「下部構造が上部構造を規定する」というマルクスの思想について、というか、思想史上の意義について、お教えいただきたくお願いいたします。
今まで私が思っていたのは、
「下部」(生活・経済活動・生産関係)は、従来の解釈では「結果」でしかなく、それは本質的ではないものと考えられてきた。
(たとえば「ツリー型モデル」における枝葉末節であり、その幹に相当する政治・宗教・学術(上部構造)の後に来る、その結果的な表れとしての形相・現象のようなもの)。
それが、実は逆に、上部を規定するものとして捉えるべきであるということを初めて提唱したのがマルクスの説だった。
これがマルクスの思想史上の存在意義なのかと勝手に思っていたのですが、よく考えたらただの思い込みだったので、これで合っているのかどうか不安です。
言い換えると、これだと、帰納法的なモデルを主張したという至って簡単な論理に過ぎなくも見えるし、現象学や実存主義の立脚点とほとんど同種のものになってしまう気がするので、もしかしたら違うのかな?と最近思ったのです。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
教える立場では全くないので、書き込みも躊躇しますが、疑問な点が在りますので、
>思想史上の意義
>初めて提唱した
あるレベル以上、と目される方の発言でないと、素人にしても受け入れがたい大きな話ですよね。そのような方の登場が、いずれあるものと望みましょう。
唯物史観の一つの側面についての評価というようですが、
>帰納法的なモデルを主張した
ではないと私は思いますが、それは
>「ツリー型モデル」
の問題性とも連なるかもしれないですね。
>至って簡単な論理
は、或る意味、その通りではないでしょうか。
>現象学や実存主義の立脚点とほとんど同種
も、いくつか保留するべきかもしれないですが、その通りではないでしょうか。
>「下部構造が上部構造を規定する」
は、薄めると、誰かの主張というものではなく、今では当たり前なのですね。ですから、唯物史観への批判としては、「否、上部構造が下部を規定し返す側面もあるのだ。」と、一方的な規定ではない、というのが大半ではないでしょうか。
>「下部」は、従来の解釈では「結果」でしかなく、それは本質的ではないものと考えられてきた。
こだわりますと、
「下部」は、それまでの西洋の哲学においては、結果でもなく、考察の対象でもなかった。その風向きが変わったのは、十八世紀頃ではないでしょうか。そして、フランス唯物論・百科全書・イギリス経済学をも自らの哲学に組み込んだと自負するヘーゲルという前史を受けて、あるがままの人間に定位すること、それが現代的哲学の「立脚点」になったのではないでしょうか。その意味で、唯物史観も内容を薄めると、他と同種の立脚点に、在る。
マルクスの有名な、自らの研究の導きの糸となった一般的結論、『経済学批判』序文
「人々は、その生の社会的生産において、一定の、必然的な、かれらの意志から独立な諸関係にはいりこむ。すなわち、物質的生産諸力の一定の発展段階に照応する生産諸関係に入る。この生産諸関係の総体が社会の経済的構造、実在的な土台を成し、これの上に、法制的、政治的な上層建築がそびえたち、また、それに一定の社会的意識諸形態が照応する。物質的生活の生産様式が、社会的、政治的、精神的、生活過程一般を規制する。人々の意識がその存在を規定するのではなくて、逆に、彼等の社会的存在が彼等の意識を規定するのである。」
この文章を、短絡的に「存在が意識を決定する」と読んだり、各種の恣意的読み込みがなされたりした訳ですね。
「下部構造が上部構造を規定する」と読めない訳ではないでしょうが、近いのは、「物質的生活の生産様式が、社会的、政治的、精神的、生活過程一般を規制する。」ですか。あるいは、「彼等の社会的存在が彼等の意識を規定するのである。」でしょうか。微妙に違っていますね。その違いが、私には、薄めている、と見えるのです。
要するに、質問者さんの解釈は、唯物史観を薄めており――したがって意義自体評価しがたい――、マルクスの方法は「帰納法的なモデル」とは全く異質である、という事を、書こうとしたのですが、後者については、一寸しんどいなと。――お粗末でした。
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