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広津柳浪については岩波文庫の『今戸心中』を読んだぐらいでそれほど詳しいわけではありませんが。
深刻小説、というのは、尾崎紅葉が中心となった文学結社硯友社の中から派生した流れです。
そもそも紅葉という人は、坪内逍遙や二葉亭四迷が、西洋文学の翻訳を通して日本に新しい文学を構築していくことを模索したのに対し、その写実的な描写は受け入れつつも、内容的には江戸期の文学に先祖返りしたような作品を書いた人で、また時代も急速な西洋化に対する反動の気持ちから、そうした紅葉やあるいは幸田露伴、樋口一葉などを受け入れていきます。
ところが日清戦争が起こり、また日本の社会も徐々に近代化、工業化していく中で、紅葉的手法では、もはや人々の生活や意識を汲み取れなくなっていく。
もう一度、作品の立脚点をどこに置くか、とらえなおさなければならなくなってきたんです。
そうした問題意識に答えようとしたのが、いずれも硯友社の中では傍流であった川上眉山や広津柳浪や泉鏡花だったわけです。
彼らはみな、社会の不合理や暗黒面に着目しました。前者にウェイトをおいた泉鏡花の作品は観念小説、後者の柳浪の作品は深刻小説と呼ばれるようになります。
この試みは、やがてキリスト教社会主義、あるいはエミール・ゾラの影響を受ける自然主義文学の流れへと受け継がれていくのですが、日本の自然主義文学が、人間と社会の関わりを自然科学的に観察するのではなく、自己の告白というものに変質していったために、柳浪の流れも途絶えたと見た方がよいのかもしれません。
永井荷風は当初柳浪の下で学び、ゾラの影響を強く受けた作品を発表していましたが、アメリカ、フランスのへの滞在を経て、逆に江戸文化への傾倒を深めていきます。
やはり柳浪の正統な後継者は、息子の和郎ということになるのかもしれません。
サイトとしては、
http://www.mars.dti.ne.jp/~akaki/sizen1.htm
がわかりやすいと思いました。
また、息子との関係で見ると
http://www.kanabun.or.jp/hirotu.htm
がよくまとまっています。
岩波文庫版の解説は息子が書いていますね。
ああした文章を実の息子に書いてもらえるなんて、ある意味で柳浪は幸福な作家であったのかもしれません。
参考URL:http://www.mars.dti.ne.jp/~akaki/sizen1.htm
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