プロが教えるわが家の防犯対策術!

就業規則の不利益変更

就業規則の不利益変更について
賃金・休日等について就業規則上別に定める
となっている場合、別の定めが不利益に変わる場合
は、個別交渉・団体交渉は必要ないか?

A 回答 (4件)

 ご質問の内容に関し結論を出すには、ある程度確認させていただきたい事項がありますが、ここでは小生の判断する一般論及び過去の判例よりの考察をアドバイスとさせていただきます。



 まず、賃金や労働時間等労働条件の決まり方は、次の3つに分けられます。
(1)使用者と労働者との話し合いによる個別労働契約によって決まる場合
(2)使用者が制定する就業規則によって決まる場合
(3)使用者と労働組合との間の労働協約によって決まる場合

(1)の場合は契約自由の原則に則り法の定める水準以上の契約内容であれば、特に問題ありません。

(2)の場合は就業規則の制定権者は使用者であり、その就業規則を通じて「賃金減額」を行う場合、すなわち使用者の一方的な賃金の不利益変更が労働者に効力を及ぼすのかどうかが問題ですが、この問題については、過去の判例[最高裁大法廷の秋田バス事件(昭和43.12.25判決)]等により次の通り解されます。就業規則を制定・変更するのは使用者ですが、賃金等の労働者にとって重要な権利・労働条件に関して実質的な不利益を及ぼす変更(不利益変更)については、その不利益が労働者に受認させることを許容できるだけの、「高度の必要制に基づいた合理的な内容」でなければならないとしてます。そしてその高度の必要性はかなり厳格(会社側に厳しく)に解釈されています。
 因みに最高裁大法廷の秋田バス事件(昭和43.12.25判決)では、就業規則の変更によって「労働者の既得の権利を奪い、不利益な労働条件を課すること」は原則として許されないとし、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建て前とする就業規則の性質からいって「当該規則事項条項が合理的なものである限り」個々の労働者がこの変更に同意しなくても、変更後の就業規則の適用を拒否することは許されないと判示してます。したがって、就業規則変更による労働条件引き下げの効力については、その変更が「合理的」なものであるかどうかが決定要件であると解されます。
 さて、ここで言うところの「合理的」ですが、私見の例えを申しあげれば、ポジティブな施策に万策つき、やむを得ずネガティブな施策な面として、客観的にみて充分なる諸経費の削減をした・旅費規定に定めるところの日当の減額または廃止変更をした・早期退職優遇制度を導入した・賞与の支給基準を業績に応じ相応に見直した・一時帰休を行った等あらゆる施策を実施し、その上で会社経営の危機的状況を鑑み最終的に生活給である「賃金の減額」に手をつける場合を持って「合理性有り」と考えられると思います。 


(3)の場合は、労働組合があり、使用者とその労働組合との間で賃金減額の労働協約が締結されている場合は、その協約に拘束されます。個人の意志よりも協約の内容が優先されます。(労働協約の規範的効力)ただし、労働協約は原則として組合員にしか及びませんが、例外的に事業場の同種の労働者の4分の3以上が一つの協約を締結した場合は残りの4分の1の労働者も拘束されます。(協約の拡張適用)

まとめ(結論)としては次の通りでしょうか。

【1】労働協約がある場合(4分の3以上の労働者が加盟する労働組合との労働協約)賃金減額の労働協約を締結されていれば、その内容に従う他ありません。

【2】前記以外の場合は、賃金減額をしなければならないほどの「高度の必要制に基づいた合理的な内容」がその会社にあるかどうかで決まります。今回のご質問の場合では、会社の業績がどの程度悪いのか、労働者の不利益の程度(賃金カットの額とその期間)、充分労働者側と話し合いを行ったか等々が総合的に判断要件となるでしょう。

