刑事裁判では、裁判所は検察官の求刑より軽い刑を言い渡すことが多いような気がします。なぜなのでしょうか。
私なりに考えてみました。
1 裁判所は検察(行政官)の言いなりになっていないことを示すため
2 裁判所が刑を割り引くことを見越して、検察官が予め割り増しした求刑をする
3 単に喧嘩両成敗的な決着を好む日本的風土が、司法の場にも染みついている
裁判は刑事であれ民事であれ、ゲームの形をとって行われるので、様々な駆け引きが存在することは、ある程度仕方ないのかもしれません。
また、検察官の求刑は司法の判断ではなく、一方の当事者(検察官=行政官)の意見に過ぎないので、裁判所はこれに拘束されないという言い方もできるでしょう。
しかし、1,2のような思惑がらみで求刑や判決をしているなら、当事者や国民を馬鹿にした話だと思います。
刑事裁判に詳しい方、どうお考えでしょうか。教えて下さい。
No.5ベストアンサー
- 回答日時:
しかし、逆にいえば、ほとんどの場合「裁判所は、被告側の主張より重い刑を言い渡している」わけです。
別に深いことを考えなくても、立場が異なる二人の主張を、第三者が公平に判断すれば、各々の主張の中間のどこかに落ち着くだろうということは、常識的に予想されることです。
特に、刑事裁判で主に争われるのは量刑の基準となる「情状」ですから、これはかなり主観的な判断になります。このため、情状をどの程度、どのように評価するかは、主張者の立場を色濃く反映したものになります。できる限り被告人の立場を代弁する弁護士は甘め、国家刑罰権の行使者をもって任じる検察官は辛め、意識的に公平な第三者たらんとする裁判官はその中間の判断、となるのは制度上、自然なことと言えましょうし、またそれが当事者主義をとる刑事裁判の予定するとことろなのです。
確かに、質問者さんが2で指摘するように、検察官は割り引かれることを見越して高めの求刑を行っている面もあります。そうしないと、裁判官は「検察官『でも』この程度にしか評価しない情状なのか」と、それを情状評価の判断材料にしてしまうからです。
しかし、その「割引率」は、常に一定というわけではありません。もし、求刑の2割引の判決がでると常に決っているとしたら、それこそ「当事者や国民を馬鹿にした話」ですが、どの程度の減刑になるかは事件ごとに裁判官が判断するのですから、「求刑を減刑して判決」という慣例は単なる「儀式」とは言えないでしょう。
そもそも、検察官の「求刑」という行為には、法律上の根拠はありません。量刑判断は裁判官の専権ですから、むしろ越権に近い行為とも言えましょう。というわけで、建前としては、その「求刑」と言うものをあまり重く見るべきではないのです。
>しかし、逆にいえば、ほとんどの場合「裁判所は、被告側の主張より重い刑を言い渡している」わけです。
なるほど、おっしゃる通りです。こういう見方もできますね。気がつきませんでした。
>立場が異なる二人の主張を、第三者が公平に判断すれば、各々の主張の中間のどこかに落ち着くだろうということは、常識的に予想されることです。
>できる限り被告人の立場を代弁する弁護士は甘め、国家刑罰権の行使者をもって任じる検察官は辛め、意識的に公平な第三者たらんとする裁判官はその中間の判断、となるのは制度上、自然なことと言えましょうし、またそれが当事者主義をとる刑事裁判の予定するところなのです。
そうかもしれません。しかし、そうすると裁判官は単に「間を取る」という安易な態度に流れることはないのでしょうか。それに検察官の求刑を刑の上限と考える根拠もありませんし、被告人自身が有罪を認めても裁判官は無罪の判決ができるなど、民事の当事者主義と異なる面もあると、私は理解しています。
>しかし、その「割引率」は、常に一定というわけではありません。もし、求刑の2割引の判決がでると常に決っているとしたら、それこそ「当事者や国民を馬鹿にした話」ですが、どの程度の減刑になるかは事件ごとに裁判官が判断するのですから、「求刑を減刑して判決」という慣例は単なる「儀式」とは言えないでしょう。
そうですね。このあたりに救いがありそうです。裁判官には一方の主張に流されず、また単に「間を取る」のでもない判決を期待したいものです。
