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特許の国際的な関係について教えてください。
業務上、特許を学ぶ必要があるのですが、まったく初めて学ぶことなので、初歩的なことかと思いますが、適当な答えが見つからなかったので、どなたか教えてください。


日本で特許のある仮に「A」という技術を使ったソフトウェアがあるとします。
米国では、特許は取っていないとします。

このような場合に、この技術「A」を使ったソフトを米国で作成し、米国内のサーバーから日本国内に対しサービス提供した場合、特許侵害として訴えることはできるのでしょうか?

A 回答 (2件)

この案件には、下記の論点があると思われます。



1.特許権に基づく差止請求権の準拠法が、日本かという問題
2.特許権に基づく損害賠償請求権の準拠法が、日本かという問題
3.不法行為地は日本か米国かという問題、即ち、日本の特許権の侵害行為が日本国内で行われているのか、それとも、米国で行われているかという問題
4.日本に国際裁判管轄を認めるかという問題

1及び2は、特許法の問題というよりも、国際私法の問題であり、例えば、法例を勉強する必要があります。

1については、最高裁判所 平成14年9月26日判決、平成12年(受)第580号は、「特許権に基づく差止め及び廃棄請求の準拠法は、当該特許権が登録された国の法律であると解すべきであり」と判示します。そして、本件では、日本の特許権ですので、差止請求権の準拠法は日本と考えます。

2については、最高裁判所 平成14年9月26日判決、平成12年(受)第580号は、「特許権侵害を理由とする損害賠償請求については、特許権特有の問題ではなく、財産権の侵害に対する民事上の救済の一環にほかならないから、法律関係の性質は不法行為であり、その準拠法については、法例11条1項によるべきである」と判示します。

法例11条1項は、「事務管理、不当利得又ハ不法行為ニ因リテ生スル債権ノ成立及ヒ効力ハ其原因タル事実ノ発生シタル地ノ法律ニ依ル」旨を定めます。

そこで、本件では、 「原因タル事実ノ発生シタル地」、即ち、不法行為地が日本か米国かという問題が生じます。

本件では、ソフトウェアに関する発明ですので、特許請求の範囲の記載しだいにより、プログラム等の物の発明の場合と、方法の発明の場合があると考えられます。

そして、プログラムの発明の場合には、電気通信回線を通じて提供する行為が、日本で行われているのか(不法行為地は日本)、又は、米国で行われているか(不法行為地は米国)が争われるでしょう。

方法の発明の場合には、同様に、使用する行為が、日本で行われているのか(不法行為地は日本)、又は、米国で行われているか(不法行為地は米国)が争われるでしょう。

電気通信回線を通じて提供する行為又は方法を使用する行為の判断基準が、サーバーが設置されている場所か否かも争われるでしょう。また、クレームの文言にユーザーが行う行為も記載されている場合には、ユーザーがサーバーにアクセスする場所(日本)も考慮されるでしょう。

インターネット等を利用した特許権侵害において、不法行為地が日本又は米国のどちらと判断するかの裁判例は我国には未だないと思います。裁判所がどのように判断するかは分かりません。

4については、サンゴ砂米国特許事件(東京地裁平成15年10月16日、平成14年(ワ)第1943号)は、「我が国の裁判所に提起された訴訟事件につき、我が国の民事訴訟法の規定する裁判籍のいずれかが我が国内に存する場合には、我が国において裁判を行うことが当事者間の公平、裁判の適性・迅速の理念に反するような特段の事情が存在しない限り、当該訴訟事件につき我が国の国際裁判管轄を肯定するのが相当である」と判示します。

そして、民事訴訟法第5条1号は、財産権上の訴えは、義務履行地を管轄する裁判所に提起することができる旨を定めます。また、民法484条は、特定物の引渡し以外の弁済は、債権者の現在の住所においてしなければらない旨を定めます。

即ち、特許権に基づく損害賠償請求権という財産権上の訴えは、債権者、即ち、特許権者の現在の住所、日本が義務履行地になります。

また、日本国内にサービスを提供しているので、ソフトウェアの内容によっては、日本語の画面が表示され、日本のユーザーを念頭においていることもあるでしょう。

これらのことを考慮すると、日本に国際裁判管轄はある場合が多いと考えます。
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この回答へのお礼

わかりやすく詳細な解説、どうもありがとうございます。

論点がいくつもあるのですね。実際に裁判となると、どうなるかはなんとも言えなそうですね。実際のビジネスにおいては、やはり特許を取ることは、脇を固めてビジネス基盤を固めることの一つであり、特許を取ればいいというものではないのですね。資格をとったからといって、仕事がすぐできるわけではないことと同じですね。
動きの早い、特にIT関連のビジネスにおいては、特許をとることも重要なことですが、自分たちの仕事を実際に既成事実としてしまうこと、デファクト・スタンダードを作り上げることが大切だというのもこのためなのでしょうね。

大変参考になりました。

お礼日時:2006/10/26 09:06

これは、なかなか興味深い論点を含んだ案件ですね。

初歩的な問題ではありません。現実の事案でしたら、特許訴訟の経験のある弁護士に相談しましょう。

まず、被告がサービスを提供する会社なのか、それとも、日本のユーザーなのかを明確にしてください。

被告がサービスを提供する会社の場合には、日本の裁判所に訴えたいのか、それとも、米国の裁判所に訴えたいのかが問題です。また、サービスを提供する会社は、日本又は米国のどちらに本社又は営業所があるかが問題となります。

これらについて補足いただけたら、もう少し回答できるかと思います。

この回答への補足

ご丁寧にどうもありがとうございます。

私が想定していた事例は以下のような状況です。ネットが発達した今日では、実際にこのような事例があってもおかしくはないような気がしました。
お手数ですが、よろしくお願いいたします。

<想定事例>
(1)日本法人A社(拠点も日本)が、日本国内で特許権「A」を取得。
(2)米国法人B社(拠点も米国)が、特許権「A」の技術を活用して、米国から日本国内のユーザーに対し、サービスを提供し、不当な利益を得た。

そこで、
A社は、日本国内で、B社が特許権「A」を利用した事業展開を差し止めるとともに、不当な利益の返還を請求する。
これを法的に争うと、どのようになるのでしょうか。

補足日時:2006/10/25 14:58
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