No.1ベストアンサー
- 回答日時:
お久しぶりです。
性懲りもなくでて参りました。まだ修行は足りませんが。さて,まず英語の否定文の歴史を簡単に述べると,
1.I ne say.(古英語)
2.I ne say not.(中英語)
3.I say not.(15世紀以降)
4.I do not say.(17世紀以降)
という感じになります。
ne は「否定」そのものではなく,「否定の場」を表す(専門家風に言えば,否定の極性(polarity)表現を促す)だけだとすれば,二重否定や三重否定などいわゆる「累加否定(cumulative negation)」は当然のことです。
古英語であれば,現代英語に逐語訳すると,こうなります。
ne say no men on that day nothing.
「その日何人も何事も言わなかった」(Luke ix, 36)
Chaucer のカンタベリー物語では,
He neuere yet no vilieynye ne seyde In al his lyf unto no maner wight
(=He never yet no villainy 'ne' said in all his life to no kind of person)
「彼は今までどんな人にも悪口を言ったことが一度もなかった」
実際には ne が使われなくなり,明らかな否定語である not が確立した近代英語以降は累加否定は減っていきます。
「論理的な」学校文法や,そのもととなったラテン語の影響もあるのでしょう。
まとめると,こうなります。
not が ne の正当な後継者である方言では,"I don't know nothing." は文法的な文であり,not と ne が全く別物である方言では,非文である。
こんにちは。もう回答してくださらないのかと心配してました。お母さんに会えたマルコ(母をたずねて三千里)か、母鳥にあえた渡り鳥のような気持ちです(クワックワッ!)。JRのカードの名前を聞くたびに、Nsuika さんのことを思い出します!
累加否定が非論理的としてよくないこととして、整然としたラテン語を範に、徹底して冗長さを排除してきたように思います。現代でも、その傾向がアングロサクソンの言語指導では強いと思います。
(1)累加否定と、(2)マイナスとマイナスを合わせて肯定、の2種類をはっきり質問に書いておくべきでしたね。その点の指摘をしてくださるのもさすがだと思いました。
毎回本当に勉強になります。
No.3
- 回答日時:
Beowulfには次のような例があります。
原文にある[wynn][eth]は文字化け対策として[w][th]に置き換えてあります。waer him naenig waeter wihte ne scewede,(1514行)
(逐語訳)where him no(thing) water work not harm
(= where water do no harm to him)
この naenig ~ ne と同様、ne ~ ne (not ~ not)、naefre ~ ne (= never ~ not)も意味は二重否定ではありません。
「古英語では否定辞が一つの文中で繰り返されても【二重否定=肯定】ではなく単純否定だ」というのは正しいです。
丹念にラテン語と古英語の対訳文書(キリスト教関係の文書などがあります)を調べていけば原文ラテン語のnemo non, nihil non などの【二重否定=肯定】がnaenig ~ ne などに置き換えられている箇所が見つかるかもしれません。
「古英語では否定辞が一つの文中で繰り返されても【二重否定=肯定】ではなく単純否定だ」というのは正しいです。」お墨付きをありがとうございました。
いつもお世話になります!またよろしくお願いします。
No.2
- 回答日時:
否定語はいくつ重ねても否定です。
これは英語のみならず印欧系では本来そうでした。1番さんが例を挙げられたように古英語や中英語も例外ではありません。多重否定が避けられるようになったのは古典ラテン文法の影響が非常に大きいようです。各国ともラテン文法を規範に自国の文法を組み直していきました。しかし、古典ラテン語自体非常に論理的であるのは一方で人工的であると言うことです。ラテン語の末裔であるスペイン語などでは多重否定も使われるようです。実際には口語では多重否定も使われていたのでしょう。ヨーロッパの学校では教養としてラテン語が教えられました。このような環境では本来は自然な多重否定が過っているとされるのも当然と言えます。
なお、二重否定と言う場合は、not, never のような本来の否定語と unusual, unlikely のような否定的な語(それ自体では否定文を作れない)の組み合わせを指すことが多く、これは実際には単純な否定文でその通りの意味(珍しくない、なさそうでもない、など)に解釈されます。
ラテン語が、ヨーロッパの言語で自然に使われた多重否定に歯止めをかける役目をはたした、というのは興味深いです。
いつも本当にお世話になっています。また機会がありましたら、ぜひ回答をお願いします!
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