No.3ベストアンサー
- 回答日時:
実例で考えると分かり易いと思います。
例えば、AがBに宝石を100万円で売った場合を想定してみます。
宝石が、何らかの理由でBの占有下に移りました。
そこで、互いの採り得る法的手段を考えてみます。
【Aについて】
(1) 宝石の取戻
(1-1) 所有権に基づく返還請求は、通常できません。
なぜなら、契約時に所有権が移転するのが原則だからです。
(1-2) 占有権に基づく返還請求(200条1項)は、事情によるでしょう。
Bが盗んだ張本人か、悪意の特定承継人であること、の要件がネックになってくるかも。
(1-3) 債務不履行に基づく解除としての原状回復請求(545条)
後述(2)の方法が失敗した場合は、この方法が使えるでしょうが、解除してるので既に同時履行の抗弁権は問題になりません。
(2) 代金の請求
売買契約に基づく代金支払請求が可能です。
Bが同時履行の抗弁権を主張しても、Aは既履行の再抗弁を主張します。
仮に、Bが契約に基づく引渡しでないとゴネるかもしれませんが、
(a) そもそも、「基づく引渡」を要求すること自体に疑問がある(取得に違法性があるなら、別の法律構成で解決し得る)
(b) 仮に、「基づく引渡」を要求しても、追認することが考えられる
ことから、Aの再抗弁が奏効するでしょう。
(3) 結論
結局、Aからは、取戻の可能性自体が低く、また、これを求めるより、代金請求をした方が手っ取り早いので、一旦取り戻した上で、同時履行の抗弁権が問題になる場面は、まず無いと考えられます。
【Bについて】
Bが、既に宝石を得ているにもかかわらず、引渡請求をしてきた場合について。
(1) 弁済の抗弁が可能です。【Aについて】(2)の既履行の再抗弁と同様です。
(2) 同時履行の抗弁権について(私見)
同時履行の抗弁権が消滅するのは、一方または双方の債務の履行、であると考えます。
A側について、その債務の履行とは、引渡債務、即ち、占有移転債務です。
占有移転としての占有権の特定承継は、「当事者の意思」に基づいて行なわれる占有の移転、と考えられています。
そうすると、Aの意思に基づかない占有の移転は、特定承継に当たらず、「占有移転債務」の本旨履行とはいえない、と考えられるのではないでしょうか。
したがって、この場合、同時履行の抗弁権が認められれば、引換給付判決となり、結局、代金を受け取ることになるでしょう。
(3) 履行不能の抗弁
前述(1)(2)は、Bが既に持っていることを、Aが知っている場合です。
知らない場合は、一旦、この抗弁を出さざるをえないでしょう。
(4) 結論
同時履行の抗弁権は主張できないこともないでしょうが、そもそも、盗人たけだけしく、Bが請求してくること自体稀でしょうから、生産的な議論とはいえないと思います。
この回答へのお礼
お礼日時:2009/08/29 00:11
ありがとうございます。
ちょっと調べてみたのですが、はっきり消滅すると書いてあるものを見つけられなかったもので。
確かに意味はあまりないと思います。
No.2
- 回答日時:
留置権は物に関する権利です。
同時履行の抗弁は、物に関しません。そのあたりからいま少し考えてみたらいかがでしょう。「読書百遍意自ずから通ず」ですから、教科書をよく読んで。No.1
- 回答日時:
それ何の意味があるの?
仮に任意に自分の債務を履行した後だったらどうなる?もう同時履行の抗弁は主張できないよね?同時履行の抗弁権ってのは要は履行拒絶権なんだから履行しちゃったら当然消滅する。後は、反対給付を求めるしかないし、実際それで良いじゃん。
じゃあ、任意じゃなくて相手の手に渡ったらどうなるか?理論的には同時履行の抗弁権は直ちになくならず、その効力として返還請求ができるという構成をしても悪くはないけど、現実的に考えれば反対給付を請求する方が話が早い。そこでもし反対給付を求めてもしてくれなければ契約を解除して不当利得として返還請求すれば良いでしょ?理由が何であれ、第一には反対給付を実現させる、それが駄目なら返還請求となるけど、返還請求の法的根拠として同時履行の抗弁権に給付物返還請求権を認める意味はまったくないね。話がややこしくなるだけ。
債権債務は双方がきちんと履行して終了するのが原則なんだから、一方が履行したと同じ状況になったら双方が未履行の状態に戻すよりも、未履行の債務を履行させて終了させる方がどう考えても良いでしょ。未履行債務の履行が実現しないなら、単純な債務不履行として扱えばいいんで、あえて同時履行の抗弁権に基づく返還をさせてまで債権債務関係を維持しなきゃならない理由が全く理解できないな。
だからできないと解するべきじゃないかな。
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