QNo.310111を拝見して疑問が湧いたので質問させてください
刑事訴訟法第148条によると、自分または身内に不利な証言は拒否できるそうですが、拒否する際には、刑事訴訟法第148条による拒否であることを明らかにしなければならないのでしょうか?
もしそうだとすると、二者択一の回答を迫られるような証言を求められた場合、拒否した事実そのものが、被告人に不利な回答の方が真実である、ということを露呈させてしまいますが、この場合、この拒否の事実は、被告人に不利な回答をしたのと同じ重みを持って裁判上の証拠として採用されてしまうのでしょうか?
No.7ベストアンサー
- 回答日時:
1 証人が、証言拒否事由を明らかにすれば自己又は身内が訴追又は有罪判決を受けるおそれがあると供述しただけでは、刑事訴訟規則122条1項所定の「事由を示」したことにはならない場合が多いでしょう。
裁判所において証言拒否権の存否が合理的に判断できるような内容ではないからです。No.5の拙稿でお示しした例では、被告人が被害者を刺殺したことが公訴事実となっていることとの関係で、経験則上、被告人が犯人であれば返り血を浴びていることが多いと考えられるため、「主人に不利かもしれないので」と証人が説明したことと尋問の流れとを総合すれば、裁判所において「証人は被告人の着衣の異変について供述を拒否している」ことが理解できます。そして、仮に証人が着衣に異変があった旨証言すれば、罪体(罪となるべき事実)の認定において有力な間接事実となるおそれがあることは明らかですから、刑事訴訟法147条1号所定の証言拒否事由があるという判断が可能です。ですから、上記の例では、「主人に不利かもしれないので」と証人が説明するだけで、「事由を示」したことになると考えられます。
これに対して、たとえば2人組の男女による銀行強盗事件において、捜査段階では犯人らが「ボニー」、「クライド」とお互いを呼び合っていたという銀行員の証言が得られているが、共犯者のうちの女性であるとして起訴されたAの公判廷において、同銀行員の供述調書が不同意となり、既に共犯者のうちの男性であるとして有罪判決が確定しているWを証人尋問する場合を考えます。
この場合、Wが、検察官の「被告人の学生時代のあだ名は何でしたか。」との発問に対して、「ボニーでした。」と証言することを拒否し、「妻に不利かもしれないので」と供述したのみで沈黙したとすると、裁判所は、Aの学生時代のあだ名を証言することがなぜAに不利益なのかを判断できないわけですから、Wとしては、さらに「私は相棒の女をあだ名で呼んでいました。」といった程度の供述をしなければ、「事由を示」したことにはならないと思われます。
singolloさんがご懸念の、「事由を示」したことにより、証言拒否権が及ぶはずの事実につき実質的に証言したことになるのではないかという点については、上記の例でも明らかなとおり、証言拒否権が及ぶ事実そのものを供述しなくても「事由を示」すことは可能ですし、証言拒否権が及ぶ事実そのものを実質的に証言したことになるような場合が仮にあるとしても(上記の銀行強盗の例でいえば、「私は相棒の女をあだ名で呼んでいました。」という供述がこの場合に当たり得ます。)、その供述自体を罪体の認定に用いることはできません。そう解さなければ、ご指摘のとおり、刑事訴訟規則122条1項と刑事訴訟法146条、147条とが矛盾するからです。
この場合、罪体の認定との関係においては、発問自体が存在しなかったものとみなして事実認定をしなければなりませんから、上記の銀行強盗の例でいえば、「被告人の学生時代のあだ名は何でしたか。」という発問そのものが存在しないことになります(上訴審が適法な証言拒否がなされていたかを審査する場合に備えて、尋問調書には、発問とこれに対する証言拒否とを記録するのが実務です。)。
ところで、証人が沈黙した事実から事実を認定するためには、証人に対する発問の存在とその内容を前提として、その沈黙の意味を解釈しなければならないのですから、発問そのものの存在が無視されれば、証人の沈黙の意味は、「検察官が沈黙し、証人も沈黙した」ということ以外にはあり得ず、証人が沈黙したという事実からは何らの推論もなし得ないことになります(singolloさんのご疑問を解消なさる鍵は、この点にあります。)。
