パック旅行はPL法の対象ではないのか?
最近海外旅行での事故が頻発していますが、旅行会社は見舞金を出すだけで、補償問題については現地の法人と被害者が直接交渉しなければならないと報道されています。
PL(製造物責任)法では下請け製造や部品製造等での被害原因の責任の所在を問わず、消費者が製造者と認識している会社に対して損害賠償を請求できるとされていると認識しています。
個人的にはパック旅行は広義の製造物として考えられる余地がある様な気がするのですが、PL法の対象として被害者が救済を求めるには無理があるのでしょうか?
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
旅行会社経営者です。
ユタ州で起きた事故は悲惨なもので、亡くなられた方とご遺族には深い同情を覚えています。ご質問のPL法(製造物責任法)ですが、既回答にもあるように製造物は「動産」、つまり形のあるものに限られます。旅行商品はこれには当たりません。
今回の事故の直後にこの旅行を企画した旅行会社の役員が「当社には損害を賠償する責任はない」と記者会見で発言したそうです。前後の脈絡が分かりませんし、まだ原因不明の時点での発言としてはあまり褒められたものではありませんが、これはその通りです。
これから先はちょっと余談です。旅行会社が言う見舞金とは「特別補償金」のことです。
「特別」と名のつくことが示すように、この特別補償とは旅行会社の故意や過失による不法行為の責任を認める結果の賠償ではなく、募集型企画旅行(パック旅行)に参加した旅行客が事故に遭った時に、その事故の責任が誰にあるかを問わずに旅行会社が無条件で支払う「お見舞金」に過ぎません。損害賠償ではないのです。
従って冷たい言い方になりますが、被害者、あるいは遺族は直接事故を起こした運転手、それを雇用して業務に当たらせていたバス会社に損害の賠償を求めるしかありません。事故現場が海外、バス会社もアメリカ企業となると、仮に日本で裁判を起こしてもかなり長期化することが予想されます。
しかし被害者や遺族が旅行会社に対して訴えを起こすことは不可能ではありません。最大の突っ込みどころは「日本の旅行会社がそのバス会社を選定するのに重大な過失がなかったか」です。つまり過去にも事故の多かったバス会社と知っていながら、あるいは知る機会もあったにも関わらず旅客の運送をさせていたのではないか、ということです。
しかしこれもなかなか難しいことです。日本の旅行会社が直接、バス会社を選定することはまずあり得ないからです。今回の旅行で言えば、日本の旅行会社が米国の旅行会社に全体的な手配を命じる、米国会社は任意にバス会社を選んで手配区間のバス運行を指示する、というシステムなのです。そのバス会社も運送契約を結ぶのは米国の旅行会社であり、今回のようなJTBや近ツー、HISではありません。責任があるとすれば、せいぜい米国内の旅行会社、今回ではWestern Leisureという会社です。
最後に。日本には「道義的責任」と言ういい言葉があります。報道のように、ある旅行会社幹部が「当社に責任はない」とは言っても、旅行を企画して実施した業者として「あとはどうぞ米国の旅行会社、あるいはバス会社を相手取って訴訟を起こしてください」と突っぱねることはないでしょう。何かと助言し、支援してくれると思います。しかしそれはあくまでも好意であって、責任を認めたからでなない。その前提としての幹部発言です。
海外旅行に際して保険加入を私たちが強くお勧めするのは、このような悲しい、困難なケースも想定するからです。
ご丁寧に回答頂き有難うございました。
前の回答者さんにも疑問を呈しましたが、動産の定義は「土地およびその定着物をいう不動産以外の物。現金・商品・家財などのように形を変えずに移転できる財産。無記名債権は動産とみなされ、船舶は不動産に準じた扱いを受ける。」であり、拡大解釈の余地が在るのではないかと思っています。
つまり一般論として確率は低いにしろ、可能性は完全に「ゼロ」なのかと思っての質問でした。
PL法の趣旨は「従来法の過失等を立証する責任を被害者側に負わせる事を無くす。」ものであり、その趣旨に沿っての動産の解釈に関して、一石を投じる法律家があっても良いのではと言う、部外者の希望的観測であったのですが・・・。
No.4
- 回答日時:
#2です。
>無記名債権は動産とみなされ、船舶は不動産に準じた扱いを受ける」となっており、無記名債権が含まれるなら可能性があるのではないかと思います。
無記名債権とは、商品券や乗車券など、保有者の表示のない証券のことです。当然ながらパック旅行は該当しません。
パッケージツアーを企画した旅行会社の責任追及に関しては別のアプローチを考えるべきでしょう。
お礼が遅れましたが、ご丁寧に解説頂きありがとうございました。
海外パック旅行に関しては、航空券とか宿泊券などがパッケージで綴じられたものが渡される場合があります。
勿論無理があるのは百も承知ではありますが、米国のPL訴訟例ではかなり飛躍した論理で行なわれ、それが通っている例があるので、質問させて頂きました。
日本でそういった判例は極稀ではありますが、カネミ訴訟の様に裁判所側が被害者側にたって拡大解釈をする例が無くはないので・・・。
無理だという報道が大きかったので無理筋と判って質問しましたが、仰る様に専門家が考えれば別の手立てがあるかと思います。
No.2
- 回答日時:
無理です。
製造物責任法は「製造物」を「製造又は加工された動産」と定義しています(2条1項)。パック旅行がこれに当てはまらないことは明らかです。
ご回答有難うございました。
製造物として作り上げたものの定義に関して、拡大解釈の余地があるかと思ったため質問致しました。
「動産」の定義は「土地およびその定着物をいう不動産以外の物。現金・商品・家財などのように形を変えずに移転できる財産。無記名債権は動産とみなされ、船舶は不動産に準じた扱いを受ける」となっており、無記名債権が含まれるなら可能性があるのではないかと思います。
パック旅行は全体として旅行会社が作り上げたサービス製品であり、日本社会では行なわれる事は少ないですが、訴訟社会の米国では弁護士がそういった発想でチャレンジする事は多々あります。
またPL法以前には法律上不備があった訳ですが、被害消費者保護のために既存法の拡大解釈が行なわれていました。
そういった事から、今回の様に旅行のパーツである運行会社の人災に関しては、拡大解釈にチャレンジする弁護士さんが居ないかなと思っています。
No.1
- 回答日時:
無理がある
メーカーの設計、製造により管理される製品に適用されるPL法です
旅行中の事故は現地で天災にあったりテロに巻き込まれる事が原因なのですから。
現地の鉄道やら現地人の教育まで旅行会社が設計製造しているわけではありません。
ご回答有難うございました。
製造物として作り上げたものの定義に関して、拡大解釈の余地があるかと思ったため質問致しました。
例えば石油製品について給油所がメーカー製造品を混ぜ物にしてトラブルが発生した場合、給油所マークのメーカーが消費者に対し一義的PL責任を負う事になります。
パック旅行は全体として旅行会社が作り上げたサービス製品であり、日本社会では行なわれる事は少ないですが、訴訟社会の米国では弁護士がそういった発想でチャレンジする事は多々あります。
またPL法以前には法律上不備があった訳ですが、被害消費者保護のために既存法の拡大解釈が行なわれていました。
そういった事から、今回の様に旅行のパーツである運行会社の人災に関しては、拡大解釈にチャレンジする弁護士さんが居ないかなと思っています。
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