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刑法についての質問です!

幇助と他人予備はどうやって区別するのでしょうか?

例えば、殺人を計画しているAから毒薬の調達依頼されたBが、Aのために毒薬を提供する場合です。

幇助のような他人予備のような・・・。

A 回答 (3件)

最初に答えを言っておこう。

これだけじゃ判らない。

まず、他人予備という言葉は二つの意味で使う。本来的には、他人の犯罪行為のために予備をするという純粋な事実を説明する概念だけど、予備罪の規定がある場合に、予備罪の規定は他人予備も含んでいるという意味で使うこともある。後者は他人予備の肯否という言い方をする時の使い方。
いずれにしても他人予備はあくまでも他人予備であって幇助とは全然別の概念。きちんと用語の内容を理解していないでしょ?だから判らないんだよ。法律学ってのは用語の定義は非常に重要。それをあいまいなままで使うと、ここでもよく見られる適当な回答を繰返す半可通に成り下がっちゃうからね。要注意。

さて、他人予備の話からしよう。
他人予備とは、予備罪の規定がある犯罪について 他 人 の 犯罪実現のために予備行為を行うことであるのは今言った。内乱予備罪は条文上、予備に目的などの限定がないから他人予備も含むと解するのが普通。問題は、殺人予備罪等のように予備の「目的」を明示してある犯罪。他人予備は予備を行う者自身には自分が犯罪をするという「目的」がない。だから予備罪の構成要件には該当しない可能性がある。
そこで他人予備の肯否の問題というのが出てくる。他人予備は予備罪の構成要件に該当するのかってこと。つまりこれは端的に言えば、他人予備は予備罪の 正 犯 か ?って話。つまり、他人予備の正犯性の問題なわけ(正犯性は当然あるわけじゃないよ。むしろ通説的にはない。判例は肯定説と言われてるけどね)。
他人予備の正犯性を認めるかどうかについて、判例は認めているという話もあるけど、理論的には正犯性を認めない説が通説。正犯性を認めるとどうなるかと言えば、後は共同正犯の成否になる。予備に実行行為性があると考えれば共同正犯になるし、ないと考えると共同正犯ではなく、本人と他人は意思を通じた上でそれぞれ別々に予備罪を犯したと考えることになる。つまり、予備罪の同時犯ということになる。
じゃあ、正犯性を認めないとどうなるかと言えば、予備に実行行為性があるのかというのはやはり問題になる。実行行為性があれば共同正犯ないし幇助犯、なければ不可罰となる。実行行為性の問題は共犯の成否の問題だから、共犯となるかどうかに影響するってことで、それは 正 犯 性 と は 別 次 元 の話ってわけだ。正犯性を肯定して共犯の成否を論じるのと正犯性を否定して共犯の正否を論じるというのはそれぞれ必要だってことね。
ここで一つ気付くことがあるね。他人予備を否定しない限りは予備の幇助は問題にならない。それに正犯性を否定しても共同正犯となることがあり得る。とすれば他人予備と幇助は対立関係にありそうだ。そう思ったかもしれないね。でもそりゃ間違い。他人予備の肯否はさっき言ったとおり、他人予備の 正 犯 性 の 問 題。解る?正犯性の問題なの。他人予備の肯定とはつまり他人予備の正犯性を認めることなんだから、そうすれば他人予備が予備罪の幇助になるわけがない。正犯なんだから。これは他人予備と幇助の問題ではなくて、他人予備の 正 犯 性 と幇助の問題ってこと。正犯性を肯定すれば正犯でないことが前提の幇助にならないのは当たり前でしょ?他人予備が問題なんじゃなくて、 正 犯 性 が問題だってこと。ここ勘違いしちゃ駄目だよ。
それと、他人予備の正犯性を否定してもなお、他人予備が共同正犯となるというのは、刑法65条1項の問題で、正犯性と共同正犯というのもまた次元の異なる話。正犯性というのはあくまでもその行為者の行為が直接に構成要件に該当するかどうかという話であって、共犯者の間に共同正犯としての共犯関係があるかどうかとは全然別。特に65条1項は直接に構成要件に該当しない非身分者を扱う規定なので、正犯性とは明らかに別次元の話。逆に正犯性を肯定しても共同正犯とならずに同時犯となるという風に、正犯と共同正犯は元々論じる次元が違うわけだ。だから、やっぱり、他人予備の正犯性と幇助の問題は別問題。