2 刑事訴訟法160条、161条は、空文ではありません。ただ、証人が証言拒否事由を何ら示さずに証言を拒否したとしても、証言自体を強制する手段は存在しません(たとえば自白剤を注射することはできません。任意性を欠き、証拠能力のない証言になるからです。)から、裁判所としては尋問を続行する以外に方法がないのです。
過料や証言を拒否する罪の制裁を科するに足りる要件が存在すると認定できるか否かは、別個の手続に委ねられることになります。
3 証言を拒否した証人に検察官が別の角度から尋問することは妨げられません。
なお、「憶測に基づく尋問」は禁止されません。刑事訴訟規則が禁止するのは、主尋問における誘導尋問(はい、いいえで応答可能な尋問、199条の3第3項)及び199条の13第2項各号所定の尋問です(singolloさんがご指摘の事例は、誘導尋問ないしは場合によっては「意見を求め又は議論にわたる尋問」(199条の13第2項3号)に当たります。)。
singolloさんがご指摘の事例で、検察官がシャツは被告人の物かどうかを発問することは、当然許されます。この場合において、証人が証言を拒否したときは、発問そのものの存在が無視されるために、シャツが被告人の物であることを裏付ける証言は存在しないわけです(上記1ご参照。この場合は、検察官としては、縫い取りが被告人の妻が持つ特殊な技法によってなされたものであることなどの、別の間接事実(情況証拠と同義の用語です。)を立証することにより、シャツが被告人の物であることを立証することになります。)。
事実としては存在したはずの検察官の発問とこれに対する証人の証言拒否との双方が、判決においてはその存在を無視されることにより、傍聴人等に奇異な印象を与えることがあるとしても、適法な証拠調べを経た証拠でなければ罪体の認定に用いることができないという刑事訴訟の鉄則からはやむを得ません(裁判所としては、判決理由中で、なにゆえ証人の証言拒否の事実を無視したのか詳細に説示するなどのプレゼンテーションを考えることになります。)。その結果、罪体の立証が不十分であるとして無罪判決がなされることも、当然あり得ます。
4 検察官が起訴不起訴(または捜査の続行)の判断をする際に最も重要な観点は、「被告人が公訴事実を争ったとすれば弁護人が供述調書を不同意にすると見込まれる供述調書に係る供述者が、公判廷で捜査段階の供述を覆したとしても、他の証拠から有罪判決を獲得し得るか。」というものです。
端的に申し上げれば、検察官は、証言拒否権の行使もあり得ることを視野に入れて、証拠収集に努めなければならないし、現実にもそう努めています。
5 証言拒否事由が適法であることを示すためには、結局拒否しようとした証言内容そのものを供述するしかないのではないかとのご疑問については、必ずしもそうとはいえません(上記1ご参照)。
また、「諸般の証拠から拒否された証言内容を一義的に特定する」ことができるかどうかは、証人に対する過料の制裁の賦課手続や証言を拒否する罪の公判手続において、初めて問題となります(上記2ご参照)。
証人が証言した公判手続においては、あくまでも証人が証言しなかったという事実をどのように評価するか、つまり、適法な証言拒否と認めて発問も含めて無視するか(この場合は証人が証言を拒否した事実から何らの推論もなし得ないことは繰り返し申し上げているとおりです。)、不適法な証言拒否と認めて証人の証言の信用性を減殺する補助事実とみるかが問題となるのみです。
6 傍聴人に証言拒否があった事実を証言させることは考えられません。
なぜなら、たとえ適法な証言拒否があった場合であっても、尋問調書には、発問とこれに対する証言拒否とを記録しておくからです。
ご参考になれば幸いです。
大変詳しい解説をありがとうございます
お返事が遅くなってすみません(ご紹介いただいた刑事訴訟規則というのを参照しようとwww.houko.comで探してみたのですが、非公開だったもので、ついでに図書館まで行く機会を窺っているうちに日が経ってしまいましたm(_ _)m)
日本の裁判制度というのが裏付けの無い性善説に立っていることがよくわかり、大変興味深く、勉強になりました
今後ともよろしくお願いします
No.8
- 回答日時:
たのしい?議論をなされているので、ちょっとだけお仲間に入れてくださいませ。
不勉強な若輩者ですので、どちらかというと、私も教えてほしい方なんです。全部読ませて頂いて、被告人が証言拒否したとして、二者択一の話になるなら黙秘することで、消極的な自白になるのではないでしょうか。
