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自己インダクタンスについて、環状鉄心の断面積をA、磁路の平均長さをl、透磁率をμ、コイルの巻数をNとすると、
環状コイルの自己インダクタンスLは
L=μ・ANの2乗/l  とあらわされる。とあるのですが、なぜでしょうか。
また、コンデンサの静電容量について、金属板の面積A、金属板の距離l、絶縁物の透電率をεとすると、静電容量Cは
C=ε・A/l   とあらわされるとあるのですが、なぜでしょうか。
これらの式の導き方を教えてください。

A 回答 (4件)

数行で説明できる内容でないので長文になってしまいました。



考え方としてはANo.2さんのコメントで良いと思いますが、レポートだとそれでは点をもらえないでしょうから、ちゃんと計算した結果を示します。
なぜ、自己インダクタンスと平行平板コンデンサの問題が同居しているのか分かりませんが(大学で学ぶ時期はかなり違うはず)、ご質問の順番で解説します。

【環状ソレノイドの自己インダクタンス】
ご質問では断面形状が記載されていませんが、厳密には形状によって違います。しかし、環状半径>>断面半径ならば、L≒μ*A*N^2/l と近似できます。近似しないで計算した結果は次式のようになります。
(円形断面)鉄心の断面が円形(半径 a )、ソレノイドを円環(断面中心半径 R )としたとき L = μ*N^2*{ R - √(R^2 - a^2) }
(矩形断面)鉄心の断面が矩形(幅w、高さh )、ソレノイドを円環(断面中心半径 R )としたとき L = μ*N^2*h/(2*π)*ln{ ( R + w/2 )/( R - w/2 )}

【環状ソレノイドの自己インダクタンスの計算方法】
(自己インダクタンス L の定義) Φ=L*I ;Φ=鎖交磁束、I = 電流
(断面が円形の場合)
鉄心(透磁率μ)の断面が半径 a の円形で、その断面の中心(断面中心)が、半径 R (a<R)の環状になっているとする。断面中の点Pを考える。Pの座標は(r,θ)で、r は断面中心からの距離(0≦r≦a)、θは断面中心を通る平面とのなす角とする(下の左図参照)。すると P を通る磁力線は、半径 r' の円(下の右図参照)であり、r' = R - r*cosθ となるから、P点での磁界は H = N*I/(2*π*r')。

  断面中心を通る平面
      ↓                                        P←――― r' ―――┤
   ○───・───○←鉄心(半径 aの円形断面)           r / θ
   ├─R─┤                          断面中心→ ∠______断面中心を通る平面

P点での微小領域 dS = r*dr*dθ を通る微小鎖交磁束は、dΦ = N*μ*H*dS = N*μ*N*I/(2*π*r')* r*dr*dθ = μ*N^2*I* r*dr*dθ/{ 2*π*(R - r*cosθ) }
したがって、dΦ =∬dΦ =∬[r=0~a, θ=0~2*π] drdθ = μ*N^2*I/(2*π)*∬[r=0~a, θ=0~2*π] r/(R - r*cosθ) drdθ
ここで、tan(θ/2) = t とおけば、tanθ = 2*tan(θ/2)/[ 1- { tan(θ/2) }^2 } = 2*t/( 1 - t^2 ) → sinθ = 2*t/( 1 + t^2 )、 cosθ = ( 1 - t^2 )/( 1 + t^2 )、dθ = 2*dt/( 1 + t^2 ) 。以下省略(微積分のテキスト参照)。積分後は下と同じ。

(断面が矩形の場合)
鉄心(透磁率μ)の断面が高さ h、幅 w の矩形で、その断面中心が、半径 R (w/2<R)の環状になっているとする(下図)。断面中にあって、幅 dr、高さ h 、中心からの距離 r の微小領域を考える。

   ├─ w -──┤
  ┬┏━┯━━━┓
  h ┃  ├───╂─── r ─────┤
  ┴┗━┷━━━┛              ↑環状コイル中心
      dr                    ↓
        ├───── R──────┤

その領域の磁界は、上と同様に、 H = N*I/(2*π*r)、微小領域の面積は dS = h*dr だから、dSを通る微小鎖交磁束は、dΦ = N*μ*H*dS = N*μ*N*I/(2*π*r)*h*dr =dr/(2*π*r) → Φ = μ*N^2*I*h*∫[ r = R - w/2 ~R + w/2] dr/(2*π*r) = μ*N^2*I*h/(2*π)*ln { ( R + w/2 )/( R - w/2 ) }。自己インダクタンス L の定義から、L = Φ/I = μ*N^2*h/(2*π)*ln { ( R + w/2 )/( R - w/2 ) } = μ*N^2*h/(2*π)*ln {1 + w/( R - w/2 ) }。
ここで、x<<1 ならば、ln(1+x) = x - x^2/2 + x^3/3 - x^4/4 -... ≒ x だから、w/( R - w/2 ) << 1 ならば、L ≒ μ*N^2*h/(2*π)* w/( R - w/2 ) ≒ μ*N^2*h/(2*π)* w/R 。ここで、鉄心の断面積をA、磁路の平均長さを l とすれば、A = w*h、l = 2*π*R だから、L = μ*N^2*A/l。