いずれにしても、就業規則の改定は、法律上法令に違反しない限りにおいて会社ができるわけですが、会社は従業員の協力がなければ、経営が順調にいくことは困難です。そこで、会社は従業員に対して会社の実情、就業規則改定の趣旨と改定の必要性を充分説明して、改定について理解、納得を得た上で実施する必要があります。現日本経済環境を鑑み、企業によっては従業員側も甘受しなければならない状況もあると考えられます。
    • good
    • 0

非常に難しい問題です。



就業規則というのは、会社が一方的に定めることができます。労基法第90条1項により、組合代表者(組合がない場合には過半数労働者の代表)の意見を聞くことになっていますが、仮に就業規則の改定に反対意見を書面として添付しても、就業規則の改定そのものは有効です。ここのところがよく勘違いされるのですが、就業規則というものは、あくまでも会社が定めるものなのです。組合員でない管理職などの労働条件変更は、実務的には、この手法が取られます。

ところが、問題をややこしくしているのが、労働組合があって労働協約をむすんでいる場合はどうなのか、と言う点と、会社が一方的に定める就業規則の改定において労働条件の不利益変更は無制限に認められるか、という点です。

まず、労働組合があって労働条件に関して労働協約を結んでいる場合ですが、これは、会社と労働組合が労働条件について合意している内容を変更するわけですから、変更にあたって、会社と労働組合が変更点について合意する必要があります。組合がある場合には、通常は、このプロセスを経て就業規則を改定します。したがって、両者が合意しているわけですから、不利益だからダメという問題は通常は発生しません。いやなら合意しなければいいんですから。

次に、労働協約の変更ではなくて会社が一方的に改定する場合、不利益変更は無制限に認められるかということについては、最高裁の判例もあるくらいに、判断が難しくなります。ようするに、その改定が「合理的」かどうかが、裁判になった時にはポイントとなります。合理的であれば、不利益変更であっても有効であると判断しています(逆に合理的でないとすると、無効ということになります)。
何が合理的かどうかは、きわめて難しく個別の判断となります。会社の状況や不利益の程度、代替措置の有無、従業員に対する説明等、といった点が判断材料となります。ありていに言えば、不利益の内容が、会社の経営状態や世間の動向などから言って、常識的であるかどうか、としか言えません。

なぜ、変更するのか、納得のいく説明を会社に求める、というのがとりあえずのスタートだと思います。それでも納得できない、というのであれば、労働基準監督署などに相談されるのがいいと思います。

くれぐれも申し上げたいのが、この時代、不利益変更は絶対ダメ、というのは、まず受け入れられないということです。
    • good
    • 0
この回答へのお礼

ありがとうございます。
私どもは労組はありますが、加入率2割程度。
労働者の代表者も選任されていない状況ですので、
非常に難しい問題となっております。
今後検討をしてみます。

お礼日時:2002/03/14 12:05

労基法第90条1項により、就業規則や、賃金・休日等について就業規則とは別に定める規定を改正する場合は、労働者の過半数で組織する組合がある場合はその組合の、組合が無い場合は過半数の労働者を代表するものの意見を聞かなければならない事となっていて、又、労基法第90条2項により、この改正した規則を労基署へ届け出る時には、前項の意見を記した書面を添付しなければならないことになっています。



この件に関連した解説が、参考urlにありますから、ご覧ください。

参考URL:http://www.jil.go.jp/kikaku-qa/jirei/12-Q06B1.htm
    • good
    • 0

 労働基準法第90条には、「就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては、労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

」と規定されています。

 したがって、変更内容が不利益であっても、利益のないようであっても、使用者は労働者の意見を聴かなければなりませんので、組合がある場合には団体交渉での交渉事項となりますし、組合がない場合には労働者の過半数を代表する方と交渉をすることになります。
    • good
    • 0
この回答へのお礼

早速のご回答ありがとうございました。
非常に助かりました。
労働基準法第90条を読んでみます。

お礼日時:2002/03/11 19:26

お探しのQ&Aが見つからない時は、教えて!gooで質問しましょう!