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結合性軌道と反結合性軌道とはどういうものなのでしょうか?
調べてみたのですが少し専門的で理解できませんでした。
初心者にも分かる程度にご教授お願いいたします。

また、「水素の分子軌道において、基底状態では反結合性軌道に電子が含まれない」ということも合わせて教えていただけるとうれしいです。

A 回答 (3件)

分子の化学結合理論で、分子軌道法という理論の中で使われます。


文だけで分かりづらいと思うので画像をご覧ください。

まず、簡単に水素原子2つから水素分子1つができる過程を考えます。
それぞれの水素は1s軌道に電子を1つずつ持っています。
この2つの1s軌道は相互作用し、エネルギーの異なる2つの軌道ができます。
このときエネルギーの低い方の軌道は、2つの軌道の電子波の位相(波動関数の符号)を合わせて重なります。
すると重なった部分(2つの原子間)の電子密度が高くなり、この軌道の電子は2つの原子核を引き寄せ結合を生成しますから、「結合性軌道」と呼ばれます。
しかしエネルギーの高い方の軌道では、2つの軌道の電子波は位相を逆向きにして重なるのです。
すると、重なった部分の電子密度は低くなり、2つの原子間とは反対方向の電子密度が高くなります。
結果、この軌道はそれぞれの原子を結合とは逆向きに引き離し、結合を破壊する性質を持つので「反結合性軌道」と呼ばれます。

水素分子H2では、このように2つの1s軌道から結合性軌道・反結合性軌道ができます。
電子は合わせて2つです。パウリの原理に従い、エネルギーの低い軌道から電子を詰めていくと、2つの原子はどちらも結合性軌道に位置します。
反結合性軌道には電子は入っていません。

結合次数は (結合性軌道中の電子 + 反結合性軌道中の電子)/2 で求められます。水素分子の結合次数は1となります。
水素分子の結合は単結合である、ということに一致していますね。

分子軌道法はこのように考えます。

この回答への補足

図も含めた丁寧な回答ありがとうございます。
水素の場合については理解できたと思います。

ご回答を読み、さらに質問で申し訳ないのですが、
電子が3つ以上になれば反結合性軌道にも順次、電子が入っていくという理解で合っていますでしょうか?

結合性と反結合性の割合の違いで結合の強さが変わるという理解は正しいでしょうか?

また、反結合性軌道の方に電子が多く入ることはあるのでしょうか?
反結合性軌道とは結合を破壊する性質を持つとありますので、反結合性軌道に多く入ることはないと考えたのですがいかがでしょうか?

多くの質問すみません。回答よろしくお願いいたします。

補足日時:2009/04/29 18:06
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おっしゃる通りです。


ただし「3つ以上になると反結合性軌道に~」というのは水素分子系の分子の場合ですね。
もっと複雑な分子、O2やF2になると様子も全然変わってきますし、SO2のような分子になると、ある軌道が結合性か反結合性か、非結合性(結合生成にも結合破壊にも関わらない軌道)かという判定も難しくなってきます。

一般に反結合性軌道に電子が入っていくと、結合次数が下がるので結合解離エネルギーが小さくなり、分子は不安定になります。
実際、水素分子に電子が1つ付加した陰イオン(H2^-、水素分子陰イオン)は反結合性軌道に電子が1つ入るため、(2 - 1) / 2 = 0.5 で結合次数は0.5となります。
測定値も水素分子より結合解離エネルギーが小さくなっているので一致しますね。
逆に、水素分子から電子を1つ取り除いた陽イオン(H2^+、水素分子イオン)も結合性軌道から電子が1つ減るので、(1 - 0) / 2 = 0.5 で結合次数は0.5になり、水素分子よりも不安定です。
この結果からみて、結合性軌道と反結合性軌道の電子の割合によって結合強度が変わるという考え方は正しいでしょう。

反結合性軌道のほうに電子が多く入ることはありません。
また、通常結合性軌道と同じ数だけ反結合性軌道に電子が入ることもありません。
He2分子を考えてみるとよくわかると思います。
電子が4つあるので、上で挙げた水素分子の図の結合性軌道・反結合性軌道すべてに電子が入ります。
よって結合次数は (2 - 2) / 2 = 0 となります。
せっかく結合性軌道によって安定化したのに、反結合性軌道によってそれが帳消しにされてしまいました。
これではエネルギーを消費して結合する意味がありません。
なのでHe2分子は存在しないのです。

ただし特殊な条件下ではこのような分子が存在する場合があります。
Ne2分子などのHeよりも周期の大きい希ガスからなる二原子分子です。
しかし、液体になるような極低温下・一切熱の発生しない状況でしか存在できません。
Ne2分子の結合解離エネルギーは0.0036eVで、非常に反応性の高いフッ素分子のそれ(1.602eV)と比べても桁外れに小さいです。
この0.0036eVというエネルギーは気体の分子が持つ運動エネルギーの10分の1ほどのエネルギーで、そのためほんの少しでも熱を与えると分解してしまいます。
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この回答へのお礼

補足への回答ありがとうございます。
理解できました。
2回とも分かりやすい説明でしたので、すんなりと頭の中に入ってきました。
初め、自分で調べた時はややこしそうな内容で勉強するのを敬遠していましたが、coirnさんの説明で理解でき、さらに考えることができました。(まだまだ低レベルですが…)
今回は丁寧に教えていただきありがとうございました。
物理や化学(分子系)について勉強中なので、もしもまた質問していたら教えていただけると幸いです。
ありがとうございました。

お礼日時:2009/05/02 00:16

どうもうまく画像がアップできないのでこちら。


ttp://imagepot.net/view/124099490520.jpg
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