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どうしてもわかりません。
羽毛服が暖かいのは羽毛の間に空気をたくさん含んで外気と身体の間に断熱層があるからといいます。
一方、温度の拡散する速度は、熱伝導方程式の係数、熱拡散係数が大きいほど、早いと理解しています。
しかし、物の本を見ると
密度比熱熱伝導率熱拡散率
Mg/m3J/g/KW/m/Km2/s*10-6
石英2.66 0.80 8.80 4.14
粘土鉱物2.65 0.90 2.92 1.22
有機物1.30 1.92 0.25 0.10
水1.00 4.18 0.57 0.14
空気0.00121.01 0.02520.63
氷0.921.88 2.181.26

でありましてなんと、空気の熱拡散係数は土や水よりも遙かに大きな値です。どうしてもわかりません。でも実際は空気があると温度は変わりにくいように思えますが・・・。
何か勘違いしているのでしょうか?教えてください。

A 回答 (3件)

お返事がおそくなりましてすみません。


まず最初にお詫びと訂正です。熱伝導方程式の係数はgyanさんのご指摘のように熱拡散率のみで表現できます。大変失礼をいたしました。

一方で「熱流」の概念を抜きに熱伝導方程式を組み立てられない・解けない場合があることも事実です。温度の分布は同じであっても熱伝導率kが異なれば熱流の大きさが異なってくることに留意ください。従って境界条件の一部が熱流(もしくは熱源の発熱量)で与えられている場合は、熱伝導率の値が分からない限り温度分布を定めることはできません。

gyanさんは熱伝導問題について既に一定の知識をお持ちの方と拝察いたしました。以下は既にご存じの内容と重なる部分もあるかと思いますが、その場合はご容赦頂ければと思います。

「羽毛ジャケットを着ると暖かい」がどういうことか順に考えてみます。この場合 過渡応答を考えることもできますが、定常状態で考えれば十分でしょう。
一般に温度場T(x, y, z)が定常状態であり、かつ「全空間で温度一様」というつまらない解でないとすれば、その系には熱源と熱の捨て場(熱浴)が必ず存在します。
簡単のために1次元の定常の熱伝導で考えることにします(下図)。物質Aの熱伝導率kは温度によらない定数とし、熱浴の熱容量は当然ながら無限大とします。また熱浴の温度をT0、熱源の発熱量をP[W]とします。このとき熱源の温度T1は何℃まで上がるか考えてみます。

     物質A(厚さd)  外部熱浴(温度はT0で一定)
    →| → → |
    →| → → |
P[W] →| → → |
    →| → → |
    →| → → |
  断面積 S
    x=0    x=d  ---→x

(フォントによってはずれて見にくいかも知れません、すみません)
温度分布を与える関数をT(x)とします。今は定常解を考えますから、(∂T/∂t)=0です。よって熱伝導方程式は
α(d^2T/(dx)^2)=0
となります(Tの時間変化は考えず、変数はxだけですので常微分に直してあります)。αは熱拡散率です。
これは容易に解かれてdT/dx=定数、を得ます。
この定数は熱流を考えて初めて決定されます。単位面積を通過する熱流J[W/m^2]は温度勾配と
J=k(dT/dx)
の関係で結び付けられます。kを導入しないと熱流束J(と温度の勾配)の換算ができず、温度分布は定まりません。
一方発熱量がPでそれが断面積Sを通過するのですから、J=P/Sです。
よって
P/S=k(dT/dx)
の関係があり、この両辺を物質Aの厚み分(0~d)まで積分すると熱源(熱源とAとの境界)の温度T1が求まります。d=0の場合にT1=T0になるという境界条件を使うと
T1=Pd/(Sk)+T0
P/S, dが一定だとすると、温度上昇分(T1-T0)は熱伝導率kに反比例します。「保温効果」は熱伝導率kの高い低いで決まり、熱拡散率αには直接関係しないことがお分かりいただけると思います。

さて人間の場合はちょっと複雑です。人間は「体表面からの熱の逃げ具合によって、発熱量を変化させ温度を一定に保っている」特殊な熱源です。注意いただきたいのは人間は全身至るところで36℃なのではなく、体表面の温度はそれより低い点です。(そのために体温は腋や舌下で測るのはご存じのとおりです)

     皮膚層 ジャケット  外気(温度はT0で一定)
    →| → | → → |
    →| → | → → |
体内  →| → | → → |
    →| → | → → |
    →| → | → → |
     k1, d1  k2, d2
  断面積S