>そもそも、検察官の「求刑」という行為には、法律上の根拠はありません。量刑判断は裁判官の専権ですから、むしろ越権に近い行為とも言えましょう。というわけで、建前としては、その「求刑」と言うものをあまり重く見るべきではないのです。
この点は同感です。確かに刑事訴訟法などに「求刑」に関する記述は見あたりません。昔、求刑を忘れて論告を終わってしまった検察官がいて、それを理由に上級審で検察は判決無効を訴えたが認められなかった、という事例があると聞いています。
判例上からも、求刑というのは重く見る必要はないと言えそうですね。
世間では検察官が厳しい求刑をすると、まるで刑が決まってしまったように思う人もいるようですが、良くない風潮だと思います。
ご回答ありがとうございました。
No.7
- 回答日時:
「求刑より重い」刑を言い渡すことがないのは、当然ですから、
求刑の側(検察)では最大限「重い刑」を求めるのが、やはり当然、といえるのでしょう。
(被告人自身が犯行を認めていても無罪、というのはありますが、求刑が懲役5年なのに7年。ということはないはずです。事実認定の問題と量刑の問題はちがいますから。まさか弁護人が「懲役2年にして下さい」と求刑して無罪、というわけでもない。)
もちろん、「無期」で求刑して、そのまま「無期」という場合もありますし、
「死刑」判決なんかはそれ以上重い求刑はなかったわけだから、「求刑どおり」もありますね。
弁護人側が主張する「情状」などは、検察側の考慮にはしませんから、「まったく情状のない極悪非道」犯でなければ、求刑から減じることになることは十分ありますね。
>「求刑より重い」刑を言い渡すことがないのは、当然ですから、
求刑の側(検察)では最大限「重い刑」を求めるのが、やはり当然、といえるのでしょう。
求刑より重い刑を言い渡すことは、たしかに滅多にありませんが、絶対ないというわけでもなく、過去にわずかながら例があるようです。もしそうなったとき、検察官は「弱腰だった」と身内から批判されるのを恐れて、幾分か割り増しした求刑をするのではないでしょうか。(他の回答者の方もおっしゃっているように、「求刑」という行為自体、法的根拠も裁判官に対する拘束力もありません。)
私は、検察官は「自分が裁判官だったら、こういう判決をする」というのを基準にして求刑すればよいし、裁判官は検察官の求刑が尤もだと思えば、「満額回答」してもよいと考えますが、いかがでしょうか。お互いに相手の顔色をうかがって、割り増し求刑、割引き判決を定例化させているのは、感心できません。
もちろん、No.7さんのおっしゃるように、「満額回答」もないことはないし、私はむしろ、同じ法曹である検察官と裁判官が、まじめに考えたらそれほど違った結論に達する方が不自然だと思うのですが。
結局この問題は、刑事裁判における「当事者主義」をどう考えるか、ということによって、見解が分かれるように思います。
ご回答ありがとうございました。
No.6
- 回答日時:
検察官も法曹として,被告人の人権に目を向けないことはありませんが,犯罪者(と思われる人)を訴追するのが使命ですから,国家権力の行使のために組織的に力を尽くします。
また,行政機関であることから,世論の後押しにより,場合によっては最大限の厳罰を求めるようにします。最近,監禁罪や業務上過失致死罪の上限が懲役5年で社会問題となった事案がありました。併合罪で重い求刑をしたり,立法的解決(事後的に国会で)を図ったりしました。
一方,裁判所は,司法機関として国家権力の暴走を監視し,人権を最大限尊重するという使命をもちます。また,裁判所といっても,通常1人又は3人(合議事件)の人間又は集団です。人が人を裁くことができるのかという葛藤の下,孤独な判断を求められます。極端なケースですが,死刑を宣告するような場合,心穏やかに宣告できるはずはありません。判断に迷った揚げ句,刑の宣告後,被告人に控訴を勧め,慎重な判断を上級審に求めた裁判官もいらっしゃるほどです。
重い刑を宣告しても,直接,目にみえる形で国家又は被害者が利を得るということはなく(感情論はまた別の次元です),むしろ,被告人やその家族の更生・安寧を願い,民事的に賠償をしてもらった方が良いと考えてもおかしくありません。