質問では磁路の平均長さが l (エル)になっていたのでここでもそうしましたが、1と紛らわしいので注意してください。

【平行平板コンデンサの静電容量】
平行平板コンデンサの静電容量は電磁気学のテキストでは定義のような扱いですが、出発点はクーロンの法則 [1] です。クーロンの法則は経験則で、なぜそうなるのかという理由を私は知りません(このサイトでも質問はないようです。万有引力についてはありますが)。電荷に働く力が距離の2乗に反比例するというクーロンの実験で発見されたと一般に言われていますが、実は、それ以前にCavendish(キャベンディッシュ)がクーロンより正確な実験をしていて、電荷に働く力は距離の n乗 ( 1.98 < n < 2.02 )に反比例することを見つけています[2]。その後、Maxwell(マクスウェル)によって、| n - 2 | < 1/21600 であることが確かめられ、20世紀には PlimptonとLawton (1936) によって、| n - 2 | < 2×10^(-9) という実験結果が得られているだけで、完全に n = 2 ということが証明されたわけではありません。万有引力も距離の2乗に反比例するという逆2乗則 [3] の1つですが、これも経験則だったと思います。

話がそれましたが、2つの点電荷Q1、Q2の間に働く力はクーロンの法則 F = Q1*Q2/( 4*π*ε0 *r^2) で表されます。r は電荷間の距離、ε0 = 10^7/(4*π*c0^2)、c0=2.99792458×10^8。ここで、電界(電場)という概念が出てきます。点電荷Q1の周りに電場というのができて、それとQ2が相互作用することによってQ2は力を受けるという考えです(逆に、Q2の周りにできた電場で、Q1も力を受ける)。電場 E に対して電荷 Q が受ける力を F とすれば、電場の定義は F = Q*E となります。この式とクーロンの法則を比較すると、電荷Q2が受ける電場は E = Q1/( 4*π*ε0 *r^2) であることが分かります。この結果から、ガウスの法則 ∫E(r) ・n dS = Q/εが得られます(証明は [4])。さらに、電場 E からポテンシャル(電圧)が定義されます [5] 。

平行平板コンデンサの場合、電極間の電場は一様と考えていいので、ガウスの法則から E・S = Q/ε0 → E = Q/(ε0*S) となります[6] → 質問の電極面積はAですが、ここではSとしています。さらに、[5]で定義された電圧については、電極間の電場は一様と考えて、V = -∫E・dr = E*∫dr = Q/(ε0*S) *∫dr となります。ここで、∫dr の r は電極からの距離で、積分範囲を 0 から金属板間の距離 l までとすれば、∫dr =l 。したがってV = Q*l/(ε0*S) [7] 。静電容量の定義 Q=C*V より、C = Q/V = ε0*S/l 。

ガウスの法則を天下り的に使っていいのなら、上の「平行平板コンデンサの場合、」以降の部分だけでいいでしょう。
質問では金属板間の距離が l (エル)になっていたのでここでもそうしましたが、1と紛らわしいので注意してください。なお、ガウスの法則とガウスの定理は別物です。

[1] クーロンの法則 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%BC% …
[2] キャベンディッシュ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%B3% …
[3] 物理学での3大逆2乗則 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%862%E4%B9%97 …
[4] ガウスの法則の証明 (pdfファイルの78-79ページ) http://shira.iic.kyoto-u.ac.jp/lecture_notes/ele …
[5] ポテンシャルの定義 式(6) http://butsuri.fc2web.com/electro/1-05.html
[6] 式(9) 同上
[7] 式(10) 同上
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この回答へのお礼

詳細な説明ありがとうございました。
説明と資料を参照に勉強させていただきます。

お礼日時:2007/05/09 22:36

>法則を導くための理論的な証明方法があるのではないのでしょうか


物理法則の定義は以下の通りです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%A9%E7%90%86% …

上リンクの「観察結果から帰納法によって導かれる。」という記述から、
物理法則とは、「あくまで結果がこうなるからそう言わざるを得ない」というものらしいです。

ちなみに
環状コイルの自己インダクタンスLの導出は
ビオ・サバールの法則から
コンデンサの静電容量については
(電界の)クーロンの法則から
考察してゆくと導出できます。

詳細は「基礎電磁気学」などのキーワードを書籍,Webで検索すれば記述が見つかると思います。
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>自己インダクタンスについて、


無限に長いソレノイド(断面積A、単位長さ辺り巻き数n)の、単位長さ辺りの自己インダクタンスを求めると、μAn^2になります。
この無限に長いソレノイドから長さlのコイルを切り出したと考えると、自己インダクタンスはμAn^2lになります。n=N/lですので、自己インダクタンスはL=μ・AN^2/lとなります。

>また、コンデンサの静電容量について、金属板の面積A、金属板の距離l、絶縁物の透電率をεとすると、静電容量Cは
>C=ε・A/l   とあらわされるとあるのですが、なぜでしょうか。

無限に広い2つの平行金属板が距離lだけ離れているとした時、単位面積辺りの静電容量はε/lとなります。ここから面積Aのコンデンサを切り出したと考えれば、静電容量はC=εA/lという事になります。
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>環状コイルの自己インダクタンスLは


>L=μ・ANの2乗/l
>静電容量Cは
>C=ε・A/l 
といった式は・・・
式の導き方というか、現実に起きる現象を実験観察して相関が得られるところによる法則性を数式モデル化したものです。

この回答への補足

法則からくるものかもしれませんが、法則もそれが実証されなければ法則とはいえないことから、現在に至っては、
法則を導くための理論的な証明方法があるのではないのでしょうか・・・。

補足日時:2007/05/03 23:11
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