ところで、本人が実行に着手するとどうなるだろう?本人は少なくとも殺人未遂罪になるね。その段階で他人の予備行為は殺人未遂罪の幇助になる。それは解るでしょ?すると、他人予備が実行の着手を境に幇助になるわけだから、他人予備と幇助の区別は実行の着手によるということになる。
でもよく考えるとそれは、自己予備と(目的となる犯罪の)正犯の区別と言っているのと同じなんだよ。自己予備が実行の着手の瞬間から殺人未遂の正犯になる。これは実行の着手の意義が予備と未遂を区別することにあることから考えても理の当然だね。だけどそこで問題になるのは、実行の着手の有無の判断をどうするかとかそういう話であって、実行の着手によって未遂に至れば予備罪は問題にならなくなるという点に争いはない。それは他人予備も同じで、正犯が実行に着手して未遂に至ればもはや予備の問題にはならず、ただ自分が犯罪を犯すわけじゃないから正犯じゃなくて幇助になるというだけのことだ。つまり、実行の着手時期の問題こそがメインテーマで、他人予備と幇助の区別というのは実行の着手の有無であることは判りきっているわけだ。
つまり、あくまでも予備と未遂の区別基準として 実 行 の 着 手 の 意 義 が問題になるということはあっても予備と未遂の区別自体をどうやるのか?なんてことは問題にならない。実行の着手の有無に決まってる。条文から明らか。まして、本犯に従属する共犯となる幇助と他人予備の区別自体をどうするかなんて当然、正犯と同じだからあえて独立した問題にはならない。基本書読んでも、多分、正犯が実行に着手すれば他人予備をした者は幇助犯が成立して他人予備は問題にならないのは争いがないとかその程度しか書いていないと思うよ。


そんなわけで、質問に戻ろう。
まず、最初に考えるべきは、直接的な犯罪の成否。この質問だと、 A の 罪責を考えないといけない。直接の解答じゃなくても慣れない内は、必ず考えよう。慣れると反射的に出てくるんだけどね。
そうすると、毒薬を調達してもらって手に入れた段階でAには殺人予備罪が成立する。しかし、予備罪は目的となる犯罪の実行の着手がない場合にのみ問題になる(罪数論的に言えば補充関係と捉えるべきだろう)。だから、Aの罪責はAが殺人の実行に着手したかどうかで決まる。そこで実行に着手していればAには少なくとも殺人未遂罪が成立する。こうなると、殺人予備罪は 事 実 と し て は 存 在 し て い る が法的には評価しない。
これは他人予備と幇助も同じ。Aに少なくとも殺人未遂罪が成立しない限り、共犯従属性説を前提にすれば幇助犯にはなり得ない。他人予備の肯否は 幇 助 の 成 否 と は 理 論 的 に 別 問 題 であるが、幇助犯が成立する限りは正犯同様に罪数論的には他人予備を別罪として評価しない。だから幇助を論じればそれで十分ということになる。
そしてAの殺人の実行の着手がなければ、そこでBの他人予備の罪責を論じることになる。これは通説によれば、正犯性を否定して実行行為性を肯定するので、予備の(共同正犯または)幇助となる。つまり、他人予備は 予 備 罪 の 幇助犯(または共同正犯)ということになるわけだ。だから、
>幇助のような他人予備のような・・・。
理論上、他人予備であり予備罪の幇助であるということもあり得るってこと。幇助が殺人の幇助とは質問のどこにも書いてないよね?

この回答への補足

まさか、こんなに丁寧に説明をしてくださるとは・・・ありがとうございます。大学の講義を受けたようなお得感でいっぱいです。しかも質問の仕方が悪かったです。すみません。

(仮にBに自分が犯罪を犯す目的がなく、かつ他人予備を肯定する立場をとるとして)私は、BがAに毒薬を渡す程度なら他人予備で、現場で見張りをするなど犯行を容易する行動をとったら殺人の幇助(共同正犯)が成立するのだと思っていました・・・。とんだ勘違いということ、まさにちゃんと用語の定義を勉強しろ、ということですね。

つまりAが殺人罪を行ったらBは殺人予備の幇助(または共同正犯)が同じ犯罪の機会に成立することはなく、あるとすればBは殺人の幇助犯になるということですね。AがBの予備行為のあとに一度犯行を断念するなどして、別の機会にその毒薬を使って殺人を犯すなどしなければ予備罪の幇助(共同正犯)はありえない、ということでしょうか。。。

補足日時:2009/06/29 20:24
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この回答へのお礼

ありがとうございました。

お礼日時:2009/06/30 19:57

>例えば、殺人を計画しているAから毒薬の調達依頼されたBが、Aのために毒薬を提供する場合です。



 Aは殺人罪の実行行為に着手していますか?そのことを念頭にもう一度考えてみてください。

この回答への補足

実行行為の着手の有無で殺人罪の幇助になるか、殺人予備罪の幇助(他人予備)になるか、どちらかということですね。

補足日時:2009/06/29 20:25
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この回答へのお礼

ありがとうございました!

お礼日時:2009/06/30 19:57

他人予備も予備罪の正犯ですから、重要な役割や正犯意思(自己の犯罪として行う意思のことで、動機・利益の帰属・積極性等を考慮します)が必要になります。

幇助の場合にはこれらが不要です。

したがって、Aが暴走族の怖い先輩で、Bは嫌々ながら準備し、報酬も特にもらわなかったという場合には幇助になります。これに対して、AとBが対等の立場で、殺意を持っているAに対して、Bが積極的に毒薬の使用を勧め、高額の報酬を得たという場合には、他人予備になります。

文献で裏が取れれば良いのですが、手持ちの文献には載っていませんでした。誤解してたらごめんなさい。
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この回答へのお礼

一番早く回答してくださってありがとうございます。私もきちんと調べてみます。

お礼日時:2009/06/29 20:29

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