訴訟行為論を勉強していて頭の整理がつかなくなりました。
民事訴訟の基本構造として以下のことが教科書に書いてあります。
申立て←法律上の主張←事実上の主張←立証
そして、事実上の主張に対する「相手方の態度」は、(1)否認、(2)不知、(3)自白、(4)沈黙の4種類があると教科書には書いてあります。
「一方当事者による事実上の主張に対する相手方の対応は、否認、不知(159II)、沈黙(159I)、自白(179)の4つに区分される。不作為である沈黙を含めて、これらの行為も事実に関するものであるので、事実上の主張に含まれる。また、一方当事者が主張する事実にもとづく法律効果を前提としながら、相手方が、その法律効果の発生を妨げ、またはそれを消滅させる目的で、別の事実を主張することを抗弁と呼ぶ」(伊藤眞「民事訴訟法」(第3版)p285)。
なんとなく、相手方から「○○の事実が存在しましたよ」と主張されたとき、争うには否認、「抗弁」、不知という3つ態度を思い浮かべてしまうのですが、教科書の4つの分類では、「抗弁」はどこに行ってしまったのでしょう?
伊藤先生の教科書の「また、・・・抗弁と呼ぶ」は抗弁をどの様に位置付けていると理解すれば良いのでしょうか?
教科書を一人で読んでいても、よくわかりませんので、どなたか詳しい方いらっしゃったら、ご助言いただけませんでしょうか?
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
抗弁を,相手方の事実主張に対する態度と考えることが間違いです。
抗弁は相手方の主張する事実と両立する事実ですから,むしろ,ある事実主張に対する態度とすれば,「認める」ことが前提でしょう。
例えば,売買契約に基づく代金請求に対し,抗弁として「瑕疵担保」責任を問題にする場合は,売買の事実を前提にして,その上で,目的物に瑕疵があるという主張をします。
抗弁は,相手方主張事実と両立する事実の主張であり,認否とは次元が異なります。
ご回答を私なり理解すると、ここで言っている「相手方の態度(対応)」とは、「認否」のこと言っているのであって、
事実の主張を認めた上で、新たな事実の主張をぶつける「抗弁」は、
挙証責任が入れ替わった別のステージに分岐する行為のようなイメージということでしょうか(「次元がちがう」?)。
これが、正しい理解かは心もとないのですが・・・。
ただ、抗弁が事実主張に対する「相手方の態度(対応)」でないとすると、正直なところ、日本語としての「態度(対応)」が私の国語の読解力の範囲を超えてしまってお手上げです(笑)。
相手方の態度(対応)は一つの法律的なテクニカルタームとして割り切って覚えることにいたします。
適切なご回答ありがとうございました。
No.4
- 回答日時:
>相手の事実上の主張について「認める」ということに他ならず、主張←立証という一つの流れとしては
必ずしも「認める」ことが抗弁を主張する前提になるとはかぎりません。先ほどの例で、「1.2.の事実は争う。仮に1.2.の事実を認めるとしても、時効により貸金返還請求権は消滅した。」と被告が主張した場合、原告の事実上の主張に対する被告の事実上の主張(態度)は否認ですが、被告の消滅時効の完成に関する事実上の主張は抗弁です。
正確な補足ありがとうございます。
もともと、抗弁は「相手方の対応」との関係で、ざっくり、どのように頭の中に位置付けたらよいかということだけが問題意識でしたが、これを機会に、抗弁という概念の正確な理解に努めたいと思います。
No.3
- 回答日時:
No.1の方のおっしゃるとおりです。
具体例で補足します。
1 甲の乙に対する売買代金請求
(1)甲主張の要件事実
○民法555条:財産権移転約束,代金支払約束
(2)乙が同時履行の抗弁を主張する場合の要件事実
○民法555条の売買契約成立の要件事実:これについては,自白(民事訴訟法179条)
○民法533条:売主甲がその債務の履行の提供をしていないこと,売主の債務が弁済期にあること
2 AのBに対する貸金債権返済請求
(1)A主張の要件事実
○民法587条:返還約束,金銭等授受の事実,弁済期合意の事実
(2)Bが相殺の抗弁を主張する場合の要件事実
○民法587条の消費貸借契約成立の事実:これについては自白
○民法505条:2人が互いに同種の目的を有する債務を負担すること,双方の債務が弁済期にあること,債務の性質がこれを許さないときとはいえないこと,相殺反対特約がないこと
No.2
- 回答日時:
誰に証明責任があるのかという視点で考えてください。
教科書に良く載っている貸金返還請求の例で説明します。原告の法律上の主張
金銭消費貸借契約に基づく金100万円の貸金返還請求権
原告の事実上の主張
1.原告は被告に金100万円を交付した。
2.被告は原告に上記金100万円を返済する合意をした。
被告の事実上の主張(態度)
1.につき認める。
2.につき争う。
1.と2.の事実は原告に証明責任がありますが、1.の事実は自白が成立しているので、原告は1.の事実については証拠により証明をする必要はありません。2.の事実は被告が争う態度を示しましたから、原告は証拠により証明しなければなりません。一方、被告は2.の事実が存在しないことを証明する必要はありません。すくなくても2.の事実が存在するかしないか分からない状態にすれば被告は勝訴します。だから、被告の主張は抗弁ではなく否認になります。
それでは、次の場合はどうでしょうか。
被告の事実上の主張(原告の主張に対する態度)
1.2.とも認める。
1.2.の事実とも自白が成立していますから、1.2.の事実は原告が証明する必要はありません。しかし被告が次のような主張をした場合はどうでしょうか。
被告の法律上の主張
弁済による貸金返還請求権の消滅
被告の事実上の主張
3.被告は、当該金銭消費貸借契約にもづく貸金返還債務の履行として金100万円を原告に支払った。
原告の事実上の主張(被告の主張に対する態度)
3.につき争う。
3.の事実は被告に証明責任があります。だから弁済の主張は抗弁になります。原告は3.の事実を否認していますから、被告は3.の事実を証拠により証明しなければなりません。
ご回答ありがとうございます。
否認と抗弁の違いは理解していたつもりなのですが、
「相手方の態度(対応)」の言葉をそのままに、「訴訟で自分がある主張をされたときに、どんな態度をとるのかな?」、と素朴に捉えてしまったのが混乱の原因だったようです。
要するに、N01のご回答のように抗弁というのは、相手の事実上の主張について「認める」ということに他ならず、主張←立証という一つの流れとしては、そこで終わり、新たに挙証責任の異なる別のテーマを主張された側から設定されるということですね。
だから、事実上の主張に対する態度としては、否認、不知、自白(認める)、沈黙と同列に整理されないのは当然ということと理解しました。
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