自白だったら、これだけの事由では有罪にできず、これは証言を拒否したことで100%被告人が有罪の自白証拠とされたとしても、有罪にできないという事ではないのですか?この場合には補強証拠の話で自由心証主義の例外になると思うのですが・・・
つまり法的に二者択一の被告人質問を禁じてなくても、補強証拠がないと、この黙秘だけで有罪決定できないから問題ないのではないでしょうか。
近親者についての証言拒否は立法政策的考慮からきたものみたいだから、これは被告人に不利な回答になってしまうのではないでしょうか。
あー、もっともっと、刑訴勉強しないといけないと反省します。「短期合格目指すなら、下3法は得意にしなければならねぇ~、刑訴は捜査と証拠法を固めんかぃ。」って言われて”刑事実務証拠法”石井一正先生の本を愛読しているのですが、一回読んだだけでは頭に入りません~ひぃ~、でも、田宮先生の本(パラパラ程度しか読んでません)よりも田口先生の本(薄っぺらなので熟読したつもり)よりも、分かりやすくかつ詳しく分析されてますので、ここで議論するよりも、ご自分でお調べになった方が、すっきりするのではないでしょうか。Singolloさん、私なんかよりもずっと豊富な知識もってらっしゃるようですし。
回答ありがとうございます
> つまり法的に二者択一の被告人質問を禁じてな
> くても、補強証拠がないと、この黙秘だけで有
> 罪決定できないから問題ないのではないでしょ
> うか
実際の裁判ではひとつの証拠だけでスパッと決まることは少ないのではないかと思うのです
いくつもの補強証拠から形成される有罪の心証を積み上げ、一定の水準を越えたところで有罪と判決されるとしたら、拒否された証言内容が有罪/無罪の分かれ目となることもあるのではないか、また、証言拒否の事実自体が、裁判官のみならず法廷内のすべての人間に、拒否された証言内容が被告に不利なものであったことを論理的に推測させうるときに、その推測を裁判官にのみ許さないという、良心に反する規制を加えるよりは、そのような証言拒否が起こることが予想できるような質問自体を禁じる方が法の正義にかなうのではないか、という疑問から、実際の裁判ではどのように運用されているのかについてお伺いした次第です
No.6
- 回答日時:
>>それではやはり、証人が被告本人で、証言を求められた質問が二者択一だった場合は、証言拒否により、被告にとって不利な回答の方が真であると推論できてしまいますね…
そういった事実認定を裁判官はしないようにすることが求められています。
>>その通りだと思うのですが、実際には論理的に真であることが分かってしまったものを心証から締め出して判決を下せるのでしょうか?
心証を締め出して判決をくださなければなりません。
これ以上は水掛論になってしまいますね。おっしゃるとおり黙秘から推測される部分を裁判官の頭の中から排除しろというのは可能とは思えません。しかしそうであることを求められるのです。
この回答への補足
> これ以上は水掛論になってしまいますね。おっしゃ
> るとおり黙秘から推測される部分を裁判官の頭の
> 中から排除しろというのは可能とは思えません。し
> かしそうであることを求められるのです
いえ、そういうことではなくて、たとえ裁判官が、求められた通り、証言拒否があった事実を無視するよう裁判を指揮し、論理的帰結に反した判決を下したとしても、法廷にいた人には、それが(法的には正しくとも論理的に)誤った事実認定に基づくものであることが分かってしまうケースがありますよね?
この場合、この裁判官の判断は裁判所や司法に対する国民の信頼を損ねる結果にもなりかねないわけですが、その辺の矛盾に対し、法律や現実の法廷ではどのような対処が行われているのか、ということなんです
たとえば、極端な話、その日の傍聴人ひとりひとりを証言台に立たせて、『あの日の証人は証言拒否をしましたか?』という質問をしたらどうなるのでしょう?
傍聴人が証人の身内でなければ証言拒否はできない理屈ですから、『はい、証言拒否していました』という回答をするしかないでしょう?
これが、何人、何十人と証言された後でも、前回証人が証言拒否したという事実の認定を拒めるのでしょうか?
すべての傍聴人を偽証罪で告発する?
そんな証人はいなかったことにする?
