No.5ベストアンサー
- 回答日時:
まず,NMR の化学シフトは非常に小さいのです.
化学シフトのおこる原因は,核の周りにある電子による磁気遮蔽です.つまり外部磁場と核の感じる実効磁場の差が化学シフトを生むわけです.
すでに挙がっている式により,磁場と共鳴周波数は比例関係にあります.そもそも NMR は磁場下での核のエネルギー分裂によるので,磁場が強いほど分裂幅が大きく,当然共鳴エネルギー (吸収される電磁波の光量子のエネルギー) も大きくなり,つまり電磁波の振動数が高くなる,ということになります.
FTを使ったパルスNMRより,古典的なNMRの方がわかりやすいと思いますので,そちらで話をしますが,この共鳴条件を調べるためには磁場か周波数を連続的に変化させてどの条件で共鳴吸収がおこるかを調べればいいことになります.ただし,マイクロ波程度の波長になると周波数を微妙に,しかも安定かつ正確に変えるのは簡単ではありません.一定の周波数で安定に作るのでさえ,結構めんどうなのです.そこで,周波数は固定にします.その代わりに磁場を変えます.といっても,ごくわずかな変化を与えるので,通常の磁場を与える電磁石に流す電流を直接操作することはしません.こちらは一定電流で安定な強磁場を作っておきます.そして,それとは別に磁場を微小変化させるための別の弱い電磁石を組み込み,こちらを操作することで磁場をわずかに変化させるのです.この磁場の変化を精密に測定するには,もとの磁場が強ければ強いほど,同じだけの磁場変化でもより分解能の高い測定をしたことになるのです.100に対して1変化させるのと10000に対して1変化させることの違いです.同じ1のもつ重みが違うわけです.
ということで,共鳴磁場を強くする=共鳴周波数を高くすることが,測定の分解能を上げるためには最も直接的であるのです.
ご回答ありがとうございました。
大変詳しいご説明ありがとうございました。意味はよく分かりました。何度
も読んで頭に入れたいと思います。複雑なのですね。
私の理解を申しますと、まず一定の周波数のマイクロ波を照射し、強い電磁
石で一定の強い磁場を作っておき、それとは別の弱い電磁石で磁場変化を精密
に測定していく、ということですね。最終的に私が知りたいのは、例えば400
MHzの装置ならば、何が400 MHzなのか、ということなのですが、ここで出てき
た、「一定の周波数のマイクロ波」の周波数(1)が400 MHzなのか、「強い電磁
石で作った一定の強い磁場」を数式で周波数に変換したもの(2)が400 MHzなの
か、がまだ解けないでいます。(1)と(2)は別物なのでしょうか? また自分で
もぼちぼち専門書を読んで勉強していこうと思います。ありがとうございまし
た。
No.9
- 回答日時:
> 結局400 MHz装置での400 MHzというのは、プロトン(質量数1の水素原子核)の、基準物質テトラメチルシランの共鳴周波数、と理解してよいでしょうか。
400 MHz きっかりにあわせる意味は何もないのです.というか,磁場強度をそんなに正確に目的値にすることもできませんし,磁場がどうであっても化学シフトは磁場なり周波数の相対変化にすれば同じ値になることがわかっているので,周波数が正確に 400 MHz であるかどうかはどうでもよいのです.このように正確な位置を決めるのが難しいので,内部標準として TMS を使い,そこからの変化量で表しているだけです.TMS でなければならない理由はありません.
なので,実際には 400 MHz から機械的理由でなにがしかずれのある周波数のマイクロ波がかけられ (その値は機械ごとになにがしか違うのがふつう),その条件で TMS のプロトンの共鳴がおこるように磁場を微調整できたら,そこを 0 として,他の核はそこからのずれで示すわけです.しかし,これを TMS 以外のものでやっても一向にかまいません (原理的には).
No.6
- 回答日時:
> ここで出てきた、「一定の周波数のマイクロ波」の周波数(1)が400 MHzなのか、「強い電磁石で作った一定の強い磁場」を数式で周波数に変換したもの(2)が400 MHzなのか、がまだ解けないでいます。
ある磁場の強度で 400MHz で共鳴がおこるわけです.