最初の例と同様に熱伝導方程式を解いてみます。体内の温度をT1(一定)、皮膚層とジャケットの熱伝導率をそれぞれk1、k2とします。厚みもd1、d2とします。また皮膚表面(皮膚層とジャケットの間)の温度をT2とします。皮膚とジャケットの間には空気層がありますがとりあえず無視します(空気層の影響はジャケットに織り込み済み、と考えてください)。
定常状態ですから同様にdT/dx=定数 という解を得ます。発熱量は不明ですのでとりあえずPとすると
P/S=k1(dT/dx)  ・・・皮膚層内
P/S=k2(dT/dx)  ・・・ジャケット内
であり、それぞれ積分して
T1-T2=P d1/(k1 S)
T2-T0=P d2/(k2 S)
を得ます。辺々足すと
T1-T0=(P/S)×(d1/k1+d2/k2)
となり、T2-T0=P d2/(k2 S)を辺々割って整理すると
(T2-T0)/(T1-T0)=1/{1+(k2 d1/(k1 d2)}
を得ます。T1とT0が一定の値であっても、k2が小さくd2が大きいほど体表面の温度T2が高くなる(T1に近くなる)ことが分かります。ゆえに羽毛ジャケットを着ると暖かいのです。この場合でも同様に体表面の温度を決めているのは熱伝導率k2(と厚さd2)であり、熱拡散率は直接に含まれないことに留意ください。

「数式では確かにそうなのだが、どうも感覚的に納得できない」ということであれば、さらに以下をお読みください。

「小さい熱伝導率のため熱は伝わりにくいのですが、空気のもつ体積熱容量が他の物質に比べてもっと小さい、つまり、その場で貯熱しうる熱が少ないので、温度は早く伝わると言うことと思えるのです。」というgyanさんの理解はまったくその通りです。
一方で、「熱」は伝わりますが厳密に言えば「温度」は直接には伝わらないという点を再確認ください。熱が伝わった結果として初めて温度が上がる(下がる)ことは申し上げるまでもなくご存じだと思います。

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      △
      △
   ┃       ┃
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さて今図のように、上下に二つの水槽を用意し上の水槽の底に孔をあけて下の水槽に水を落とします。上下の水槽の大きさは同じだとします。
(1)水槽は小さいが、孔も小さい
(2)水槽は大きいが、孔も大きい
という二つのケースを考えます。水槽の底面積と孔面積の比は同じとします。最初の水位も同じだとすると、下の水槽の水位の時間変化も(1)(2)で全く同じです。
水位-温度
水流-熱流
容積-熱容量(体積比熱)
と置き換えれば、熱伝導の問題と同じであることがお分かりいただけると思います。
(1)が「熱伝導率も比熱も小さい」、(2)が「熱伝導率・比熱とも大きい」に相当します。熱拡散率は熱伝導率と(体積)比熱の比ですから、その比が一定であるなら「温度の伝わり易さ」(正確な物理用語でないですが)は同じということになります。
なお「底面は大きく、孔は小さい」水槽が、熱拡散率が低い場合に相当することは申し上げるまでもありません。

さて、今度は上の水槽に一定の割合で水を注ぐとします。この場合は(1)(2)で上側の水槽の水位変化に違いが現れます。(1)は水位が急上昇するのに対し、(2)はそれほどは上がりません。熱の問題に翻訳すれば、外部から熱を供給したときに「(1)はすぐに温度が上がり、(2)はあまり温度が上がらない」ということになります。
つまり、外部から熱が加えられない場合は熱拡散率(=底面積と孔面積の比)だけで水位の変化は決まりますが、外部から熱が加えられる場合は、加えられる熱量(上側水槽に注がれる水)と孔の大きさ(熱伝導率)の関係によって温度分布が異なってくることになります。あるいは、上側水槽の水位が一定になるように注ぐ水量を調節するならば、(1)の方が水量は少なくて済む、とも言えます。
もうお気づきかと思いますが、空気は(1)の「水槽も孔も小さい」に相当するわけです。ですから温度(水位)はすぐに変化しますが、外部から無理やり熱流(水流)を放り込もうとしてもなかなか伝わらないわけです。あるいは逆に外気が熱を奪おうとしても、出口が小さいために熱はゆっくりしか奪えない、ということになります。
熱流の大小によって皮膚表面の温度が変わってくることは上で述べた通りです。

*ジャケットを全く着ない場合には体表面の温度=外気温になるのでは? という指摘もあるかと思いますが、これはそうはなりません。図では外気を、全体が温度一定の熱浴のように描きましたが、実際には皮膚近傍の空気層(境界層)の中に温度勾配が生じます。ジャケットを着た場合にはその温度差が小さいので上記では無視して計算しています。
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この回答へのお礼