そして、証言拒否という行為が第三者の証言に基づいて事実と認定できるなら、認定された事実から論理的に推論される帰結の採用を拒否することは(憲法で求められる)裁判官の良心に叶ったことなのでしょうか?
このような矛盾した事態を出来させないための(先述した、一方の選択肢が被告に明らかに不利であるような二者択一の質問を検察官が被告人やその身内に対して行うことを法的に禁じる、といったような)方策は採られていないのでしょうか?
No.5
- 回答日時:
1 証言拒否事由の明示の要否について
証言を拒む者は、これを拒む事由を示さなければならず(刑事訴訟規則122条1項)、証言を拒む者がこの事由を示さないときは、裁判所(裁判長)は、過料(刑事訴訟法160条1項)その他の制裁を受けることがある旨を告げて、証言を命じなければならない(刑事訴訟規則122条2項)とされています(宣誓または証言を拒む罪、刑事訴訟法161条1項)。
そして、自己負罪証言拒否権(同法146条)との関係でですが、証人が「自分に不利益になる、罪になると思われる」と供述したのみでは、刑事訴訟規則122条1項所定の事由を示したことにはならないと考えられています(神戸地裁昭和34年8月3日決定)。
ただ、具体的にどの程度まで証言拒否事由を示さなければならないかは議論が分かれる問題であり、諸般の証拠から証人が証言を拒否した事実を一義的に特定することができ、かつ、これについて適法な証言拒否事由が存在しないことが明らかであるというような例外的な場合でない限り、過料や証言を拒む罪の制裁を科すことは困難かと思われます。
2 証言拒否があった事実からの要証事実の推認について
被告人の近親者である証人が証言を拒否した場合において、証言拒否事由が適法と認められる場合には、これを厳格な証明が要求される要証事実(罪となるべき事実など)の立証に用いることはできません。
したがって、この場合、裁判所としては、当該証言拒否に係る発問そのものを無視して、証言の証明力を評価する必要があります。
たとえば、次のような尋問があったとします。
証人は、物音で目が覚めたと証言されましたが、何の音でしたか。
玄関のドアを開ける音がしましたので、主人が帰ってきたと
思い、玄関まで出迎えに行くと、思ったとおり主人でした。
玄関で見た被告人、つまり証人のご夫君は、どんな格好でしたか。
ずいぶん疲れ切った様子でした。
そのほかに何か気づきませんでしたか。
(「シャツ一面に血が付いていました。」という証言を拒んで)
……。お答えしにくいのですが。
裁判長
なぜ答えられないのですか。
主人に不利かもしれないので言いたくありません。
検察官、質問を変えてください。
検察官
では、ご夫君を出迎えた証人は、何か話しかけましたか。
はい、ご飯にするか、お風呂にするか、尋ねました。
……
この場合、裁判所としては、「そのほかに何か気づきませんでしたか」という検察官の発問それ自体を無視して(「証人は被告人が返り血を浴びたシャツを着ていたのを見たのではないか」という推測をすることは許されません。)、被告人が被害者を刺殺したか否かという罪となるべき事実の認定をしなければならないわけです。
もっとも、上記の例で、証人に「被告人が返り血を浴びたシャツを着ていた」と証言させなければ有罪判決を得られないような脆弱な証拠構造の事件を、検察官が起訴することは少ないでしょう。
このような場合、検察官としては、被告人が返り血を浴びたシャツを着ていた旨の証人の供述を録取した検察官調書(刑事訴訟法321条1項2号)の取調べを請求するとか(最高裁昭和27年4月9日判決)、返り血を浴びたシャツをクリーニングしたクリーニング屋の店員の証人尋問を請求するといった次善の立証手段を検討することになります。
裏を返せば、弁護人としては、代替証拠の取調べにより審理を長期化させ、被告人に未決勾留の負担を与えてまで、証人に証言拒否を指導するかどうか、事前に十分戦略を検討する必要があるわけです。
なお、証人が証言を拒否した場合において、証言拒否事由が適法と認められないときであっても、被告人に不利益な証言があったものとみなすことはできませんが、証言を拒否した事実を当該証人の証言の信用性を減殺する補助事実として用いることは何ら妨げられないと思われます。