磁場が半分の強さしかなければ 200MHz でおこります.
倍の強さが出せるなら 800MHz で共鳴がおこります.
# もちろん,核種が違えば同じ磁場でも共鳴周波数が違うわけですが.
磁場が強くなれば,周波数も高くなくては共鳴がおこらず,磁場強度に応じた周波数が必要なのです.
この回答への補足
何度もご回答誠にありがとうございます。
だんだんイメージがつかめるようになってきました。No.2さんの、
>NMRで最も一般的に用いられているプロトン(水素原子)の共鳴周波数で
あらわしたと思います
のご意見と合わせて考えますと、結局400 MHz装置での400 MHzというのは、プ
ロトン(質量数1の水素原子核)の、基準物質テトラメチルシランの共鳴周波数、
と理解してよいでしょうか。この基準周波数から、化学シフト分だけ異なった
周波数で、各化学的環境下の原子核が共鳴する、ということですね。
(多分合っていると思いますが)
何度も大変ありがとうございました。
No.4
- 回答日時:
例えば400MHzという値は、9.40Tの磁石を使用した際の水素の共鳴周波数を表しています。
ν=H0γ/2πにH0=9.40T,γ=2.675(γは水素原子核の磁気回転比)を用いると共鳴周波数400MHzが算出されます。この回答への補足
ご回答ありがとうございました。
上の式に値を代入して計算してみましたが、磁気回転比の単位はC kg^(-1)
すなわちT^(-1) s^(-1)とのことでしたので、
ν=H0γ/2π
=9.40 T×2.675 T^(-1) s^(-1)/(2×π)
=4.0019 s^(-1) (=4.0019 Hz)
となりましたが、どこかで10^(-6)を抜かしたのでしょうか? よろしければ、
間違っているところの指摘などを頂ければありがたく存じます。
No.3
- 回答日時:
共鳴条件の式で表されます。
ここでhはプランク定数、νは振動数、gはg値、βはボーア磁子、Hは磁場の強さです。
hν=gβH
これより、振動数は磁場の強さに比例することが判ります。
通常のフーリエ変換NMRでは磁場は固定ですので、パルスによって様々な周波数の電磁波(マイクロ波)をあてて、共鳴を起こさせます。
この回答への補足
ご回答ありがとうございました。
少しずつ謎が解けてきましたが、まだ分からないことがあります。式
hν=gβH
のうち、「磁場が固定」(Hが固定)ならば、周波数νも固定されてしまうので
はないでしょうか? 「磁場が固定で、周波数が変わっていく」、というのが
分からないでいます。
最初の質問に戻りますが、例えば「400 MHzのNMR装置」という場合の「400
MHz」は、上の式のνなのでしょうか? 「400 MHz」という周波数が、装置
によって決まった、固定した値、という印象を受けます。それとも、例えば
「テトラメチルシランなどの基準物質の共鳴周波数が400 MHz」、という意味
で、周波数が変化する値の範囲は、物質の中の種々の環境にある原子核の化
学シフトの取る値の範囲程度(1Hならば0~14 ppm、13Cなら0~230 ppm程度)、
ということなのでしょうか。
(申している意味がお分かり頂けるでしょうか)
要は、何が固定された値で、何が変化する値なのか、それらを関係付ける関
係式はどんなものか、というのが知りたい核心の部分です。400 MHzの装置を
例にとって、具体的に説明して頂ければ助かります。
No.1
- 回答日時:
外磁場の強度が大きくなるほど、共鳴周波数も大きくなる。
その結果、高分解能な測定が可能になる。ΔE = hν
23,500ガウス→100MHz
47,000ガウス→200MHz
この回答への補足
ご回答ありがとうございます。
簡潔なご回答でよく分かりました。ただ、もう少し知りたいのが、提示して
頂いた関係の中で、「磁場(磁束密度)→周波数」の関係式です。
23 500ガウス→100 MHz
47 000ガウス→200 MHz
となる関係式は、どんな式なのでしょうか。自分でも調べていますが、よろし
ければご教示頂ければ助かります。
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