ただし,本筋ではありませんが,求刑の2~3割引で刑の宣告をすれば,検察側・被告人側の双方から控訴(上告)されづらいということは言い得るでしょう。求刑通りだと被告人からは,重すぎると受け止められ,求刑を大幅に下回れば,検察官のメンツがつぶれるということです。
私の疑問は次の一点に集約できると思います。
刑事裁判をヤジロベエにたとえるなら、被告人・弁護人が一方の重り、バランスを取るのは裁判官、ここまでは、どなたも異論はないと思います。しかし、検察官はもう一方の重りであって良いのだろうか、という所が、どうも納得できないのです。当事者主義の原則から言えば、それで良いことになるのでしょうが。
もし検察官が「バランスを取るのは裁判官に任せておけば良い」と考えるなら、無責任に一方に偏った判断をすることにならないでしょうか。それを裁判官が是正すれば良いのはもちろんですが、弁護人が無能である場合など、裁判官が検察の意見に流されることはないのでしょうか。国家権力の一翼を担う検察(行政)は、一方の当事者であると同時に、公正中立でもあるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
>人が人を裁くことができるのかという葛藤の下,孤独な判断を求められます。極端なケースですが,死刑を宣告するような場合,心穏やかに宣告できるはずはありません。判断に迷った揚げ句,刑の宣告後,被告人に控訴を勧め,慎重な判断を上級審に求めた裁判官もいらっしゃるほどです。
裁判官の心理についてのご考察は、たしかにその通りだろうと私も思います。裁判官が多くの場合、刑を割り引くのも、理屈ではなく人間の心理が多少とも影響しているのではないかと思えてなりません。
極刑を言い渡した後、被告人に控訴を勧めた裁判官のことは、私も覚えています。その率直さ、良心に敬意を表するとともに、一面、この裁判官は無責任とも言えるのではないだろうかという感じもあり、複雑な気持ちです。迷うくらいなら、より軽い刑、あるいは無罪を言い渡すべき、というのが筋だと思います。
>ただし,本筋ではありませんが,求刑の2~3割引で刑の宣告をすれば,検察側・被告人側の双方から控訴(上告)されづらいということは言い得るでしょう。求刑通りだと被告人からは,重すぎると受け止められ,求刑を大幅に下回れば,検察官のメンツがつぶれるということです。
このあたりに、真実がありそうですね。
ご回答ありがとうございました。
6人の方々のご意見、それぞれに、いろいろ考えさせられました。私の疑問はまだ必ずしも解決したとは言えないのですが、問題の性質上、すっきりと納得できる解決というのはないのかもしれませんね。
この場を借りて、回答者の方々にお礼を申し上げます。
No.4
- 回答日時:
刑事裁判に限って回答します。
現行法下、日本の(刑事)裁判は原告である検察官と、被告人(事実上は弁護人)の提示する証拠と主張を総合的に裁判官が検証するしくみになっています。
検察側は被疑者の犯した犯罪の手口などから、当該犯罪が社会に与えた影響、反省しているかどうかを考慮して、起訴か不起訴かを決定します。また、同時に量刑の判断もします。
起訴を受けて、被告人(元被疑者)側は、被告人の弁護を行います。
具体的には、証拠の妥当性などや、被疑者の反省状態、被害者等の態様について、被告人に有利な状況を探し出し、裁判の場で明らかにします。
そのやり取りを総合的に判断して、判決に至るわけですが、検察側が最初に主張した事実の全てが、裁判官によって認められるとは限りません。また、証拠の全てに証拠能力が認められるとは限りません。
そうして、検察側の求刑どおり判決がでない場合もしばしば生じる事になります。
--
ちなみに、#1について
> ・民事では被害者が被害同額の請求権がある
> しかし、刑事事件は被害者には権限が無し
というのは、民事上の責任と、刑事上の責任を混同しているように思えますが?
傷害事件であっても、、民事責任を問う場合は、被害額(過失相殺はありますが)を請求するのが当然ですから。
> ・被害を受けたのは被害者であり、国家ではありません
> なぜ国家が全権を持つのでしょうか?