詳しくありがとうございました.
理解するのにかなり時間がかかっていますが,とても考えが深まっているように思います.定常状態では,温度拡散率ではなく,熱伝導率のみに依存して温度分布が決まると理解しました.
しかし,水槽の例でどうしてもわからない点があります.
・初期の水位が同じで孔の径が違うならば,水位の減り方つまり,下の水槽にたまる水量の変化率も変わるのではないでしょうか?
・かりに上記のとおり,上の水槽の水位変化が同じであったとして,大小の上水槽に同じ割合で水を注いだ場合,どちらの水位も同じだけの割合で上昇するはずです.減り方も足し方も同じ割合ですから.

という疑問がのこります.ん...むずかしい.

お礼日時:2003/03/08 18:46

羽毛服が暖かいのは、羽毛の中の空気が動きにくいからではないでしょうか。

動かない空気は断熱材になります。

この回答への補足

ありがとうございます。
たしかにそうかもしれません。羽毛を使うのは単に空気が対流しないためののことで、空気が熱を伝えにくいからではないのでしょうか。
例えば、水は空気よりも熱拡散係数がかなり低いので、対流しないようにゼラチンで固めた水は羽毛服よりも断熱効果があるということでしょうか?
羽毛服は単に圧倒的に軽いという利点でつかわれているということかとおもいました。

補足日時:2003/03/03 13:49
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gyanさんが悩んでおいでの原因は、熱伝導率と熱拡散率を混同されているからと思われます。

熱量移動の大小を決める物性値は熱伝導率であって、熱拡散率ではないからです。「熱がよく伝わる」(熱の移動・拡散)と「すぐに暖まる」(温度の拡散・・・あまり正確な物理用語でありませんが)はイコールでないからと言い換えてもよいです。
あるいは「温度が高い物質でも、比熱が小さいなら触っても火傷しない」ことを思い浮かべてみて下さい。温度の高い低いと保有する熱量の大小は、比熱(と比重)を考えないと比較して論じられないわけです。

なるほど確かに、熱拡散率の高い物質の一端に熱を加えると他の部分の温度もすぐに高くなります。
しかし熱拡散率が高いなら熱を多く伝えることはできるのでしょうか?
ある部分に温度勾配ΔT[K/m]がある場合、伝わる熱流J[W/m^2]は、熱伝導率をk[W/(m・K)]として
J[W/m^2]=ΔT[K/m]×k[W/(m・K)]
の関係があります。
一方、熱伝導率k[W/(m・K)]と熱拡散率α[m^2/s]の間には
k[W/(m・K)]=比熱C[J/(kg K)]×比重ρ[kg/m^3]×α[m^2/s]
の関係があります。従って熱拡散率αの値が大きくても、比重ρか比熱Cが小さい物質であれば結局として熱伝導率kは小さく、逃げる/伝わる熱流Jも小さくなります。
実際に伝わる熱量はJ×面積で決まるわけですが、いずれにしても熱拡散率がいくら大きくても比熱や比重が小さければ熱伝導率は小さく、伝わる熱量も小さくなります。ですから羽毛ジャケットは暖かいのです。(温度勾配が同じであっても逃げる熱量が少ない、ということです)
熱伝導方程式で出てくる係数も、熱拡散率でなく熱伝導率のはずです。ご確認下さい。

お答えになりましたでしょうか。

この回答への補足

お答えありがとうございます。しかし、いまいち納得できないのです。
まず、熱伝導方程式の係数は間違いなく熱拡散率です。確かに空気は熱伝導率が小さいため熱は伝えにくいはずです。しかし、密度と比熱が小さい、またその積である熱容量も小さいために熱拡散係数が大きくなっています。小さい熱伝導率のため熱は伝わりにくいのですが、空気のもつ体積熱容量が他の物質に比べてもっと小さい、つまり、その場で貯熱しうる熱が少ないので、温度は早く伝わると言うことと思えるのです。温度が早く伝わると言うことは、外気の温度が羽毛服をつうじて体に伝わりやすいと言うことになりませんか?やはり理解に苦しみます。熱拡散係数が大きくても比熱と密度が小さければ、熱伝導率は小さくなると言うこともわかります。でもやはり、熱伝導方程式をといて物質の温度分布を予測する場合、きいてくるのは熱拡散係数なのです。???です。

補足日時:2003/03/03 13:38
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