たとえば、判決において、「この点証人○○は、本件犯行当日被告人は一日中自宅におり、同証人や長女××とともに過ごしていた旨証言するが、同証人は、本件犯行当日に被告人一家が自宅で何をしていたかを問われると、一転して、食事をしたとか、テレビを見たといった抽象的な証言に終始し、同日どんなテレビ番組を見たのか、といった問いに対しては、言を左右にして証言を回避する態度を示していることに鑑みれば、同証人の前記証言はとうてい信用することができず、他に特段の証拠のない本件においては、被告人が主張するアリバイは、被告人が罪となるべき事実を犯した旨の前記認定に合理的疑いを抱かしめる程度にすら立証されていないものといわざるを得ない。」という説示がなされるわけです。
ご参考になれば幸いです。
この回答への補足
たいへん詳しい回答をありがとうございます
> 証言を拒む者は、これを拒む事由を示さなければなら
> ず(刑事訴訟規則122条1項)、証言を拒む者がこ
> の事由を示さないときは、裁判所(裁判長)は、過料
> (刑事訴訟法160条1項)その他の制裁を受けるこ
> とがある旨を告げて、証言を命じなければならない
> (刑事訴訟規則122条2項)とされています(宣誓
> または証言を拒む罪、 刑事訴訟法161条1項)。
> そして、自己負罪証言拒否権(同法146条)との関
> 係でですが、証人が「自分に不利益になる、罪になる
> と思われる」と供述したのみでは、刑事訴訟規則12
> 2条1項所定の事由を示したことにはならないと考え
> られています
『証言拒否の事由を明示すると自分または身内が訴追または有罪判決を受ける虞がある』という主張は証言拒否事由を明示しない適法な事由と認められるでしょうか?
もし、『この主張が偽であった場合は適法と認められないから』と、真偽を判断するために事由の明示をさらに迫り、明示された事由により、主張は真であったと認められた場合、事由を明示する必要は無かったことになり、明からに刑訴法147条と矛盾してしまいますが、明示された事由については証拠として採用されないことが法的に保証されているのでしょうか?
> 諸般の証拠から証人が証言を拒否した事実を一義的に
> 特定することができ、かつ、これについて適法な証言
> 拒否事由が存在しないことが明らかであるというよう
> な例外的な場合でない限り、過料や証言を拒む罪の制
> 裁を科すことは困難かと思われます
ということは、基本的に刑訴法160、161条は空文であり、証言拒否の事由が明示されなくとも裁判はそのまま進行するということでしょうか?
刑訴法146、147条と刑訴規122条が矛盾している負い目からの目こぼし?
> そのほかに何か気づきませんでしたか。
> (「シャツ一面に血が付いていました。」 とい
> う証言を拒んで)
> ……。お答えしにくいのですが。
> 裁判長
> なぜ答えられないのですか。
> 主人に不利かもしれないので言いたく
> ありません
ここで、検察官が『そのほかに何か気づきませんでしたか』の代わりに『シャツが血塗れだったのではありませんか』と問うことは法的に禁じられているのでしょうか(ドラマなどだと『意義あり、憶測に基づく質問です』とかなるところですが)?
あるいは、血塗れのシャツが現場で発見された犯人の遺留品であり、市販のものには付いていない縫い取りがなどの特徴があって、証人にはそれが被告のものかどうか特定できると思われるようなときに、『これは被告のものですか?』と質問することは許されますか?
もしこうした質問が許されるとしたら、場合によっては、証言拒否という事実を含む諸般の証拠から拒否された証言内容が論理的かつ一義的に特定できてしまい、論理的に特定された事実を考慮すれば有罪、無視すれば無罪、という事態も発生すると思うのですが、その場合、裁判所は無罪判決を下せるのでしょうか?
> 証人に「被告人が返り血を浴びたシャツを着ていた」
> と証言させなければ有罪判決を得られないような脆弱
> な証拠構造の事件を、検察官が起訴することは少ない
> でしょう
これは、刑訴法147条で証言拒否されることを見越して、ということでしょうか?
> 証言拒否事由が適法と認められないときであって
> も、被告人に不利益な証言があったものとみなす
> ことはできません
証言拒否事由が適法と認めらるのはどのような場合でしょうか?