学説に対立はありますが、国家は安寧秩序を乱されています...というより、社会の秩序が乱されています。
また、私人による救済・報復を認めてしまうと、社会の秩序が崩壊してしまうとも考えられています。(例:敵討ち)
> 「賠償権利は個人にあるべきです」
ありますよ。(民709)
> 外国の例では「陪審員制度」「被害者の意見反映」
> などの工夫があります
アメリカでは、陪審制度の弊害が問題となっていますが...(過去に、日本でも陪審制度がありましたし)
陪審といっても様々で、事実認定をするもの、量刑判断をするもの、有罪・無罪を判断するものとあります。
また、日本の刑事裁判では、起訴の段階で被害者の意見反映はありますよ。
おっしゃることは、ごもっともだと思います。
ただ、私が不思議に思うのは、検察官と裁判官との間に、事実認識や法解釈において、特に違いがないと思える場合でも、裁判所の判決は求刑より幾分割り引かれているように思える、ということです。
例えば、田中角栄氏の受託収賄等の裁判では、求刑は懲役5年でした。これはこの罪の最高刑です。総理大臣という最高位の公務員が5億円という巨額の賄賂を受け取ったのは、最高刑に値すると検察は判断したのだと、私は理解しています。またこの点について、検察・裁判所の間に認識の相違があったとは思えません。しかし判決は懲役4年で、表現は良くないかもしれませんが、「相場通り」2割引でした。
この1年の割引は一体どんな理由があるのでしょうか。
また、受託収賄の最高刑は、どんな場合に適用されるのでしょうか。不思議に思います。
ご回答ありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
近代法での裁判の概念は行政の判断を審査する、行政を監視し国民を守るということですから。
司法(裁判所)は行政(検察)を監視、抑制し、国民を守ることが使命であるという点については同感です。
建前上は対等な当事者といっても、強大な権力を背景にした検察官と、身柄拘束までされている被告人との力の差を考えれば、裁判所はむしろ被告人寄りであるくらいでちょうどよいとさえ、言えるかもしれません。
ただ、検察・裁判所が互いの思惑で水増し求刑・割引判決をするのが、半ば定例化してしまっているのあれば、それは問題ではないか、という疑問を私は持っています。
ご回答ありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
法律を学んだ人間としては、
1.極刑は別にして、本人の反省や更正を望む姿勢がある。
2.検察は、やや厳しい目の刑を求める傾向がある。
過失は、ある程度減刑される理由がここにあります。
裁判は、第三者が裁くものです。また、裁判官は、証拠に基づいて、自由に判決できることになっています(法律の規定の範囲内ですが)。
アメリカの陪審員制度では、肺ガンになった人がタバコ会社から億単位の賠償金をとるような、ゆがんだ判決がでています。これは、陪審員は主義主張を持たない分、雰囲気や感情に流されてしまう欠点があります。
裁判官は、利害関係の違う、弁護士、検察官の主張を判断しています。最終的には、裁判官だけに判断を委任しているので、ときには弁護士寄りの判決になる、という仕組み上の欠点かも知れません。
ご指摘の2の点について、その理由を知りたかったのですが。
やや重い目の刑を求めるのは、裁判官が割り引くことを見越して、(表現は良くないかも知れませんが)いわば割り増し請求しているのではないでしょうか。また、もし求刑より厳しい判決が出たりすると、担当検察官が「弱腰だった」と内部から批判されるのを恐れて、殊更に厳しい目の求刑をする傾向があると考えるのは、勘ぐりすぎでしょうか。(求刑より厳しい判決は、きわめて稀ですが、過去に例があったようです。)
陪審制度については、私も同じ疑問を持っています。
ご回答ありがとうございました。
No.1の方へ:
「ご回答ありがとうございました」と書くのを忘れてしまいました。大変失礼いたしました。この場を借りて申し上げます。
No.1
- 回答日時:
被害当人が裁判に参加できないからです
これは日本刑法の最欠陥です
・民事では被害者が被害同額の請求権がある
しかし、刑事事件は被害者には権限が無し
・被害を受けたのは被害者であり、国家ではありません
なぜ国家が全権を持つのでしょうか?
・被害者には刑事事件であっても同等の賠償を
請求できるはずです
例えば、殺人なら死刑を求める、金銭詐欺ならば
全額返してもらうまでは懲役(強制労働)させる
くりかえしますが「賠償権利は個人にあるべきです」
外国の例では「陪審員制度」「被害者の意見反映」
などの工夫があります
国家がすべてをとりしきるのは間違いです
被害者が参加できないことが、刑が軽くなる一因だという点については、同感です。
たしかに日本の刑事裁判では、被害者は当事者とはされていなくて(当事者は検察官)、検察側証人として出廷する以外には、意見を表明する機会はありません。
被害者や家族の方々としては、納得できないだろうと想像します。
ただ、私の質問の主眼は「同じ法曹でありながら、なぜ裁判官と検察官では量刑に対する考えが違うのか」ということにあります。事実認定でも法解釈でも検察官・裁判官の間にさしたる不一致がない事件でさえ、判決は多くの場合、求刑より割り引かれているように思います。この点についてのお考えをお聞きしたかったのですが。
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