない」というものがあります。
また、「時間の始まり」について、これはアウグスティーヌスが云ったのではなく、後世の作り話だとされますが、質問者「神が世界を、時間と共に創造する前、神は一体何をしていたのか?」-回答者アウグスティーヌス「そういう質問をする者のため、神は地獄を用意されたのである」。
これは、時間の始まりは分からないということで、また「時間とは何か」も実は分からないということなのです。
主観的な体験時間は、退屈な場合は、「時間が間延びしたように」感じられ、延々続くように感じられ、他方、何か、面白いこととか、夢中になることをしていた時は、「あっという間に過ぎ去った」ように感じられます。時間が「遅く進むように」感じられることがあり、反対に「速く進むように」感じられることがあります。
特殊相対性理論では、慣性運動をしている二つの系では、系の時間の進行を比べると、相対的に、「速く進んだり」「遅く進んだり」しています。しかし、その系のなかにいる人の主観的体験としては、別に、速く進んだり、遅く進んだりしているのではありません。(特殊相対性理論では、時間は、空間を実数とすると、虚数になりますね。これは、時間が空間とはまた違う何かだということを示すよい例です)。
時間については、実は、よく分からないのです。物理学で、「時間が将来止まる」とか、「ビッグバンの時、時間が生まれ、宇宙の時間が流れ始めた」と云っても、それは、より高次な宇宙のなかでの時間において、時間の表現が特定の場で姿を取った、あるいは姿を消すということで、例えば、身近な例なら、あるイヌにとって、そのイヌが死ぬと、そのイヌの時間は「なくなる」のです。人の場合も同様です。しかし、「時間」はやはりあるのです。物理学での時間が始まるとか止まるというのも、これと同じような意味です。あくまで比喩的ですが。
時間は、1)意識の体験時間、と2)物理学などで表現される、空間的に表現された時間、の二つが大きく分けてあります。歴史の時間なども、空間的に把握・表現された時間です。また、人間の記憶のなかにある「時間の経過順序の時間」も、一種の空間的秩序で整理された時間です。
時間については、哲学的に色々論じられています。
岩波新書にも時間についての本がありますが、かなり分かりにくいです。
物理学との関係だと、以下のブルーバックスの本が、興味深いのではないかと思います。一応、哲学的な時間の考察も、少し出てくるはずです。
>シリーズ番号: B‐873
>「時間の不思議―タイムマシンからホーキングまで ムムッ、虚時間?」
>ブルーバックス〈B‐873〉
>都筑 卓司 (著)
>価格: ¥880
宇宙論もブルーバックスを捜すと、適度に最新の物理学の成果を紹介しつつ、色々な説のアウトラインを分かり易く述べた本があります。捜してみられることです。あるいは、サイエンスやニュートンの別冊でも、「最新宇宙論」などの名前で、ムックがあり、図版や写真なども多数入っており、分かり易く興味深いです。書店で探してみてください(小さい書店だと、バックナンバーを置いていない場合があります)。
ありがとうございます。哲学ですか・・・。哲学というとプラトン、ソクラテス・・・昔の哲学者の名前がいっぱい出てきて誰が誰だかチンプンカンプンでして哲学アレルギーです。大学1年の時美学で前期後期ともにCを取り哲学者の名前に拒絶反応が。しかし、「この世の中ってどういう法則性があるのだろう?」といった哲学的な疑問が頭に浮かびます。自分自身、物理と哲学の境界線ははっきりしていません。どうやら勉強不足のようです。ご紹介してくださった本、読んでみます。安いし。
No.2
- 回答日時:
大変な難問ですね。
私はお答えする適任者ではないですし、気の利いたアドバイスも出来ないのですが、学ぶ側にいた時も、教える側にいる時も、悩んだことのある経験者の一人として少しコメントいたします。時間の意味を問い掛けてくる出発点はやはりニュートン力学です。ここをとばしていきなり宇宙論とかビッグバンとかに行ってしまうと、結局全てが曖昧模糊となるので注意した方がいいというのが私の意見です。
位置を時刻の関数として表すことが古典力学のひいては力学的自然観を構築する際の基本です。すなわち、運動さらにはこれを一般化した系の状態変化を記述するための独立変数が時刻であると言えます。問題は、この時刻というものが、実測に際して決して値を自由に選べない独立変数であるという特殊な性格をもつことです。時間を溯りながら観測することはもちろん、飛ばすことも、早送りもできません。まして、系の状態を先ず定め、それに対応する時刻の方を従属変数として動かすなどということもできません。これが時間の最大の不思議で、ご質問者の「いつどうやって流れ始めた」というような疑問の根底もここにあると思います。
しばしば、非可逆現象やエントロピー増大をもって、時間の意味付けをしようとする話を見ますが、これは、法則が時間反転に対して非対称であることを言っているだけで、上に述べたような時間の本当の謎に迫っているようには思えません(乞ご批判)。
以下は、とりあえず心を安らかにするための私の勝手な理解です(哲学分野の方ご批判下さい)。時間には「一様性」という大変重要な性質があります。今からの10秒間で起こることは、他の条件さえ揃えれば、明日のある時の10秒間でも、1万年前の10秒間でも同じように起こるのです。観測主観が何かの変化を認識し得るためには、変化しない何らかの基準が必要です。基準があるからそれに照らして変化が認識される-この基準が一様性を具備する時間ということではないでしょうか。
直接のご質問にあえて戻るなら、認識可能な自然世界が存在する限り時刻は一様に刻まれ続けると考えるしかなさそうです。認識主観が、時間が流れ始めたとか止まったと認識することはあり得ないでしょう。
(トンネル効果のインスタントン解のアナロジーを宇宙の開闢にまで持ち込むなどという発想は、専門外でかつ非力な私には、ずいぶん乱暴に思えます、、乞叱責)
ありがとうございます。うーん、私自身の無学故、理解度40パーセントといった感じです。エントロピー増大の原理については表面的な部分は理解している程度といった感じです。専門が機械なので。時間の独立変数の所について平たく考えれば、「運動が時間の関数で与えられていれば、ある時間が与えられるとその時間の位置は決定する。しかし、その逆はありえない。」といった解釈をすればよいのでしょうか。何かの本にも「力学と自由意志」というタイトルで書いてあったことなのですが、時間の関数でその後の運動が決定するならばビックバンが起こった瞬間に今こうして私がキーボードを打っている事まで全てもうすでに「決まっている」事になってしまうとか・・・。うーん、やはり科学にも(そして私の能力にも)限界があるようです。
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