上で質問した、免責を前提とした、事由の明示のケース以外でもうひとつ考えられるのは、『諸般の証拠から拒否された証言内容を一義的に特定することができ、かつ、これについて証言することが証人または証人の身内の不利益となる』場合ですが、『諸般の証拠から拒否された証言内容を一義的に特定することができ』というのが『その証言が無くとも証言させたかった内容が事実であると認定でき(つまりそもそもその証言が不要である)』と同義になるような無意味なケース以外を想定するには『諸般の証拠』に『証言が拒否されたという事実』を含めざるを得ないと思うのですが、どうでしょうか?
No.4
- 回答日時:
>>刑訴法148条以外に証言を拒否できる根拠はあるのでしょうか?
憲法38条1項で自己に不利益な供述を強制されないと定めてられており、刑事訴訟法は憲法38条1項を受けて自己負罪拒否特権について詳細に範囲を定めたものと言うことができます。
>>もし無ければ、拒否したことにより、結局被告人に不利な回答の方が真実であると明らかになってしまうと思うのですが
黙秘したことで怪しい、有罪である、という心証を抱いていいとするのならば結局黙秘権を与える意味がないですから、そのような心証自体抱いてはいけないことに「なっています」。
ですがご指摘の通り、心証というのは裁判官の頭の中にあるものですので誰も監視することができず、よって黙秘から有罪を推定したりしている可能性がないとはいえませんね。
ですから、裁判長がそのような心証をいだかないように、検察官が不利な証言を求めるような質問をした時点で、異議を裁判長に述べてその質問をやめさせるといったことが
弁護士には求められるのではないでしょうか。
この回答への補足
回答ありがとうございます
> 憲法38条1項で自己に不利益な供述を強制さ
> れないと定めてられており、刑事訴訟法は憲法
> 38条1項を受けて自己負罪拒否特権について
> 詳細に範囲を定めたものと言うことができます
それではやはり、証人が被告本人で、証言を求められた質問が二者択一だった場合は、証言拒否により、被告にとって不利な回答の方が真であると推論できてしまいますね…
> 黙秘したことで怪しい、有罪である、という
> 心証を抱いていいとするのならば結局黙秘権
> を与える 意味がないですから、そのような
> 心証自体抱いてはいけないことに「なってい
> ます」
その通りだと思うのですが、実際には論理的に真であることが分かってしまったものを心証から締め出して判決を下せるのでしょうか?
例えば、犯人のものであることが分かっている遺留品について、被告人に対し、『これはお前のものか、違うか?』という質問が許され、『いいえ、違います』でも『分かりません』でもなく『証言を拒否します』という回答が得られれば、その拒否が刑訴法147条によるものにせよ、憲法38条によるものにせよ、論理的には『はい、わたしのものです』が真であることは明らかになってしまいます
そして、『はい、わたしのものです』が真であれば、有罪の判決を下すに足るが、その事実を無視すれば不十分である、という場合、論理的な帰結を無視して無罪判決を下すことができる(実際になされている)のでしょうか?
> 検察官が不利な証言を求めるような質
> 問をした時点で、異議を裁判長に述べ
> てその質問をやめさせるといったこと
> が弁護士には求められるのではないで
> しょうか
まさにそこが疑問点だと思いますが、実際にはどうなっているのでしょうか?
検察官は、一方の選択肢が被告に明らかに不利であるような二者択一の質問を被告人やその身内に対して行うことを法的に禁じられてはいないのでしょうか?
No.3
- 回答日時:
> 拒否したことにより、結局被告人に不利な回答の方が真実であると明らかになってしまう
誤りです。そのような印象を持たれるかもしれない、というだけです。
法の上では「明らかになる=立証される」というコトなので、そんな単純じゃナイです。
この回答への補足
回答ありがとうございます
『もし刑訴法147条以外に証言拒否の根拠が無ければ』という前提に基づいた文であることを考慮してご回答いただきたかったです
『明らかになる』=『法の下で立証される』という論議をしているのではなく、『前提が正しいとすれば、(たとえ法的には証拠として採用されなくとも)論理的に他の結論がなくなってしまう状況が現出してしまう可能性があり、それでは刑訴法147法の意義がなくなる(それどころか、裁判所が論理的には偽である事実認定を強いられる可能性もある)ので、この前提は間違っているのではないか?』という提議ですので、お答えいただきたかったのはあくまで、前提の当否なのです
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